幣原喜重郎首相と憲法第9条 久保 いささかタイミングを逸した気がするが、3日の憲法記念日に寄せて ー言申し上げたい。 『憲法全体は基本的に押し付けだったのに、どうも問題の憲法9 条だけは、占領軍から押し付けられたものではなく、日本の幣原喜 重郎首相の側から持ち出したものらしい。』という評論家・立花隆 らの主張に関し、幣原喜重郎首相の御令息・幣原道太郎獨協大学教 授は「言いたいことも言えず、書きたいことも書けないまま、80 歳の生涯を閉じた父の無念さを知る私にとって、第9条を金科玉条 のごとく考える風潮と、第9条幣原提案説だけは、どうしても我慢 できない」と反論する。 ---------------------------------------- 私自身、幣原喜重郎首相と憲法第9条についての幣原道太郎氏から の書簡を保持している。 『拝復 (略) 小生 先考喜重郎が天皇を最高戦犯ととして東京裁判付託の人質に とられ、涙を呑んで受け入れた祖本、総司令部草案を戦後の痴志、 無知な国民が平和と繁栄の生みの親として奉戴し、日米安保の片務 条約に依存しつゞける現状看過するに忍びず、多年に互り亡父雪冤 の戦を戦って来ました。小生の憲法改正に関する所見は、 (ー)現行憲法改正 (ニ)新憲法の制定 (三)明治憲法の復元改正 の三論中、教育勅語復権も加え、(三)を支持していますので(ー)(ニ) すら至難の戦後の世論に鑑み、祖国回天の至業達成のため、微カを 致し居ります。 神道指令の失効も小生の心願であります。 尊台の御健勝と御健闘を祈り居ります。 敬具 十一月ニ日 幣原道太郎 久保憲一様 久保憲一