3261.日本の品格への回帰(日本のルネサンス)



やっと、需要の下げ止まりに来ているが、景気が急回復するV字回
復にはなりそうもなく、底を這うようなL字回復になるようだ。
今後は長く低迷した経済情勢になる。この中で心を豊かにする日本
人の思想を検討しよう。           津田より

0.はじめに
日本も高度経済成長後、バブル崩壊で低成長の時代になったが、そ
の低成長を外需により成長を伸ばそうとした。しかし、その外需も
米国の証券バブル崩壊で一気に無くなり、今後のV字回復は難しく
なっている。

新興国以外の日本経済も世界経済もL字の回復となるしかない。L
字というのは、GDPは下がらないが、上がらないことを意味する。

需要が先進諸国では持ち直さないし、新興国の需要は低機能低性能
でもいいから超低価格な製品であり、このような低機能な製品は先
進諸国企業にはないし、先進諸国企業は新興国モデルを作る以外に
方法はない。しかし、それは先進諸国企業の母国には売れない。

米国が生み出した金融資本主義とは金が金を生むということであり
、物が動くようなリアルな経済ではなく、インターネット上を数値
が動き、物質にリンクしないバーチャルな経済ことであるが、バー
チャルであるために数値が増殖してリアルな経済の数十倍まで膨れ
ることができた。しかし、一度、倒産などで投資銀行やファンドの
信用がなくなると、バブルは一気に弾けて金の増殖から縮退にシフ
トした。しかし、リアルな経済までバーチャルな経済の信用失墜に
影響されて、縮小したのである。

このリアルな経済は、人間の生活に欠かせない物である為に、一時
的な縮小があっても元に戻るが、バーチャルな経済部分は元には戻
らない。このため、V字回復ではなくて、L字回復とならざるを得
ないのである。

このように、ある程度の経済成長をすると先進諸国の今の状態のよ
うに成長の限界に突き当たり、経済的な豊かさではなく人間として
の生活の質を求めるしかない。それは人間の生き方の質を問うこと
でもある。そして、この生活の質や人としての生き方の見本が日本
では第2次大戦以前に多くあったのだ。これを戦後、高度成長期に
米国的な物質的な豊かさを追い求めるために、捨ててきた。

このため、今後の日本経済を考えるためには、環境技術による経済
とともに人間の生き方に対する思想や志向も重要である。人間の生
き方とは、人間としての品格が重要なのであるとも言い換えること
が出来る。

金融資本主義とは、人を化かす技術でもある。簡単な仕掛けでは、
すぐにバレルので複雑な金融工学とやらを使い、全員が理解不能に
していたことで、このような大きなビジネスにしていたが、これは
世界全体を巻き込んだ詐欺事件とでも言えばいい。

世界1の投資銀行の社長でさえ、そのリスクの存在がわからないと
いうのであるから、騙された人たちにも分かるはずが無い。しかし
、この詐欺事件は規模が大きいために、刑事事件とはならずに世界
的に政府が詐欺をした投資銀行を助けることになる。そして、詐欺
行為をした銀行員に多額の報酬を税金を使って与える。

金融業は、基本的に信頼であるために、このような詐欺事件が大々
的に起きるのである。このような金融業がベースである社会では、
どうしても人間の品格はできないのである。米国の自動車産業も自
動車ローンが中心で、70年代から技術的な進歩もない大型車中心
の高額な自動車を売りつけていた。石油が高騰する可能性があり、
小型車へシフトすると思われたのにである。というように社会全体
が詐欺行為をしているような感じになっていた。日本は米国流にな
ったとはいえ、ここまでの詐欺的なビジネスはしていない。いかに
金融業が恐ろしいかを見ることができる。

この人間の品格の思想を検討したいと思う。検討にお付き合いの程
、お願いします。

1.今、日本の状況
 現代社会でも、日本で詐欺事件が多い。特に、今のような閉塞感
のある時代には、それを打ち破る技術ができたと宣伝する人たちや
海外へにビジネスを紹介するなどという人たちがいる。

そして、そのような人たちは皆、自分の研究やビジネスなどが凄い
と宣伝するが、その実態は他人の業績をさも自分の業績をして語り
、それを信用する人たちからお金を巻き上げることである。

私は、現在企業コンサルタントをしているがクライアント企業に群
がるその手の人たちを見ることが多い。その多くは詐欺行為に近い
ビジネスであり、そのような詐欺に近いことをする経営者、研究者
や技術者などに非常な憤りを感じている。しかし、当初は見分ける
ことが難しい。このため、詐欺かどうかを見分ける時間が必要にな
り、真のビジネスをするまでに時間が掛かってしまう。

この詐欺行為をする人たちを他人に紹介すると、紹介した人も同様
なレベルの者と見られるために、注意が必要であるし、反対に信頼
できる人から紹介されたから大丈夫と見て、心を許すと詐欺に逢う
ことになる。

大企業に勤めていた時には、ビジネスを複数の目から見ていたが、
中小企業では複数の目から見れることができないために、どうして
も詐欺行為に乗せられやすいようである。

そのため、中小企業にいろいろな詐欺者が群がることになる。戦後
の経済成長で「衣食住足りて礼節を守る」にならなくてはいけない
のに、そうなっていない。詐欺まがい行為をする人たちは、見破ら
れても、また違うところで同じような行為をする。習い性になって
いる。それを悪いと思っていないようだ。騙された人が悪いのであ
ると嘯く。

このため、その人を知っている人たちからは、注意をしろとアドバ
イスがあるが、非常に巧みに人の心を落とし込むので、アドバイス
があっても信用しない人が多い。高い技術力がある人や一部上場の
元大企業の社長をしたことがある人でもそのような行為をする人が
いるので、難しいことになる。

2.詐欺防止方法について
 世界でも信頼が重要であるというのは、商業が発展している欧米
でも十分知られている。特に上流階級の人たちやビジネストップは
大切にしている。しかし、中国でも信用が大切と見る人たちは多い
が、中国の大企業や国営企業でも信義を守らない経営者がいて、ビ
ックリしたが、中国人同士でも信義を守らないために注意をしてい
ると聞く。

このため、中国では信用できる人たちで講を作り、その中でビジネ
スをしている。そして、講の中にいる人に対して信義を破ると自動
的に講から追い出されるという講の仕組みを作っているようだ。こ
の講は同郷人や同族、大学の同窓などといろいろな種類があると。

日本のロータリークラブなどがそれに近いのであろうが、その中で
はあまりビジネスの話をしないし、一流企業のたまり場とかしてい
る。ビジネスのためにグループ化したということではない。

どしてできないかというと、日本人はそういう意味では日本人とい
う講の中にいるようなものであるので、信頼をして付合う仕組みが
あったのだ。しかし、とみにその仕組みが崩壊しているように感じ
る。また、信用できない人をブラックリストに乗せる仕組みもない。
中国のような講が明示的にないためである。

これは、中国と同じような講という仕組みを構築しない日本人だか
らという理由では、信頼ができないと見始めている。

その講ができるまでは、時間をかけて信頼度をチェックしていくし
かないのであろう。信頼できる人の紹介でも信用ができない人であ
る場合を何回もみているとそう感じてしまう。

逆に、異分野で信頼できそうもない人でも信義を守る人がいるので
、そのような人とはビジネスができるし、異分野であるために相乗
効果が大きいことがある。この見極めにお互いが時間を必要として
しまうのが日本の欠点になっている。日本では短スピードなビジネ
スができない理由である。講という仕組みがあれば、その中では信
頼があり、スピード感のあるビジネスができる。そのようなグルー
プを作るというビジネスも銀行など信頼感がすでにある機関ではあ
りそうだ。

3.昔の日本人の思想とは
 日本には、縄文時代の万物が神であり、自然を崇拝する神道、天
が見ているという己れを律する仏教という信仰と、論語という作法
や礼、人間としての規範を規定している書物があり、日本社会を形
作っていたのである。

その規範でもある論語が戦後、封建主義の遺物として拒否されて教
育されなくなり社会規範を知らないことで、一流企業でも自己中心
的な中間層や経営者が増えて、中小企業のアイデアを盗み、そのア
イデア商品を売り出すことになった。

詐欺に近い行為をし始めたのは戦後教育を受けた人たちが企業の中
間層になった1980年代の時期からである。そして、2005年
にもなるとその人たちが大企業の経営者になり、その傾向が一段と
強まっている。しかし、このように他人のアイデアを盗むとそれが
企業文化になり、だれも新製品をそのような企業に持ち込まなくな
るし、企業内部では社員に発想がなくなり、新製品を生み出せなく
なっている。それが大企業が没落する原因になっている。

日本の大企業を弱くしているのは、このような自分中心主義であり
、詐欺行為に近いビジネスは長続きしないという教えがないためで
ある。その点、老舗企業でも新しい物を生み出し、かつ家訓がしっ
かりしている企業は、他企業に対しても信義を守るし、社員教育を
シッカリしている。

論語ではなくても、このような信義が大切という人間教育が教育さ
れていないことで、日本人は劣化しているように感じる。江戸時代
でも庶民は、**往来という教科書で基礎の論語は教わっていた。
その基礎教育もない現状では信義を守ることが重要という家庭教育
ができるのは商人の家しかなく、しかし、その個人商店もその数が
だんだん少なくなっている。

これからは論語教育だけではなく、松下幸之助、二ノ宮尊徳、石門
心学など江戸時代の人間規範を教えとして、幸之助のような現代ビ
ジネスでも必要であるという教育を日本はしないと人間の品格とし
ての劣化が進み、日本の発展維持を阻害することになる。

4.最後に
 中国は4千年の歴史というが、中国の現代人は繁体文字の昔の論
語の本を読めないし、中国の論語学者は文化大革命で追放されたこ
ととその後論語が認められるまでに長時間を要したことで、レベル
の高い学者が死に絶えて、論語の解釈レベルで著しく劣化している。

韓国も漢字を排除してハングル文字化したために、論語の本を現代
人は読めない。このため、レベルの高い論語学者もいない。そのた
め、日本と台湾の論語学者のレベルが世界でも高いことになってい
る。

仏教という哲学と論語という規範が整備されているのは、台湾や日
本、香港など東アジア諸国である。それに対して、欧米はキリスト
教が規範と哲学の両方を行ったことで、規範が徹底されていない問
題があった。このため、今回のような大掛かりな証券バブルのよう
な大詐欺事件を起こして、世界を混乱に陥れることになるのだ。

しかし、その日本も戦後、米国流の金融システムを真似したことで
詐欺が増えたのである。そろそろ、日本の伝統的な価値に日本人は
気がつくべきである。

さあ、どうなりますか??

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