3243.定額給付金を環境NPOに寄付しよう



定額給付金を環境NPOに寄付しよう

                  平成21年(2009)3月20日(金)
              「地球に謙虚に運動」代表 仲津 英治

定額給付金が国民にあまねく給付されることとなりました。一人当
たり12,000円とか。我が家では妻と娘にも支給されるのでしょう。
但し、私はこの一時的給付金の制度に疑問に思うところが多々あり
ます。消費を促すという目的だそうですが、ばらまき政策で、将来
の借金につながり、子孫にツケを回すことになるからです。この大
衆迎合的政策は、公明党の発案で第一与党の自民党が乗っかった政
策ですね。国会答弁でも麻生首相は、この定額給付金に関して確固
とした信念を御持ちじゃなかったようで、最初は「自分は受け取ら
ない」「高額所得者が受領するのはさもしい」とか言って、昨秋か
らの急激な景気悪化の後、最後には「消費刺激のため受け取る」と
くるくる発言が変わりました。

給付金制度は、上記の事情からも疑問に思っています。しかし、
支給されるのであれば、私は昨年度JR西日本の小さな子会社の監査
役になり、大幅収入ダウンとなり、年金生活者に片足を突っ込みかけ
た一市民ですが、別に生活に困っているわけでは無いので、自ら主宰
するか所属している環境NPOに、この12,000円を寄付しようと思っ
ています。環境NPOに限らず、NPOの共通的辛さは慢性的金欠病で
すから、必ずこのお金は消費に回るのです。どうして政治家を始め、
寄付という考えが出て来ないのか不思議でならないのです。

今回の定額給付金の問題点の一つは財源です。国の借金増加にはなら
ないようですが、借金返済に回せるはずお金を減らし、あるいは将来
借金を増やさない仕組みを壊すことにつながる方式のようです。

定額給付金の財源
 新聞報道によれば、定額給付金を含む平成20年度補正予算には、
関連法を成立させて、財政投融資特別会計の積立金から4兆1,580万円を
取り崩すことになっています。給付金のほか、高速道路通行料金の引き
下げなどの財源となるようです。
 定額給付金の発案者である、公明党の機関誌の1月18日付けの公明
新聞に下記のような記事がありました。

定額給付金などの財源に有効活用 
A 財政投融資の利益のうち将来の金利変動に備え、積み立てている資金。

  国には21の特別会計(特会)があるが、今回、政策経費の財源として
特に注目されたのは「財政投融資特別会計」(財投特会)の積立金だ。
  融資による利息が財投債発行に伴う利払いより大きければ、その差額が
利益となるが、法律上、将来の利払いの金利変動に備え、利益のうち総資
産の5%までは準備金として積み立てる必要がある。これを超えた分は国
債償還に充てなくてはならない。 積立金残高は約10兆円(08年度末見
通し)にも上り、これを有効活用するよう求める声は強い。

 巷間よく言われる埋蔵金の一種のようで、定額給付金への出費は、将来
のあり得る金利上昇への備えを無くし、国債償還にも当て得るお金を使う
ことになるのです。総額2兆円とか。
 この財源処置は、既設新幹線譲渡収入(総計約1兆8,500億円)に似てい
るなと思いました。平成3年(1991)、新幹線保有機構を解散した時、8.1
兆円の譲渡価格に1.1兆円上乗せし、9.2兆円でJR本州3社に新幹線に譲
渡しています。これは60年間の年利6.2%の元利均等償還で、同時に1.1
兆円分の年間償還金724億円を整備新幹線に充てる仕組みで、JR本州3
社が負担しています。
 
国の借金は、国債残高として847兆円あります。国民一人当たり、662
万円。このままでは子供に大きなツケを残すことになります。100年に
一度とかいう大不況で財政再建を一時的に棚上げせざるを得ないとの
与謝野財務大臣の見解が先日ありましたが、私は同じ出すのなら、他の
効果的な方法があるはずと思っています。高速道路通行料金の引き下げ
政策も石油消費を促し、炭酸ガス放出を促進させる制度でもあります。

日本は終戦後、好景気で税収が好調の時には、各省庁が予算の増額を要
求し、国会議員も地元対策に予算配分を求めて来ました。そして不景気
となると、景気刺激のため、公共事業を行ない、昨今では赤字国債まで
発行して、国の借金を増やす政策を取って来ました。戦後はこれの繰り
返しです。
そして後世に負担を残す事態となってきているのです。今ばかりを求め
る国民も反省する必要があります。

私はこのまま行くと、いずれインフレしか解決策がなくなる可能性があ
ると認識しています。第2次世界大戦とそれに至る戦争において日本政
府は、多大な戦費を調達するため、当時も国債を発行していました。
そして多少のお金のあるものは、国債を購入すべしとの雰囲気があった
そうで、我々の両親も買っていました。戦後、返済を受けました。親父
は返してもらったけど、1000円は1000円だったとよくボヤいていまし
た。物価は数百倍になっており、1000円は実質数円になってしまった
のです。インフレによる借金棒引きという答えになったわけです。

 民主党もばら撒き体質を持っています。昨年4月、石油税の暫定税率を
一時的に廃止に追い込み、石油価格を低下させました。これは自動車を
もっと使って、炭酸ガスを増やせと奨励しているようなものでした。本
来石油税の暫定税を環境税に回して、将来に有効な政策に使うべきなの
です。  

国の政策のあるべき姿 
 1,500兆円の預貯金を有効利用

私は、国の補助金制度は、官僚の権限を増加させ、国家の借金を増や
す方向になるものだと認識しています。むしろ、1,500兆円もあると
言われる国民の預貯金を投資に向けるような政策であれば、借金を増
やさず、経済も活性化し、雇用を生むことでしょう。そしてその対象
は、国民の生活が成り立つ原点であるエネルギーと食糧などに向けら
れるべきです。環境問題の改善にも貢献することになります。

 2000年からドイツでは風力発電、太陽光発電、バイオマスなどで得ら
れた再生可能エネルギーを高値で買い取る制度を作り、国民の投資意欲
を引出し、自然エネルギーの普及に成功し始めています。例を挙げると
太陽光発電で得られた電気は通常1KWH当たり20セントのところを
(約25円くらい、円高で円換算値は大幅に下がりましたが)50セント
(約63円)で買い取るよう電力会社に義務付けたのです。個人投資家も
10年程度で元が取れるようになったものですから、個人であるいは小さ
な会社を作り、太陽光発電装置の設置に乗り出したのです。毎年購入価
格は数%づつ下げられる仕組みとなっており、早期参入を促す制度にも
なっています。平成17年 (2005)度まであった太陽光発電補助金制度のお
かげで、日本は世界一の太陽光発電設置量を誇っていたのですが、2006
年からドイツに凌駕されています。樺太の緯度にあるドイツにですよ。

 しかし漸く日本も洞爺湖サミットで、炭酸ガス削減量は今の仕組みで
は到底達成できないと自覚し、平成21年(2009)度から太陽光発電などの
発電電気を2倍の価格で電力会社に購入を義務付ける制度を作るようで
す。今まで25-30年もかかる期間が15年でペイするようになるでしょう。
財源は、電気料金の薄い値上げで賄えるであろうし、既存の1KWH当た
り37.5銭の電源開発促進税の活用も考えられるでしょう。

 銀行利子などの低い今、リスクの多い、株、債権市場より安心して回
収できるエネルギー資源投資対象があれば、預貯金は、そうした方向に
向かうでしょう。わずか数%のエネルギー自給率を高めることに繋がり
ます。ドイツでは、太陽光発電、風力発電、バイオマスの各装置を作る
メーカー、そして市場が拡充し、数十万人の雇用を生んでいます。先駆
者のデンマーク、最近ドイツ以上の再生可能エネルギー促進制度を作っ
たスペインでも然りです。そして自然エネルギーも普及すれば、価格は
下がって行くことでしょう。

 日本ではかつては里山からエネルギーを得ていました。木材をチップ
化してペレットに加工すれば、ガスのように燃焼量を調整できるストーブ、
料理器具で使えます。天然ガス、LPGのような化石燃料は、いずれ枯渇し
ますし、その過程で大幅価格上昇の時代が到来するでしょう。

 今から戦後植えた杉・檜などを、木材として燃料として使える仕組みを
再構築して行く仕組み、制度をテスト的に初めて行くべきではありません
か。木材加工工場が里山の近くにできれば、雇用も生みます。その工場か
ら出されるエネルギーを一定価格で買い取るシステムができれば、その工
場への投資家も現れるはずです。エネルギーの地産地消です。ただし消費
者も今の、石油、ガス価格より高くなることを覚悟する必要があります。
 
 カロリーベースで39%と言われる食糧自給率も改善するために、農業を
再興する必要性があります。無農薬、有機肥料、自然飼料で育てられた野
菜、お米、お肉などであれば、多少高くても消費者は安心して購入するは
ずです。
 需給により価格変動の多い、農作物も一定の需要と安定価格が確保されれ
ば、農家も安心して耕作に向かえるでしょう。また地方公共団体が第3セク
ター方式で農作会社を作るよう誘導し、そこに巨大な預貯金を投資に向かわ
せるような仕組み作りも地方自治体、国の方で整備すべきであると私は思い
ます。これらの財源としては、炭酸ガスを多く発生させる化石燃料へ環境税
を課すことによって得られると思います。

 ドイツでも再生可能エネルギー法のきっかけを作ったのは、アーヘン
市という一自治体だったのです。

 環境NPOもそういう方向性を出すべく志をもって活動しているところは、
多いのです。私はそれ故に定額給付金を環境NPOに寄付することに決めま
した。日本に寄付文化を根付かせる方向にもしたいのです。皆さまご賛同
頂ければ、幸甚です。              以上         
 
「地球に謙虚に」運動代表
 仲津 英治



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