3241.次の世界経済のエンジン



AIGなど公的資金を支給された金融機関が幹部に巨額なボーナス
支給などをしていて、米国国民から大きな怒りを買っている。しか
し、金融危機・経済危機を乗り越える方法としては、インターネッ
トのような新しい産業を構築するか、新しい米国に変わる大消費国
を作るしかない。ここでは、新しい消費国を探すことにする。
                 津田より

0.はじめに
 世界の損失は、どのくらいあるのか正確な数字はないが、サブプ
ライム関連だけで400兆円、企業貸付の不良債権、株式や市場取
引での損失、消費者債務の損失などから米国でも最低1000兆円
あり、欧州でも最低1000兆円あると見られている。

日本のバブル崩壊での損失が200兆円出会ったことを考えると10
倍以上であろう。この損失から立ち上がるためには、1つには過去
のインターネットやPCなどのIT産業のような新しい産業が出来
て、新しい消費を生み出すか、2つ目には新しい米国のような大消
費国ができて、世界の生産物を消費してくれる国が必要である。

しかし、新しい産業を立ち上げるには10年の時間が必要である。
オバマ政権はグリーン・ニューディールという構想をぶち上げてい
る。このグリーン・ニューディール構想は今後、1つづつ解説して
いこうと思うが、今回は新しい消費国を検討しておこう。

日本は、この新しい消費国にはなれそうにない。それは国民に買い
たい物がないことと、日本的なモッタイナイや「足るを知る」など
節約が美徳とされる意識があるからだ。

それでは、どこが新しい消費国になるのであろうか?
皆様とともに考えて行きたいと思いますので、お付き合いのほど
お願いします。

1.欧米の現状
 世界的に膨大になった高金利の債務が返せなくなったことが、今
回の世界的な金融危機である。当初は米国の低所得者への住宅ロー
ンであるサブプライムの返済ができないことであったが、リーマン
ブラザース破綻後は世界の膨大な全債務の問題になり、債務の返済
ができるかという疑惑が起こり、次々と海外投資の資金の引き上げ
が起こったのである。このため、新興国への投資資金が無くなり、
新興国の経済を潰した。

債務が返済できないと債権も無くなり、相殺することになる。ファ
ンドに貸した資金が債権であるから、それが無くなる。ということ
は、今までの金持ちたちの余裕資金がなくなることだ。この余裕資
金を一番持っていたのは、欧米諸国である。しかし、そこの余裕資
金が無くなって、欧米諸国民は消費を大幅に減少させたことで、世
界経済は沈下したのである。

この欧米諸国に変わり、余裕資金でじゃんじゃん消費してくれる世
界の経済エンジンが必要なのである。

2.日本の現状
 世界経済のバブル景気で日本企業は製品輸出と円安で大きな成長
をしてきた。このため、バブル崩壊により製品輸出ができず、かつ
円高になって日本経済は大きく落ち込み、GDPの−12.1%と
いう大幅減少になってしまった。

そして、欧米とは違い、今まではサブプライムでの損失や証券化商
品の損失がない分、日本は大丈夫という状態であったが、株式市場
の株価下落で銀行の自己資本比率が低下して、貸し渋りが起きかね
ないし、かつ銀行の株式評価損が大きな問題になっている。
現時点で日本が世界経済のエンジンになることは難しい。それでは
どこが次の世界経済のエンジンになるのであろうか??

3.G20の現状
 G20財務担当相、中央銀行総裁会議が行われた。G20の前哨
戦であるが、20ケ国も集まると、最大公約数の政策でしか合意で
きない。財政支出をGDPの2%に拡大し世界が協調して内需を拡
大しようと米国は提案したが、欧州の反対で単なる財政支出拡大策
となり、反対に欧州が提案していた金融危機の原因であるヘッジ・
ファンドの規制は米英が反対して金融機関への規制を行うというこ
とになって不明確になっている。このように各国がバラバラであり
、世界全体が一致して世界の経済エンジンにならないことだけは確
かになった。

日本が提案した自由貿易の堅持という提案も、自由貿易堅持に賛成
したのは日本、カナダ、ブラジル、トルコ、インド、韓国の6カ国
だけで、G20財務担当相・中央銀行総裁会議では、反対が多くて
共同宣言に盛り込むことができなかった。

4.中国、インド、ブラジルは成長
 このままでは世界経済は停滞したままになるが、中国、インド、
ブラジルなどの新興諸国は、08年度第3四半期はマイナス成長に
なったが、09年度は公共事業で高速道路や高速鉄道を作り、内需
を拡大して経済成長率は6%〜8%程度になるという。国民の購買
意欲も旺盛であり、輸出は減少しているが、それ以上の国内需要が
起きるとしている。その国内需要を政府が積極的に支援しているの
で、内需拡大が本当に起きているようだ。

このようにインド、中国、ブラジルの3ケ国が世界経済のエンジン
になる可能性が高い。すでに中国は世界第3位の経済大国であり、
日本とあまり差がなく、近々日本を抜いて世界第2位の経済大国と
なるはずである。また世界経済10位にブラジル、12位にインド
と、残り2ケ国も経済規模は大きいし成長率が高いので今後、上位
に進出してくるはずである。

5.ロシアは失敗
 今まではロシアを含めてBRICSとしていたが、ロシアのプー
チンは民間企業を国に隷属させる国家資本主義へと向ったが、この
経済政策は大失敗で内需拡大が起きないようだ。

それに比べると中国やインド、ブラジルのように国は民間企業に関
与せずに、公共事業や国民の購買への補助金という支援策に徹して
民間活力を生かした方が国家経済は活性化している。
ロシアのように国が企業に介入して自由な企業活動を制限すると民
間活力は失われる。このため、国家資本主義は失敗のようだ。

6.60年代高度成長と同じ論理
 欧米日は、いくら予算を増やしても経済発展には限界がある。国
民にほしいものがないので、予算支出の数十倍という経済効果が出
ない。一方、中印伯は国民にほしいものがあり、それを買える収入
を与えれば、いくらでも買う。この消費が次の生産を生み、その生
産で収入が増え、それが新しい消費を作ると言う拡大サイクルがで
きている。

中印伯は1960年代〜70年代の日本の高度成長と同じ理論が成
り立っている。

このように国が民間企業を助け、企業が自由に活動できる環境で、
かつ国が公共事業や購買支援をする方がロシアのような国家が前面
に出て企業を統制するより、良いようである。

世界経済のエンジンとして3ケ国に期待して、動向をウォッチして
いくことであり、日本も3ケ国を応援するべきである。

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