3239.世界の経済危機対応



G20財務相・中央銀行会議が3月14日に行われたが、そこで世
界の経済問題の解決を図るのは非常に難しいことが分かった。
                 Fより
G20の席上で、自由貿易の堅持を共同声明に盛り込むようと要望
は出たが、多くの諸国の反対で葬られた。自由貿易堅持に賛成した
のは日本、カナダ、ブラジル、トルコ、インド、韓国の6カ国だけ
だった。この事実からも自由貿易を今後、世界各国は守らないよう
である。

昨年11月G20緊急首脳会合(金融サミット)で保護主義の阻止を
確認したが、17日に世界銀行は、それ以後G20の17カ国・地域を含
む国々が合計47の貿易制限措置を実施したとの調査結果を発表した。
世銀によるとG20では日本、サウジアラビア、南アフリカの3カ国だ
けが「貿易制限国」とされなかったという結果である。

今後が思いやられる結果であるが、先週のコラムで次のように指摘
した。
------引用開始-----
世界は公定歩合の引き下げを行い、多くの国がゼロ金利近傍になっ
ている。次に行うことは量的緩和であり、自国国債の買取であるが
、スイスはとうとう禁じ手であると思われる自国通貨の売り介入を
して、自国通貨の切り下げを行い始めた。通貨切り下げ競争に先進
諸国も手を染めることになる。

英国は自国国債の買取を開始して、長期金利の上昇を食い止めてい
る。英国の次は米国であろうと見るが、自国通貨売り介入ではスイ
スの次は日本であろうと世界の経済学者は見ている。
------引用終了-----
この指摘したような動きになっている。

米国FRBも自国国債を3000億ドルも買い取ると表明した。
日本も自国通貨を売り介入しているような兆候がある。2Wで日本
が大量の米国債を買っているし、円はドル(1ドル=98円)に対して
下がったが、米FRBが国債買取で、ドルの信認が低下すると、円
が1ドル=95円まで上がっている。自国通貨の下落競争や貿易制限を
各国が行う方向になっている。このように、1930年代の世界大
恐慌時と同じ政治の特徴が出てきている。

しかし、米国などの貿易制限は、1930年代製造隆盛な米国を苦
しめたが、現在米国は消費国家であり、自国を苦しめない。
貿易の制限で、苦しむのは製造が中心の国家であり、それは韓国、
日本などの加工貿易国である。ドイツはEUというブロック経済の
中にいるために、被害が小さい。

そして、公的資金投入でも問題が起きている。
米国AIGは公的資金を投入されたのに、そのほとんどをCDSの
支払いに回し、かつ高額のボーナスをCDS運用部門に支払うとい
うことで、AIGのモラルハザードが問題になるが、前財務長官ポ
ールソンの意図が見えてきた。

ポールソンは米ゴールドマン・サックスの会長から財務長官になっ
たが、AIGが潰れるとゴールドマン・サックスへの返済ができな
くなり、ゴールドマンも倒産し兼ねないと、AIGを救ったのであ
る。これが分かるのはAIGがゴールドマンへ最大の約130億ドルも
返済していることだ。モラルハザ−ドが、財務長官にまで達してい
る。米国の国民が怨嗟の声を上げるのは非常に分かる気がする。

日本では、政府と国民が不動産会社社長や銀行の頭取を締め上げて
謝罪声明や自殺まで追い込んだが、AIGリディー会長は悠然と正
当性を議会で証言している。米国議会も、とうとうAIGのボーナ
スに90%課税という法律を掛けたが、米国全体がモラルハザードに
あり、幹部へのボーナスがないような公的資金を銀行は倒産寸前ま
で、今後受けないように思う。

このため、政府は、銀行監査して不振金融機関に対しては経営権取
得をして、現状の経営者を辞任させて、強制的に会社を国有化する
方向で検討し始めた。やっと日本の2003年のレベルに来る可能
性が出てきた。

もう1つ、CDSの問題があるが、この解決のために清算機関を設
定したことで、CDSの損失を確定できることになる。

しかし、クルーグマン氏は、「欧米の景気対策に失望、90年代日本
と同じ道」であるというように、まだまだ先が長いようである。

世界全体の損失額は、100兆円と09年初めには言っていたが、
現時点、株の損失や企業の不良債権などで最低でも1000兆円で
2000兆円にもなると試算されている。日本の不良債権は200
兆円規模でしたから、約10倍も大きいのだ。日本のバブル崩壊と
いうより、1930年代世界恐慌に近い損失のように感じる。

さあ、どうなりますか??
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G20の17カ国・地域が貿易制限 世銀調査、金融サミット以降 
 【ワシントン=米山雄介】世界銀行は17日、日米欧に新興国を加
えた20カ国・地域(G20)が緊急首脳会合(金融サミット)で保護
主義の阻止を確認した昨年11月以降、G20の17カ国・地域を含む国
々が合計47の貿易制限措置を実施したとの調査結果を発表した。世
銀は自由貿易の維持に向け、G20がより強固で具体的な枠組みで合
意する必要があると指摘している。

 調査が貿易制限措置としたのは、新たに各国が実施した関税引き
上げや国内産業向けの補助金など。一定の条件で自動的に発動する
農業関係の輸入制限などは含めていない。この結果、世銀によると
G20では日本、サウジアラビア、南アフリカの3カ国だけが「貿易制
限国」とされなかった。

 世銀が認定した貿易制限措置の約3分の1は関税の引き上げ。ロシ
アが中古車の税率を上げた。非関税障壁では、インドネシアが靴や
玩具など5分野について通関を五つの港湾・空港に限定したと報告。
中国の一部食料品を対象とする輸入制限や、インドの中国製玩具の
輸入禁止なども貿易制限に挙げた。 (00:55) 
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佐々木の視点・考え方

G20財務相・中央銀行会議の内容で1つ指摘しておきたいことが
ある。それは、自由貿易に対する各国のスタンスに対する温度差だ。

 現在のような世界不況のさなかには、為政者は自国企業や国民経
済を守るため、輸入に対して障壁を設けて自国企業を守ろうとする
強いインセンティブがある。

 大恐慌時、アメリカはそれをやった。
 米国の経済学者1028名が、他国の報復関税とそのブーメラン
効果を恐れて、フーバー・アメリカ大統領に反対の書簡を送ったに
もかかわらずだ。フーバーは天津やロンドンに住んだことがあり自
由貿易の重要性を知っていた。
 
 この関税が、経済の建て直しのチャンスがあったのに、アメリカ
を叩きのめして10年以上に渡る大恐慌を招いた。

 そして、今回のG20では自由貿易の堅持を共同声明に盛り込む
ようと要望は出たが、多くの諸国の反対で葬られた。

 自由貿易堅持に賛成したのは日本、カナダ、ブラジル、トルコ、
インド、韓国の6カ国だけだった。

 アメリカはオバマ大統領の出したバイ・アメリカン条項は有効だ
し、EUは域内でのブロック経済化が強固だ。

 G20では、経済収縮を招く保護貿易主義が進行していることを
図らずも顕在化させてしまっている。
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不振金融機関の経営権取得も=政府が監視強化策−米紙
3月16日15時54分配信 時事通信
 【ニューヨーク16日時事】米紙ウォール・ストリート・ジャーナ
ル(電子版)は16日、金融危機の再発を防ぐため、経営不振に陥っ
た大手金融機関の経営権を政府が取得して連鎖破綻(はたん)を阻
止する仕組みの立法化や、連邦準備制度理事会(FRB)の監督権限拡
大、大手銀行の自己資本規制の強化などを盛り込んだ改革案を米政
府が検討していると報じた。
 14日閉幕した主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議
の合意を一部踏まえたもので、4月2日にロンドンで開かれる金融サ
ミット(首脳会合)までに策定する方針だ。 
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米CME、CDS清算機関の認可を取得 マネー円滑流通へ一歩 
 世界最大の金融派生商品(デリバティブ)取引所、米CMEグル
ープは13日、米証券取引委員会(SEC)から企業の信用リスクを
取引するクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の清算機関
になる認可を得た。米金融危機の影響で、取引相手の倒産リスクを
極度に警戒して停滞していたマネーの流れを再び円滑にするのに必
要なインフラづくりが一歩進む。 

 清算機関の名称はCMDX。米投資ファンド大手のシタデル・イ
ンベストメント・グループと共同でシステムを開発し、ヘッジファ
ンドや年金基金が利用する際の利便性を考慮した。近く営業を開始
する。 
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クルーグマン氏「欧米の景気対策に失望、90年代日本と同じ道」 
 「欧米の財政刺激策は不十分で、失望している」。2008年にノー
ベル経済学賞を受けたクルーグマン米プリンストン大教授は17日、
ブリュッセルの欧州連合(EU)本部で記者会見し、EUや米政府
の景気対策を舌鋒(ぜっぽう)鋭く批判した。 

 同教授は景気後退期にある主要国経済を回復させるには、需給ギ
ャップを穴埋めするための追加的な財政出動が必要との立場。持続
的な物価下落(デフレ)に直面した1990年代の日本経済を引き合い
に出しつつ「もしも追加的な財政出動に踏み切らないと、日本と同
じ道を歩んでしまう」と警鐘を鳴らした。
(ブリュッセル=瀬能繁) (11:14)
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FRB、長期国債3000億ドル購入 追加資金供給1兆ドル超に 
 【ワシントン=大隅隆】米連邦準備理事会(FRB)は18日の連
邦公開市場委員会(FOMC)で、長期国債を今後半年で最大3000
億ドル(約29兆円)購入することを全会一致で決めた。資産担保証
券の購入増額などとあわせ、追加の資金供給は合計で1兆ドル超にな
る。民間借り入れ全般の金利低下を通じ景気の一段の悪化を防ぐ狙
い。最重要の政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘
導目標は現行の年0―0.25%に据え置いた。 

 FOMC声明は景気について「経済の縮小は続いている」と指摘
。「景気回復と物価安定へすべての手段を動員する」と言明。オバ
マ政権と連携し米経済再生に全力を挙げる姿勢を改めて示した。 
(10:20)
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長期金利急低下、NY株は続伸 FRB長期国債買い取りで
 【ニューヨーク=山下茂行】米連邦準備理事会(FRB)が長期
国債の大規模買い切りを決定したことを受け、18日のニューヨーク
債券市場では国債買いが膨らみ、長期金利が急低下した。量的金融
緩和策の拡大による景気の下支え効果が見込めるとして株式相場も
上昇した。

 米10年物国債相場は4営業日ぶりに急反発し、長期金利の指標とな
る同利回りは前日比0.48%低い(価格は高い)2.53%で取引を終え
た。ロイター通信などによると、米長期金利の1日の低下幅としては
1987年以来の大きさ。FRBの国債の買い取りによる長期金利の低
下を見込んだ買いが集まった。10年債利回りは一時2.47%と、約2カ
月ぶりの低水準まで低下した。

 株式市場ではダウ工業株30種平均が続伸し、前日比90ドル88セン
ト高の7486ドル58セントで取引を終了した。(11:01) 
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「オバマ支持」に陰り 米CNNなど調査、経済政策に評価厳しく 
 【ワシントン=弟子丸幸子】オバマ米大統領の高支持率に陰りが
見え始めてきた。米CNNテレビが16日発表した世論調査によると
、直近の12―15日時点の支持率は64%で、就任直前の1月中旬の78%
に比べ14ポイント下がった。逆に不支持率は17%から34%に倍増し
た。経済政策への評価が厳しく、共和党支持層からの離反も目立つ。
支持率の水準はなお高いものの、低落傾向は議会対策などにも影響
を及ぼしそうだ。
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AIG賞与問題 オバマ政権の足かせに
 【ワシントン=丸谷浩史】AIG問題はオバマ政権に大きな打撃
となった。AIGは政府が支援し実質国有化状態にあるため野党・
共和党は「政権に非がある」と攻勢をかけ、民主党にも不満が強ま
っている。オバマ大統領は医療保険制度改革や教育問題など、金融
安定化から政策の幅を広げつつあったが、AIG問題がこじれると
政策運営の手足を縛りかねない。

 共和党のシェルビー上院議員は「またしても彼が蚊帳の外にいる
ということだ」と述べ、ガイトナー財務長官は不適格だと批判。進
退問題に発展する可能性も示唆した。同長官が米メディアや議会で
、ボーナス問題を先週まで把握できなかったと発言しているのは
「説明責任の観点から問題がある」との見方が取りざたされている
ためだ。(09:03) 
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米NY州司法長官、AIGのボーナス対象者のリスト入手
 【ニューヨーク=蔭山道子】米ニューヨーク州のアンドリュー・
クオモ司法長官は19日、保険大手アメリカン・インターナショナル
・グループ(AIG)から高額なボーナス(賞与)の支給対象者の
リストを受け取ったと発表した。AIGは巨額な公的資金の注入を
受けているにもかかわらず、幹部へ多額の報酬を支払ったことが発
覚。議会などの批判が高まっている。クオモ長官はリストを基に、
賞与返還の意思がある社員の確定など一段の調査を進める。

 AIGはこれまで賞与の支給対象者の情報について、個人のプラ
イバシー保護などを理由にクオモ長官の提出要求に応じていなかっ
た。(07:07)
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AIG、ゴールドマンなどに9.4兆円返済 政府支援の半分超 
 【ニューヨーク=松浦肇】米政府管理下で経営再建を進める米保
険大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)は15
日、政府の資金支援額(1733億ドル)の半分超に相当する957億ドル
(約9兆4000億円)を米欧などの取引先金融機関に返済したと発表し
た。 

 支払いは信用リスクを取引するクレジット・デフォルト・スワッ
プ(CDS)の取引先や貸株の顧客向け。米ゴールドマン・サック
スへの返済が最大で約130億ドル。仏ソシエテ・ジェネラルやドイツ
銀行もそれぞれ約120億ドルを回収した。 

 AIGは運用する退職者年金や保険資産を保全するため、米政府
・連邦準備理事会(FRB)から巨額の金融支援を受けている。公
的資金の投入を受けながら海外勢を含めた取引先への返済を優先す
る皮肉な結果に、世論の反発も予想される。 (13:30)


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