3236.おくりびと(葬儀事情)



流通研究会で、現代葬儀事情について、冠婚葬祭業の社長からお話
を伺った。その講和録。        Fより

会員制の冠婚葬祭業は、100回で貯めて、そのお金で冠婚葬祭を
する会社である。互助会も同じ。そこの社長をしている。

葬儀は2500年前の論語にも書かれている古いことでもあるが、
日本での葬儀の習慣は意外と新しい。

冠婚葬祭業であるので、全国4ケ所に結婚式場を持っているが、東
京の結婚式場は、土日はいつも満員である。地方は仏滅の土日は
ほとんど、結婚しない。このため、東京の結婚式場は地方の4倍以
上の売上げがある。東京と地方では事業効率が大きく違う。

昭和54年に大学の事務職から途中入社したが、シルバー産業が
その当時、ブームであったが、次はデス産業であると睨み転職し、
その思惑通りに事業は拡大し、現在日本で一番大きな企業になって
いる。

映画「おくりびと」で納棺師が主人公になり、無宗教的な死生観が
世界に受け入れられたと評論されているが、神道の影響を葬儀は受
けている。

日本は生に関することは神道で、死に関することは仏教という棲み
分けがある。誕生、お宮参り、七五三、結婚式などは神式であり、
葬式、法事は仏教とすみ分けられている。

禊やケガレなどは神道から来ている。MY茶碗やMY箸などという
ようにケガレを避けることを日本では無意識に行っている。洋食で
はスプーンもナイフも個人所有という考えはない。

この神道の源流は、古事記に行き着く。イザナミ、イザナギであり
イザというのは、聖職者と言う意味である。命を上げる方向は善で
あり、命を下げる方向は悪と見る。

イザナミがヨミの国(死)でイザナギがイザナミを迎えに行くが、
イザナミを見てはいけないというのに蛆虫がわくイザナミを見てし
まい、追いかけられてイザナギはやっとのことでヨミの国を出て、
この世との間に大きな岩を置き、以後、行き来が出来ないようにし
た。という話が古事記にある。

これでケガレが、死や病気、血などを指すことが分かる。このケガ
レを取るのが、ミソギである。ミソギの方法は水、火、祝詞、塩な
どで清める。

ヨミガエルとはヨミの国から帰るということであり、元気になるこ
ととなっているが、これもイザナミの行為から出て言葉である。

納棺師の妻が離婚するが、この理由がゲガラワシイであり、戻って
くる理由が子供が出来たことである。生死がその2人を離れさせ、
結びさせている。ケガレのあるという存在として納棺師を描き、そ
の納棺師が死生観を確立する過程を映画が追っている物語になって
いる。

葬式はいつ確立したかというと、江戸時代である。寺請け制度で寺
が葬式を行い、墓を管理することになってからのようである。室町
時代の京都では、ホウムルといって、清水の舞台から死体を下に投
げ捨てていた。

葬式は7段階を経て行う。死を迎える。1.湯灌(体を洗う)2.
納棺(棺に収める)3.通夜 4.告別式 5.荼毘 6.初七日
7.納骨 である。
泣く演出で悼むことが重要で、この満足感を葬式は行っている。

日本はコトダマの国であり、死をご逝去と言い、結婚式ではナイフ
でウエディングケーキを切ると言わずにナイフを入れるという。忌
みを嫌う。忌み言葉が多数あり、それに気をつけることも重要であ
る。

現在、葬式の96%が仏教で行われている。江戸時代の寺院の利益
は大きかった様である。寺院の周りは商店街になっているし、寺院
は非常に豪奢な造りになっている。

現在でも、結婚式に比べて葬儀は利益率が高いようである。
65%の人が何の準備もなく、死を迎える。葬儀費用を合見積する
人はいない。このため、どうしても高くなる。当社では最低96万
円から最高237万円でやっているが、お客様が東本願寺で盛大に
執り行うとなると、費用は2000万円以上にもなる。結婚式は場
所が固定であるが、葬儀は場所が固定しない。それと7つの手順を
経ないと死ねない。荼毘を個人ではできない。公共の場所では納棺
されていない死体を荼毘できない。お骨を自宅に置けないので、墓
が必要であるなど。

(Q&A)
Q:会員で結婚式をする人はどこくらいいるのですか?
A:10%以下です。葬式のために会員は会費を貯めている。

Q:今の葬式の形はだれが考えたのですか??
A:江戸時代であるとは分かるが、その他は定かではない。

Q:仏教は輪廻と信じ、チベット仏教は墓がないのに、なぜ日本の
  仏教は葬式を豪勢に行うのですか?
A:日本仏教は、日本神道の影響を受けているため、死についての
  考えが他の仏教諸国とは違うようである。

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