3235.樋渡検事総長に問う。



■樋渡検事総長に問う。「かんぽの宿」事件を見逃す理由(わけ)

西松建設の違法献金事件が世間を騒がせている一方、先頃まで疑惑の中心だった「か
んぽの宿」のオリックス不動産への一括譲渡問題がすっかり霞んでいる。

日本郵政が撤回した「かんぽの宿」の一括譲渡で、オリックス不動産への売却がいっ
たん決まった社宅を含む79施設の固定資産税評価額が、売却の基準となった簿価の
約7倍の856億円だったことや、売却先がオリックス不動産に決まった経緯が非常
に不透明だったこと等が宙ぶらりんのまま残された。

当初、日本郵政の西川社長は公正な一般競争入札であったと主張していたが、鳩山総
務大臣の一連の追求で様々な疑問が浮き上がってきた後は入札であったこと自体を取
り消した。

このため、入札妨害罪等は成立しないかもしれないが、日本郵政側の背任罪が成立す
る可能性は十分にある。

また、オリックス側がもし不正に利得を享受したとするなら、一方的に巨額の利得を
得ることは極めて不自然であることから、郵政民営化を実行し資産売却方針を決めた
当時の政権も含め、売却側に複雑なルートを経て何らかの見返り等が渡ったと見る方
が自然である。

鳩山総務大臣や野党は、引き続き「かんぽの宿」事件を調査・追及する構えだが、複
雑な構図を持つと思われるこの事件を、専門の捜査機能と強制権限を持つ検察当局抜
きで解明することは果たして可能なのか。

漏れ伝えられる所によると、検察当局は米国の年次改革要求を受けて進められた郵政
民営化に連なるこの事件を立件することを早々と放棄したと聞く。

一方の西松建設の違法献金事件では連日、小沢氏側のダム建設等に関する談合への関
与や役所への口利き疑惑、二階通産大臣や尾身元沖縄及び北方対策担当大臣の受託収
賄疑惑等への発展可能性が報道されている。

検察当局が、たとえ事件がそこに至らなかったとしても、形式犯である政治資金規正
法の虚偽記載についても政治資金が浄化に向かう中で指弾され、これまで以上に厳し
く律されるべきものであるという相当の時代感覚・歴史観をもって今回の違法献金事
件に取り組んでいるのなら、それは一つの見識であり、筆者はこれを「小悪」に対す
る非難されるべき国策捜査と言うつもりはない。

しかし、もし一方の国民の財産を大きく棄損した可能性が高い「かんぽの宿」事件に
ついては立件しないのなら、果たして国民の前に説明可能な合理的理由は存在するの
か。

筆者は、様々に思いを巡らせてみても、その理由を想像できない。

樋渡検事総長および東京地検特捜部は、時機を逸せず「かんぽの宿」事件の「巨悪」
にこそ正面から立ち向うべきだ。

さもなくば、検察の存在意義はあるまい。

                                   以上
佐藤 鴻全



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