3228.現代という芸術  草もヒトも、DNA は歌っている!



皆様、

現代という芸術をお届けいたします。
得丸

現代という芸術  草もヒトも、DNAは歌っている!

 ひところ、人間の遺伝子のDNA構造をすべて明らかにするヒトゲノ
ム計画について、何かとてもすごい情報がわかるかのように騒いで
いたけれど、あれはどうなったのだろうか。

 2000年6月26日、ビル・クリントン合衆国大統領は、ヒトゲノム概
要解読完了宣言の中で、「今日、私たちは、神が生命を創造すると
きに用いた言葉を知ろうとしています。この大いなる新知識によっ
て、人類は計り知れない癒しの力を得ようとしているのです」と、
まるでヒトが神に近づいたかのように語ったが、神の言葉に接した
感想はどうだったのだろう。神は何と語ったのだろうか。

 実はDNAは、ヒトも、動物も、植物も、すべて生物はひとつである
ということを語ったのだった。これは禅語である、悟りである。
それをストレートに言葉にすると都合が悪い連中は、あまりこのこ
とに触れなくなった。

 フランスのパスツール研究所の元所長で、ノーベル生理学賞を受
賞したフランソワ・ジャコブは正直に語る。

「すべての生物は、もっとも単純なものからもっとも複雑なものに
いたるまで、みな親戚なのである。わたしたちが思ってきた以上に
、全生物は互いにいとこ同士なのだ。同じ要素と構成単位を用いて
、生物界は進化の過程で無限に多様化した。つねに危険にさらされ
る生命は、自己保存のために、あらゆる多様な形態と行動様式を取
り、地上の隅々に散らばらざるをえなかったかのようである。」
(F. ジャコブ著「ハエ、マウス、ヒト 生物学者による未来への証
言」(みすず書房、2000年, 原1997))

 チンパンジーとヒトの遺伝子が99%同じだというが、ネズミやウ
サギとも90%以上同じなのだ。おそらく木や草ともかなりの部分同
じである。

 生命とはDNAであり、それが3つずつ集まって形成するアミノ酸の
配列である。それは地球上のすべての生物に、植物動物を問わず、
かなりの部分共有されている。多様な生物がすべてあつまって、
ひとつの生命を構成しているといってもよいだろう。


 こう思ったとき、ハタと納得がいった。藤枝守の「植物文様」か
ら聞こえてくる植物の歌が、なぜなつかしく聴こえるのか、なぜあ
のように聴くものをやさしくつつみ、心に染み入るのか、その理由
が。

 きっと我々の体を構成する60兆個の細胞組織の核にあるDNAは、
我々がまだ植物であった頃の記憶に触れて懐かしんでいるのだ。
はるか昔に分化した親戚のDNAからメッセージをもらってうれしい
のだ。もしかすると、植物の遺伝子も、我々に語り聞かせることが
できることを喜んでいたのだろう。

得丸公明

(写真:東京工業大学 下平英寿研究室HPより)
http://www.is.titech.ac.jp/~shimo/class/enshu200309alignment.html
フクロネズミ、ネズミ、ウサギ、ヒト、チンパンジー、アザラシ、ウシのアミノ酸配列を並べたもの。

参考:2006年3月のコラム「現代という芸術 撃ち方やめて、心身を脱落せよ」
http://www.milestone-art.com/MILESTONES/issue61/htm/p8tokumaru.html



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