3211.金融・経済危機脱出の途を探る



森野さんの講演会の講演録です。    Fより

7年前に雑誌で相続税免除の条件の無利子国債の発行を提案したら
、天下の暴論と題がされていたが、現在、そのことが真剣に検討さ
れている。というように非伝統的な政策を世界も日本も実行し始め
ている。

消費税に複数税率を導入することも考えていいのではないかと思う。
消費税を期限付きで下げると言えば、消費は増える。また、生活必
需品を下げ、嗜好品を上げることは重要である。上げると言えば、
消費が増える。

米国から始まった金融危機が急速であり、統計結果と現時点との状
況とのずれが出ている。消費者物価指数がプラスであると米CNN
は喜んでいたが、ニューヨークの空き室率などの個別データは大き
な落込みであり、すでに米国はデフレ状態にあると見える。
そして、FRBはインフレターゲットとして2%を定めるという。

250億ドルの公的資金で住宅の借り手を助けるというが、貸し手
を助けている。返せない人のローンを減免する銀行に金を補助する
というのである。これはアンフェアなことで住宅を買いたい人は、
住宅価格が下がるはずが、下がらないことになる。

資産形成に家を買うことはインフレ下では非常に良い方法であるが
、米国の国民は住宅バブルに踊り、価格上昇で家を担保に新しいロ
ーンを借り、それで消費をしていた。米国は信用格付けを個人にも
行い、それをクレジットスコアーと言っている。このスコアで上位
からプライム、オルトA、サブプライムと呼んでいる。

そして、サブプライムの層にまでローンを組んだが、これが2006
年からの住宅価格下落で破綻してきた。住宅市場の崩壊と時価会計
制度が、現時点で米国の大問題で、資産評価の減少が止まらない。

この有毒な企業の資産を政府が買うにも市場の価格がないし、どう
評価したらいいかが分からない。このため、切り離せない。

現時点、銀行の損は30兆ドル以上であるが、見えない。家計の債
務も大きく、資産がマイナスになっている。その上にカードの債務
もあり、14兆ドルもある。これは米国のGDPと同等の金額であ
る。企業も18兆ドルになり、銀行の債務は大きすぎて発表できな
いでいる。

ドイツは銀行の国有化ができるが、米国は国有化すると資産内容を
公表しないといけないので、資産内容が悪すぎで国有化さえもでき
ないでいる。この上に7500ドル以下という株の暴落で8兆ドル
の資産減少が起きている。

70年代金融技術の発展で銀行と証券を分けていたグラス・スティ
ーガル法を1999年11月に止めた。そして、ユニバーサルバン
クを作るとしたが、それが住宅バブルを起こしたきっかけである。

金融デリバティブという証券化商品を作り、債権をたらい回しにし
た。債権を小口化して、他人に売ることで利益を得るし、いろいろ
な信用度の債権を組み合わせて、格付けAAAにしていた。この証
券化商品の信用が無くなって、銀行が倒産状態になっているのだ。

ゾンビ銀行が多数あるが、情報が徐々にしか出ないなど日本のバブ
ル崩壊後と似た状況になってきている。西欧の銀行も同じ状態であ
り、東欧に貸した金が焦げ付く心配がある。現時点、東欧諸国の国
家債務が1.7兆ドルもあるが、今年満期の400億ドルの国債立
替ができないでいる。国家破綻デフォルトになる危険がある。

このため、東欧の国債は比較的安定しているドイツ国債とのスプレ
ッド(金利差)が大きくなっている。金は安全な所に逃げる性格が
あるためにそうなる。

そして、米国の1人勝ちになっている。危険な通貨からドルに退避し
てきている。安全資産の条件は、値打ちが下がらないことと、流動
性があることで、これは世界の基軸通貨であるドルが一番高い。
このため、ドルは強く、ユーロは弱いことになっている。米国債は
多くの人が買う。中国は買い続けている。しかし、その量が多くな
ると、暴落することにで、金利上昇となる。日本も大量の米国債を
持っている。

ある人の債務はある人の債権であり、経済危機とは債務危機のこと
で債務デフレが起こると返せないなる。利益が上がると返せるが、
債務が増えると、債務を返せなくなる。

お金が膨張している。莫大な債務を抱えている世界で、疑心暗鬼が
起こると債務に対して信用ができずに、信用不安になり、それが拡
大する。

このため、経済を再生するためには、債務を清算する必要が出てく
る。このため、解決策として、ホットケという案もある。しかし、
それでは、被害が大きいので、国がお金を使うことになる。サバイ
バルする方法はいろいろとあるが、1つの方法を提案する。

貯蓄は値打ちを保存することであるが、今使わない人から今使いた
い人に貸すことでもある。しかし、この量が多くなると、いつか破
裂する。

なぜ経済成長が必要かというと、借りた金には金利が付くので、返
すためには金利分以上の経済成長が必要なのである。このため、経
済成長が高い国は金利も高い。

お金には、今使うという公共的な側面と、貯蓄するという私的な面
がある。お金を使わないと、私的なお金には、税金が掛かる仕組み
がゲゼルマネーである。印紙を1月に1回張ることで、お金の利回
りがマイナスになる。こうすると、貧乏人は流動性が高いので、印
紙を貼ることはないが、お金持ちは流動性、スピードが遅いので、
印紙を貼ることになる。

このことで、所得格差を抑える効果がある。お金持ちがお金を動か
さないことで、需要不足を引き起きるとも言えるので、貯蓄には、
マイナス金利をつけることで流動性を高める。そして、所得分配を
平準化することにもなる。

ケインズは、バンゴールという世界通貨を導入しようとして、戦後
の金融制度を米国と交渉したが、ダメであった。この仕組みは、黒
字国にマイナス金利を掛けて、貿易不均衡を解消して経済発展を促
そうとした。ドル基軸通貨制度の次にはこの制度になる可能性もあ
る。国間の所得平準化である。

ゲゼルマネーは、自己消滅する債権でもある。自殺債権ともいう。
今後は地方が自立する必要があり、この地方でゲゼルマネーを出し
てほしいと考えている。



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