3209.水産流通から見る日本の社会



流通研究会で水産卸会社社長のお話を聞いた。    Fより

大店法の緩和で巨大ショピングモールが誕生して、地方文化が衰退
した。このため、平成14年から16年で20%も街の魚屋さんが
無くなっている。この傾向はその後も続いている。

この小売店に卸す卸業も無くなって、H14年に1000店あった
築地の仲買は現時点750店しかない。この仲買も70%は赤字で
あり、黒字は10%だそうだ。

この上に豊洲への移転で1000万円も資金が必要であり、赤字の
仲買の多くがいけない。このため、豊洲へ行けるのは450店しか
ない。このため、築地卸市場の理事会でも賛成・反対が半々である。
賛成しているのは、面積の広い方がいいという理由である。反対は
移転すると着いていけない仲買がいるということだ。

スーパーは、298円とか198円という値立てをするので、卸の
価格の柔軟性もなくなっている。おいしい魚を高く買うことが出来
ない。また、スーパーとの値上げ交渉は遅く、値下げ交渉は早い。
この他に輸送費などのフィーや売上達成フィーを要求されるなど、
価格交渉力はスーパーの方が断然上の状態になっている。

中国産の魚を日本人は嫌うが、骨無し魚などの加工は日本の労賃で
は高いので中国で行うことが必要である。しかし、このような加工
でさえも出来なくなっている。また、春先では台湾産うなぎの方が
日本産うなぎよりおいしい。これも日本の消費者は買わないために
、仕入れできない。昔の魚屋ならお客と会話があったから売れるが、
今のスーパーでは説明ができない。説明するとクレームを付けるお
客がいて、スーパーもしない、させないようである。

一時、欧米の魚価格が日本の価格より高く、マグロなどが世界が買
い、日本の食卓に入らないことが起こったが、現時点は円高で全般
的に安くなっている。特にタラやタコなどは暴落している。一時の
半額までなっている。キンググリップのように日本で食べる習慣が
ない魚は値段が付かない状態になっている。世界景気の悪化や国内
景気の悪化が、ここでも出てきている。

もう1つ、日本の消費者は賞味期限に過剰反応している。原産地証
明も必要などで卸会社の事務量は大変になっている。賞味期限間近
のものを廃棄するが廃棄率が30%もなる。またスーパーからの木
屑が入っているというようなクレームがあると、賞味期限も関係な
く、廃棄にしている。

このため、1kg廃棄で50円程度も掛かるので、賞味期限が迫っ
ている魚やクレームの魚を山谷や横浜寿町、名古屋大通り公園に無
償で提供しているし、上野公園の炊き出しに使ってもらい、また手
伝っている。賞味期限は加工品で2年程度あるし、冷凍品では4年
程度ももつが日本の食糧問題から考え直す必要を感じている。


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