3205.通貨動向を知るための理論



通貨動向が国際政治・経済の大きな焦点になっている。国債のCD
Sがこれほど、話題になることは今までなかった。この通貨の動き
を見る指標を考えよう。  津田より

0.はじめに
 新聞の経済関係記事を見て、参考になる記事は全て、切り抜いて
いる。この頃の経済情勢の動きは非常に早い。リーマンブラザース
の破綻以後、特に世界の経済情勢の変化は猛然と早くなって、悪化
している。それに伴い日本の経済状況も急速な変化があるし、円高
は日本にとって良いというような楽観的な意見を言う評論家や政治
家がいるために、危機感が醸成されずに日本だけ景気悪化の対応政
策が遅れている。

この景気悪化で被害を受けるのは、いつも非正規労働者や中小企業
の労働者たちである。評論家や政治家には直ぐには影響が無いため
に、円高はいいとか、日本は大丈夫とかという楽観論を言うことが
できるが、弱い立場の者は死か生かの瀬戸際になる。そして、現状
認識では益々景気は落ち込んできている。とうとう、内需企業まで
影響が出始めている。

このため、1ケ月前の記事と現在の状況を比べると、その違いが大
きいことに驚かされる。記事を切り抜くのは、講演会の資料を作る
ためでもあるが、どんどん悪い方向にシフトしていて、このまま行
くとどうなるのであろうと思うくらいである。このため講演会の資
料も、毎回全然違うことになっている。

しかし、講演会で金融の話をすると、カタカナの用語やいろいろな
金融の論理があるために理解できないと言われることが多い。

そして、この金融全体の論理を簡単に説明するのは、難しい。金融
の用語や論理を説明していると、肝要な金融危機の原因などを説明
する時間がなくなる。このために、何か簡単な指標で、説明ができ、
かつ有効な説明ができないかと思っていた。

そして、政府通貨やポイントカードなどの通貨に関する話題も多い
。これらも論理から見ようと思う。

お付き合いのほど、お願いします。

1.通貨式について
主要諸国の財政・金融政策で為替がどうなるかを知るために、2つ
の動向を見ている。

1つには、通貨総量=通貨流量×(貨幣量+非貨幣量)という通貨
式が成り立つが、通貨総量は通貨を使った回数と通貨の量で決まる
ということである。もう1つには、米国の経常収支の動向を見てい
る。

通貨式では、次のことがわかる。現在、銀行の貸し渋りと企業の経
済活動量が落ちているため、通貨流量が下がり通貨総量も下がって
いるのだ。

このため、景気を元に戻すために景気刺激策として、お金の回りを
良くすることが必要であり、このことは通貨総量を増やすことであ
る。しかし、通貨式でも、政府ができるのは通貨流量を増やすこと
しかできない。これで通貨総量を増やすしかないのだ。

ということで、米国政府も日本政府も国債発行し、事業を行うこと
になる。国債は銀行など金融機関が預金されている資金で買ってい
ただくか中央銀行が買い取ることになる。中央銀行が買い取ると貨
幣量が増加する、また、中央銀行は、市場にある固定性の高い資産
を担保にして通貨を貸し出すことで、資金を短期化して通貨流量を
増やそうとする。これにより通貨総量を拡大したいのである。

政府は通貨流量を増やすことしかできず、中央銀行も正常時は通貨
流量を増やす手段をとって景気対策をしている。もし、その通貨流
量で足りないときには、政府が発行する国債を中央銀行が引き受け
て貨幣量を増加させることになる。政府が自ら貨幣量を増やすこと
をしてはいけない。歴史的な事例がそのような制度にしているので
ある。

2.政府紙幣について
中央銀行は貨幣量を増やすことができる。それは、政府が発行する
国債を引き受けることでできる。政府紙幣という財務省発行の紙幣
を発行すると、政府が直接紙幣を発行してしまい、政府役人の規律
が緩むと貨幣量を増加させることになる。官僚は自分の役割しか見
れない。他省の行為を批判しない。このため、2つの機関の調整が
必要になるが、できない。この多くの事例が存在する。

そして、これは安易な政策をとる危険を政府に与えることになる。
江戸時代の藩札がいい例で、失敗例が沢山ある。これは安易な藩札
発行がいかに危険かを示している。この歴史的な事例から通貨発行
権と政策実行権を分離して、チェック体制を強化したのである。

貨幣量が不足であれば、政府は国債を中央銀行に引き受けさせる手
段を取ればいいことである。しかし、日本の場合は今まで金融機関
の資金で国債消化が済んでいただけである。不活性化した資金を政
府が活性化することで、通貨流量を増やすことで事足りていたのだ。
米国と状況が違う。

また、政府と中央銀行とに二重に同じような部門を作り、同じよう
な機能の要員を二重に配置する意味が分からない。財政改革で政府
をスリム化して増税をなるべく少なくすることを目指しているのに
、逆行するほどのメリットを感じない。

3.ゲゼル通貨について
今までは、民間がポイントやICカードなどの非貨幣を発行して、
広義の貨幣量が増え続け、投資銀行は投資循環という形で通貨流量
を増やして、社会全体に通貨総量が増えていたことで景気がよかっ
たのである。

反対に銀行などが企業に貸付をしないと、通貨流量は下がることに
なる。そして、通貨総量が下がると景気は後退して、企業倒産や雇
用不安が起きることになる。

この通貨総量増加策を考えることが景気刺激策には必要なのである。
このため、画期的に通貨流量を増やす方法がある。それがゲゼルが
提案した減価する貨幣である。

ポイントカードのようにある期間使わないと、減価する仕組みを組
み込むことで、使用を促すというものである。このため、航空機の
マイレッジなどに使われるのである。
しかし、これを貨幣に導入することはない。なぜなら、非伝統的な
政策であり、どのような副作用があるかわかっていないためである。

4.経常収支について
貿易赤字+貿易外赤字=経常赤字
経常赤字=海外からの投資+海外からの国債買い
という式が成り立つ。
この式で米国の経常収支を見ると、赤字国では資金の流出で資本不
足が起きる可能性がある。これを防止するためには、海外から資金
が流入する必要がある。流入の1つとして、その国の国債を買って
もらうことである。もう1つが資金を投資してもらうことである。

今まで米国は、証券化商品を売り、投資を呼び込んでいたし、中国
やアラブ諸国が米国債を買っていた。中国は人民元の安値安定のた
めにドル買い介入したドルを米国債購入に当てていた。アラブ諸国
もドルとのペッグ制で石油代金が入るために、このドル資金で米国
債を買っていた。

このため、今までは米国の資金は均衡していたが、米国は財政赤字
で国債発行量を2兆ドルまで増やすことが必要になる。また、証券
化商品をだれも買わないことで、その部分の資金流入がなくなる。
というように、米国の今後は中央銀行が引き受けるしかない状態に
なる。ドル貨幣量が急激に増大することになる。これは江戸時代の
失敗した藩札の例から見ると、ハイパーインフレになるし、事態を
分かる人たちは、ドルから逃げることになると見ている。ドルを貰
ったら、直ぐに金を買うとか円にするとかを行うことになる。

このようなことになると、貿易でドルを使えないことになる。とい
うことはドルの基軸通貨は崩壊することになる。しかし、ドルに代
わる貿易通貨が必要になるのだ。それは円になる可能性が高いと見
ている。ユーロはEU内の分裂でどうなるか分からないからである。

5.最後に
どうして、論理的に経済を考えないのでしょうか?楽観論も政府紙
幣ももう少し、論理的な思考で考えれば、その政策のよしあしは分
かると思うのですがどうでしょうか??


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