3199.コンドラチェフの波



コンドラチェフの波をご存知でしょうか??コンドラチェフとはロ
シアおよびソヴィエト連邦の経済学者。西側陣営の資本主義経済が
40〜60年規模の好不況からなる景気循環を持つ、という理論を提唱
した。この景気循環を今日ではコンドラチエフ波と呼ばれる。
                   津田より

0.はじめに
コンドラチエフ波は、長期波動とも呼ばれ、この名前を付けたのは
シュンペーターで、その要因として技術革新を挙げた。第1波の1780
〜1840年代は、紡績機、蒸気機関などの発明による産業革命、第2波
の1840〜1890年代は鉄道建設、1890〜1950年代の第3波は電気、化学
、自動車の発達、1950〜2010年代の第4波は原子力や電子機器の発展
によると考えれる。この第4波が突然終焉したことが、今の世界同時
大不況、または世界大恐慌の原因である。

第4波は、終焉を迎えるべき時期であったが、この終焉を米国が証券
化という金融技術で引き伸ばし、証券化バブルの崩壊で、その終焉
が突然になり、世界経済は断崖から突き落とされたような降下にな
ってしまったのだ。このため、第4波の商品を提供する工業国家は
突然、世界的な需要をなくなってしまって、苦境に陥る。そして、
第4波の工業国とは日本、韓国、中国、台湾である。

特に日本はバブル崩壊後、外需を取り込んで、経済発展をさせてき
た。海外に逃げた工場を120円という円安水準と製造業派遣という制
度をつくり、日本国内に戻して、この経済規模を維持してきたが、
突然の世界的な需要減少で、日本の工場で働いていた非正規社員の
解雇が急増している。とうとう、正社員の削減をする事態までにな
っている。しかし、このような経済の落ち込みで、円高から開放さ
れる可能性が出てきた。日本企業のCDSが急上昇して、日本経済
の今後に不安と見たために円安になってきている。やっと、円高は
一服したようである。外需頼みである日本経済の脆弱さが出たのだ。

しかし、第5波の波が1990年代から起きている。この波が早く立ち上
げることが世界経済復興には重要になっている。第5波は既にそこに
ある。その中心が日本のようであり、日本の環境技術を米国もほし
いのであるが、ナノ技術や自然の見方が実証主義的であることなど
、今までの欧米の論理中心の世界観では難しい状態になっている。

この原因を求めたのが、2948.日本の主知主義、欧米の理念主
義である。下にコラムを採録しているが、インドの仏教哲学から来
た思想であり、そう簡単に欧米では真似ができない。中国には漢方
という実利主義の自然観察があったが、それを日本は江戸時代に自
然観察自体を趣味的にして、広く観察するという思想にしたのであ
る。

この思想ができるまでに、数千年の歴史があり、その文化の上に日
本人のものの見方があるということを忘れてはいけない。それを武
器に、再度日本は蘇るのである。これを見ていこう。

お付き合いのほど、お願いします。

1.世界で有名な日本人
12チャネルのJAPAN ALL STARSが好きでよく見て
いるが、その中で米国で活躍する研究者として2人が登場していた
が、日本人的な感覚が世界から求められているようだ。

カリフォルニア大学デービス校の環境毒性学部教授、柴本崇行は、
世界中の農薬を調べている農薬研究の権威である。彼の研究テーマ
の一つが「残留農薬の分解」。柴本は、大麦若葉の中にある「カル
ボキシレース」という酵素が、残留農薬を分解する可能性がある、
ということを突き止めた。またアスパラガスにも同様の働きがある
ことを発見。さらに柴本は、コーヒーに多く含まれるクロロゲン酸
という成分にも目をつけた。研究の結果、クロロゲン酸が抗酸化作
用を持つことを発見。自然の力を信じ、食の安全を研究し続けるの
が柴本崇行なのだ。 (JAPAN ALL STARS)

もう1人、睡眠と体重に関係するオレキシンという物質を発見した
のがアメリカ・テキサス大学の柳沢正史教授。彼は京大の講師を勤
めた後、ノーベル賞受賞者のゴールドシュタイン博士、マイケル・
ブラウン博士に気にいられ、テキサス大学サウスメディカルセンタ
ーにリクルート。
また全米の優秀な研究者350人ほどに資金提供を行うハワードヒ
ューズ財団からも柳沢教授は研究資金を受けている。日本人ではノ
ーベル賞受賞者利根川進氏と柳沢教授のみ。彼が発見した脳内神経
伝達物質「オレキシン」は分泌によって体重の増え方が変わってく
る。
また「オレキシン」が減ることで、ナルコレプシーという睡眠障害
が起こることもわかっている。「オレキシン」を模倣する薬が開発
されれば、ナルコレプシーが治る可能性がある。
ブラウン博士は「エジソンは1%のひらめきと99%の努力だが、
柳沢のひらめきは10%もある」と柳沢を評する。 
(JAPAN ALL STARS)

もう1つ、NHKのサイエンスゼロでは、アルツハイマー病研究で
も日本は最先端にいるようである。自然を観察して、それを予見せ
ずにありのまま見ることが欧米人には難しいことの現れである。

すべて、日本人の研究は実験を繰り返して、その中から有用な物質
や現象を見つけている。非常に努力を要するが、研究者に聞くと、
ある程度実験を重ねると、だいたい全体像が見えてくるという。
この積み上げが、電池素材研究の現場を見ていて、日本人研究者の
良いところであると見ている。

2.コンドラチェフ第5波の促進策
 環境技術や微生物利用の工業など、いろいろな技術が日本人の自
然観察から出てきている。その研究開発が次の世界を作る産業にな
るために、その促進を政府は行うべきであるし、企業も構造変革を
積極的に行うことが重要になっている。

日本は、何度も街中にいる無名の研究者に助けられている。大企業
の研究所では、長い時間を掛けてじっくり研究できない。研究した
くても、結果がでないと研究費が打ち切られる。このため、将来を
見越した研究ができない。このため、大学や高専などの研究室か街
中の中小企業の親父が行う研究に依存してしまう。

研究の効率的な実施が大企業では重要であり、ある程度結果が見え
ることに研究が限られるようにできている。このため、公的機関の
支援もどうしても結果の見える研究に補助金が付いていくことにな
る。そうすると、画期的で長期の実験が必要な研究に補助金が付か
ないことになる。

このため、中小企業の研究は、海外の大手企業から狙われることに
なる。米国の企業も日本の技術を探しているが、中小企業の研究を
調査することになる。そして、調べると日本では見向きもされない
いい研究があることを発見する。

モータの先生もその1人である。先生自体は電気自動車の研究者で
あり、その電気自動車を構成する電池、モータなどに詳しい。
しかし、企業経営を諦めている。大企業や海外企業のコンサルタン
トをしているが、世界的に電気自動車が注目を浴びると、世界から
顧客が押し寄せている。

しかし、先生に聞くと、昔はトヨタにも優秀な電気自動車の研究者
が居たが、途中で研究を中止させて研究者は違う研究に従事させら
れたという。大企業は目先の利益しか見ないために、そうなるが、
先生は30年近く、電気自動車を追い求めてきた結果、現在がある。
ボッシュのディーゼル排ガス浄化技術もその研究者は日本人で、デ
ンソウでは研究を中止させて、ボッシュに移ったという。

このように現在も日本の中には、まだまだ街中に、次の技術を追い
求めている中小企業の研究者がいるのである。その人たちに研究費
を補助してあげれば、研究は進むことになると見ている。

3.特許調整機関を
 世界の新しい需要は、新技術でしか生まれない。第4波の製品需要
は、まだあるが、中国やインドの農村部であり、中国企業が低価格
の製品を作り補給するために、日本経済には大きな貢献は、それだ
けではしない。

やはり、日本は世界的な需要を作るために、今までにない新技術の
製品を開発するしかないように見る。日本は特許件数も世界で一番
であり、特に今後必要になると思われる環境や素材関係の特許が多
い。

その特許での製品はまだないのが気になる事態にある。特許利用も
重要な側面になっている。

新しい研究は、それそれ独立で存在するわけではなくて、研究のネ
ットが存在する。このネット全体で製品ができるために、特許網を
抑える必要がある。この調整が難しいのかもしれない。

世界的な特許網ともなると、その交渉が大変であり、製品ができて
も売り出すことができないというようなことが発生している。これ
にも調整機関が必要であると見る。

4.最後に
 日本の世界貢献は日本人しかできない研究成果を使った新製品で
新たな市場を創造するしかない。それがコンドラチェフの次の波を
起こし、世界の経済を復興することになる。もう第4波の製品は爆発
的には売れない。そして、物からサービスへシフトする。リサイク
ルなどへ産業がシフトしていくことになると見る。

新しい循環型の経済が待ち受けているようにも感じる。
さあ、なりますか??
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2948.日本の主知主義、欧米の理念主義
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/L0/200601.htm

インドアーリア人がアジア思想を作り、欧州アーリア人が理念を掲
げる欧米思想を作った。      Fより

このコラムの仏教史シリーズをお読みになっている読者の皆様は、
ご存知でしょうが、仏教がアジア全体に広まり、この思想が共通の
文化体系をアジアに齎している。今、イスラム圏のインドネシアや
マレー半島も14世紀までは大乗仏教の中心的な国家であった。

インドも欧州もアーリア人が支配したので、ギリシャ文明を見れば
分かる通り主知主義であったが、ユダヤ人の信仰から一神教が出て
、欧州は神が聖書にあるような世界を作ったという反主知主義にな
る。その後、主知主義のギリシャ文明に復古したルネサンス以降、
欧州は大発展するが、神の代理人である人間が自然を作るという
理念主義におちいる。

インドの仏教思想は革新的な主知主義から出た思想体系であり、人
間の内面を追い求めて出来た理論体系であった。この理論体系を広
めるために、5世紀にナーランダ、ビクラマシーラなどの大学が、
ヒンズー川流域にできたのだ。インド仏教は精緻な理論体系が構築
されていた。もともと1宗派とは1つの理論であった。

しかし、この仏教が中国において実利主義の考えに染まり、理論よ
り、なるべく簡便で早くという実践になり、理論の一部を取り出し
、禅や念仏など簡単で実践しやすい方向に変化したのである。この
教えが日本に入り、天台宗の魔可止観になり、坐禅や繰り返しの行
動が神との対話に必要とし、その魔可止観から鈴木正三により、農
作業も繰り返しであるから、農作業を真剣に行うことが仏行である
とした。

この鈴木正三の思想を商家の石田梅岩が商業などの職業も繰り返し
であるからまじめに行うことが人間の道であるという石門心学を作
り、それが今も日本人の心を支えている。職業即仏業というのであ
るから、欧米基準では無信仰であるという日本人が一番、修行時間
が長いことになる。

しかし、このため仕事を無くした日本人は惨めになる理由であり、
定年退職後におかしくなる理由でもある。職業と言う修行ができな
くなり、心に大きな空白ができるためである。

この思想が欧米人を始め、世界企業が日本人が構成する日本企業に
負ける根本的な原因である。職業即修行と考えには勝てない。長時
間労働を厭わない日本人の根本を支えている原理でもある。

仏教の実利主義化とともに、そのインドの主知主義が中国では自然
を観察して人間に必要な物を見つける本草学、漢方を生み出す。
これは実利に基づいているので中国で大発達を遂げる。その本草学
が日本に導入されると実利よりご隠居の趣味になり、精緻な博物学
になる。ただ、鑑賞するだけの朝顔やツツジと言う植物を商品化す
ることになる。また、穀物類の品種改良に応用して江戸時代は、農
産物の収穫量がその前に比べて、著しく増加している。自然を自然
のままに見るというのが、日本的な見方である。

これに比べて、欧米科学は目的が明確で、その目的に向けて無理や
りに自然を改良しようと言う理念主義が先行している。温暖化は、
CO2が増えたからであるという思想を作り、CO2削減が世界を
助けるために必要であるというように理念化する。この理念に向け
て、科学技術をフル動員する。

日本は、自然を自然のままに見た結果として、人間に役立つ微生物
を見つけて、それを役に立てるという考え方であり、長い自然観察
の経緯があり、その結果としての応用である。厚みが違う。これが
物性研究にも現れている。リチュームイオン電池でも新興米企業が
新しい理論で日本企業に挑戦しているが、長い物性の観察なしでは
理論通りに、自然は動かない。

このような自然観察がない欧米は、目的に向けて自然を見るために
いろいろな微生物の多様な面を見ずに応用するため副作用も出てし
まうことになる。または手近な穀物をエネルギーに使ってしまう。
食糧不足などの問題点を多面的に見ない。

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