3187.都市鉱山の活用法



都市鉱山の活用法
面白い記事があったので、採録しておきます。都市鉱山の欠点は、
その取り出すコストでしたが、その解決の1つの解決方法として
非常に面白い方法であると見る。  Fより



「都市鉱山」に至る道が見えてきた(1)
 http://wiredvision.jp/blog/yamaji/200812/200812291801.html

高度な電子機器には、金などの貴金属やレアメタルが欠かせない。
日本はこうした金属資源の多くを海外に頼っているのが現状だ。
しかし、使用済みの電子機器からこれらの金属を取り出せたらどう
なるか? 日本は、巨大な「都市鉱山」を持つ資源大国となりえる。
物質・材料研究機構 材料ラボ ラボ長の原田幸明博士は、電子機器
から低コストで「都市鉱石」を取り出すリサイクル手法を開発した
という。


──2008年1月、物質・材料研究機構は「わが国の都市鉱山は世界有
数の資源国に匹敵」という発表を行い、注目を浴びました。

金については、世界の現埋蔵量42000トンに対し、日本の都市鉱山は
約6800トンで約16%。ほかにも、銀は22%、インジウム16%、錫11%
など、世界埋蔵量の1割を超える金属が多数あることがわかりました。
ちなみに、世界的に見ても、金や銀は現埋蔵量よりすでに採掘され
た量の方が多くなっています。

みなさんは驚かれたようですが、考えてみれば当たり前の話です。
日本は世界中から資源を集めてモノを作り、経済発展をしてきたの
ですから。私は、こうして蓄積された資源をきちんと利用していき
ましょうと当たり前の提案をしただけです。

ただし、資源があることはわかっていても、埋蔵金のようにパッと
取り出せるわけではありません。再利用できるのは、そのうちの
ごくわずかです。

──昔は、お金を出してくず鉄やガラスを引き取る業者がいました。

鉄とガラス、紙は、資源として再利用しやすく、リサイクルで儲け
られる仕組みが日本でも整っていました。

リサイクルで儲けるという意味で言えば、現在の中国や米国の方が
進んでいる面もあります。大量に捨てられるモノから、お金にでき
る資源だけを上手にかき集められれば、ビジネスが成立するのです。
ただ、それは大量にモノを捨てる経済を容認しているからこそ可能
なわけで、日本ではなかなか難しいでしょう。日本の場合は、量に
頼れない分、技術力で勝負する方法を考えないといけません。

──現状のリサイクルでは、資源を取り出すためにどれくらいのコ
ストがかかっているのでしょう?

端末の基板を取り出すのに1台当たり50円強、レアメタルが多く含ま
れるICチップまで取り出すとなると120円程度、これに加えて廃棄物
の処理コストがかかります。1台の携帯電話に含まれている金はだい
たい90円分、その他の金属を含めて120円ですから、ほとんど利ざや
がない状態です。

──一般消費者はリサイクルにどれだけのコストがかかっているか
、意識しませんね。

最後に金銀を取り出せば儲かるのだから、その業者までボランティ
アで端末を届ければいいとか、業者が端末を買い取ればいいと思っ
ている人は少なくないでしょう。しかし、実際には取り出すにも廃
棄物を処理するにもコストがかかります。

天然鉱山の場合、掘り出した鉱石をそのまま製錬所に持っていくこ
とはほとんどありません。例えば、日本は外国から大量の銅を輸入
していますが、銅鉱石をそのまま輸入しているのではなく、選鉱(
不純物などを除く処理)を経てから輸入しています。そうでないと
、銅1トンを作るためには銅鉱石が300トン必要ですから、とても船
で運ぶことはできません。ちなみに、ステンレスに使われるニッケ
ルの価格は、鉄より高くなっています。ニッケルは選鉱が難しく掘
り出した鉱石をそのまま溶かして製錬する必要があるので、どうし
ても高く付いてしまうのです。

携帯電話などから資源を取り出して利用する場合にも同じことが言
えます。製錬しやすいように付加価値を高め、それを製錬所が買い
取るという流れを作り出さないと、資源リサイクルはうまく回らな
いでしょう。

そのため、基板やチップの取り出し部分に技術を投入してコストを
下げればよいのではないかと考えました。非常に単純で素直な発想
です(笑)。
 
「都市鉱山」に至る道が見えてきた(2)
ボールミルで金属資源が簡単に取り出せた
──どのような手法を開発されたのでしょうか?

工業製品を構成している材料は、モノの外形を保つ構造材料と、光
や電気を出す機能性材料の2つに大きく分けられます。ICチップやコ
ンデンサーなどの機能材料は、プラスチックやアルミの枠といった
構造材料に守られているというわけです。

みんなが欲しいのは機能材料の中に含まれる貴金属やレアメタルで
、これまでは構造材料から機能材料をはがして金属を取り出そうと
していました。しかし、丈夫な構造材料はそのままにして、機能材
料を粉にして金属を取り出せばよいのではないか。

そう考えて発表したのが、洗濯機くらいの大きさのボールミルを用
いた手法です。携帯電話を1台入れてボールミルを作動させると、基
板の板の部分やアルミ、プラスチックの枠はそのまま残り、メッキ
やチップは細かく砕かれて粉になりました。この粉に金や銀といっ
た貴金属や、錫、パラジウムなどのレアメタルが含まれています。

基板の配線に使われている銅は、大きな破片の方に残ります。一番
価値があるのは金ですから、まず金で利益を上げ、その利益を使っ
て基板に含まれる銅を取り出せばよいでしょう。

──ボールミルに入れるだけでこんな風に分離できるのですね。

このサイズのボールミルに携帯電話1台を入れた時の最適条件は見つ
けました。サイズの異なる複数のボールを組み合わせて使います。
あるボールは表面にある出っ張りを砕くため、角張ったボールは表
面に張り付いているものをそぎ落とすために使うという具合です。

現在は550Wのボールミルに携帯電話1台を入れて、2時間回していま
す。この手法を使うことで、携帯電話1台から金属資源を取り出すた
めのコストは9.7円になりました。

──携帯電話より大きな、例えばDVDプレイヤーのようなものでも大
丈夫ですか?

ボールミルに入らないゴミは、普通の破砕機でつぶしてから入れれ
ばよいだけです。

──取り出した粉には、どのくらいの割合で金が含まれているので
しょう?

だいたい金が0.9‰(パーミル)、つまり粉1kg当たり1g弱の金が含
まれていることになります。これは、天然の金鉱石に比べて数百倍
の含有量です。

──実用化にはどのような課題がありますか?

実用化するためには、装置を大型化して効率を上げる必要がありま
す。ボールミルのサイズが大きくなると、回すためのエネルギーも
大きくなりますから、それがどの程度になるかをこれから実験して
いきます。

一度に処理できる台数を10倍にできても、必要なエネルギーが100倍
になったら意味がありません。規模を10倍にして、必要エネルギー
が12、3倍で収まるなら十分商用化できるでしょう。実験ではボール
ミルを使いましたが、より効率的な方法があればボールミルにこだ
わることはないと思っています。

リサイクルのあり方が変わる

──こういう単純な手法でリサイクルコストを大幅に下げられると
いうのは、発想の転換ですね。

最近、日本の技術はどうも積み上げ型に振れすぎているように感じ
ます。積み上げることも重要なのですが、もっと上から物事を見て
、どこに技術を投入するべきか考えることも必要ではないでしょう
か。

──今回のような技術が実用化されると、リサイクルはどのように
変化するのでしょう?

リサイクル処理設備がもっと消費者の身近に来るでしょうね。こう
いう処理装置が役所の裏に置かれているような状況が理想的です。
ボールミルの場合なら、動作に水も不要ですし、防音対策も容易。
必要なのは粉じん対策だけですから、周囲にも迷惑がかかりません。
処理の結果できた破砕粉は水で湿らせれば、簡単に輸送できます。

回収業者が装置のユーザーになることもありえます。消費者から使
用済みの携帯電話などを買い取って、街にある処理装置に持ち込ん
で金属資源を取り出し、それを精錬業者に売るわけです。

──メーカーが行うリサイクルに影響はありますか?

メーカーはそのまま再利用できる部品を取り出したら、残りをこち
らのプロセスに回せばよいでしょう。サプライチェーンと同様、リ
サイクルチェーンをメーカーが責任を持って回すというのが最終的
な形になるのではないかと考えています。

──都市鉱山によるリサイクルチェーンが実現するために、重要な
ことは何でしょう?

やはりメーカー、業界が責任を持ってリサイクルチェーンを作るこ
とでしょう。

家電リサイクルが動き出した時、海外からはさんざんバカにされた
ものです。消費者からお金を取って廃棄物処理をするなんて、不法
投棄の山になるに違いないと。しかし、実際には、大多数の日本人
はちゃんとルールを守っています。メーカーがきちんとシステムを
作りさえすれば、市民もそれに応えるのが日本人だと思います。

──海外での都市鉱山利用の状況はどうでしょう?

アメリカやドイツなどで、都市鉱山にどれくらいの資源が含まれて
いるか、ようやく研究が始まったところです。この分野において、
日本はトップランナーであることを自覚して行動しないといけませ
ん。





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