3147.雇用問題が広がっている



雇用調整が広がり、労働派遣法の改正が浮かび上がっている。
                     Fより

経済状況が悪化すると、製造業の派遣社員や契約社員が最初に雇用
を失う。この状況で、日雇い派遣の禁止の他に製造業の派遣を禁止
するという意見が出ている。しかし、製造業には景気のよし悪して
雇用を調整しなければならない事情がある。

米国のように正社員でも、直ぐにレイオフできる仕組みか、派遣社
員など非正規雇用のどちらかを現状の企業経営に合わせて、法律化
する必要がある。

かつての日本は労働賃金が安くて、ある程度の雇用を抱える余裕が
あったが、現在は中国や新興国の企業と競争になり、その余裕がな
い。もし、それを望むなら、賃金を新興国並みにするしかない。

非現実な法律を作ると企業は日本に工場を持てなくなり、全雇用が
なくなることになる。雇用調整が必要という前提で考えることが必
要なのだ。

日本の工場コストは、中国など新興国の工場のコストと比較すると
労働コストが高く、この高い労働賃金を生産性向上で補っている。
このため、生産縮小になれば、直ぐに労働コストを削減しないと赤
字になってしなう。このため、人のジャストインタイム化はしかた
がないことである。世界的な競争でそうなっているのである。

大企業での非正規雇用を認めないと、日本での工場は中小企業に不
安定雇用部分を移すか、日本の工場を止めるかしかない。グローバ
ル競争に企業が勝つためにしかたがない。非正規雇用がやむを得な
いという前提で雇用安定化を政治は考えることである。

一方、農業従事者の老齢化で、耕作放棄地が増えている。日本の農
業は破綻寸前であり、農業従事者を増やすことが重要である。
2008年前半、米国農家は空前の好景気に沸いていた。日本の農
産物価格の数分の1でもそうなっている。これは大規模農業で、か
つ会社化が進んでいるためである。また、欧米は農産物価格を低く
しているが、農家へ所得保障をしている。この仕組みを日本も取り
入れて、農業に雇用を作ることが必要になっている。日本農業の再
起を目指した改革が必要になっている。

また、もう1つの手が中国などに移った雇用を、もう一度、日本に
奪い返すことだ。そうしないと、2度と繊維や縫製などの産業で目
利きがいなくなり、繊維も縫製などの産業は、日本に戻ることがで
きなくなる。日本のメーカが作っていた質のいい品物が世界でなく
なることになる。

有料版では、この雇用問題を取り上げて、日本の今後を考えたいと
思う。どうか、お付き合いのほどをお願いします。
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社説ウオッチング:大量失業の危機 派遣法の見直しを
 ◇派遣法の見直しを−−毎日
 ◇「雇用対策法成立、今国会で」−−朝日

 1年が早い。志位和夫・共産党委員長が衆院予算委員会で派遣労
働者差別、雇用格差を追及、インターネット「2ちゃんねる」を
はじめ若者から好意的な反響を受けたのは2月8日のこと、首相は
福田康夫氏だった。9月に表面化した米金融危機があっという間に
世界に広がり、「100年に一度」の不況が日本列島を襲い始めた。
このままでは家と職を失ったまま越年する非正規労働者は相当数に
上るという。志位氏が追及した時より、状況はさらに悪化している。

 志位質問を思い出させてくれたのが「労働者派遣法を抜本的に見
直すことも緊急の課題だ」と書いた毎日社説(19日)だった。

 民主、社民、国民新の野党3党が共同提出した雇用対策関連法案
が参院厚生労働委員会で可決されたが、与党の反対で成立の見通し
が立たない現状について「野党3党案は与党案と重複した内容もあ
る」「直ちに議論を始め、法案の成立を図ってもらいたい。生活が
できないという失業者への生活支援金貸与や住宅対策はすぐにでも
行うべきだ。雇用対策を来年の通常国会に先送りにしてはならない
」と法案の年内成立を求めた。

 この問題は朝日が17日に「法案に修正すべき点があるならば手
直しして、会期末までに成立させるべきだ。政治は苦しむ国民を放
置してはいけない」と書き、20日にも「大事なのは対策を実行に
移すスピードであり、職を失った人々に早く手当てが届くことだ」
と政府・与党の第2次補正先送り姿勢を批判していた。

 ◇産経は民主党批判
 日経も19日「非正規労働者の失業保険の受給要件緩和や、再就
職が困難な人への給付日数の延長など、与野党ともに必要と認め、
かつ急がれる政策については今国会の会期内に審議を進められない
ものだろうか。国民の目線に立ちあらゆる可能性を探る必要がある
」と求め、東京も「首相に決断を求めたい。評判の悪い定額給付金
などを盛り込んだ二次補正のうち、雇用対策部分を取り出して今国
会に提出することはできないものか。……与野党が雇用部分を速や
かに処理する。それが政治の信頼回復への一歩である」と提案した。

 一方、産経は20日「より責めを負うべきは、政府の対応の遅れ
を浮き彫りにするねらいで法案を提出した民主党などだ。思惑を優
先させ、話し合いを無視する民主党の対応は、共産党ですら批判し
ている」と民主党批判に終始したが、小沢一郎・民主党代表からの
党首会談呼びかけを麻生太郎首相が断ったことには触れずじまい。
「与野党協議でより効果的な雇用対策の具体案をまとめることこそ
、国会の責務ではないのか」とはいうものの他紙とニュアンスが違
う。

 毎日の19日社説は一歩踏み込んで「ハケン切り」の「元凶」で
ある労働者派遣法の抜本見直しを求めた。

 「派遣法改正によって、04年に製造業派遣が解禁されて以降、
もの作りの現場で正社員から派遣への切り替えが進んだ。しかし、
不況となれば非正規社員は真っ先に解約され、ポイと捨てられた。
非正規社員は『使い捨て』労働者だったことが、だれの目にも明ら
かになった」「製造業派遣の禁止や登録型派遣の是非をも含めて、
派遣法を全面的に見直す時がきている」と提言したのだ。

 実は政府・自民党や財界でも雇用の規制緩和を見直す動きが始ま
っている。小泉純一郎首相時代の04年、労働者派遣法が改正され
、製造業の派遣が解禁された。しかし、07年1月には安倍晋三首
相が財界が求めた「ホワイトカラー・エグゼンプション(残業代ゼ
ロ)」導入の労働基準法改正を非難の嵐の中で断念した。経済財政
諮問会議や政府の規制改革会議がもくろんだ一層の労働規制緩和は
抑え込まれた。逆に厚労省主導で最低賃金引き上げが行われるなど
、労働規制緩和から強化へと「06年に潮目が変わった」(五十嵐
仁・法政大学教授「労働再規制−反転の構図を読みとく」)という。

 ◇労使で「非正規」支援を
 日本経団連は昨年、賃上げ容認に転じたが、16日まとめた来年
の春闘方針ではベア要求に答えなかった。雇用は「安定に努力」と
したものの、具体策はなかった。労働分配率が6年連続で低下した
中、連合は昨年の日本経団連の方針転換を受けて8年ぶりのベース
アップ要求を目玉にしたが、深まる不況で「非正規社員は解雇し正
社員だけ賃上げという構図に、違和感を覚える人も多いだろう」
(読売)という国民感情も根強い。

 「全体の雇用を守ることで内需の崩壊をどう防ぐかが問われてい
る」(朝日)、「労使も非正規労働者の解雇について条件や支援策
に手を尽くすべきである」(日経)という意見が強まっている。
本来は「政労使一体」での敏速な行動が今こそ求められるのだが、
「機能マヒ」の麻生政権には何を言っても無駄なのだろうか。
【紙面研究本部・長田達治】

毎日新聞 2008年12月21日 東京朝刊
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大量「派遣切り」懸念
2009年一斉契約切れ

 製造業の派遣社員が2009年3月以降に一斉に契約の期限切れ
を迎える「2009年問題」について、「自然消滅するのでは」と
の見方が業界で広がっている。工場の生産体制を急激に落とせない
メーカー側は、派遣社員を引き留めるためどのような雇用形態に切
り替えるかで頭を悩ませてきたが、このところの景気の急激な悪化
で減産が見込まれ、人員を抱え続ける必要がなくなったからだ。
期限切れのピークは来年秋になるとみられ、福島労働局は大量の「
派遣切り」が発生しないよう神経をとがらせている。

 電機、半導体などの製造現場を支える労働者のうち、派遣社員と
は、人材派遣会社などに雇われ、正社員から直接指揮を受ける労働
者のこと。検査や修理など特定業務を受注する請負会社に雇用され
、正社員の指揮を受けないのは「請負」契約に基づく労働者だ。

 製造業では、派遣社員の受け入れは04年まで禁じられ、その後
も「請負」が多くを占めた。しかし、正社員が請負の労働者を直接
指揮する「偽装請負」が06年に相次いで発覚。最長派遣期間を1
年から3年に延長した07年3月の法改正を前にした06年に、
「請負」から「派遣」への切り替えが一気に進んだ。06年に派遣
となった労働者は、09年3月以降に契約の期限切れを順次迎える
――これが「2009年問題」だ。

 契約が切れる派遣社員に対する企業側の選択肢は、〈1〉契約を
打ち切る〈2〉請負に切り替える〈3〉正社員や期間社員(契約社
員)などの直接雇用に切り替える――のいずれか。福島労働局によ
ると、製造業に携わる県内の派遣社員は約6000人に上り、生産
ラインの半数近くを派遣に頼る企業もある。このため、多くの企業
は工場の操業に影響が出ないよう、業務に精通した派遣社員を請負
か直接雇用に切り替える方向で検討してきた。ところが、世界的な
景気悪化と円高が、状況を一変させた。減産が見込まれるメーカー
は人員整理に動き出し、県内でも来年3月までに約670人の派遣
社員が離職する見通しになった。

 県北地方の家電部品メーカーは、150人を超す派遣社員を請負
に切り替える計画だった。しかし、人事担当者は「景気の先行きが
読み切れず、一部は契約を打ち切るべきか悩んでいる」と明かす。

 そもそも派遣社員が従事してきた仕事は、正社員による指揮が必
要な業務で、「請負にはなじまない」との見方が強い。直接雇用も
コスト面からリスクが高く、多くの企業が敬遠しがちだった。

 このため、一部メーカーには、景気悪化を「好都合」ととらえる
向きもある。10人近い派遣社員を抱える県内の印刷会社は「業績
悪化で派遣社員を減らすことになり、請負にするか直接雇用にする
かで悩む必要がなくなった」と話す。

 09年問題への対応は、まだ決めかねている企業が多い。福島労
働局は「対応の基本は『直接雇用』か『請負』化」と企業側に指導
し、「安易に派遣切りをしないよう協力を求めていきたい」
(需給調整事業室)としている。

(2008年12月16日  読売新聞)


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