3114.新世界秩序の歴史と考察



英国ブラウン首相が、インドのムンバイで新世界秩序を作ることが
重要と演説した。この新世界秩序を歴史も含めて考察したい。  
                        津田より
0.はじめに
ガーディアンの記事では"truly global society"(本当の世界的な
社会)をブラウン首相が新世界秩序で目指していることであるとい
う。http://www.guardian.co.uk/uk/feedarticle/8005182

こう言うのは、これまでの新世界秩序構築はダメであると認めてい
ることである。ブレア前首相からブラウン首相に代わったのも、米
国一国主義的な新世界秩序がアフガン・イラク戦争が泥沼化して、
成り立たなくなったことにあり、この新世界秩序を更新することを
目指していることになる。

そして、ブラウン首相の新世界秩序を礼賛する人の中に、ロスチャ
イルドのバロン・デイビッドがいるというより、この人が提案する
世界銀行の監視機関と世界共通通貨の実現を目指している可能性が
高い。

1944年のプレトンウッズ会議で、英国のケインズが主張してい
た世界通貨を再度、実現しようとしているようにも見える。

このため、英ブラウン首相はフランスなどのEUに構想を持ち込ん
だのだ。この構想があるために、フランスのサルコジ大統領は「ド
ルはもはや基軸通貨ではない」という発言が出てくることになる。
しかし、サルコジ大統領は、もう一つの金融規制強化を結びつけて
、主張している。ここは英国の意図とは違うことになっている。

一方、米国はドルの基軸通貨を維持しないと、このままで推移する
と国債や住宅公社債のデフォルトになることは明白である。このた
め、英国の世界共通通貨構想には乗れない。

どうも、3つの構想があり、その3つの構想をめぐる攻防がこの金
融サミット以降に起こるようだ。このとき、日本はどうするのがい
いか、歴史を含めて考察しようと思う。

1.今までの新世界秩序とは
冷戦時代は、世界が3つに分かれていた。

第一世界:資本主義イデオロギーと市場経済
第二世界:共産主義イデオロギーと統制経済
第三世界:低開発国

というようにであるが、1991年ソ連が分裂して共産主義イデオ
ロギーが消えると、第二世界がなくなり、世界が資本主義と市場経
済だけになった。そして、この「冷戦後」に、米国でどうような新
世界秩序を作るのかという議論が出てきた。このときの米大統領は
ブッシュ父であり、ブッシュ父が新世界秩序の構築を始め、ブッシ
ュ子米大統領が、新世界秩序の構築を潰した。

この新世界秩序を構築するとして、米国は「軍事で君臨する国家、
経済でも世界を支配する米国」を目指して、ソ連の次の敵であるイ
スラム教の反米勢力を駆逐し、経済では新自由主義という規制緩和
を世界に広めて、米企業が世界に広くビジネスをする世界を作るこ
とを目指した。これが、ネオコンの考えでもあった。

国家間秩序と国際政治は、軍事が決める。これが地政学では鉄則。

通貨・金融と、経済制度に係わるインフラの地層で、世界支配を目
指すのが米国だ。このため、日本に毎年要求書を提出して、米国の
新世界秩序を構築する一員として、貿易の自由化と規制緩和を求め
てきた。日本はその米国の同盟国として、米国の求めを実行してき
た。しかし、その要求を実現すると格差の拡大や貧困層の拡大が起
こり、なおかつ経済の活性化はできないというジレンマに陥ってい
る。

英国を除く欧州(仏独)は、米国一国支配体制の頚木から逃れるた
めに、経済・通貨統合を行いユーロを作り、ソ連の周辺国の多くも
ユーロ通貨圏に取りこんでいった。英国は米国と組んで、米国のお
こぼれを貰う戦略を構築した。このため、ブレア前首相はブッシュ
の忠犬であると言われたのである。英米を繋げたのは、両国が新自
由主義経済で、かつ金融資本主義であるためであった。

13億人の中国は、トウ小平が提唱した一国二制度で経済特区に外
資と技術を呼び込み、その後自国企業を育て、2020年までには
米国を超える経済大国になることを目指し、米国と経済的な関係を
構築した。このとき、日本と米国の経済関係がおかしかったので、
その隙に入り込んだ。

プーチンのロシアは、市場主義で失敗したので再び統制国家に逆戻
りし、資源を国家管理にして、この資源を梃子に反米諸国を糾合し
ようとしている。

しかし、米国経済は強くないために、貿易(経常収支の赤字50兆
円)と財政の赤字(60兆円)の合計で年110兆円の資金流入を
必要とすることになった。この資金を得るために、証券化商品や
CDSなどを生み出し、資金の還流を起こしたのである。

ブラウン首相が新世界秩序を作るときであるということは、米国の
新世界秩序構築が失敗したことを、米国と同盟関係にある英国が認
めたことになるのだ。

英国ブラウン首相は米国金融政策の全てを否定はしていない。米国
の規制緩和政策の全てを否定する新興国やEUに対して、それは認
めないと言っている。英国も米国と同様な政策を構築していたので
全否定するフランスには組みできない。

2.英国の新世界秩序とは
 ロスチャイルドのバロン・デイビッドが主張する世界の金融体制
はどういう物かを検証しておこう。

その前にドルが世界の基軸通貨である理由は、石油と結びついてい
るからで、サウジなどの湾岸諸国の通貨がドルとペッグしているの
で、成り立っている。ドルが石油との関係が切れると基軸通貨では
なくなる可能性が高い。

そして、今、2010年に湾岸諸国は地域共通通貨を計画している。
この通貨を裏で仕掛けているのが、ロスチャイルドであるようだ。
この石油にリンクした通貨は、市場的にも世界共通通貨になる可能
性がある。世界共通通貨を人為的に作ってもエスペラントのように
なってしまうことは英国の専門家はわかっている。このため、湾岸
諸国との連携で世界通貨として、その通貨調整をIMFなどの世界
機関に委託させようとしているようだ。

このため、ブラウン首相は新世界秩序の構築をするべきと演説した
直後に湾岸諸国を訪問している。この理由をIMFへの資金拠出を
頼みに行ったという解説がされているが、湾岸諸国の共通通貨を支
援するとしたのであろう。

世界共通通貨とするためには、通貨の為替市場や先物市場などを整
備する必要がある。この市場をドバイとロンドンで行おうとしてい
るように見る。ドバイが大都市で、世界の有識者がなぜ、ドバイに
別荘を持つかというと、それは湾岸諸国の共通通貨の市場がドバイ
にできるためである。ロスチャイルド銀行の大きな支店がドバイに
あるのは言うまでもないことである。

世界の中心はニューヨークからドバイになる可能性があるというこ
とである。世界の企業がドバイ市場に集まるし、世界の銀行の支店
もできる。IMFの本部もドバイになるし、世界銀行もドバイにな
る可能性が高い。そして、東京、ニューヨークは経度がドバイと離
れているために、市場として存続できるが、ロンドンはドバイと経
度的に近いために埋没する可能性がある。このために、英国はプロ
デュースすることで、生き残ろうとしているようだ。

来年4月に行われる次の金融サミットには英国が世界共通通貨制度
を提案する可能性がある。

3.今後の展開は
 覇権は、経済体制と軍事体制の両方で世界支配を目指すことであ
るが、現時点で米国以外の国が米国の覇権に変われないことは明白
である。

このため、新プレトンウッズ体制としては、
一案が世界共通通貨を作ること。
二案がドル、ユーロ、アジアバスケットの地域基軸通貨を作り、
   世界体制を分割する。
三案がドルを基軸通貨のままにして、米国の経済運営を正常化させ
   る。

この3つしかない。

三案は米国が主張するし、一案は英国であり、二案がEUであろう。

しかし、一方、規制強化では、大強化のEU対米英日の必要な規制
となり、規制問題でも大きな差がある。

どうも、米中の陣営、日英の陣営、EU・露の陣営の3陣営になる
と見ている。米国は中国を取り込んでドル維持を図り、規制中程度
であり、日英は規制中程度で当面ドル維持であるが、その後世界通
貨に制度を変更することであり、EU・ロシアは規制強化で地域通
貨制度に変更するということになる。日本と英国が新興国を取込み
、最終的に世界の体制を作ることになると見ている。

英国の世界的な大企業を日本企業に渡しているのは、英国の新しい
戦略に乗った政策であるように思える。英日の島国連合が世界を作
り直すということになる。どちらも世界との交流で生きるしかない
のである。海運が非常に重要である。米国の海軍力が落ちることは
どうしようもない。そこで、英米日の3ケ国で分担して、海上の安
全を確保するしかない。中国もこの体制に組み込む可能性もある。

米国や中国は、自国経済だけで生きていけるし、EU・ロシアは世
界島の中心を押さえているので、陸上交通網とパイプラインで生き
ていける。

どちらにしても、米国のプレゼンスは大きく失われることになる。
次回の金融サミットをロンドンで行うという。英国の世界共通通貨
案が出てくることになると可能性がある。
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「ドルは基軸通貨ではない」=金融サミットで表明へ−仏大統領
11月14日8時26分配信 時事通信

 【パリ13日時事】フランスのサルコジ大統領は13日、「米ドルは
もはや世界の基軸通貨ではない」と述べ、ワシントンで14、15の両
日開かれる金融危機対策のための緊急首脳会合(サミット)でも、
こうした考えを表明することを明らかにした。AFP通信が報じた。
 同大統領は、パリのエリゼ宮(大統領府)での演説で「ドルは第
二次大戦終結直後には世界で唯一の(機軸)通貨だったが、もはや
基軸通貨だと言い張ることはできない」と述べた。 
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G20の国
アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、フランス
、ドイツ、インド、インドネシア、イタリア、日本、メキシコ、
ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、韓国、トルコ、イギリス、
米国の19か国と欧州連合(EU)代表
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歴史年表
1929年:NY証取で株が暴落世界大恐慌が開始
1930年:ストーム・ホーレー法を施行で、各国がブロック経済
      圏化
1932年:グラス・スティーガル法で銀行から証券を分離
1933年:フランクリン・ルーズベルトが大統領
      ニューディール政策
1933年:日本とナチス・ドイツが連盟から脱退
1934年:ソヴィエト連邦が連盟に参加
1937年:イタリアが連盟から脱退
1939年:第2次世界大戦開始
1945年:終戦
1944年:ブレトン・ウッズで会議
1945年:ブレトン・ウッズ体制で米国の経済覇権が確立
1945年:IMF、世銀、国際連合が発足
1949年:1ドル=360円の為替レートを設定
1950〜1953年:朝鮮戦争
1963〜1975年:ベトナム戦争
1971年:ニクソン・ショック(金・ドル交換停止)
      スミソニアン合意で、1ドル=308円に
1973年:日本が変動相場制でブレトン・ウッズ体制の崩壊
1976年:IMFは変動相場制を正式承認(キングストン合意)
1985年:プラザ合意 1ドル=240円に
1986年:英国で金融自由化
1987年:ブラックマンデー
1989年:ベルリンの壁が崩壊
1991年:ソヴィエト連邦が崩壊
1993年:クリントン政権
1997年:アジア通貨危機
1998年:LTCM破綻(ロシア通貨危機)
1999年:米国で金融自由化、
      EUのユーロ取引開始
2001年:エンロンが破綻、911テロ事件
2003年:イラク戦争
2002年:SOX法が成立
2007年:サブプライム問題が判明
2008年9月:米国発金融危機
2008年11月:金融サミット
2009年4月:金融サミット2
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IMFの支援策
1.ベラルーシ:
2.パキスタン:最大76億ドル
3.アイスランド:最大21億ドル
4.ウクライナ:最大164億ドル
5.キルギス:6千万ドル規模
7.セイシェル:
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資料:
The Coming One-World currency
http://aftermathnews.wordpress.com/2008/09/26/the-coming-one-world-currency/

Baron David de Rothschild sees a New World Order 
in global banking governance
http://aftermathnews.wordpress.com/2008/11/07
/baron-david-de-rothschild-sees-a-new-world-order-in-global-banking-governance/
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Brown seeks new world order
Press Association, Monday November 10 2008 
http://www.guardian.co.uk/uk/feedarticle/8005182

Prime Minister Gordon Brown will call on fellow world leaders 
to seize the opportunity created by the current worldwide 
economic crisis to create a "truly global society".
(本当の世界的な社会)

Mr Brown will use a high-profile speech in the City of London 
to say that Britain, the US and Europe should join together 
to provide leadership in the creation of a "stronger 
and more just international order".

The emergency summit of world leaders in Washington 
must establish consensus on a new Bretton Woods-style framework 
for the international financial system, 
featuring a reformed IMF which will act as a global early-warning 
system for financial problems, he will say.

The Prime Minister promised on Sunday to work 
with US President-elect Barack Obama to build a new global society 
in which the markets are subjected to morality and ordinary 
people's interests are put first.

In electing Mr Obama, US voters showed their belief in the 
"progressive" agenda of government intervention 
to help families and businesses through the current crisis,
 he said.

In his annual foreign policy speech to the Lord Mayor 
of London's Guildhall banquet, Mr Brown will say 
that the trans-Atlantic relationship between Britain 
and Europe and the USA can be the driving force 
behind the creation of a new international order.

"The alliance between Britain and the US - and more broadly 
between Europe and the US - can and must provide leadership, 
not in order to make the rules ourselves, but 
to lead the global effort to build a stronger 
and more just international order," Mr Brown will say.

"The trans-Atlantic relationship has been the engine 
of effective multilateralism for the past 50 years.

"As America stands at its own dawn of hope, so let 
that hope be fulfilled through a pact with the wider world 
to lead and shape the 21st century as the century 
of a truly global society."

Copyright (c) Press Association Ltd. 2008, All Rights Reserved.

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