3094.世界救済を日本と中国で



今回は、危機的状況にある世界経済の状況と、その対応策を考える
ことにする。      津田より

有料版では、今まで金融や経済の歴史を中心にお送りしたが、世界
経済は益々危機の度を深めているので、今回は今までの歴史を振り
返りながら、現状の状況を分析し、その対応策を世界レベルで考え
ることにする。

どうして、世界レベルの対応策を日本の私が考えるかというと、日
本が世界を救う中心に位置しているためで、日本の行動や政策が世
界的に大きな影響を及ぼすからだ。

そして、なるべくなら、麻生首相、中川金融相に世界の先頭に立て
世界のために対応策を考えてほしいからなのである。

0.救済の全体概要
新聞で見る所では、IMFに融資申請または申請すると見込まれる国
は、アイスランド、ウクライナ、ベラルーシ、パキスタン、ハンガ
リー、の五カ国であるが、インドネシア、ベトナム、フィリピン、
韓国、トルコ、南アフリカなどが危機的な状態にある。もしかする
とロシア、ブラジル、英国、スペインまでもが通貨安でデフォルト
寸前に追い込まれ、IMFから融資を受ける可能性がある。

新興経済諸国、先進国、発展途上国を問わず二桁の国々がIMFから融
資を受けた場合、その後の世界経済は一体どのなるのかと思う。

IMFも資金がなければ、支援ができない。この資金を出す国が必要に
なる。日本円はキャリー取引の中心にいるが、今まで米ファンド経
由で世界に投機資金として流れていた。その円をIMFで低利で貸せる
ことになる。このような国は日本しかない。

1.超円高、東京株式市場の株安分析
日本も現在、株式は下落し、円は超円高になっている。この原因は
東京市場での海外投資率は30%もあり、時価総額が350兆円(9月)で
あるから、100兆円が海外投資家分であり、そのほとんどがファンド
である。この規模の半分がファンドの解約で売りに出ると、それは
大幅な下げになる。

事実、10月14日の週は2兆円の売り越しになっている。また、その下
げを誘うのが空売りである。日本は空売り規制をしていなかった。
このため、海外ファンドは損失の埋め合わせで、空売りを仕掛けて
きている。このため、早く日本も空売り規制をするべきであったの
だ。

東証も10月時点では時価総額が230兆円規模に縮小しているので、
日本の金融機関も損失を出している。20%が金融機関の株比率である
ので、46兆円の損失であり、非常に大きい。日本も他人事では済ま
されなくなってきている。

なぜ、半分の株が海外投資家から売られるかというと、米英ヘッジ
ファンドから投信解約が15兆円規模で進行している。レバレッジを
30倍にしていると、450兆円(4.5兆ドル)規模になる。英米ファン
ドなどの海外投資規模は8.5兆ドル(2006年)であったことから、約
半分が解約されていることになる。

このため、世界から米英ファンドが資金を引き上げることになって
いる。日本も例外ではない。このため、東証からも逃げている。

各国からも米英ファンドは、解約から資金確保のために資金を引き
上げている。日本の地方銀行や企業年金資金も米英ファンドに相当
な資金を投入しているので、その引き上げをすると損失が確定して
かつ、世界から資金が吸い取られることになる。

レバレッジ30倍にするために、借り入れ資金が必要であるが、この
資金はなるべく安い金利である必要があり、円がフライトした。
4兆ドル程度は日本からフライトした可能性がある。この円キャリー
取引の巻き戻しで円買いが起こり、円が高騰している。

2.日本の銀行の儲け
日本の金融機関は英米金融機関に3%程度で貸していたとしても、年
8兆円の儲けを得ていたことになる。2000年辺りから日本の大手銀
行は巨大な儲けを得ていた事実に符合している。

しかし、円の返済で日本の銀行も次の儲け先を見つける必要がある。
ドル定期預金を海外の銀行で日本の銀行がしていると今後、為替差
損が発生するので、三菱UFJ銀行はドル金融資産を円に変えずに、
モルガン・スタンレーに投資したのであろう。

米ファンドは投資銀行や銀行から8%程度の金利で借りて、海外投資
をすることになる。恐らく、15%以上のリターンが必要になってい
たはずである。

今後、米英ファンドのような技術専門家が金融市場に入り込み、海
外投資案件を評価することは、日本の銀行にも証券会社にもできな
い。日本の技術者は、中国や韓国からも引く手数多であり、金融機
関に入ることはしない。日本は製造業も空洞化していないので、評
価できる人材は企業に今でもいる。

このため、米英ファンドのようなことが日本の銀行ではできないと
見ている。

3.欧米の対応
世界の損害の規模であるが、証券化商品で4兆ドル程度、株価での損
失は32兆ドルにもなる。証券化商品だけではなくて、株式市場の下
落の損失のほうが多くなっている。住宅ローンが欧米で20%程度の下
落になると、6兆ドルなど、底なし沼の状態でなっている。

これに通貨や株の変動が大きいので、その株や為替先物でのオプシ
ョンが行使されることになり、ここでも大きな損失を出すことにな
る。

米国は0.75兆ドルの公的資金投入を議会が承認して、この資金を銀
行と保険会社に投入することを決めている。その前に0.3兆ドルの
資金を投入しているので、1兆ドル程度であり、欧州は全体で2.6
兆ドルの投入を決めている。しめて、3.6兆ドルである。

このような規模では足りなくて、追加の公的資金が必要になる。
米国は後、10兆ドル以上の資金が必要になると見ている。

米国債の発行が必要であるが、この資金の出し手として中国を想定
しているようである。すでに、0.2兆ドルの購入をすることは決めて
いる。

4.今後の日本の対応
日本の円が、米英ヘッジファンドや投資銀行経由や日本の海外投信
で世界にばら撒かれたことで世界はバブル景気に沸いたが、サブプ
ライムの破綻からこのような事態になっている。日本円の金利が安
いことで、こうなったのである。

日本の国内金融機関は株保有評価の損失はあるが、一時、時価評価
会計を止めておくことで、損失にはならない。株式市場の混乱が収
まるまで、我慢するしかない。

それより、世界的な通貨混乱を止める必要がある。日本に舞戻って
いる円を世界に供給しないと、世界的な不況が起こり、日本も大変
なことになる。投資金額の4兆ドルはあまりにも大きいから、優良案
件からも米英ファンドは資金を引き上げている可能性がある。

このためには、日本の銀行と企業がタイアップして、日本円で世界
中の優良企業に日本企業が投資したり、開発案件を評価したりして
、世界の企業や開発案件の資金繰りを助けることである。銀行には
技術を評価できる人がいないが、企業はそれぞれの専門分野に優秀
な人を抱えている。この人たちを活用して、事業評価することが重
要である。日本の総合力で世界を救済するしかない。

日本政府は、米英ファンドが資金引き上げを行う世界に円での貸出
しをIMFと共同で行い、この代わりに日本の委員をIMFに置く事であ
る。IMF支援の他に日本が独自で支援することも考えることである。
現在、日中しか資金余力が無いので、2ケ国は協力して、世界を助
けることである。

特にアジアについては、いろいろな枠組みがあり、その枠組みを強
化して。アジア通貨危機のような米ファンドの身勝手な行動を許さ
ない体制を築くことである。

米国には円建て米国債の発行をして、米国を助けることが必要にな
る。欧州にも同様な円建て債を提案すれば、いいのである。

そして、円高で日本のドル建GDPは60兆ドルになり、逆に米国GDPは
下がるので、約半分程度のGDPになる。日中GDPでは米国と同程度か
多くなる可能性もあり、世界中の国々が日本や中国から融資を受け
、何とか破滅を回避し続けることである。

そのうち、日本と協力した事業や開発案件が生産開始して、利益を
生み出すことで、世界は息を吹き返すことになると期待したい。

しかし、世界が息を吹く返すまでは、日本国内の景気も大変なこと
になるので、赤字国債を発行して国内需要を掘り起こすことが必要
である。

もう財政再建というシナリオは一時、棚上げすることである。世界
大恐慌時、緊縮財政をした日本は戦争への道に入ることになった。
それと同じ失敗を麻生内閣は行っているように感じる。

世界大恐慌の歴史を見て、そう思うこの頃である。
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国の国内総生産順リスト
国の国内総生産順リスト(MER)上位10位。2008年のIMFのレポート
によると、日本は世界のGDPの約8〜9%を占める。

    百億ドル(単位)  ドル円は128円換算
順位   国名   2007年(確定値)   
― 世界      54311.61  
― 欧州連合    16830.10  
1 アメリカ合衆国  13843.83  
2 日本             4383.76  
3 ドイツ           3322.15  
4 中華人民共和国   3250.83  
5 フランス         2560.26  
6 イギリス         2772.57  
7 イタリア         2104.67  
8 ロシア           1289.58  
9 スペイン         1438.96  
10 ブラジル        1313.59  

個人資産残高
米国   35兆ドル(現預金6兆ドル、50%がリスク資産、保険年金30%)
日本   12兆ドル(現預金8兆ドル、17%がリスク資産、保険年金26%)
英国    6兆ドル
ドイツ   5兆ドル

世界の金融資産残高
2006年で167兆ドル
2007年で180兆ドル(推測)

世界のGDP総計54兆ドル

 なので3.4倍
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1.米欧の住宅が、どこまで下げるか?

・米国の住宅関連ローン 15兆ドル
・欧州の住宅関連ローン 15兆ドル
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・20%の損失で・・・  −6兆ドル(2009年まで)

2.証券化商品の損失
・2006年の証券化商品 8.6兆ドル
・2007年推測     9.5兆ドル以上

この価格が30%の下落とすると、2.9兆ドル
この価格が50%の下落とすると、4.8兆ドル


3.世界の株価下落による損
・2007年8月の時価総額    63兆ドル
・2008年10月24日の時価総額 31兆ドル
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
・現時点での総損失     −32兆ドル

4.62兆ドルのCDS(債務保証保険)の損
・ファニーメイとフレディマックの清算で、
  5兆ドル×7.25%≒0.36兆ドルの損害
・リーマン・ブラザーズの清算で、
  0.4兆ドル×93.8%≒0.37兆ドル
・W・ミューチャルの清算
  保証額は0.8兆ドル
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
・現時点での損失   −1.5兆ドル

5.東京株式市場の時価総額
・2007/1の時価総額  562兆円
・2008/9の時価総額  353兆円
・2008/10の時価総額  230兆円
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
・現時点での損失  −230兆円
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 欧州、資本注入枠37兆円 大手銀の破綻防ぐ
(2008/10/15:nikkei)
 【パリ=野見山祐史】欧州主要国の金融危機対策が出そろった。
金融機関への資本注入に充てる公的資金枠は合計で約2700億ユーロ
(約37兆8000億円)。各国とも大手銀行の破綻回避に総力を挙げる
姿勢を金額で示した格好だ。銀行間取引の保護など金融機関の信用
保証枠も合算すると、対策の総額は1兆9000億ユーロ強(約268兆円
)に達する。

 国内総生産(GDP)でみた欧州の経済規模はざっと日本の3倍。
日本が1990年代後半の金融危機時に設けた総額は約70兆円で、経済
規模と比べた今回の欧州の対策は当時の日本より大きいといえる。
巨額対策で金融システムの安定確保に万全を期す。(08:54) 

・米国は75兆ドルの資本注入を決めている。今までに20兆ドルを使
 っている。
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米W・ミューチュアルのCDS清算価格、元本の57%
(2008/10/24:nikkei) 
 【ニューヨーク=山下茂行】経営破綻した米貯蓄金融機関(S&
L)最大手ワシントン・ミューチュアルを対象にしたクレジット・
デフォルト・スワップ(CDS)の清算価格が23日、元本の57%に
決まった。CDSの電子取引を手掛ける米クレディテックスが発表
した。

 CDSはデリバティブ(金融派生商品)の一種で、企業の倒産リ
スクに保険をかけることができる。ワシントン・ミューチュアル対
象のCDSの売り手は、元本の43%を買い手に支払うことになる。
 (11:01) 
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2000億ドルの米国債購入か=金融安定化支援で中国−香港紙
「時事ドットコム」2008/10/5

 【香港5日時事】香港紙・明報は5日、中国政府が米国の金融安
定化措置を支援するため、新たに2000億ドルの米国債を買い入
れると伝えた。
 第1段階として700億−800億ドル分を購入する予定。この
方針は既に米側へ伝えたという。中国の米国債保有高は日本に次い
で多く、5000億ドル以上に達している。(2008/10/05-17:38)  
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株安、追加証拠金差し入れのための売却が原因―PIMCO=CNBC
2008年 10月 25日 05:19 JST 

 [ニューヨーク 24日 ロイター] 米債券運用会社パシフィ
ック・インベストメント・マネジメント・カンパニー(PIMCO
)のビル・グロース最高投資責任者(CIO)は24日、株安の原
因について、追加証拠金の差し入れを迫られた投資家の手じまい売
りだと指摘し、恐怖心からではないとの認識を示した。

 同CIOはCNBCテレビで、証拠金の差し入れに応じるため売
りが加速し、1930年代以来初めての長期的な資産レバレッジの
解消を招いたと指摘した。

 リスク資産のポジション売却は企業収益にも影響するとし、米政
府から支援を受けている企業の証券を選好していると話した。
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IMF、出資額の5倍までの融資供与を検討[2008/10/24]

 10月24日(ブルームバーグ):国際通貨基金(IMF)は新興市
場国の経済崩壊を回避するため、加盟各国の出資額に対して最大5
倍まで融資する前例のない方針を検討している。 

 IMFはいわゆるハードカレンシー(主要国通貨)建て融資の供
与を検討している。 期間は3−6カ月で、融資を受ける国に政策変
更は求めない。事情に詳しいIMF関係者2人が明らかにした。加
盟国は出資額の500%まで借り入れることができる。 

 日米欧の中央銀行は短期金融市場の安定に向けてドル資金の無制
限融資で合意しているが、新興市場国の中銀は除外されている。金
融危機の影響が世界経済に広がっており、新興市場国の国債プレミ
アムは6年ぶりの高水準に上昇している。 

 ブラウン・ブラザーズ・ハリマンのエコノミスト、ウィン・シン
氏は「IMFからの短期融資枠は発展途上国に非常に役立つはずで
、IMFは金融危機の解決で中心的な役割を担うことになる」と指
摘した。 

 韓国の出資額は44億ドルで、このプログラムの下では最大218億ド
ルの融資を受けることができる。メキシコは最大235億ドル、ブラジ
ルは226億ドル、ポーランドは100億ドルの融資をそれぞれ獲得でき
る可能性がある。 
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ASEAN、外貨融通拡充へ調整始動 資金負担が焦点
(2008/10/25:nikkei) 
 【北京=岩本陽一】東南アジア諸国連合(ASEAN)と日本、
中国、韓国が24日開いた非公式首脳会議で外貨融通システムの拡充
加速を打ち出したことを受け、関係国が調整を始動した。だが、融
通枠拡充に伴う資金負担を抑えて自国に有利な条件で議論を誘導し
たいという各国の思惑が錯綜(さくそう)。タイやフィリピン、イ
ンドネシアが独自の構想を探るなど、ASEAN内では早くも主導
権争いの兆しも出ている。 

 24日の非公式会議は急激な資金流出が起きた国に外貨を融通する
仕組みである「チェンマイ・イニシアチブ」を強化する必要性を確
認。関係国は再び同会議を開く12月をにらんで具体策を詰める。 
(16:00)
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参考資料:
平成20年版通商白書の問題意識
http://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2008/2008honbun/html/i0100000.html
東証:投資部門別売買状況
http://www.tse.or.jp/market/data/sector/index.html


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