3085.経済覇権の行方



 世界経済の中心地が移動することになる。米国の金融機関を信用
できずに、健全経営の銀行に預金をシフトすることになるし、実体
経済をサポートする金融というあり方になると見る。この検討。
                   津田より

0.はじめに

 この初期コラム(参考資料)やその前の同人誌時代(1990年
代中)に、世界は覇権移行期であると述べていた。そして、その時
が現在、訪れたと見ている。経済・軍事・文化で圧倒的に強かった
米国が経済で自滅して、また文化でも米国の衰退は明らかである。
強い軍事も、経済の裏づけなしには維持できないために、早晩、維
持できずに弱体化するはずである。

 次の世界の覇権国が現れるか、集団指導体制にするかであるが、
現時点を考えると複数国の指導体制にするしかない。しかし、覇権
国の5条件を見ると、ある国が世界を背負うしかない。歴史を見る
とそう見える。

覇権国の5条件とは、1.軍事力が他国を圧倒していること、2.経済
力が他国を圧倒していること、3.文化・思想レベルが他国に比べて
高く、4.その文化・思想をひろめようとすること、5.支配体制を確
立していることである。

いろいろな記事(参考資料)で米国の限界を述べてきたが、とうと
う米国は覇権を背負うことができないほど、経済は弱体化してしま
ったのだ。そして、英国が新プレトン・ウッズ体制の協議をG20
で行うことを提唱した。

そこでどうなるか、歴史から見て検討しようと思う。


1.十四か条の平和原則と国際連盟

第1次大戦後の国際連盟は、アメリカ合衆国大統領のウィルソンの
十四か条の平和原則により提唱され、ヴェルサイユ条約の第1編に基
づいて国際連盟規約が定められたことで設立された。原加盟国は42
カ国で、最終的に60カ国以上が加盟している。

提唱者が大統領であるアメリカ合衆国自身は、モンロー主義を唱え
る上院の反対により国際連盟には参加していない。

十四か条の平和原則とは、1918年1月8日、第一次世界大戦終結のた
めに、アメリカ大統領ウッドロウ・ウィルソンがアメリカ連邦議会
での演説を通じて発表した平和原則であり、この提案がドイツの降
伏を引き出し、1919年のパリ講和会議では、アメリカの中心的な主
張となった。

主に以下のことが柱になっている。

1.秘密外交の廃止 
2.海洋の自由 
3.経済障壁の撤廃 
4.軍備縮小 
5.国際平和機構の設立 
6.民族自決 
7.植民地問題の公正解決 

国際平和機構は後に国際連盟として結実した。

しかしながら、パリ講和会議ではイギリスやフランスに無視され、
ドイツに対して過酷な賠償を科すこととなった。形式的に東欧で民
族自決の原則により独立が認められた国々があったが、これはあく
までもロシア革命やハンガリー革命から西欧を防衛することを目的
とした方便によるものであり、アジア・アフリカの西欧列強の支配
下に置かれた植民地の独立は反故にされた。

このように米国の理念は当時の欧州の水準に比べて、著しく進歩的
であったが、パリ講和会議では米国の主張を英仏は、ほとんど無視
し、このため、米国が国際連盟参加をしないことで、ドイツの不満
が嵩じて、ヒットラーの台頭を許し、第2次世界大戦になるのであ
る。

英仏ともに、戦争後の経済が著しく弱体化していたために、植民地
からの物資がないと、国家運営が立ち行かない状態であったが、米
国は新産業革命としての自動車や電気機器を製造することで、経済
的に成り立っていたので、植民地解放を主張できたのである。

そして、国際連盟準備の会議では日本の代表団は国際連盟の規約に
人種差別撤廃条項を加えるよう提案した。これは「人種あるいは国
籍如何により法律上あるいは事実上何ら差別を設けざることを約す
」というもので、国際会議において人種差別撤廃を明確に主張した
国は日本が世界で最初である。

英豪などが反対する中、出席者16名中11名の賛成多数を得たが、議
長を務めた米国は突如として全会一致を主張、多数決を無視して本
提案を退けた。このように、日本は米国より進歩的な主張をしてい
たが、受け入れられずに、日本はアジア諸国の期待を背にして第2
次世界大戦に突入していくことになる。

バンドンでのアジア首脳会議を行い、各国の支援策を話したり、チ
ャンドラ・ホーズなどが日本の味方をした理由を戦後、GHQの洗
脳作戦で無視しされてきている。今後、この日本悪人論を見直すし
かない。

1929年以降の世界大恐慌で、日本やドイツなどの植民地がない
経済大国は、米英仏の植民地地域とのブロック経済体制により、製
品の輸出先を失い、経済的な破滅状況になり、大義名分として人種
差別撤廃と民族自決を掲げて、戦争に突入した。


2.第2次世界大戦後の体制(大西洋憲章)

第2次大戦の方針として、大西洋憲章は、1941年8月の大西洋会談に
おいて、英国首相のウィンストン・チャーチルと、米国大統領のフ
ランクリン・ルーズベルトによって調印された憲章である。
太平洋戦争開戦前で合衆国はまだ参戦していなかったが、この憲章
は戦後の世界構想を述べたものである。

八項目からなり、その内容は要約すると以下になる。

1.合衆国と英国の領土拡大意図の否定 
2.領土変更における関係国の人民の意思の尊重 
3.政府形態を選択する人民の権利 
4.自由貿易の拡大 
5.経済協力の発展 
6.恐怖と欠乏からの自由の必要性 
7.航海の自由の必要性 
8.一般的安全保障のための仕組みの必要性 

憲章の第3条については、ルーズヴェルトとチャーチルの間で見解の
相違があった。ルーズヴェルトがこの条項が世界各地に適用される
と考えたのに対し、チャーチルはナチス・ドイツ占領下のヨーロッ
パに限定されると考えた。つまり、イギリスはアジア・アフリカの
植民地にこの原則が適用されるのを拒んでいた。

しかし、日本はアジアの欧米列強からの独立を掲げて戦争している
ので、徐々に英国も自国植民地であるインド人部隊を使う必要に出
ていた。第1次大戦後の独立を保障していたが、裏切られたインド
人は独立運動を開始したが、マハトマ・ガンディーの登場で、いま
まで知識人主導であったインドの民族運動を、幅広く大衆運動にま
で深化させた。ガンディーが主導した非暴力独立運動は、イギリス
のインド支配を今まで以上に動揺させた。戦後、英国は独立を許し
1947年に独立している。戦後、日本が指導したアジアの指導者
たちは、フランスなどと独立運動を起こして次々と独立した。

英仏植民地の人民を戦争に協力させるために、大西洋憲章を発効し
たが、結果は日本の戦争目的と同様な民族自決、人種差別撤廃の方
向に向かったのだ。

戦後、米国が覇権を取れたのは、この大西洋憲章で、日本の戦争大
儀と同等レベルの主張をしていたからである。日本は、残念ながら
軍事力が欧米に及ばなかったのである。

米国は覇権を維持する体制をして、英国の後押しと受けて、ブレト
ン・ウッズ体制を確立する。国連、IMF(国際通貨基金9、世銀
の中心に米国が座ることになる。しかし、徐々にこの体制は劣化し
て、1973年変動相場制移行でプレトン・ウッズ体制は崩壊した。


3.今後の体制

覇権確立には世界の支持が必要であり、覇権の衰亡には世界の反対
がある時で、現在の米国はイラク戦争などで一国主義を取り、世界
の反対を押し切って参戦し、また、世界に米国発の証券化商品を
AAAと嘘をついて売り出していた。A3+の日本国債より格付け
が高く絶対安全とした物が、50%以下の価格でも売れないことに
なっている。

この商品を買っていたのが欧州など世界各地の銀行等であり、世界
に迷惑を米国は掛けているが、米国の格付け会社が賠償に応じるは
ずもなく、米国の信用がなくなっている。しかし、迷惑を掛けたと
いう自覚もなくて、米国は自国銀行の証券化商品の買取しかしない。
発行額が大きくて、したくてもできない。CDSの証券化も含める
と20兆ドルにも上る。日本円にして2000兆円にも上る。

米国のファンドや投資会社は自社の資金繰りが苦しいので、世界に
投資していた資金を回収し始めて、世界は大混乱になっている。こ
の混乱を米国一国では収拾できない。このため、世界は協力して、
この事態に対応するしかない。その協力体制の中心にいるのが、日
本である。

実体経済がシッカリしていて、今後の産業革命が視野にあり、日本
の強さは他の追従を許さない。中国やドイツも実体経済は強いが、
新しい物を作り出すことではなく、日本が開発したものを人件費が
安いとか社会的な仕組みが良いとかで日本メーカを出し抜くことで
あり、自国からの研究開発した製品ではない。

そして、中国は1960年代の日本の政策を真似して、農産物を高
値に誘導・保護し、農民の所得を上げて内需拡大をすれば、米国依
存から国内需要にシフトできる。農民の所得拡大で家電や車が買え
、日本の工作機械や高性能部品が売れることになる。日本が新産業
革命を起こして新製品を開発しても買い手は中国に多数いることに
なる。日中が共同で世界的な需要を作り出すことである。
しかし、中国は民主化はできない。民主化をしつつあると何十年も
いい続けているように思う。

そして、世界のだれかが経済覇権を取ることが必要であり、その覇
権を取るにも大儀が必要になり、その大儀は新プレトン・ウッズ体
制で、当分、各国中央銀行が市場介入して、固定相場に近い変動相
場制にして、通貨の安定を待つことしかない。

どこの通貨を中心とするかとなるが、それは世界を助けられる通貨
でないと、制限がかかるために、無制限に貸せることができない。
このためには応援できる通貨を中心にするしかない。

こうなれば、各国が固定相場に近い変動相場制にできる。そうなる
と、日本の円か中国の元であるが、民主化させた国で、信頼度など
から、日本しかないと見る。円は金利が安いために、新興国も返済
が楽である。日本は世界の経済安定化という大儀を前面に押し出し
て、いくことである。そうすれば、結果は後からついてくる。
日本の貢献をアピールする麻生首相のプレゼンテーションに期待し
たい。


4.歴史年表

1914年〜1918年第1次世界大戦
1917年:ソヴィエト連邦が成立
1919年:パリ講和会議
1920年:国際連盟の発足(米国の非参加)
1929年:世界大恐慌が起こる。
1930年:ストーム・ホーレー法を施行で、各国がブロック経済
      圏化
1933年:フランクリン・ルーズベルトが大統領
1933年:日本とナチス・ドイツが連盟から脱退
1934年:ソヴィエト連邦が連盟に参加
1937年:イタリアが連盟から脱退
1939年:第2次世界大戦開始
1945年:終戦
1945年:ブレトン・ウッズ体制で米国の経済覇権が確立
1945年:国際連合が発足
1946年:フィリピン独立(米国)
1947年:インド独立(英国)
1948年:ビルマ独立(英国)
1949年:インドネシア独立(オランダ)
1953年:カンボジア、ラオス独立(フランス)
1954年:フランスがベトナムから撤退
1950〜1953年:朝鮮戦争
1963〜1975年:ベトナム戦争
1971年:ニクソン・ショック
1973年:日本が変動相場制でブレトン・ウッズ体制の崩壊
1985年:プラザ合意
1986年:英国で金融自由化
1989年:ベルリンの壁が崩壊
1991年:ソヴィエト連邦が崩壊
1993年:クリントン政権
1999年:米国で金融自由化
2001年:エンロンが破綻、911テロ事件
2003年:イラク戦争
2002年:SOX法が成立
2007年:サブプライム問題が判明
2008年9月:米国発金融危機

*参考資料
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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1787.覇権とその移行期について(2004年10月23日)
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/k6/161023.htm

覇権移行期の混乱時代に入ったようだ。昔書いたコラムをリメイク
する。   Fより

世界史の中心テーマは、覇権の移行史で、ギボンのローマ興亡史は
覇権確立から滅亡までのローマ史である。その他中国の三国志や新
書太閤記等、どの地域の歴史書もその地域の覇権の取り合いを描い
たものです。

T.覇権のテーゼ
 この歴史書を読むと3つのテーゼがあるようです。
 1.第1テーゼは、覇権国が衰退すると、世界が不安定になると言う
  こと。
 2.第2テーゼは、覇権国の条件は、軍事力と経済力が他国を圧倒し
  ている必要があること。
 3.第3テーゼは、覇権の確立は、世界を支配する体制が必要である
  こと。

覇権は、世界のすべての人々に影響を与える。もし、旧ソ連や旧中
国、現北朝鮮のような国が世界の覇権を握ったら、我々の生活は今
に比べて貧しくかつ自由のないものになっていたでしょう。

もし、第二次大戦で、連合国に勝って日本とドイツが世界の覇権を
握っていたらどうなっていたかという仮定の話は止めるが、これも
今の世界とは違う雰囲気になっていたでしょうね。

U.覇権の4条件
 1.軍事力が他国を圧倒していること。
  米国は現在12隻の空母を持ち、常時3隻の空母を全世界に展開
  しているのです。
  この3空母で1編成され、1隻が配備、1隻が訓練、1隻が休暇
  というように構成している。他国は軽空母を1隻か2隻しか持た
  ず、常時空母を世界に派遣できない。
  このように、米国は世界でただ1つの大海軍国となっている。

 2.経済力が他国を圧倒していること。
  軍事力は経済力の裏付けが必要です。軍事力の意味は、自国の海
  外での権益の保護が目的です。米国であっても、米国の利益のた
  めに軍事力を行使するのです。国連のためでも日本のためでもな
  いというおとを知っておくことが必要である。陰謀論の前提に、
  米国は世界のために振る舞いべきという暗黙の了解事項を持って
  いるようですが、それは違う。

  それでは、経済力が無くなるとどうなるのか?
  この良い例は、旧ソ連の軍事力が経済的な問題で、米国の展開し
  たスターワーズに対抗できないこととハッキリしたため、米国と
  の対決を放棄したことです。

 3.文化・思想レベルが他国に比べて高く、その文化・思想をひろめ
  ようとすること。ナイのいうソフトパワーですね。
  戦後生まれた世代は、米国に強烈な印象を持っている。米軍キャ
  ンプにいくと、いろいろ便利な道具があり、おいしい食料・お菓
  子がある。米国に強く憧れたものです。これは、文化レベルが高
  いためですね。
  この憧れの気持ちは、米国の覇権確立を助けたはずです。
  少なくとも2度と米国と戦争しようとは戦後世代は思わない。

 4.支配体制を確立していること。
  第2次世界大戦後の米国が構築した世界支配体系を見るのがてっ
  とり早い。米国は戦前参加を拒否した国際連盟に似た国連を作り
  、通貨体制としてプレズン・ウッド体制、IMFを米国指導でき
  る形で作り、金融として、世界銀行を作った。

V.覇権移行の原因
  覇権の移行は、覇権の条件が揺らいだときです。
 ・軍事力が揺らいだ時
  軍事力が揺らぐと、他国の軍事力に挑戦を受けた時、脅しが効
  かなくなる。このことが、覇権の移行として推移していくこと
  になる始めです。

  また、経済力が他国より劣るとソ連のように軍事力を増強でき
  なくなる。軍事力が強く経済力が弱いと、近代以降では他国の
  経済権益を守ることになり、経済原理に反することになり、長
  続きしない。この状況に現在の米国はなっている。
  軍事力がグローバルで経済力もグローバル・パワーが一番安定
  していること。

  しかし、軍事力がグローバルで経済力がリージョナルであり、
  他国が反対に経済力がグローバルで軍事力がリージョナルであ
  る時、世界は不安定になります。

 ・米国と中国、イスラムの関係
  15年前クリントンは日本をたたき、米国経済の再復興を意図
  した。このため、国家経済会議のローラ・タイソンとMITを
  中心として、日本経済の原動力を研究し、米国の復活ができ、
  日本を沈没させることができた。
  米国はNECの方が国家安全保障会議NSCより上に位置づけ
  られた時期があったのです。今は再度NSCの方が上です。

  現在は、米国経済の復興を諦めて、経済では中国を利用しよう
  としている。そして、石油や資本主義以前の国家の社会資本を
  民営化させて、そこに投資して利益を得ようとしている。金融
  帝国化になっている。

 ・支配体制の崩壊
  支配体制は、軍事力や経済力に欠陥が現れた後に崩壊となる事
  が多い。それと文化レベルが他国より低いと判定されると、モ
  ンゴルのように軍事力が少し衰えると、すぐに被支配民族の反
  乱が多発し、支配ができなくなるのです。この減少がイスラム
  圏から出ている。

W.覇権移行の歴史
 ・ローマからイスラムへの移行
  ローマ帝国崩壊時、ローマ文化・文献等をイスラムが引き継い
  だ。1世紀以上後、欧州のルネサンスまでイスラムが近代科学
  の基盤を保管・発展させた。アラセン帝国は中東・地中海地域
  およびスペインまで制圧した。それとシルクロードの交易で富
  も得ていた。

 ・スペインから英国への移行
  スペインの無敵艦隊を全滅させて、制海権を英国が取った。そ
  して、制海権取得の後、産業革命が起こり、経済力・軍事力と
  も他国を圧倒し、覇権を確立することにより、大英帝国を築く
  ことになる。

 ・英国から米国への移行
  英国の工業力が低下し、経済的に弱くなって、化学工業・自動
  車工業などの発展で経済大国化してきた独国に世界を分けてく
  れと、挑戦を受け第1次・第2次世界大戦となる。このとき、
  米国は積極的に英国を助け、第2次世界大戦後、覇権を英国か
  ら引き継いだのです。覇権国の味方が覇権を引き継ぐ可能性が
  高いようですね。

X.今後の覇権移行
 米国の経済がだんだん欠陥を表してきて、絶好調な軍事力で、他
 国を圧倒しているだけの状態になっている。ソフトパワーも落ち
 ている。今の米国は累積債務が世界最大で、資金の流出が起こる
 とどうなるか分からないためです。米国の影響力は世界的ですの
 で日本の景気にも多大な悪影響を及ぼすはずです。

 日本が気がつかずにいたのですが、防衛費では世界で米国に次ぎ
 多いのです。このため、日米同盟、NATO、米韓同盟では日本
 だけが在米経費のほとんどを拠出している。在日米国軍は米国で
 一番安い軍隊なっている。

 日本の地政的にも、横須賀は海外米国軍で唯一空母を修理できる
 乾ドックがある空母基地ですし、米国と正反対のアジアにあり、
 政権も安定している民主主義国ですので安心です。

 英国等の欧州中軸国は安定していますが、EC全体というと疑問
 です。米国の言う通りにならないし、NATOに軍を出していな
 い仏国がある。イラク侵略戦争でも反対している。
 しかし、この米国が覇権維持できなくなったとき、日本か欧州し
 か覇権は維持できないと思う。しかし、欧州は米国と協調的では
 なく、覇権移行ができない。

 米国は中国を重要視している。日本の覇権国としての体制が出来
 ていない。世界的な支配の構図も持っていない。ただ、米国に追
 従しているだけであり、日本が覇権を取る意思がないと見ている。

 中国は、日本と違って世界支配の意思を持っている。反中主義の
 弱いのは、覇権意思を中華思想と言って、悪いこととしているが
 その意思を持たない日本は、その中国より頼りないと思われてい
 る。

元のコラム1999-8-1、1991-9-22
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/kako/hikou.htm
==============================
覇権の移行について
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/kako/haken.htm
   F/1991-9-22

 今回は、覇権の移行について皆様と考察してみたいと思います。

1.歴史からの教訓
 この問題を考えるとき、前回の覇権の移動時の混乱を見ておく必
要があります。
これは、イギリスからアメリカへの覇権移行であることは、皆様に
も十分理解されていると思います。この覇権移行では2回の世界大
戦争が必要でした。本当に必要だったのでしょうか?
  ここがこれから考察するポイントです。
第1次世界大戦において、イギリスやフランスなどはアメリカの支
援なしには勝利できなかったのです。
このため、戦後の体制の中心にアメリカを入れようとして、米ウイルソン
大統領の提唱する国際連盟を設立した。しかし、アメリカの議会と
国民の孤立主義によって、加盟を否決されてしまい戦後最大のアメ
リカがいない状態で国際連盟設立となってしまったのです。

 アメリカがヨーロッパに戦後復興の支援をしなかったために、ド
イツに対しイギリス・フランスは莫大な賠償金を求めてしまった。
イギリスはこの時点でも覇権国として、いろいろな国際的役割を果
たさなければならなかった。しかし、経済・金融の中心地はアメリ
カであり、国際収支も大幅な赤字であった。そのため賠償金をとら
ないというような寛大なことができなかったのである。
第2次大戦後はマーシャルプランという経済支援を敗戦国のドイツ
や日本に対して、アメリカはおこなっている。なんという違いであ
ろうか?

 1方 ドイツはワイマール憲法の基に民主主義が定着したように
見えた。しかし、莫大な賠償金のため、国民の生活は最低線のレベ
ルとなりヒトラーの独裁を許すことになってしまうのです。
第2次大戦後のように経済援助をしていたら?どうであったろうか
。私はヒトラーの独裁はなかったと思うがどうであろうか?

 もし、アメリカがイギリスから第1次世界大戦後すぐに覇権を移
譲されていれば、第2次大戦が起こったかどうか? 歴史のIFは
無意味である。と皆様は言うと思うが現在同じことが起こっている
と言ったら、どうですか?

2.現在進行の事態について

 ソ連などの共産主義とアメリカを中心とした自由主義の戦いが自
由主義の勝利で終わった。
これを第1次大戦後とみると、その当時のイギリスを今のアメリカ
、その当時のアメリカを今の日本という具合いに見ると、どうです
か?当時のドイツを今のソ連と見るのです。

 いまのアメリカには、ソ連に対する経済援助をするだけの余裕が
ない。毎年大幅赤字と出しているためです。余力があるのは、世界
的にドイツと日本です。しかし、ドイツは東欧の援助で手一杯です
。このため日本に期待がかかるのです。

 金がない国が覇権を握っていると、世界の体制が整備できない。
また、このままにしておくと第1次大戦後のドイツと同じ様にソ連
が原因で再度世界的混乱を起こすことになると思う。これは、前回
の覇権移行で経験済みです。

 アメリカのブレジンスキーがソ連に行って、日本の北方4島を返
還した方がいいと言わせている。これは、1991年に小沢前幹事
長がソ連に行き、4島返還なら270億ドルの円借款をする用意が
あると言ったためです。湾岸戦争で90億ドル拠出したが、それの
3倍です。日本円にして、3兆5千億円である。第2次大戦後のマ
ーシャルプランと同等の効果を上げると思う。

3.日本の対応について
 日本はしかし、覇権をとろうとしていない。国民は1国平和主義
のままである。
これも第1次大戦後のアメリカと非常に似ている。
 早く世界を指導する日本という姿勢をとる必要がある。このため
にも、国民に理解させる指導者の出現を待ち望みます。
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覇権と日本
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/kako/hakty.htm
    F/1990-9-22

歴史から見て、覇権を考える上で参考になるのは中国の南宋帝国と
イギリスから覇権を譲られた時期のアメリカであります。

1.覇権とは
  1970年代当初まで、アメリカが世界のGNPの60%を占
めていました。そして、今までその時代の体制で物事を考えていま
したが、アメリカが世界最大の債務国という観点から物事を見直し
する必要に迫られているように思うのですが、どうでしょうか?
 現在も、アメリカは世界の警察官を勤めるために、アメリカの
GNPの10%を軍事費に費やしています。また、世界の各地で警
察官として行動しています。

  そして、何を守っているのでしょうか?
  この状況はイギリスの衰退期にもあった。イギリスが7つの海
に大海軍を有したのは、自国の製品の貿易を守るためでしたが、産
業分野でアメリカが優位に立つとイギリスの貿易を守るより、アメ
リカの貿易を守る方が大きくなってしまったのです。今、東南アジ
アに展開しているアメリカ軍はアメリカの権益を守るより日本の権
益を守ることの方が大きいのです。それは、東南アジア地域での企
業進出は100倍以上日本のほうが多いからです。これはアメリカ
の企業活動が欧米アフリカ地域のリージョナル・エコノミーである
にもかかわらず軍事力はグローバル・パワーを維持し、日本は世界
的に企業活動しているグローバル・エコノミーであるのにパワーを
ほとんど維持しないために起こっているのであります。

 あれだけ、文化人の支持を得ていた共産主義でも、経済原理に合
致しないことは、長続きできなかった。
 アメリカの軍事体制は共産主義より経済合理性がとれないのです
。よって、アメリカの軍事力の余命はあといくばかりか。
このため、米国はアジアに進出するためにアジア危機を起こしまし
た。その狙いは一部成功しましたが、日本を抜かすほどでわなかっ
たのです。

  この先どうなるのでしょうか?
  イギリスの衰退期では、モンロー主義のアメリカがいろいろ紆
余曲折はありましたが肩代りしました。
 今回、肩代りできるのは、世界的に企業進出しているグローバル
・エコノミーの日本と欧州連合しかないのです。しかし、ECは統
一問題で難しいし、日本では憲法問題で自衛隊の海外派兵できない
などモンロー主義を取っているため、両国が肩代りできないのです
。このため選択子がないことになってしまったのでです。
 このため、再度米国は経済を復活させようと努力し、かつ日本を
没落させようとしたのです。一部成功しました。

  我々は、戦後40年 吉田茂が構築した経済中心主義・軍事小
国主義を何の疑問もなく追求してきました。 しかし、現在この体
制を再検討する必要が出てきたのです。
 世界のGNPの15%以上を占め、なおかつ毎年率を上げている
大国日本は2つのオプションがあります。

 T.中国の南宋帝国のように、軍事面を今後も軽視して金を配る
ことで解決する方法で、在日駐留米軍の全経費を日本が負担してい
るのですが、これを押し進め、全アジアの米軍経費の全てを日本が
負担することです。
 本方法でも、南宋が滅亡したように相手まかせの面があり、アメ
リカ軍が本当に大丈夫かどうかはわからないので、その場しのぎの
解決でしかないと思われるということであります。

 U.軍事面を強化して、東南アジア圏の集団安保体制を引き、リ
ージョナル・パワーとなる方法で、タイ軍とオーストラリア軍の共
同演習が数年毎あり、その時日本の自衛隊の参加を要請されますが
、日本政府は断わっています。ソ連もアジア集団安保を提言してい
ます。なぜこの様な事が起こるかと言うと今後アメリカの力が弱く
なるとヨーロッパより先にアジアから引き上げるためであります。

 アメリカのアジア撤退後の体制を早急に整備する必要があります
。日本は、GNPの1.3%でも世界第2位の軍事費となっていま
す。この軍事費を一部海外派兵用の武器に回すことによって装備を
揃えることができるのです。

 以上、私の意見とすれば、Uのように日本の戦略を変更して軍事
面の自由度を増す必要があるいうことですがどうでしょうか?

2.進路の変更方法について
  我々日本人は、保守的な民族であり、かつ安全について危機意
識が薄いため、明治維新で見られるように黒船3隻が来るまで維新
の機運が盛り上がらなかったのです。
 今回は、北朝鮮のミサイルが一発飛んできて、機運が高まってき
ています。
このため、進路の変更も国民に納得してもらういいチャンスです。
 今後、日本が世界の大国として見られるため、責任が重くなるこ
とが多くなると思いますが、1つ1つ乗り切って、日本の自主性を
高めていく必要があります。

==============================
1185.覇権の構図(2003年3月1日)
http://www.asahi-net.or.jp/~VB7Y-TD/k5/150301.htm

覇権確立には世界の支持が必要であり、覇権の衰亡には世界の反対
があることを見よう。   Fより

まず米国の覇権確立期を見よう。米国は第二次世界大戦後、欧州の
植民地で民族自決というキーワードを使って世界の期待を集めて、
この期待に応えるために米国が支配しやすいIMF、国連、世銀な
どの世界体制を確立できたのです。米国の戦力が大きかったから確
立したのでは断じてない。

この民族自決の大西洋憲章は、日本がアジア人の独立を助けて、と
もに繁栄するという大東亜共栄圏構想に対抗するために、米国が考
えた戦争スローガンであったのです。しかし、それにより米国は、
世界の覇権を確立したのです。

英国の覇権確立は、世界の貿易に欠かせない海の治安を確立して、
海賊などの不法行為を取り締まり、世界を1つの貿易圏にしたこと
で、世界の商人から支持されて覇権を確立したのです。しかし、英
国の衰亡は、植民地の独立を押さえたために、世界から猛反対を受
けて、第2次大戦後は世界の覇権を米国に取られている。

このように世界の覇権確立は、世界の多くの国民から正義と思われ
る行為をすることで、確立するものなのです。反対に、世界の多く
の人たちが迷惑とする行為をして支持を無くすと、覇権は他に取ら
れることになる。今の米国の行為は世界の正義と言えることかどう
かです。米国の自己だけの利益であると、他の世界によっては迷惑
ですので、どうなりますか??この間隙を欧州の独仏が狙っている
し、世界世論も独仏に有利に展開している。

今までの経緯でいうと、覇権を取るのは世界島であるユーラシア大
陸ですが、ロシア・中国が共産主義であったために、共産主義のハ
ートランドと自由主義のリムランドの戦いが50年間続いたのです
。このリムランドを率いたのが米国です。米国は世界島にいなかっ
たために防衛が欧州に比べて安価にすんだし、ソ連との戦争で被害
を受けない可能性が高かった。このため、覇権的には不利なリムラ
ンドではあるが、米国は優位な位置になったのです。

自由主義は正義で、国民大衆の自由を制限する共産主義は悪である
ことは明確であったものですから、地政学的に劣勢なリムランドが
、戦略的に有利なハートランドを圧倒できたのです。ハートランド
のソ連陸軍に欧州は脅威を感じて、NATOを作り米国の支援を必
要にしていたのです。リムランドは海軍中心で、米国が空母を12
隻用意して、自由主義のリムランドを守ったのです。米国の正義は
揺らぎがない自信と威厳に包まれていたのです。

もう1つ、20世紀は石油の時代でした。この石油を運搬するのに
海運業のタンカーが効率的なために、巨大なタンカーが造られて、
非常に安価に石油を運搬できたのです。このタンカーの海上防衛を
米国の海軍がしていたために、米国の同盟国は得し、このためにも
米国の自由主義国家群での覇権は確立していたのです。米国に対抗
したソ連や中国は自国内陸部の少ない石油をパイプラインや鉄道で
運ぶしかなかった。アラブ産油国の石油を使えなかった。このため
、ハートランド諸国は鉄道輸送というランドレーンで、リムランド
諸国がシーレーンというタンカー輸送になったのです。

しかし、1989年以降、ロシアと中国が自由主義陣営に参加して
から、リムランドとハートランドの戦いは終了して、世界がグロー
バリズムとして一体感を得始めたのです。こうなると米国の正義は
影が薄くなり、世界、特に欧州は米国の言うことを聞かなくなるし
、米国は米国だけの利益に走り始めたのです。この典型的な事件が
、京都議定書の米国拒否が上げられる。米国は世界防衛のために軍
事費を30兆円以上費やしながら、世界から尊敬されないことにな
っていったのです。

米国が利益を追求し始めてからは、世界は米国の行動を批判し始め
たのです。このため、米国は益々、自分の利益追求に走ることにな
る。また、イスラエルと米国が一緒であることを隠さなくなってい
る。このため、アラブ諸国が石油の30%を占める産油国群ですが
このアラブでのテロが頻発することになる。特に湾岸戦争後、米国
がサウジアラビアに駐留してからはオサマビン・ラディンなどの
テロリストが輩出して、米国をターゲットにした攻撃をし始めるの
です。そして、とうとう英米は国際法上での侵略戦争を開始しよう
としているのです。このため、米国の現役外交官まで米国の不正義
に憤慨して辞任する状態になっている。

さあ、今後の覇権はどうなりますか??
独仏露ハートランド連合対英米豪のリムランド連合の戦いになり、
両陣営の中国・日本などの東アジアと産油国のアラブ諸国の取り合
いが起こるし、起こっている。米国は戦争と言う手段でアラブを取
ろうとしているのに比べて、独仏露は平和的に味方に付けようとし
ている。このため、独仏露に世界世論は靡くことになる。あと十数
年後は覇権的には有利なハートランドの独仏露に覇権が移行してい
る可能性があると考えられる状態になってきている。
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2348.リアリストの理論(2006年5月22日)
http://www.asahi-net.or.jp/~VB7Y-TD/k8/180522.htm

この分野はコバケンさんが一番解説には適切なのですが、前座で解
説しましょう。      Fより

リアリストの理論で国際戦略を構築することが重要と述べているの
に、その解説がないとある友人から注意された。解説していた心算
であったがない。今回はリアリストの理論の概要をF流で解説した
い。

リアリストとは日本語にすると、現実主義者となる。しかし、現実
主義という日本語の意味は元もとの英語の意味と少し違うので、こ
のコラムではリアリストと言っている。

リアリズムは、その国の体制や思想を善悪で判断しないで、経済力
や軍事力などの国力を基準に考えることで、その国家がどう行動す
るかを推測する。そして、世界の動きを予測する学問である。

その時、国の行動原理には2つの見方がある。1つは、国は自国の
安全のために自国の領域を拡大しようとする意識が働くと考える理
論ともう1つが自国を防衛するためにだけ意識すると考える理論で
ある。

拡大すると考える理論が攻撃的なリアリズムで、自国の防衛だけを
考える理論が防御的なリアリズムである。攻撃的なリアリストが右
やタカ派と見られ、防御的なリアリストが左やハト派と見られる。
どちらの考え方も国益を重視するので、偏狭な思考をする左右の過
激派とは一線を画している。

そして、もう1つの原理が、国の行動は地理的な条件でその行動が
制約されることである。そのため地政学が国の行動を推測する時に
重要な学問となる。そして、現在グローバル化が進み経済的な関係
が世界的に重要になり、地経学が現在は必要になっていると私Fは
みている。地経学は基軸通貨の戦いでもあると見ている。

この2つの地政学・地経学と複合的な世界の関係から米国、中国、
欧州、ロシアなどの行動を推測し、それに対する日本の行動を考え
るのが日本のリアリストの役割なのでしょうね。

もう1つが、現時点をどう位置づけるかですが、覇権の移行期と見
ている。米国という覇権国家の衰退が徐々に進行して、その覇権を
どの国が、どう移行するのかを見る必要がある時代である。もし、
その移行のやり方が不味いとハルマゲドンという地球最終戦争にも
なる可能性があると見ている。この歴史観がもう1つ必要なのでし
ょうね。

どうもライスの演説を聞くと、基軸通貨から地域通貨への移行を米
国は認めたように感じる。ということは米国から離れてた地域覇権
を認める方向に米国はシフトしたように感じる。このため、日本を
中心にアジア共同通貨を作る方向でASEAN+3の会議では進行
している。これが東アジア共同体になる可能性も高い。米国は徐々
に米国本土に部隊を引き上げる。韓国や日本からグアムまで大部分
の部隊が撤退することが決まり、その分、日本の自衛隊がアジアの
第1線を守る必要が出ている。

地政学的には、日本は隣に中国があり、欧米から距離が離れている
ことと、島国でその行動様式が決まる。それと、その国の歴史が大
きくその国民の意識に作用している。日本の場合は、中国文化は導
入するが中国との朝貢関係を拒否して中国からの独立を志向してき
た。これができたのは海で中国と離れているためである。朝鮮は中
国と陸続きであるために属国となっていた。そして、中国の歴史は
徐々に周辺民族を飲み込んできた。つい最近ではチベット民族を飲
み込み、ウイグル民族も飲み込んでいる。このように中国は拡大す
る国家であることが分かる。

欧米やロシアも拡大する国家である。覇権を争う国家群がそこにあ
る。日本も戦前、その拡大する国家に仲間入りしていた。しかし、
戦後は拡大する国家ではなくなった。米国は拡大から軍事再編とい
う縮小に転じて、覇権を欧州やロシア、中国で共同に行う方向にシ
フトしようとしている。そして、中国はまだ拡大のための軍事拡大
をしているように見える。台湾を自国領土としていることでもその
疑いを強く持つ。このため、日本の場合は、攻撃的なリアリズムの
発想が重要だと考えている。

そして、日本の戦略として、中国の属国化を嫌う歴史的な見方から
欧米と組んで中国の拡大を押さえる志向を強く持つ。しかし、米国
の没落が徐々に進行している。欧州は中国と組んでビジネスを拡大
する方向にシフトしている。

中国は経済的な発展で、世界第4位の経済大国になっているし、軍
事力の増強をしている。そして、今後の発展には民主化が必要にな
っている。この現実を見て、日本は中国との関係を考えることにな
る。地経学的な関係をも見て日本の進路を決める必要がある。

米国はソ連を倒して分裂に追いやり、周辺諸国を独立させ自由主義
圏に巻き込んだ。米国が主導権を現時点でも握っているが、欧州も
共同体を作り、米国とは違う動きができるような政治力を持ち始め
ている。ロシアも石油を武器に政治力を持ち始めている。中国も、
東南アジア諸国に影響力を持ち始めている。欧米露中の4極で世界
の政治は動いている。日本は米国の陰に隠れて、影響力行使ができ
る行動をしていないのと、自由な意見を言っていないために政治力
をもてないでいる。

どちらにしても、日本の国益を考えて、情勢を分析して偏狭なナシ
ョナリズムに陥らない考え方をすることが重要なのでしょうね。
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2398.世界の構図が変化(2006年7月17日)
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/k8/180717.htm

世界の構図が、米国の一極体制から変化している。その検討。
                      Fより

05年9月8日、露ガスプロムと独E・ON、独ヴィンターシャルが、バル
ト海海底経由で独露間を直結する、天然ガスパイプラインの建設契
約に調印した。露プーチン大統領は、この調印式のためにベルリン
を訪問し、独シュレーダー首相と立ち会った。ロシアへのエネルギ
ー依存度がドイツは高いが、このパイプラインで一歩進めたような
気がする。この後、独露関係は親密な関係になっていった。米国は
露ユコスと親しかったが、その露ユコス社はプーチン政権から不当
なことで潰されている。

ドイツでシュレーダ政権からメルケル政権に移行してもこの緊密な
独露関係は不変のようだ。ドイツとロシアの急接近に、ポーランド
など東欧・バルト諸国が危機感を覚えている。 

今年5月に米チェイニー副大統領がリトアニア共和国の首都ビリニ
ュスで、ロシアの民主主義は明らかに後退しており大いに懸念され
る。と激しいロシア批判の演説して、大喝采を受けている。東欧で
親密な独露関係に心配する気持ちが出ている。独仏などの西欧と違
って、東欧はイラクへの軍派遣を米国から要請されて、出て行って
いる。

このような独露関係は過去にもある。ラパロ条約で第1次大戦に敗
退した後ドイツは軍備が制限されたが、ソ連でドイツ軍事工場を建
てて、次の戦争の準備をしていた。

もし独露同盟ができると、欧州連合内の力関係は激変する。独仏同
盟でEUを運営してきたが、独露同盟でロシアがEUに入ると、力
関係がドイツに偏り、フランスは英国と同盟を結び、英仏同盟を作
ることになる。ポーランドなど独露に挟まれた中間地域国家は独露
同盟の一員になるしかない。ウクライナは親欧米派から親露派が政
権を奪い返したが、これも独露同盟の一端である可能性が高い。

独露同盟は世界島のハートランド中心部を占めるために、世界の構
図は激変することになる。英仏同盟と日米同盟が結合して、日米英
仏豪などのリムランド連合ができるでしょうね。

中国は米ロのどちらに着くのか現時点は不明である。上海機構でロ
シアと反米同盟を結成しているが、米国の覇権力が衰えたら、中央
アジアの資源の奪い合いを中ロが競り合っているために、プーチン
後の大統領は中国との同盟関係をつづけないでしょうね。

中国は日本との対決を仕掛けているためにリムランド連合にもロシ
アと資源戦争をしているためにハートランド同盟にも加盟できない
中間領域になっている。現時点、中国は仏独のEUと緊密であるが
、英仏同盟のEUになると、独露同盟に対抗するため米国との関係
が重視されることで、英仏はリムランド連合にならざるを得ない。

中国はしかたがなく、東南アジア諸国や世界の華人との連携やアフ
リカの国々やベネズエラなどの南米の反米国家と連合を組むしかな
い状態になるでしょうが、中国の孤立化が明確になっていくことに
なりそうである。国連安保理での北朝鮮非難決議でも中国の孤立化
が現れていたが、それが明確になるでしょうね。

インドは米国とも連携できるし、独露とも連携できるという優位な
立場にいる。インドの位置がリムランドでもあるし、ハートランド
とも離れていてロシアと資源などで競合しないことによる。

もう1つのグループがイランを中心とするイスラム教シーア派とビ
スボラ、シリアなどで完全に反米国家連合である。ベネズエラや北
朝鮮などもこのグループに入るのでしょうね。このグループに対抗
するために、イスラム教スンニ派諸国は米国と連携するためにリム
ランド連合に入ってくるはず。イスラエルがシリア、ビスボラ、イ
ランなどシーア派連合と戦いになっているのは、この前兆でしょう
ね。

米国はその力が減退して、世界の覇権を手放す方向で、ライスが、
今年2月にドル基軸通貨から地域基軸通貨に移行してもいいと演説
している。
この地域基軸通貨をどの国が中心となって創設するかで世界の構図
が代わることになる。東南アジアをまとめるのは中国か日本かの戦
いでもある。

どうも、世界の変化が加速する傾向にある。このコラム読者の皆様
とともに、その変化を追っていきましょう。
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2973.米覇権縮小の影響で(2008年6月29日)
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/200629.htm

拉致事件が解消しないのに、米国は北朝鮮をテロ指定国家から解除
した。この検討。      Fより

米国の軍事予算は50兆円程度と、日本の国家予算82兆円の70
%を占める巨大なコストをかけている。しかし、サブプライム問題
から米国の国防・侵略予算は制限される。共和党マケイン候補より
民主党オバマ候補の方が支持率が高い。これはイラクから撤退し、
その金を景気対策に使うとするオバマ候補が、今の米国民の心を捉
えていることを物語る。

米国は国防ラインをグアムまで引き下げるが、日本の500億円もの金
を引き出そうとして沖縄県民の反米感情を利用した。米海兵隊がグ
アムに移駐するのは日本のためにとしたのだ。米国は今、ローマ帝
国滅亡と同じように過剰流動性で世界の混乱を与えて、スタグフレ
ーションに陥っている。

ローマ帝国は、帝国内のグローバル化、分業化と同時に貨幣経済に
なるが、ローマでは何も生産せずに全ては周辺国からの物資で賄わ
れた。この物資と交換で渡された物が貨幣である。しかし、徐々に
貨幣が出回りすぎてインフレになり、かつローマ中心部は金融業だ
けになっていた。豊かになった周辺諸国がインフレでローマに異議
を唱えて独立すると、ローマの金融中心経済は成り立たなくなり、
滅亡する。もう1つがエネルギーである木がなくなったために、グ
ローバルな物資の移動ができなくなる。ローカル化が起こり、物資
がローマに来なくなる。

これと同じことが世界で起こっている。米国の力は金融資本主義に
変質したために、インフレを招いているし、それが世界を混乱に陥
れている。そして、石油と言うエネルギーの高騰で物資の移動が出
来なくなっている。そのため、米国の覇権はその力を弱めている。

マーシャルのKをご存知ですか??
このKが過剰流動性を表す係数値で、このラインが現在、係数の
標準傾向ラインから上に大きくはみ出している。世界の為替取引量
は1100兆ドル、先物取引量500兆ドルに対して、株式市場時
価総額45兆ドルと貨幣の過剰流動性が明白である。

このような事態を引き起こし、かつサブプライム問題を起こした米
国金融業は浮かび上がれないし、米国の国家収入は大きく減少する。
この減少で歳出も抑えられることになる。もし、歳出を抑えないと
スタグフレーションになり、米国国民は貧乏になり、ドルは暴落す
ることになるし、ドルが基軸通貨である理由の1つである石油との
リンクも無くなることになる。

このような米国は戦線を縮小することを求められている。石油やイ
スラエルとの関係から中東や南アジア地域には関与せざるを得ない
が、平和な東南アジアでは戦線縮小することになる。

そして、米国は中国が中心となってアジアを仕切ることを求めてい
る。この準備のために地政学研究者を中国は国を挙げて育成してい
る。コバケンさんが英国で地政学を研究しているが、同僚に中国人
が多数いるという。日本人は民間人コバケンさんしかいないが、韓
国人や中国人は軍人のようである。地政学などの戦略研究に日本の
自衛隊や政府は冷淡である。

米国としては、日本人が憲法の制約と国民感情で判断して合理的な
交渉も戦略も打ち出すことが出来ないことと、国民意識が覇権獲得
を向いていないのでアジアの覇権獲得は無理と判断したようだ。

日本は、北朝鮮との合理的な交渉ができないことが明確化していた
。交渉には制裁だけではなくて、人権を侵せれたのだから戦争も辞
さないという覚悟をするか、平和的な交渉をするなら、相手を交渉
の場に引き出すことや相手にも魅力ある提案をしないと解決できな
い。国際的な外交交渉の基本がなっていない。

それを、日本はどちらもしないで、米国に期待するだけで、米国の
テロ指定国家解除に文句を言うということで、米国戦略担当者は日
本のやり方にあきれているというのが正直な感想でしょうね。

今後は韓国・北朝鮮・台湾ともに中国圏になり、日本は別文明とし
て孤立した国家となる宿命になった。アジア諸国も中国圏になる。
しかし、中国国内は石油や食糧などの高騰で、民衆の不満が高まり
民主化要求が起こることになる。同じことがEUでも起こり、統一
が難しくなるようだ。

この事態の大きな理由が、米国衰退というパラダイムシフトが起こ
っていることであると、肝に銘じる必要がある。米国は日本を助け
ることなどできない。自力で国際問題を解決するしかない。石油シ
ーレーンも中国は着々とシーレーン上に海外の海軍基地を設けてい
る。日本は石油も中国に守ってもらうしかなく、日本では何もして
いないのが現状である。

さあ、どうなりますか??

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