3056.「通貨スワップ」について



Fさま

「通貨スワップ」という言葉は97年のアジア危機の話の本に出て
きた記憶があるので、調べたら、下の東京三菱銀行の2001年5月24
日の記事にあるように、アジア危機を安定するために、日本が提案
し、アジア共通通貨のような提案をしたのを、米国に潰されたとい
う、MR円の榊原さんとルービンの話の時に出てきたんだと思います。

榊原さんの昨年末に出た本だとまたこの構想が復活しつつあるよう
なのですが、潰した米国が金融危機なので、アジア地域から全世界
地域へ拡大解釈してこれを来週から行おうということなのでしょう
か。

世界で一番外貨として米ドルを保有している日本(本当は中国が1
番だが中国はこの協定に入ってなさそうですが)と米国の2国間の
話と考えていいのでしょうか。


(2001年の三菱銀行のHPの記事を引用開始)
 
「通貨スワップ協定」は、一時的な外貨不足に陥った国に対し市場
介入に必要な外貨の融通を行うもので、域内通貨の安定化を図り通
貨危機を未然に防ぐことを狙っている。具体的には、@2国間で直
接外貨を融通し合う(スワップ取り決め)、A外債を売却し一定期
間後に買い戻す(レポ取り決め)――の2つがある。多国間協力の
性格ものであるが、あくまで2国間の協定が基本になっており、
それを網の目状に張り巡らすことによって、通貨の安定を図るとい
う構想になっている。

現在、ASEAN加盟10ヵ国に日本、中国、韓国の3ヵ国を加えた13ヵ国
(ASEANプラス3)が協議に参加している。豊富な外貨準備を保有す
る日中韓の3ヵ国を加えることにより、より実効性を高めるものにな
ることが期待されているといえよう。

 「通貨スワップ協定」は、昨年5月にアジア地域の通貨安定に向け
た取り組みを行うことを合意した「チェンマイ・イニシアティブ」
の具体化となる。「チェンマイ・イニシアティブ」の発想自体は、
「アジア通貨基金(AMF)構想」がベースになっている。同構想は、
アジア通貨危機の際に日本が提唱したものの、米国などの反対で実
現に至らなかった経緯がある。AMF構想はアジア各国が協力して
1,000億ドル規模の基金を設置、為替市場への介入や一時的な外貨不
足を補う枠組みとなっていた。

 チェンマイ・イニシアティブでは、ASEAN5ヵ国が結んでいる通貨
スワップ協定(1977年)をASEAN10に拡大し、さらに日・中・韓と個
別に2国間協定を結ぶ方針が示された。昨年11月には基本的な枠組み
について合意し、その後個別に2国間協定を結ぶ具体的な作業を進
めている。尚、融資国側の要望で資金の使途の明確化やモラル・ハ
ザード防止の観点から、融通額の10%を超える部分についてはIMF融
資と連動することが条件となっている。

これに対し、IMFの関与の度合いを低めたいマレーシアなどとの調整
が難航し、今年4月に行われた「ASEANプラス3」蔵相会議では、IMF
の融資を条件とする融通額の割合を縮小する方向で話し合いが行わ
れ、声明には、「各国のファンダメンタルズ、資金需要などを十分
の考慮する」という柔軟な対応を行うことが盛り込まれた。

結局、5月の「ASEANプラス3」蔵相会議では、日本は、タイと30億
ドル、韓国と20億ドル、マレーシアと10億ドルの協定を結ぶことで
それぞれ合意した。このほか日本は、中国やフィリピンとも協定締
結へ向けた交渉を開始する。

(三菱HPの引用終了)

ルール変更の名人、米国の勝手というのはわかるのですが、これは
為替、が全く介入しないということで正しい理解なのでしょうか? 

一時的にはドル不足に市場がなっている今、紙くず状態に抱えてい
る日本がドルを吐き出しやすいように取っている緊急の措置、とい
うか、ルール変更なのですか。わたしには、全然理解できないので
す。 

紙幣というのは原則として国内でしか流通しません。(ロシアの市
中でドル通貨が使えたり、日本の米軍基地周辺でドルが使えるのは
例外)。宅美光彦の「世界大恐慌」の94Pに「経済学者でさえ、為替
を理解していない」とあり、ドル銀行券とドル為替は違う。

(同書94ページから要約引用)
ドル為替とは米国に対するドル建ての短期債権のことだ。昔はこれ
が為替手形の形で所有されたので為替と呼ばれるようになった。

長い慣例として貿易に関してはもっぱら為替手形(債権者が債務者
に当てて振り込むもの、その反対が約束手形)国際取引においては
為替手形に代表される対外短期債権、とりわけ基軸通貨国に対する
短期債権を毎日売買することを通じて、国際的な支払いや決済が行
われる。したがって国際決済に一国の紙幣、たとえばドル紙幣が使
用されるようなことは原則としてありえない。

一国にとってある国に対する為替相場があまりにも下がってくると
、為替取引は機能しにくくなる。たとえば、ポンドがドルに対して
下がったとき、英国人はポンド為替を組んで支払ったりドル為替を
買って支払うより、金を買ったり、ポンドを金に兌換して支払った
方が有利になる

(引用終了)

為替の機能範囲外を超えた時(第一次対戦前や1925年あたり)英国
と米国で、大量の金(ゴールド)が大西洋を越えて移動して決済さ
れたように、2008年の今は、「ドル基軸体制」という為替が機能の
範囲を飛び越えてしまったので、2008年版としては「通貨スワップ
」という名目をとりながら、大量に米国の通貨を溜め込んでいる日
本という国と「為替範囲内」でなく、「範囲外」で行うという緊急
事態になっている、と考えていいのでしょうか?

宅美教授は世界中の経済学者のほとんどがあの時のゴールドの英・
仏・米の移動を収支バランスだけで見て軽視し、その流動量を軽視
しすぎと言っていますが、今後はこの<通貨スワップ>によって来
年の1月まで世界の米ドルが大量に移動すると考えていいものでし
ょうか? 

F様、できれば「無料版」で教えてください。よろしくお願いしま
す。 

土井拝。
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(Fのコメント)
為替相場を通すということは、ドル暴落時に市場価格での交換にな
るが、「通貨スワップ」であれば、相対取引であるので現時点のド
ルと円の交換レートで契約を結べる。

この「通貨スワップ」ということだけで、米国はドル暴落の心配を
していることが分かる。ドル維持ではドル買い、円売りを日米で行
いことになる。しかし、このために、ドルでの外貨準備高が大きく
なるが、そのドルは大幅に減価することになる。
この面からも米国の企業や銀行を市場価格で買収するなど助けて、
資産価値を維持する必要があるとみる。

ドルの基軸通貨機能停止すると、世界の通貨間の為替交換機能が著
しく低下して、貿易等に混乱が起こることになる。

このため、欧米日などの中央銀行は協力して、このドル暴落の事態
に備えるしかない。しかし、ドルが基軸通貨機能で無くなるので、
それに代わる基軸通貨制度を作ることである。この仕組みは基軸通
貨の多極化であり、アジア共通通貨、湾岸共通通貨、EUなどの地
域基軸通貨を作り、その基軸通貨間の為替取引をする体制になると
見ている。この構想をライス国務長官が提唱している。

このため、東京金融取引所の為替先物を拡充する必要にある。変動
相場制には、通貨ヘッジ機能が必要であり、多数の通貨との先物を
準備しておくことが重要になる。

このように新体制移行には準備が必要になり、その時間稼ぎをする
必要があり、ドルの暴落を当面はしのぐことになる。

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