3054.米金融倒産連鎖からの脱出



やっと、米国も金融倒産連鎖防止の政策にシフトした。  Fより

先週1週間で、米金融機関の風景は一変した。しかし、この原因は
米財務省が発表した米住宅公社対象の信用デリバティブの清算でし
た。住宅2公社は、民間が発行する住宅ローンを保証していたが、
このローンを保証する方法として、CDS(クレジット・デフォル
ト・スワップ)または金利スワップを利用していたが、この運用を
止めることにした。

保証がないプライムの住宅ローンでも、大幅な安値で市場で取引さ
れて、大幅な損失が銀行や証券会社を襲ったのだ。この損が原因で
リーマン・ブラザースが負債総額64兆円で倒産した。

すると、リーマン・ブラザースが発行した債券を保証するCDSを
しているAIGなどに保証権利行使を迫ることになる。日本の与謝
野経財相が「ハチが刺した程度」の被害であったと言ったのは、
CDSで保証させているリーマン発行の債権が多数あったというこ
とで、保証で資金が戻るからである。

しかし、資金繰りが厳しいAIGは、リーマン倒産前にFRBへ支
援を申し出た資金は4兆円であったのが、リーマン倒産後は9兆円
になっている。この差額5兆円がCDSでリーマンの債券保証に必
要なお金だったのだ。

このように、デリバティブに火がつくと、その連鎖がどんどんおよ
んで、手がつけられない状態になる。このデリバティブの総額は、
400兆ドル以上(4京円以上)、米銀のデリバティブは140兆
ドル、この80%がスワップ系のデリバティブである。CDS総額
で、62兆ドル強である。米銀のデリバティブだけでも、世界にあ
る全銀行の資産よりも数十倍も大きい。CDSの1%でも損失が出
ると60兆円になり、大手銀行でも即座の対応はできずに倒産する
ことになる。

このように大きなデリバティブ取引であるが、誰もその実態を監視
していないことに、昔から世界の知識人から不安の声が上がってい
た。米ブッシュ政権は新自由主義を進める立場から、この制限をし
なかったし、反対に金融の規制緩和を進めた。

この事態で見直しを真剣にする必要が出ている。新自由主義という
サッチャーイズムを捨てて、金融の規制を強化する方向に政策をシ
フトすることが必要になっている。

その1つが、デリバティブの規制である。資産相当の数倍までしか
CDSなどの保証業務ができないとか、供託金を預けて、もし一企
業で賄えない事態が出たときに協会が肩代わりをするなどの制度を
つくり、デリバティブの監視をする機関を作るしかない。

当面は、全CDSの清算をして、チャラにするしかない。そして、
実態の証券や債券の価格で公的な買取機構が買う仕組みを作ること
である。これで、やっと証券会社や銀行の損失の確定ができ、損失
額でどうするかがわかる。重要な銀行には、公的資金を入れて、そ
こを中心として、倒産する銀行を合併するしかない。もちろん、倒
産する銀行が発行した債券は無価値になり、株も無価値になるが、
米政府も無限大に資金を確保できない。CDSは清算しているため
に、保証もない。

1990年代に長銀や日債銀を立直すために、米国のファンドを利
用したように。今度は日本もある程度の資金を出して、米国の銀行
を立て直しに協力することが必要である。そのとき、デリバティブ
取引があると損失が確定できないので、このデリバティブを清算し
ていることが条件になる。

また、1990年代「いすず」など産業界に日本の銀行が資金を提
供できずに、米国GMなどが資金を入れて立て直したが、その恩返
しを行うことが必要になっている。

日本が苦境のときに、米国ファンドが日本を助けたように、日本が
今度は米国を助ける番である。

有料版では、サッチェーイズムの金融資本主義の歴史を見る。興味
のある方は、有料版をお取りください。

この事態はどう収まるのでしょうかね。
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米、金融安定へ総合対策 公的資金「数十兆円」、貯蓄型投信を保護
(nikkei) 
 【ワシントン=大隅隆】米政府は19日、金融危機の拡大を防ぐた
めの総合金融安定化対策の大枠を固めた。(1)公的資金を使った不良
資産の買い取り機関を創設する(2)貯蓄性の高い投資信託MMF(マ
ネー・マーケット・ファンド)の保護に政府基金最大500億ドル
(約5兆4000億円)を使う(3)金融機関株式の空売りを全面禁止する
――などが柱。投入する公的資金の規模は数千億ドル(数十兆円)
にのぼる見込み。焦点の金融機関の不良資産買い取り策は来週中の
決定に向け議会と最終調整を急ぐ。 

 ブッシュ米大統領は同日午前記者団に「現在の不安定な状況を考
えると、政府介入は必要。(システム安定化へ)多額の公的資金を
用意している」と語った。これに先立ち記者会見したポールソン財
務長官は公的資金の投入規模は「数千億ドル(数十兆円)の議論を
している」と語った。 (01:50)
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今すぐ行動が必要=米経済「重大な局面」−米大統領
9月20日1時36分配信 時事通信

 【ワシントン19日時事】ブッシュ米大統領は19日、ホワイトハウ
スで包括的金融対策について声明を発表、「経済を守るため今すぐ
行動しなければならない」として、議会に早期の立法措置を要請し
た。
 大統領は、大型金融破綻(はたん)と金融市場の混乱で、「米経
済は重大な局面にある」との認識を表明。公的資金による金融機関
の不良資産買い取りなどについて、「金融システムの問題を解決す
る決定的な措置だ」と強調した。 
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米財務省、つなぎ国債10兆5000億円発行へ FRB支援で
(nikkei)
 【ワシントン=米山雄介】米財務省は18日、米連邦準備理事会
(FRB)による市場への流動性供給や金融機関への直接融資を支
援するために創設した臨時国債発行プログラムの一環として、短期
のつなぎ国債(CMB)を1000億ドル(約10兆5000億円)発行する
と発表した。調達資金は実質的にFRBの流動性供給の原資となる。

 計画では19日に期間45日物と59日物をそれぞれ300億ドル、24日に
7日物を400億ドル発行する。同プログラムを導入した17日に入札を
実施した400億ドルに続き、大量発行となる。(13:04) 
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膨張する「金融ギャンブル」=CDS、邦銀も57兆円の取引
(時事)
 米政府・当局による保険最大手AIG救済ではデリバティブ(金
融派生商品)「クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)」が
注目された。企業の破綻(はたん)リスクを売買するCDSは投資
に対する保険効果を持つとされ、市場の混迷を背景に、世界的に取
引が増加。国内でも大手銀行の取引残高(想定元本ベース)は
5541億ドル(約57兆円)と1年間で倍増した。一方、CDS
に深入りした米金融機関の危機が続く中、保険機能を維持できるの
か懸念がくすぶっている。

 ◇ギャンブルに酷似

 世界のCDS残高は2007年末時点で62兆ドル強(約6500
兆円)と2年間で4倍近くに膨張した。邦銀も昨年夏以降、金融市
場が動揺する中、投資リスクを回避する狙いから、こぞってCDS
を購入。日本銀行によると、大手銀行など13金融機関のCDS残
高は今年6月末で5541億ドルと昨年6月末(2700億ドル強
)から倍増した。
 しかし、CDSは相対で取引・転売され、対象企業の債券を保有
していなくても購入できる。理論的には誰でも大手企業の倒産リス
クに投機でき、ヘッジファンド関係者は「保険よりも、競馬や選挙
など何にでも賭けられる英国の賭博『ブックメーカー』に仕組みは
近い」と指摘する。(2008/09/18-19:10)
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米住宅公社対象の信用デリバティブ、前倒し清算で巨額損失も
(nikkei)
 【ニューヨーク=山下茂行】米連邦住宅抵当公社(ファニーメイ
)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)を対象にした信用デ
リバティブ(金融派生商品)の前倒し清算に絡んで、世界の金融機
関に巨額の損失が発生する可能性が出てきた。損失は数百億ドル規
模にのぼるとの見方も浮上している。一部の日本の金融機関も取引
しているとみられるが、実態は把握しきれず、実際の影響は不透明
だ。

 業界団体の国際スワップ・デリバティブズ協会(ISDA)は8
日、公的管理の決定を受けた住宅公社の債券を対象とするクレジッ
ト・デフォルト・スワップ(CDS)などを前倒しで清算すると決
めた。(09:27) 
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米GM:いすゞにトラック部門の売却打診 譲渡価格隔たり

 経営不振に陥っている米自動車最大手、ゼネラル・モーターズ(
GM)が、国内トラック大手のいすゞ自動車に、商用トラック部門
の売却を打診したことが19日分かった。いすゞは正式に申し入れ
があれば検討に入る考えだ。ただ、譲渡価格の隔たりは大きいと見
られ、実現の可能性は流動的だ。仮に交渉がまとまれば、日本メー
カーが米自動車大手の事業を買収する初のケースになる。

 関係者によると、GM側が9月中旬までに、トラック部門の大半
を占める中型トラック部門を売却する意向をいすゞ側に伝えた。
GMが近く譲渡額などを提示する模様だ。

 GMは主に「GMC」というブランドで北米などで商用トラック
事業を展開している。乗用車では世界トップだが、商用トラックの
世界シェアは06年の中大型トラック分野で2・1%(15位)と
振るわず、収益面でも「足を引っ張っている部門」(国内トラック
大手役員)とされる。

 いすゞの中大型トラックの世界シェアは2・7%(12位)。
他社が手薄な小型トラックを主力としており、新興国などで販売を
伸ばしている。

 買収が実現すれば、中大型トラックのシェアも5%近く(8位前
後)に高まり、トヨタ自動車と子会社の日野自動車の合算シェア(
3%)を抜き国内首位となる。

 いすゞは06年までGMから出資を受けたほか、現在も海外事業
で連携するなど親密な関係を維持している。【宮島寛、森有正】

毎日新聞 2008年9月20日 東京朝刊
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デリバティブってなんだろう?
http://www.shiruporuto.jp/finance/kinyu/deriv/deriv101.html

1.デリバティブとは?
金融商品には株式、債券、預貯金・ローン、外国為替などがありま
すが、これら金融商品のリスクを低下させたり、リスクを覚悟して
高い収益性を追及する手法として考案されたのがデリバティブです。

こうしたリスク管理や収益追及を企図したデリバティブの取引には
、基本的なものとして、その元になる金融商品について、将来売買
を行なうことをあらかじめ約束する取引(これを先物取引といいま
す)や将来売買する権利をあらかじめ売買する取引(これをオプシ
ョン取引といいます)などがあり、さらにこれらを組合わせた多種
多様な取引があります。

デリバティブはそれぞれの元となっている金融商品と強い関係があ
るため、デリバティブ(derivative)という言葉は、日本語では一
般に「金融派生商品」とか「派生商品」などと訳されています。

先物取引やオプション取引などに代表されるデリバティブ取引は、
私たちのさまざまなニーズに応えるべく、多様に考案・形成され、
リスクヘッジや効率的資産運用等の手段として幅広く活用されてい
ます。

2.デリバティブの種類
デリバティブ取引は、大きく分けて先物取引、オプション取引、ス
ワップ取引の3種類に分類されます。

さらに、先物とオプションを組み合わせた先物オプション、スワッ
プとオプションを組み合わせたスワップションなどなど、デリバテ
ィブとデリバティブを組み合わせた商品も多く開発されています。

3.先物取引とは?
先物取引とは将来の売買についてあらかじめ現時点で約束をする取
引のことです。現時点では売買の価格や数量などを約束だけしてお
いて、将来の約束の日が来た時点で、売買を行います。

前もって売買の価格を決めておくことができるので、価格変動する
商品の売買につきものの価格変動リスクを回避できるという利点が
あります。

4.オプション取引とは?
海外旅行ツアーのオプション・ツアーは、参加するかしないかどち
らでも好きなほうを選択できるものですし、携帯電話のメールやイ
ンターネットサービスのオプションは利用しても利用しなくてもい
いものです。パソコンの購入などで、外部スピーカーなどの周辺機
器はオプションで付けたり付けなかったりできるというのもあるで
しょう。

つまりオプションとは、自分の都合に合わせて使うか使わないか決
められる選択権のことです。

デリバティブのオプションも同じように、選択権です。何を選ぶ権
利かというと、ある金融商品をあらかじめ決めておいた価格で売買
するかしないかを選べる権利です。

ただし、旅行やインターネット等のオプションが、無料サービスや
おまけではないので利用するには追加料金が必要になるのと同じよ
うに、このデリバティブのオプションもタダではなく、権利を手に
入れるためには代金を支払わなければなりません。

5.スワップ取引とはスワップとは、元来、等価値のものの「交換
」という意味です。デリバティブのスワップ取引において交換する
のは、将来にわたって発生する利息です。同じ通貨で異なるタイプ
の利息を交換するのが金利スワップです。また、異なる通貨の利息
などを交換する通貨スワップやクーポンスワップもあります。

スワップ取引は将来の金利変動リスクを管理する手法として金融機
関のあいだで急速に広まり、さらに企業の財務管理に用いられるな
ど、非常に重要な地位を確立しています。そして、その汎用性の高
さから個人向け金融商品の中にも取り込まれるようになっています。

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