3009.WTO決裂で見えること



WTO決裂で見えることがある。それを検討しよう。   Fより

WTOの交渉を見ていると、1つのことに気が付く。それは欧米諸
国は農業国であり、防戦する日本、中国、インドは工業国家である
ことである。WYOの前提条件が大きく崩れている。

米国や欧州は農家に補助金を150億ドル以上も出しながら、世界
に安い価格で食糧を供給し、アジアの工業国家である日印中の農家
を潰した後に、食糧価格を高騰させる目論見であることが分かる。
これを阻止しないと4月に食糧暴動が起こったハイチと同じ運命が
、アジア諸国に襲い掛かることになる。

ハイチの首相は1990年代の農業貿易自由化が大失敗であると述べて
いる。安い米国産の米を入れたことで、ハイチ米を作る農家が成り
立たなくなり、廃業に追い込まれた。そして、その廃業で米の自給
率がほとんどない状態で、米を高騰させる米国に怒りを感じると言
っている。米市場にも米投資ファンドが入って、高騰を演出したこ
とが知られている。

このように欧米の目論見はハイチの危機で十分学習することが必要
であり、これと同じ手法でトウモロコシでも米国はバイオエタノー
ルに補助金を出して、高騰させている。もう戦略を隠すことも出来
ないほど米国は農業産品にしか競争力がないのである。

当初、WTOの農業交渉は先進諸国の工業品を輸出する代わりに発
展途上国の農産物を輸入することが目的であったが、今回のWTO
会議は雰囲気が大きく違っていた。欧米とアジア諸国では立場が大
きく逆転していたのである。

このため、インドが先頭に立って、欧米の目論見を崩した。日本は
欧米と同じ先進国という立場を取ろうとしたが、それは日本の国益
とは違っているので、交渉に参加も出来ない状態になったのである。

世界の農業情勢が変化したことが、まだ日本の政治家も官僚も気が
付いていないのでないかと心配である。日本は、戦後一貫して零細
農家の保護で来たために、インドや中国と同じようなことになった
のである。欧米は中規模、大規模農家を育てて、農産物を国家戦略
物資にするために補助金を出している。このため、農産物を工業製
品の代わりに貿易品目とできるのである。

日本も企業などを参入させて、大規模農家を育てることをして市場
価格に近づける必要がありそうである。しかし、当面の選挙のため
に零細農家も保護するしかない状態であり、ジレンマの状態に日本
はあるのでしょうね。

内閣改造もあり、どうなりますか??
強いリーダーシップを望む国民を納得させられるかですね。
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WTO交渉が決裂 輸入制限めぐる対立解けず
(nikkei)
 【ジュネーブ支局】AP通信などによると、世界貿易機関(WT
O)新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)の閣僚会合は29日午後
、決裂した。緊急輸入制限(セーフガード)問題をめぐる途上国と
先進国の対立が解けず、調整が不調に終わった。近く拡大会議を開
き、正式に発表する方向。 (01:21)
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キューバ、進む経済改革 農業生産拡大策など導入
(nikkei)
 キューバでフィデル・カストロ前国家評議会議長からラウル・カ
ストロ現議長に政権が移譲されて約5カ月。同国では新たな農業生産
拡大策の導入など経済改革の動きも出始めたが、大胆な開放政策に
は依然慎重な姿勢も目立つ。

 同国政府が新たに導入した農業政策は休耕地を農家に貸与する制
度。生産意欲がある農家や農業団体に耕作を委ね、生産を活性化す
る措置だ。

 同国では休耕地が2001年から05年の間に16%増加。ジャガイモや
主食のコメなどの生産が軒並み減り、食料の多くを輸入に頼る状況
が続いている。世界的な食料高騰も追い打ちをかけており改革は急
務だ。

 新農業政策については肥料や農機具の不足をどう補うのか、政府
主導の硬直した流通が続く中で農家の意欲を刺激できるか疑問も残
る。ただラウル議長は今月、国会で「社会主義が意味するのは権利
や機会の平等で収入の平等ではない」と述べ、新制度の効果に期待
を示した。(07:04)
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米で肥料価格が急騰 一段の食料高招く可能性
(nikkei) 
 米国で肥料価格が急騰している。カリウムなど鉱物系肥料の平均
価格は昨年に比べ約2倍に上昇した。鉱山開発の遅れで生産が需要増
に追いつかないうえ、中国やインドとの争奪戦が激しくなっている
ためで、一段の食料高を招く一因となる可能性がある。 

 肥料価格は2004年から上昇し、今年に入って一段高となった。ガ
ソリン代替燃料のエタノール向け需要拡大を映し、単位面積あたり
の肥料使用量が多いトウモロコシ栽培がさかんになっているためだ
。(シカゴ=毛利靖子) (12:12)
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洞爺湖サミットは食糧問題 外務省・河野雅治外務審議官インタビ
ュー 
2008.6.10 21:42(sankei)

 7月に開かれる北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議)で、福
田康夫首相の個人代表(シェルパ)を務める外務省の河野雅治外務
審議官は10日、産経新聞のインタビューに応じ、食糧価格高騰の
一因とされる穀物の輸出規制問題について、「規制の自粛は(G8
の)最大公約数としてあると思う」と述べ、G8は規制自粛をベー
スに議論を進めるとの見通しを示した。

 輸出規制が焦点の一つだった国連の食糧サミットでは、自粛・撤
廃への反対意見が強かったため、共同宣言は「制限的措置を最小限
にすることが必要」との表現にとどまり、価格抑制に向けた強いメ
ッセージを打ち出せなかった。今回のサミットでは、食糧問題につ
いて、首脳宣言とは別に特別声明をまとめることも検討。より強い
メッセージを盛り込み、食糧の価格高騰に歯止めをかけたい考えだ。

 また、気候変動問題では、2050年までに世界全体の温室効果
ガス排出量を半減する長期目標をG8首脳が合意できるかが焦点。
河野外務審議官は「(各国の)溝が埋まるかどうか予断を許さない
」と語り、昨年のサミットから一歩踏み込んだ合意の実現は容易で
ないとの認識を示した。

 長期目標については、「主要排出国の中国やインドが参加した形
で合意するのが最大の目標」と強調。サミット期間中に開催される
主要排出国会合(MEM)首脳会合での合意形成を目指したい考え
だ。



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