2977.ブッシュマンのロック・ペインティングはアートではなかった!?



現代という芸術:ブッシュマンのロック・ペインティングはアート
                ではなかった!?
From得丸

皆様、

言語(音声記号言語)について考えていたら、南アフリカのブッシ
ュマンの洞窟絵画の目的についての珍説を思いつきましたので、お
届けします。


現代という芸術 − ブッシュマンのロック・ペインティングはア
                    ートではなかった!? 

 現生人類の脳容量は、霊長類の中でもずばぬけて大きい。ヒトの
脳の容量は、チンパンジーの4倍もある。脳が大きいから人類は偉
いのだという暗黙の了解もなされているようにも思う。これまで
その原因は、直立二足歩行や肉食や道具の使用や言語の使用による
と言われてきた。

 だが、インドネシアで発見されたホモ・フロレシエンシスという
道具を使う人類の脳容量もチンパンジー並みであるという報告(マイ
ク・モーウッド他著『ホモ・フロレシエンシス 上・下−1万2000
年前に消えた人類』NHK出版)に接すると、脳の拡大はひとえに言語
の使用による大脳新皮質の発達に由来するのではないかと思えてく
る。

 今から約10万年前、我々の先祖は、南アフリカのインド洋沿いに
ある、暖かくて、安全で、奥は暗い洞窟の中で、退屈な日々を送っ
ていた。退屈をまぎらわすために、彼らは手足や胸を叩いたり、舌
打ちや唇を使って音を出して、みんなで音楽を楽しんでいた。それ
により、舌や唇の筋肉が発達して、「あえいおう、かけきこく、さ
せしそす、、、」という50音を生み出したのだった。(南アフリカの
黒人言語の50音は日本語と同じだそうだ。)

 この50音を組み合わせて記号を作り出すと、2音節で2500、3音節
で12万5000、4音節ではなんと625万もの異なった記号を作り出すこ
とができる。「あお」、「あか」、「あき」、「あさ」、「あす」
といった音声記号に、それぞれ対応する場面や現象や物の姿を記憶
して、使うたびに照合することによって、高度な言語コミュニケー
ションが可能になった。人類だけが手にしたこのすばらしい言語は
、音声記号言語(Vocal Code Language)と呼ぶことができる。

 小学一年生の国語の教科書の冒頭が、簡単な単語とそれぞれに対
応する絵の組み合わせでできているのは、この音声記号言語が音声
記号と視覚的映像を組み合わせることによって成立していることを
反映しているのだ。私たちは、言葉をイメージとセットで覚える。
この記号やイメージの記憶とマッチング処理には、きわめて大きな
記憶容量が必要になるので、大脳新皮質では言語野と視覚野が広い
領域を占めるのだ。

 我々の脳は、音声記号言語を使用することによって大きくなった。
 洞窟の中は安全だから、生まれてから2,3年はきわめてひ弱で、
一人歩きすら満足にできない幼児期を過ごすことができる。その代
わりに、生後3年間で、言語を覚え、産道の制約によって母胎内では
これ以上発達させることができなかった脳を発達させるのだ。

 南アフリカに数万箇所あるというブッシュマンのロック・ペイン
ティングは、宗教的な意味があると言われているが、もしかすると
そうではなくて、言葉と対応するイメージを共有して記憶するため
の国語教科書あるいは辞書だったのではないだろうか。これは私の
思いつきであり、まだ確たる証拠があるわけではない。だが、わけ
のわからないものを、なんでも宗教やアートで説明することよりも
マシかもしれないと思っている。

得丸公明
2008.6.29


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