2989.イラン・イラクの連携



イランとイラクの連携が明確化し、米軍撤退を求められている。
                  Fより

石油高騰の原因の1つが、イランの核濃縮問題でイスラエルがイラ
ンを攻撃するという情報である。中東全体の不安定さに結びつく可
能性という地政学的な理由で高騰する石油の姿がある。

イラクのマリキ首相は7月7日にアラブ諸国大使と会い、米国にイ
ラク駐留米軍の撤収スケジュールの明示を求めていると説明した。
事実上の早期撤収要求で、同首相が米軍撤収期限の提示を公に訴え
るのは初めてであり、多国籍軍のイラク駐留を規定する国連安全保
障理事会の決議は08年末で失効するために、米国はその後も米軍を
イラクに駐留させる協定を結ぶ方向であったが、これを否定したこ
とになる。

シーア派のマリキ首相は長いことイランに亡命していたことで、基
本的に親イランである。サドル師とのシーア派同士の戦闘仲介役を
イランにお願いしたりしていた。このようにイラクはイランの保護
国化している。それと、マリキ首相の裏にはイラクのシーア派宗教
指導者シスターニ師の意向も働いているように感じる。イランとは
兄弟国であるとシスターニ師は、常々言っている。

当初、米国にマリキ首相も支援を期待したが、現状の米国の金融混
乱を見て、米国への期待を捨ててイランや中東諸国に乗り換えたよ
うに思う。サウジなど湾岸諸国も当初イランに警戒していたが、イ
ラン・イラクの連携を見てからは、イランを取り込むことを考え始
めている。

この状態を見て、危機感を持ったのがイスラエルである。イスラエ
ルはイランの弾道ミサイル「シャハブ3」の射程範囲に入り、核を
持たれると核攻撃で滅亡する可能性がある。それに増してイラクに
米軍が居なくなることで、イランの干渉帯としてイラクができて、
益々イランが有利になる。イスラエル存亡の危機と捉えているよう
だ。このため、イスラエル空軍機がイラク上空で演習を行ない、イ
ラン攻撃への準備を進めている。

しかし、米統合参謀本部のマレン議長は、イスラエルがイランの核
開発阻止に向け、軍事攻撃も辞さない構えを見せていることについ
て「いかなる動きであれ、危険性の高い動きになる」と述べ、かつ
3つ目の戦線は米国にとって大いなる負担になると強調し、米軍の
余裕は限られているとした。また、デュビック駐イラク部隊司令官
は、イラクにおける米軍の治安任務について「来年半ばまでにほぼ
終了する見通しだ」と述べ、2009年中の治安任務終了が可能だとの
見方を示した。現時点で、イランのイラク米軍基地はミサイル目標
になっているので、早期の撤退に言及したように思う。

イラン・シーア派ハメネイ師側近もイラン攻撃なら中東32の米軍基
地とイスラエルに弾道ミサイルなどで報復すると述べている。

米国の狙いは、イランに核兵器製造の野望を止めることである。
しかし、現時点で米軍もイスラエル軍もイラン攻撃ができないよう
に感じる。既に北朝鮮の核がイランに持ち運ばれている可能性を否
定できないし、それを運ぶ弾道ミサイルはあるので、危険な行動が
できるとは思えない。このため、イランが交渉のテーブルに着き、
決着させるための脅しであるとしか思えない。

もう1つがヘッジファンドや金融機関の石油先物での儲け確保のた
めの情報を与えることであろうと読んでいる。米国ユダヤ人からの
資金的な支えがないと、イスラエルの国家財政は万年赤字であり、
イスラエル国も持たない。米国金融機関やヘッジファンドの多くが
ユダヤ人たちが経営している。そのような地政学的な理由と人為的
な行為で石油市場の作られた高騰は長くない。もう終焉に近いと見
た方がいい。

それと、米国は非常時のドルという構図を作り、ドルペッグから湾
岸諸国が離脱しないようにしているようにも感じる。石油とドルの
リンクがなくなったら、ドル基軸通貨制度は崩壊することが、米金
融不安から確かになっている。このため、イスラエルは米国からの
要請で危機を作り出しているようにも感じる。

さあ、どうなりますか??
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イラン攻撃なら「32の米軍基地に報復」 ハメネイ師側近が示唆
(nikkei)
 【リヤド=加賀谷和樹】12日のイランのファルス通信によると、
同国の最高指導者ハメネイ師の側近モジュタバ・ゾルノウル氏は、
ウラン濃縮停止を拒むイランが軍事攻撃を受けた場合、中東の32の
米軍基地とイスラエルに弾道ミサイルなどで報復する可能性を示唆
した。イランの報復対象については、同師の別の代理人が「(イス
ラエルの主要都市)テルアビブとペルシャ湾の米艦船」と指摘して
いた。(07:02) 
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米軍司令官「イラク治安業務、来年半ばに任務終了」
(nikkei)

 【ワシントン=弟子丸幸子】デュビック駐イラク多国籍軍治安移
行部隊司令官は9日、米下院軍事委員会で、イラクにおける米軍の治
安任務について「来年半ばまでにほぼ終了する見通しだ」と述べ、
2009年中の治安任務終了が可能だとの見方を示した。同委員会の公
聴会で証言した。治安任務の終了時期について米軍の幹部が公言し
たのは初めて。

 米軍の撤収時期の見通しについては明言を避けた。イラク治安維
持任務が終了した場合にも、米軍は一定規模の駐留を続ける予定。
米イラク両国は現在、来年以降の駐留の根拠となる地位協定交渉を
7月末までに締結することで、交渉を進めている。

 デュビック司令官は公聴会で、イラクの治安部隊の能力は順調に
向上していると強調。07年7月時点に比べ、部隊規模も約45万人から
約57万人に増えたことを指摘した。(14:50)
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イラク首相、米軍の早期撤収を要求 隣国イランに配慮か
(nikkei)

 【ドバイ=加賀谷和樹】イラクのマリキ首相は7日、訪問先のアラ
ブ首長国連邦(UAE)で同国駐在のアラブ諸国大使と会い、米国
にイラク駐留米軍の撤収スケジュールの明示を求めていると説明し
た。事実上の早期撤収要求で、同首相が米軍撤収期限の提示を公に
訴えるのは初めて。イラク駐留米軍の攻撃を恐れる隣国イランへの
配慮をにじませた格好だ。

 マリキ首相は各国大使との会談で、2009年以降の米軍のイラク駐
留を可能にする両国間の協定について、米国には正式な協定ではな
く「外国軍の撤収や撤収スケジュールの設定を含む覚書」の締結を
要請していると主張。「いかなる(米国との)合意もイラクの主権
を尊重しなければならない」と指摘した。

 15万人以上の米軍を軸とする多国籍軍のイラク駐留を規定する国
連安全保障理事会の決議は08年末で失効する。米国はその後も米軍
をイラクに駐留させるため、イラクと安全保障に関する協定を結ぶ
方針だ。(12:06)
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イラン核施設攻撃「ハイリスクな動きに」 米統合参謀本部議長
(nikkei)
 【ワシントン=弟子丸幸子】米統合参謀本部のマレン議長は2日の
記者会見で、イスラエルがイランの核開発阻止に向け、軍事攻撃も
辞さない構えを見せていることについて「いかなる動きであれ、危
険性の高い動きになる」と述べ、強い懸念を示した。「イランの振
る舞いを変える解決策はまだ残っている」と外交的な解決を目指す
米政府の姿勢を重ねて示した。

 マレン議長はイスラエルの攻撃に米国が加わるとの見方について
も「3つ目の戦線は米国にとって大いなる負担になる」と強調。イラ
ク戦争とアフガニスタンのテロ掃討作戦により、米軍の余裕は限ら
れていると指摘した。

 米紙報道によると、イスラエルは6月初旬、戦闘機100機以上が参
加する大規模な軍事演習を実施した。(13:02)
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NY原油時間外:最高値146.90ドル-イスラエル空軍演習と現地紙報
道 

7月11日(ブルームバーグ):ニューヨーク原油先物相場はロンド
ン時間11 日の時間外取引で一時、1バレル=146.90ドルとなり、最
高値を更新した。イスラエルがイラン攻撃を準備しているとの憶測
が背景。 

  イスラエル紙エルサレム・ポストが、イスラエル空軍機がイラ
ク上空で演習を行ったと報じ、イスラエルによるイラン攻撃への懸
念が高まった。ブラジルでのストとナイジェリアの武装グループの
新たな活動で供給が減少するとの懸念も相場を押し上げている。 

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)の原油先物8月限は時
間外電子取引で一時、5.25ドル(3.7%)高となった。ロンドン時
間午後1時46分(日本時午後9時46分)現在は1バレル=146.59ド
ルで取引されている。 

  エルサレム・ポストは、イラク高官の現地メディアでの発言を
基に、イスラエルの戦闘機がイラクの領空で米軍の基地を利用して
演習を行っており、イラン攻撃に向けた訓練の可能性があると報じ
た。イスラエル政府のマーク・レゲブ報道官は報道を否定した。イ
ランは今週、イスラエルに到達可能な中長距離ミサイルの発射実験
を行った。 
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イラン、ミサイル試射 射程最大2000キロ、イスラエルけん制
(nikkei)

 【ドバイ=加賀谷和樹】イラン革命防衛隊は9日、演習で少なくと
も9発のミサイルを試射した。仮想敵国のイスラエル全域、欧州の一
部を射程に収める核弾頭の搭載が可能とみられる改良型の弾道ミサ
イル「シャハブ3」(射程2000キロメートル)を含む。イランにウ
ラン濃縮停止を求めることで一致した主要国首脳会議(洞爺湖サミ
ット)に合わせた威嚇で、イラン核施設への軍事攻撃の可能性を否
定しない米国やイスラエルに対するけん制ともみられる。


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