2974.チャイナ・クライシス



チャイナ・クライシス


  
                           日比野

1.ワン・チャイナという意識

四川大地震の救援活動や中国国内動向について、縁起のレイヤーの
視点から検討してみたい。

縁起のレイヤーという概念は「2862.縁起のレイヤーが結ぶ世界」
で示したように、世界の繋がりを人や社会の「縁」ごとに階層化し
て見るというもの。

これまでの中国の縁起レイヤー構造は、血縁レイヤーだけがあって
、その上の地域共同体・経済・思想レイヤーは目の粗い網がかかっ
ているだけの非常に弱い繊維だった。何故かといえば、自分の血縁
以外は全くの他人、異世界であって、自分とはまったく関係ない、
という意識があったから。

そんな意識に変化を起こしたのが、チベット問題とそれに伴う北京
五輪聖火リレーへの世界各国からの抗議行動。

世界はチベット人への人権侵害という観点から抗議を行ったのだけ
れど、中国政府や人民はそうは受け取らなかった。中国政府はチベ
ット独立が、中国分裂への道だと看過して徹底的な弾圧を行ってい
るし、中国人民は世界中が中国を敵にして「身勝手に」非難してい
ると思ってしまった。

その結果、各国の聖火リレーに大量の中国人留学生らが動員され、
「ワン・チャイナ」を叫んだ。

世界からみたら、聖火リレーにおける中国人の振る舞いは偏狭なナ
ショナリズムと映ったのだけど、逆に中国にとって、今まで人民レ
ベルで決して持つことのなかった、漢民族を中心とした国民意識の
醸成に一役買うこととなった。

国内を纏めるには外敵を作ればいいとは良く言われることだけれど
、世界を敵役として中国が固まる契機になった面は否めない。

こうした「ワン・チャイナ」意識は縁起レイヤーでいえば、地域共
同体・知人友人レイヤーと思想レイヤーの二つで広がり始めた。

ただし、思想レイヤーはあくまで中国政府の統制監視下にある。政
府に不都合な情報は決して流されることはない。ネットに政府非難
めいた書き込みでもしようものならあっという間に削除される。

だから、思想レイヤーで人民の活動が許されるのは、政府にとって
都合の良い発言をするときだけ。聖火リレーへの非難に対する反発
は政府公認のものであったが故にこのレイヤーで広がることができ
た。

しかし経済発展の恩恵を受けて、人民はもうひとつ別の情報伝達手
段を得ることが出来た。携帯電話とショートメールがそれ。

中国国内の携帯電話は、2006年9月末の段階で4億4300万
を超え、3人に1台の割合にまでなっているという。この携帯電話
による情報伝達は、おもに知人友人・地域共同体レイヤーといった
、下層レイヤーでの活動が主なもの。

世界各国の聖火リレーに対する抗議活動に対して、人民はカルフー
ルへのデモ活動など大きな反発を示した。世界からの非難が逆に自
らを中国人であると強く意識させた。

そういった、ワンチャイナという意識の情報発信は、当局の監視の
目が行き届くネット掲示板などの思想レイヤーのみならず、携帯メ
ールを中心とした知人友人・地域共同体レイヤーでも当然行われて
いただろう。

世界各国からの非難とそれに対する反発は人民に国民意識を持たせ
ると同時に、これまで殆ど存在し得なかった知人友人・地域共同体
レイヤーをも形成させる事にもなったといえる。


 
2.中間レイヤーがなかった中国

聖火リレーを切っ掛けとして形成し始めた知人友人・地域共同体レ
イヤー。国民国家となるためには重要な礎。

だけど、いくら知人友人・地域共同体レイヤーが形成されたからと
いって、一足飛びに国民意識が成熟するわけじゃない。ひとりひと
りが国民としての責任や義務、そして民主意識を持ってこその国民
国家。

もちろんそういった民主意識を持つことは中国政府が許さない。

だから、現段階での中国の知人友人・地域共同体レイヤーにおける
国家意識というものは、頭の中でただ中国はひとつなんだ、と観念
的に思っているだけの脆いもの。その考えは、これまでの教育や思
想統制に彩られたものであって、実生活に裏付けられたものじゃな
い。

それは本当の意味での地域共同体レイヤー、経済レイヤーが十分に
発達していないということが影を落としてる。

血縁レイヤーと思想レイヤーといった、最下位、最上位レイヤーだ
けが活性化して、中間レイヤーが活性化していない社会に暮らす人
々は、ともすれば容易に扇動に煽られることになる。

自分個人の生活が周辺社会、経済活動と十分に繋がってなくて、い
きなり思想領域に繋がってしまっているから、いわば地に足が着い
ていないような状態。自分の考えが自分の生活に直接に繋がってい
ないから、その考えは現実感を持って捉えにくい。書生っぽい立場
に立っている。

自分の考えや行動が回りの世界にどういう影響を与えるか、という
想像力に乏しくなるから、なにかの切っ掛けで容易に考えが変わり
得るし、金でも貰えるならば簡単にその考えを捨てることだってあ
る。

だから、今の中国で教育を受けられるレベルにある裕福な層であれ
ばあるほど、逆にこうした歪なレイヤー構造で生きている危険が高
い。但し、もっともっと裕福で海外留学したまま帰ってこない、と
いう状況になれば、そんな社会から脱出できるチャンスが巡ってく
ることはある。

そうした状況を更に一変させたのが、四川大地震。
 


3.被災者という名の地域共同体レイヤー

今回の四川大地震の救援活動と中国政府・軍の対応と中国人民の反
応で代表的だと思われるものをそれぞれ上げてみる。


◆ 救援活動 
・日本救助隊、活躍できず。医療班は打ち合わせ不足で活動遅延
・おから工事、初動の遅れとそれに伴う救援物資の遅配
・ダム決壊などの二次災害の恐れ

◆ 中国人民の反応 
・中国国内外から義援金、支援物資集まるも横領者に怨嗟の声
・対日印象好転
・核汚染、伝染病の懸念

◆ 中国政府の対応 
・早々の追悼式で幕引き狙う政府
・中止になった聖火リレー
・なにをしていいかわからない人民解放軍


ここで、注目すべきは各々の活動レイヤーが異なっているというこ
と。

救援活動は、もちろん現場での救援活動。その場にいる人たちが被
災者でもあるし、血縁その他関係なしに救援を手伝うこともあるか
ら、その活動領域は地域共同体レイヤー。

中国人民の反応はといえば、被災者への同情心からくる義援金の募
集や救援ボランティアなどがあり、これも縁でいえば、地域共同体
レイヤーが主なもの。無論、一部携帯電話からのショートメールな
どでの情報発信もあるだろう。

中国政府の対応といえば、人民解放軍による救援活動や、被災者へ
の支援活動をする傍ら、メディアの情報統制や、逆に軍の救援活動
を英雄的活動として華々しく報道させたりして、思想レイヤーでの
活動もしている。

つまり、四川大地震後の中国では、聖火リレーをきっかけに形成し
始めた知人・友人地域共同体レイヤーが、地震を契機にして、活性
化を始めたということ。

遅々をして進まぬ四川大地震被災者の救援活動を横目に見ながら、
注目すべき中国人民の変化が起こってきた。多くのブロガー諸氏が
指摘する、中国人民の被災者に対する募金活動や救援ボランティア
活動がそれ。

これは、聖火リレーによってうっすらと「ワン・チャイナ」の思想
レイヤーが形成し始めたところに、地震という天災が加わった為で
はないかと思う。つまり、地震がある意味の「外敵」の役割を果た
したのではないか。

聖火リレーに対する世界各国の抗議は中国人民にとっては「外敵」
として捉えられたから、中国国民意識の醸成に一役買った。それと
同じ構造が地震を契機に起こったのではないかと思う。

もちろん地震は天災だから、外に敵がいるわけじゃない。だけど、
天が「敵役」となって、四川住人に被害を与えたと考えてみると、
天を責めることなんてできないから、人民のエネルギーは被災者を
助ける方向に向かったのではないだろうか。

ただの推測にしかすぎないのだけれど、こうした人民からの救援活
動といった動きは、これまでの中国では考えられなかったこと。事
実、義援金を送った中国人自身も、こんなことをしたのは初めてだ
とインタビューに答えている。やはり緩やかな国民意識の萌芽のよ
うにも思える。まだまだ地に足が着いていない概念的だけなもので
あったとしてもこの事実は大きい。

四川大地震がもたらしたのはそれだけじゃない。被災者達は等しく
被災したという事実を持って、互いに同じ立場になった。同じ被災
者という地域共同体意識が醸成されてゆく。現地に入った救援ボラ
ンティアも、救援活動を通じて仲間意識が芽生えてくるだろう。

産経新聞の福島記者によると被災者達は、その境遇にもかかわらず
、結構逞しく生きているという。被災者が記者に食べ物を勧める姿
。日本の古き良き時代の共同体生活を彷彿とさせる。



4.外国と直接接続した中国の地域共同体レイヤー

救援活動は国内ボランティアや人民開放軍だけじゃない。世界各国
から救援隊や医療チーム、NGOの各種団体が被災者支援に力を貸
している。これはそのまま、被災者達を中心とする地域共同体レイ
ヤーが下位レイヤーレベルで世界と直接接続されたことを意味する
。このことは実に大きな意味を持つ。

これまで中国と世界各国との接続レイヤーは殆ど経済レイヤーだけ
だった。思想レイヤーは情報封鎖を未だ行っている。海外留学生達
から国内へショートメールで情報伝達しているじゃないか、と言え
なくもないのだけれど、それは血縁レイヤーや、知人・友人レイヤ
ーといった下位レイヤーでの出来事であって、最上位の思想レイヤ
ーはやっぱり封鎖されている。

また、経済レイヤーといえども、日本から中国に進出した企業は苦
労している。現地の有力者に袖の下を渡さないと進む話も進まない
。修羅道の国の経済レイヤーは、人間・天道の国とは違って、権力
者に都合のいいように運営されたりするもの。一般人民はまだまだ
このレイヤーでの活動主体じゃない。

縁起のレイヤーから見て、海外から中国に対して情報通信・伝達を
しようとした場合、情報伝達がスムースにできる、伝達損失の無い
層からの通信が一番齟齬が少なくなるのだけれど、これまでの中国
はといえば、思想レイヤーは通信拒絶、経済レイヤーは権力者が押
さえ、地域共同体レイヤーは不活性だった。活性化しているのは血
縁レイヤーくらい。血縁レベルで中国と繋がっている外国人はそん
なにいないから、縁起のレイヤー構造から見れば、外国との満足な
相互通信はほとんど期待できなかった。

ところがこの構図を四川大地震が崩してしまった。被災者達は、世
界各国からやってくる救援部隊の仕事ぶりを直に見ることになった
から。

人命救助自体はできなかったけれど、精神誠意、労を厭わず救助活
動を行い、犠牲者に心からの哀悼の意を示した日本の救援隊の姿は
中国人民に衝撃を与えた。

これまで反日教育を受け、鬼だと教えられていた日本人が全然違う
ということを目の当たりにした。対日印象がぐっと好転したという
のはそれを端的に示しているけれど、縁起レイヤーからみると、最
上位の思想レイヤーから反日情報を教育されてきたのに、外国と繋
がった地域共同体レイヤーからはまったく別の、誠実な信頼できる
日本人という情報が入ってきた。

個人の上位と下位のレイヤーから正反対の情報が入って互いに衝突
を始めてる。どちらが勝つかはまだ分からないのだけれど。

中国国内のネットなどでは、「日本人の救援に感謝する、だけど歴
史は忘れない。」という声も上がっているという。現状は、とりあ
えず両方肯定して、矛盾を抱えたまま消化できていない様子が伺え
る。



5.宙に浮く中南海

聖火リレーと四川大地震、この二つの要素が中国の縁起レイヤーを
大きく変えることになった。特に地域共同体レイヤーの構築と直接
海外と接続された意味は大きい。

救援活動は地域共同体レイヤーで行われていて活性化しているのに
対し、中国政府は支援物資供給を行うと同時に思想レイヤーで情報
を流して、人民の思想統制を一生懸命行っている。対日印象の好転
は望ましいが、好転しすぎるのも望んでいない。あの手この手で宣
伝戦を行っている。

だけど、被災者にとっては、まず生きることが先決。誰であろうが
助けてくれて、食べものをくれる人が一番ありがたい。宣伝で腹は
膨れない。

今は各国の救援物資や救援隊が、地域共同体レイヤーでダイレクト
に救援を行っている。こちらからの影響は格段に大きい。第一、被
災者が政府の宣伝テレビをのんびり見ていられるような状況じゃな
い。神戸震災を経験した日本のカウンセラーも被災者のフォローを
行っている。安易な反日宣伝は意味を成さない。

だから中国政府の宣伝戦は対被災者に限っていえば、効果は薄くて
上滑りしてる。そんな被災者と接触した国内のボランティア達もそ
の影響を受け、政府の宣伝など相手にしなくなってゆくだろう。自
分の身に危害が及ぶ場合は別として。被災者の目の前の悲惨な状況
を前にして、誰が英雄的行動をとっただのどうだの、そんなヒマが
あれば助けろ、となるのが人情レベルでの反応。

中国政府の思惑と人民の求めるものにズレが出ている。中南海は宙
に浮いている。

問題は地域共同体レイヤーを主とした下位レイヤーの活性化が今後
とも続くかどうかということ。海外からの災害救助隊はいずれ引き
上げの時期を迎える。折角繋がった海外との縁起レイヤーが再び切
断される。

その後になっても地域共同体レイヤーが活性化できているかどうか
。これが将来の中国の連邦化・民主化の鍵。

下位レイヤーは自分の生活に密着したものだから、この層が活性化
するということは、一旦直接的行動に出た場合は実に力強いものと
なる。生きるか死ぬかに直結するから、中途半端ではいられない。
その代りに中国全土を揺るがすような動きになるまでにはとてつも
ないエネルギーを必要とする。

そこらの邑程度の規模での暴動があちこちで起こったところであっ
という間に鎮圧されるのがオチ。

今後革命が起きるとすれば、この下位レイヤーが中国全土を覆うく
らいまで形成され、活性化して爆発したとき。実際は金を貰って裏
切ったり、離脱したりする人も出てくるだろうから、完全な統一行
動を取ることは難しいだろうとは思う。

しかし、金で転ばない人も存在する。それは中国の人間関係で一番
強力な「義」で結ばれた間柄。血縁や幇で繋がった関係。

もしも、こういった関係が、中国全土を覆う広がりを持った地域共
同体レイヤーとして出来上がるとき、それは一大勢力となって、現
政権を倒す原動力になる可能性はある。



6.天の恵み 地の怒り

これまでの中国社会は血縁・家族レイヤーを主として、各々の地域
に住む人々同士の集まりの集合体。その上に乗っかる形で中央政府
が存在していた。

中国における革命は、天命が下りた故の天子の交代であって、人民
主体じゃない。人民は、群雄割拠ののち、最後に勝ちそうなところ
に寄ってゆく。勝ち馬に乗る嗅覚はずば抜けている。

勝海舟は「シナは国家ではない。あれはただの人民の社会だ。政治
などはどうなってもかまわない。自分の利益さえ得れば、それでシ
ナ人は満足するのだ。」と指摘していたけれど、「食わしてさえく
れれば、誰が天子であってもかまわない」というメンタリティが中
国人の素の心象風景なのではないか。

だとすれば「老荘」に生きるというのが実は中国人民の根本にある
のではないかとさえ。現に老荘思想をも取り入れた「道教」はいま
の中国社会にも息づいているという。

現実に生きるという意味において「道教」は実に具体的・実践的な
教え。呪術、おふだ、呪言、占いから、医学、本草学などまで取り
入れている。だけど、そのような現実の世の中をとにかく生きると
いうことを、社会体制として求める場合には条件がある。

ひとつには、無為自然で生きてゆけるほどの天の恵みがあること。
もうひとつは、天の恵みを皆に分け与え、かつ行き渡らせられる社
会であること。

これが成り立つためには、その土地が供給できる作物や資源の限界
以下の人口と、流通インフラとモノを独り占めしないだけの民度が
要る。だけど、今の中国ではどれも十分じゃない。

今でこそ莫大な人口を誇る中国だけれど、人口の急激な増加はここ
数十年の話。

それ以前の天の恵みによって生きていける分には、人民のレベルで
問題はなかった。誰が天子であっても構わない。勝手に生きてゆけ
るから。

ただし、天変地異とか飢饉が起こるときは別。食えなくなるときが
天命の下るとき。

大陸は広いから、本当は飢饉のときに、食のある土地に逃れるとい
う選択肢もあるはずなのだけど、1958〜1961年の中国の大
飢饉では、時の政府が人民の移動を厳しく制約したために却って餓
死者を増やしたという説もある。

政府が人口の少ないときから地道に開墾や治水に努め、食料増産と
流通インフラに気を配っていれば、このようなことはある程度は回
避できたのかもしれない。だけど如何せん、図体がデカくなってか
らでは思うようにはいかないもの。大躍進時代の自然の摂理を無視
した増産計画は、却って天の恵みを洪水という大地の怒りに変えて
しまった。

乱暴な言い方をすれば、大陸が広すぎたが故に天の恵みに甘えてし
まい、その恵みを貪るだけで、適正な社会の発展を蔑ろにしてきた
ツケを受けていると見えなくもない。

食糧生産が十分な南部と全然足りない北部。アンバランスの国。食
糧輸出国から、食料輸入国に転じるのもそう遠いことではないとい
う観測もある。

いまや中国は膨張する人口をなんとか支えようとしてもがき苦しん
でいるようにも見える。その意味では大陸の人口が増えたときから
中国の悲劇が始まったともいえるのかもしれない。
 


7.民以食為天

「王以民為天、民以食為天」

「漢書」にある文言。王は民を以って天と為し、民は食を以って天
と為すという記述から見られるように、中国の為政者にとって「国
民を飢えさせることなく、食べさせること」は古来からの最重要課
題だった。

それほど中国人にとって食べるということは重要なことらしい。先
の被災地での福島記者の取材でも、食に対する貪欲さ、逞しさを伝
えている。

ここで気になるのは、核による汚染。最近になって一部報道機関や
様々なブログなどでも指摘されているように、震源地近くの綿陽市
には、人民開放軍の各施設が集中していて、今回の大地震で相当な
被害を受けているのではないかという観測が出ている。

北京在住の中国人作家・周勍氏は中国食品汚染問題をまとめた『民
以何食為天』を著し、ドイツ・ユリシーズ国際報告文学賞を受賞し
たそうだけれど、核による汚染はもっと深刻。食品どころか人も住
めないことになりかねない。

今回の地震によって土砂によって堰きとめられた天然湖が多数出来
ており、いくつかは決壊の危険があるといわれてる。

特に綿陽市北川県の唐家山地区に中国で最も重要な核研究施設およ
び空軍施設が集中していて、せき止め決壊による水没範囲に多数の
施設が含まれるという。

もし決壊によって核施設が水没するようなことがあれば、その被害
は計り知れない。放射能を含んだ汚染水が長江に流れ込み、周辺の
土壌を汚染する。一挙に食糧生産はもとより、飲料水にも事欠くこ
とになる。人が住めなくなる。

一斉に難民が四方八方に逃げ出し、周辺国になだれ込む。最悪の事
態、チャイナクライシス。

これから梅雨の時期。決壊の危険はますます高まるばかり。一部の
せき止め湖では決壊したようだ。

先日、日本からの自衛隊機派遣が取りやめになったけれど、もはや
他国の軍隊だろうが何だろうが受け入れて、他国のアドバイスを仰
ぎ、全力で核汚染を防ぐべき。

事態は全地球的問題になりつつある。それに比べれば共産党政権の
行く末など取るに足らぬこと。人民を食わせられなくなったとき、
天命が下るのだろうから。

 
(了)


コラム目次に戻る
トップページに戻る