2967.米政府は公的資金投入の準備へ



米金融機関と米政府動向の一連の記事を見ると、公的資金の投入真
近だ。         Fより

金融機関の損失が景気後退と住宅価格下落の拡大で止まらなく、金
融不安が再発した。シティGの株価は2年前35ドルであったが、
直近では9ドルまで下落している。中東のアブダビ投資庁が8000
億円の融資した11月時点の株価は20ドル程度であったことを考
えても、金融危機は収まっていないことが明白である。

シティGは米国一の銀行であり、この銀行がこの有り様であるから
米地銀の悲惨さは想像ができる。この数ケ月だけで地銀5行程度が
倒産している。ポールソン米財務長官もこの危機的な事態にFRB
の金融監督権限の強化を早急に進める考えを表明し、危機脱出に
FRBの指導力を期待する意向である。

しかし、FRBの流動性供給などで事前に対応できる枠組みの整備
だけではそろそろ、限界がきている。シティの資本増強は現在まで
に4兆円にもなっているが、今後4―6月だけで追加の損失が1兆円
にもなるとゲイリー・クリッテンデン最高財務責任者(CFO)は
明らかにし、かつ住宅ローン以外でもリテール部門で損失が膨らむ
と見ていることを明言した。

このように増資をしても損失が止まらない状況で、今後のシティの
資本増強でだれが手を上げるのか不安である。数回の増資を行って
も損失が出て、金をどぶに捨てているような物であると政府系投資
ファンドは考えているようであるし、民間投資家は絶対に投資しな
い。実際、アブダビ投資庁は20ドル買った株が7ケ月で9ドルに
なる大損失も受けている。

しかし、シティは流動性確保のために資本の増強をし続けないと、
金融市場の混乱は収まらない。FRBは資金を貸せるが、資金の提
供はできない。FRBが貸せる範囲も担保資産価値と同等までしか
貸すことができないが、不動産価値が落ちているので簿価レベルの
60%以下でしか貸せないことになる。そして、悪いことに不動産
価値は、今後もどんどん落ちていく。

米モノライン大手のMBIAが格下げで、債務担保証券もその価値
が下がることになる。米証券大手ゴールドマン・サックスは、米銀
が今後、約7兆円規模の追加資本増強を迫られる可能性を指摘して
いる。しかし、投資する政府系ファンドはすでにない。米銀はオオ
カミ少年になっているので、見向きもされなくなっている。

自己防衛から米銀は、商業向け貸し出しで融資基準を「厳しくした
」と回答した割合が52%にもなっている。このように損失で貸出資
金が無くなっているので、その融資姿勢は厳しくなっている。この
ためと資源高から米企業の倒産も増えている。

米政府の考えでは金融機関への公的資金の提供は国民が納得しない
と見ている。サブプライムに胡散臭さを感じ、かつその時の金融ト
ップは最高額の給与を得ていた。これに米国民は不満感を持ってい
る。この不満を解消しないと、公的資金を投入できないと見ていた
が、とうとう、そこに手を打ち始めた。

米司法省と連邦捜査局(FBI)は、144の事件で不動産ブロー
カーら406人を訴追したと発表した。また、米証券大手ベアー・
スターンズの系列ファンドの元運用責任者2人も証券詐欺罪などで
起訴されている。

この関連の刑事事件は今後、どんどん出てくることが予想できる。
それは米国民の不満を解消して、早期に大銀行に公的資金を投入し
ないと、米経済に大きなダメージを与えるためであり、国策捜査の
趣がするのは否めない。

渡辺喜美金融相の言うとおり、「欧米の巨大金融機関、公的資金必
要」なのである。そして、日本の大手銀行は手元資金が十分にあり
、国際化が進む欧米銀行へ、日本の銀行が欠ける機能を補完するた
めの有利な投資ができる状態になってきたように感じる。日本の世
界化促進の切り札カードになる可能性がある。

さあ、どうなりましか??
==============================
金融相「欧米の巨大金融機関、公的資金必要」
(nikkei)
 渡辺喜美金融相は15日、クアラルンプールで開幕した世界経済フ
ォーラム東アジア会議で、米住宅ローン問題をきっかけにした金融
市場の混乱を収束するには欧米の巨大金融機関への公的資金注入が
必要になるとの認識を示した。「被害を比較的受けていない日本が
最後のとりでになるかもしれない」と述べ、米欧政府が動き出せば
、日本も協調して資金協力する考えも披露した。

 同会議のパネル討論会で金融相は「財政出動だけで問題は解決し
ない」と強調。「抜本的な解決には、金融機関のソルベンシー(健
全性)を高める必要がある」と指摘し、公的資金による資本増強が
欠かせないとの見方を示した。(07:49)
==============================
FRBの金融監督権限、早急に強化 米財務長官

 【ワシントン=米山雄介】ポールソン米財務長官は19日の講演で
、米連邦準備理事会(FRB)の金融監督権限の強化を早急に進め
る考えを表明した。FRBによる監督範囲を証券会社や投資ファン
ドなどに広げるのが柱。金融危機を未然に防ぐため、経営破綻の前
にFRBが流動性供給などで事前に対応できる枠組みの整備の必要
性も強調した。

 同長官はワシントンでの講演で、米証券大手ベアー・スターンズ
の救済劇の教訓として「FRBが複雑な金融機関の情報を入手でき
るようにしなければならない」と指摘。「信用秩序の維持に向け、
FRBが迅速に行動できる枠組みを考えるべきだ」と強調した。

 米財務省は3月末に、金融監督制度の包括的な改革案を公表。同長
官はFRBの監督範囲を証券会社などに広げることなどを柱とする
同改革案の早急な実現の必要性をあらためて訴えた。(12:02)
==============================
6/20米モノライン大手のMBIA、格下げで最大3100億円支払いも 
(nikkei)
 【ニューヨーク=米州総局】「モノライン」と呼ばれる金融保証
会社大手の米MBIAは20日、ムーディーズ・インベスターズ・サ
ービスが前日に同社の格付けを引き下げたことに関連し、保証契約
に基づき最大で29億ドル(約3100億円)の支払いが必要になると発
表した。45億ドル相当の追加担保を差し入れる義務が生じるとの見
通しも明らかにした。

 格付けが大きく下げられた場合、モノライン側には支払いなどの
義務が生じる取り決めになっている。MBIAは信用力の低い個人
向け住宅融資(サブプライムローン)に絡んだ証券化商品などの保
証を数多く手掛けてきたが、サブプライム関連商品の焦げ付きなど
で信用力が低下していた。 
==============================
金融混乱再び深刻化の恐れ 地銀の経営悪化に警戒感
2008.6.21 09:47(SANKEI)

 米国でサブプライム住宅ローン問題による金融市場の混乱がまた
も深刻化する恐れが出てきた。金融大手だけでなく、地銀の経営悪
化に対する警戒感が広がっており、20日の株式市場は金融関連株
が大幅下落した。

 銀行大手シティグループは昨夏以降のサブプライム関連損失が計
約450億ドル(約4兆8000億円)に達し、4−6月期も最大
100億ドル規模の損失を計上するとの観測が浮上。混乱拡大の不
安をかき立てた。資本増強に踏み切る地銀も6月に入って相次ぎ、
身売りなど再編の動きも指摘される。

 20日のダウ平均の終値は、資金繰りに行き詰まった証券大手ベ
アー・スターンズが銀行大手JPモルガン・チェースによる吸収合
併に追い込まれた3月の株価に等しい水準まで下げた。ベアー救済
で金融混乱が収束するとの「楽観論は後退した」(米アナリスト)
と厳しい見方が聞かれる。(共同)
==============================
米シティCFO「多大な損失続く可能性」 4―6月業績で
(nikkei)

 【ニューヨーク=山下茂行】米銀最大手シティグループのゲイリ
ー・クリッテンデン最高財務責任者(CFO)は19日、4―6月業績
について「多大な損失が続く可能性がある」との認識を示した。金
融市場では信用収縮の動きが続いているため、信用力の低い個人向
け住宅融資(サブプライムローン)関連での損失が見込まれるとい
う。

 クリッテンデンCFOは投資家らを対象にした会議で「現在のト
レンドが優勢のままなら、この四半期もサブプライム関連の資産で
多大な追加損失が続くとみるのが妥当だ」などと語った。「消費者
関連のビジネスでも損失は膨らみそう」との見方も示した。

 一連の発言を受けて業績悪化懸念が膨らみ、この日のニューヨー
ク株式市場ではシティ株が前日比1%強下落したまま取引を終了。
一時、下落率は5%弱まで広がり、株価が20ドル台を割り込む場面も
あった。 
==============================
米当局、406人を訴追 全米の住宅ローン詐欺で(東京新聞)
2008年6月20日 09時09分

 【ニューヨーク19日共同】全米でサブプライム住宅ローン関連
の詐欺事件の捜査を進めてきた米司法省と連邦捜査局(FBI)は
19日、144の事件で不動産ブローカーら406人が訴追された
、と発表した。

 発表によると、容疑者らは住宅ローンの借り手の収入を誇張した
り資産価値を実際よりも高く見積もるなどの手法で違法な不動産取
引などをした疑い。捜査は3月1日から6月18日にかけ全米の
50地区以上で行われ、被害総額は10億ドル(約1100億円)
を超えたとしている。

 司法当局者は「住宅ローンをめぐる詐欺は米経済に対する脅威だ
」として、大手金融機関19社などを含む企業や個人を対象に、
今後も捜査を続ける方針を示した。

 これとは別に、米証券大手ベアー・スターンズの系列ファンドの
元運用責任者2人が証券詐欺罪などで起訴されている。サブプライ
ム住宅ローン問題に絡み、大手金融機関の幹部が刑事責任を問われ
るのは初めて。
==============================
米銀、7兆円の追加増資迫られる可能性 ゴールドマンが指摘
(nikkei)
 【ニューヨーク=松浦肇】米証券大手ゴールドマン・サックスは
17日発表のアナリストによるリポートで、米銀が今後、650億ドル
(約7兆円)規模の追加資本増強を迫られる可能性を指摘した。信用
力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題に端を発す
る信用収縮が2009年まで長期化するため。

 同リポートは、米住宅相場が年内は下がり続けると予想。住宅ロ
ーンだけでなく事業者向けの不動産ローン、自動車ローンなどでも
焦げ付きが拡大し、米銀が計上する損失額は09年1―3月期まで膨ら
み続けるとした。米銀は既に860億ドル規模の貸倒引当金を積み、
1200億ドルの資本増強に踏み切ったが、一段の大規模な資本注入を
求められる可能性がある。

 同リポートでは多くの大手銀行の目標株価も引き下げた。このた
め17日のニューヨーク株式相場で金融株が売られるきっかけとなっ
た。(10:07) 
==============================
米銀、融資基準を厳格化 信用不安広がり映す
(nikkei)
 【ワシントン=米山雄介】米通貨監督庁(OCC)は12日、米銀
の融資基準動向調査を発表した。信用力の低い個人向け住宅融資(
サブプライムローン)問題の長期化や景気減速を背景に、融資基準
を「厳しくした」と回答した銀行の割合が「緩めた」とした銀行の
割合を5年ぶりに上回った。信用不安の広がりを映した格好で、米景
気低迷がさらに長引く要因になる可能性もある。

 調査は米銀62行を対象に実施。2008年3月末までの1年間の融資姿
勢を前年との比較で聞き取り調査した。

 商業向け貸し出しで、融資基準を「厳しくした」と回答した銀行
の割合は52%。前年調査の16%から急増し、「緩めた」との回答割
合(6%)を大幅に上回った。融資基準の「厳格化」が「緩和」を上
回ったのは03年以来。(14:12) 


コラム目次に戻る
トップページに戻る