2961.ドル基軸通貨維持の苦悩



ドルペッグ制を維持させるために、米国はいろいろな行動をしてい
る。これを検討。       Fより

昨日は、新興国のインフレで新興国の危機が訪れ、この対策として
は対ドルでの切り上げしかないと述べたが、これは産油国でも同じ
で、インフレを止めるためにはドルペッグ制を見直す必要がある。

しかし、石油産出国がドルペッグ制を止めるとドルの基軸通貨とし
ての役割を大きく毀損するために、ポールソン財務長官は中国には
「切り上げが十分ではない」と言いながら、中東産油国のサウジに
はドルペッグ制維持をお願いに訪問するというチグハグな行動をし
ている。

サウジなど中東石油国は、2010年までに湾岸共通通貨を設定し、
ペッグ制を見直すことを湾岸諸国会議で決めている。この行動を米
国はドル基軸通貨制度の根幹を揺るがすと、石油産出最大のサウジ
にペッグ制維持を強くお願いしている。

ドル基軸通貨制度とは、ドルでしか買えない物があるからドルに否
応無く換えて、ドルで買い物をすることで成立する制度である。
そして、このドル決済の中心は石油取引で、かつその取引の中心が
ニューヨーク・マーカンダイルである。石油取引をユーロが取り仕
切ると、基軸通貨はユーロになる可能性がある。

このため、石油取引をユーロにすると宣言したイラクのフセインを
武力で打倒して、ドルに繋ぎとめている。イランもユーロと宣言す
るために、核問題などいろいろと言いがかりをつけて経済制裁をし
てイランの石油を市場から排除し、かつ武力で打倒すると脅すこと
になる。

このように米国は石油取引をドルに繋ぎとめようとしている。米国
は経常収支の赤字が80兆円にもなり、ドルの基軸通貨を維持しな
いと米国はデフォルトに陥るために、政策の第一優先順位をドルの
基軸通貨制度維持においている。

そして、世界の石油産出国第2位がロシアである。この石油取引が
基軸通貨を決めている現状を知っているために、ルーブルがドルに
変わって基軸通貨になるとプーチン首相は言うことになる。横に逸
れた。

このサウジがペッグ制維持の条件を出した。それがドル価格の維持
である。ポールソン財務長官は帰米後、ブッシュ大統領、バーナン
キFRB議長などと会談して、サウジの意向を伝え、経済政策関係
者は、一致してドル高維持に姿勢を変えた。

しかし、米国の経済事情は金利の引上げが出来る状況ではない。こ
のため、口先介入をし始めたようである。為替の介入を行う可能性
も示唆したが、もしドルを高価格にすると、ファンドや国債を大量
に持つ新興国から売り浴びせを受ける可能性が高い。このため、実
際に為替介入を行うかどうかは不明である。

どちらにしても、ドルの基軸通貨制度を防衛しようと米国は苦悩し
ていることだけは確かである。しかし、石油産油国が共通通貨を作
ると、それが基軸通貨になる可能性もあり、基軸通貨の攻防から目
が離せないようである。

さあ、どうなりましか??
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ドル安歯止め「為替介入も排除せず」 米財務長官
2008年6月10日11時11分(ASAHI)

 【ワシントン=西崎香】ポールソン米財務長官は9日、ドル安傾
向の歯止め策として「為替介入も含め、あらゆる手段を排除しない
」と述べ、ドルを買い支える直接介入の可能性を否定しなかった。
介入に言及するのは異例だ。 

 米メディアに答えたもので、「我々が何をするかは憶測できない
」と強調。ドル安への警戒姿勢を打ち出したバーナンキ連邦準備制
度理事会(FRB)議長とも緊密に連携している、と語った。 

 ブッシュ大統領も同日、「強いドルは米国の利益にかなっている
」と述べた。 
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国際穀物理事会、穀物価格高騰に懸念の声相次ぐ 
(nikkei)
 【ロンドン=清水泰雅】国際穀物理事会(IGC、本部ロンドン
)が10日、ロンドンで開いた年次総会で、穀物価格の高騰を懸念す
る声が相次いだ。穀物価格は2008―09年にピークを迎えるが、その
後も高止まりするとの見通しが強まっており、早急に対応策を探る
動きが広がっている。

 世界最大の穀物生産国である米国のマーク・キーナム商務次官は
、小麦、大豆、トウモロコシなどの穀物価格が最高値を更新してい
ることに懸念を表明。「きめ細かい政策で対応するしかない」と述
べた。丸紅経済研究所の柴田明夫所長は「2000年以降に穀物にパラ
ダイムシフトが起きた。穀物価格は高水準が続く」と話した。 
(12:02) 
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サウジアラビア、ドルペッグ制廃止や通貨再評価の意向ない=財務相 

[ジッダ 31日 ロイター] サウジアラビアのアッサーフ財務
相は31日、リヤルのドルペッグ制廃止や通貨再評価を行う意向は
ないとの姿勢を示した。ペッグ制について、サウジを利してきた、
と述べた。
 ポールソン米財務長官との共同記者会見で述べた。アッサーフ財
務相は「ペッグ制を廃止したり、通貨を再評価する意向はない」と
述べたうえで「米財務長官が指摘したように(ペッグ制は)われわ
れを利してきた。われわれはサウジの長期的利益を考えている」と
の見方を示した。
 一方、ポールソン米財務長官は、ドルペッグ制についての質問に
対して「決定は各国の主権だ」と述べたうえで「ペッグ制は、この
国(サウジアラビア)とアラブ地域の役に立ってきた」との認識を
示している。
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米物価に「上振れリスク」 FRB議長、原油高背景に
(nikkei)
 【ワシントン=藤井一明】米連邦準備理事会(FRB)のバーナ
ンキ議長は9日の講演で「最近のエネルギー価格の上昇は物価全体と
インフレ期待が上振れするリスクをもたらしている」と述べ、原油
高を背景にインフレ懸念が高まっていることを明確に認めた。長期
のインフレ期待が成長を不安定にすることには「米連邦公開市場委
員会(FOMC)が強く抵抗する」とも表明した。

 一連の発言はFRBが金融政策の運営上、インフレの抑止に重点
を置くことを示したもので、利下げ休止の姿勢を改めて示唆した。
議長は失業率が急上昇した5月の雇用統計にも言及したが「最近の指
標を全体でみると、経済活動や雇用の見通しに限定的な影響しか与
えていない」と述べ、金融政策の方向を左右するものではないとの
考えを示した。

 同時に米経済の現状について「経済が深刻に落ち込むリスクは小
さくなってきた」と指摘。景気判断をやや明るい方向に修正した。
(11:45) 
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プライマリーディーラーの流動性アクセスを拡大すれば、規制強化
が必要
=米FRB副議長(ロイター)2008年 05月 30日 09:50 JST

 [ワシントン 29日 ロイター] 米連邦準備理事会(FRB
)のコーン副議長は29日、プライマリーディーラーの流動性アク
セスを拡大すれば、規制強化が必要になるとの見解を示した。

 ニューヨークで行われる会議での講演準備原稿の中で述べた。

 同副議長は「FRBの流動性対策の存在は、金融機関が自主的に
流動性を維持しておくという通常のインセンティブを脅かす可能性
があり、流動性へのアクセスが拡大し、市場規律が緩和すればする
ほど、注意深い規制の強化が必要になる」と指摘。

 「プライマリーディーラー(米政府証券公認ディーラー)の重要
性と彼らの流動性圧力に対する弱さについてわれわれが学んだこと
に応じた規制が必要なことは疑いない」との認識を示した。

 FRBは、証券大手ベアー・スターンズ(BSC.N: 株価, 企業情報
, レポート)を事実上の破たんに追い込むなど2008年初めに米経
済を脅かしたクレジット危機に立ち向かうため、金融システムが正
常に機能し続けるよう、プライマリーディーラーに対し、資金と安
全な米国債を供給する特別な流動性対策を講じた。

 コーン副議長は、クレジット市場の凍結解除を目的としたFRB
の資金入札は「われわれが失うべきでない重要な新制度だ」と述べ
、この措置は、FRBから借り入れを行えば苦境に陥っていると市
場に受け止められるという金融機関の懸念を緩和したと指摘した。

 また、各国中銀との協調は続く見通しだと語った。


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