2922.金融業の規制強化へ



G7経済相会議とFRBの金融規制を検討する。   Fより

この20年間、英米の金融自由化の時代であった。サッチャーが金
融自由化で英国経済を立て直した方法を、米国もその他多くの国で
真似をしたが、とうとう前提条件としていた銀行幹部のモラルが崩
壊し、金融自由化を止めなければならない事態が発生したのだ。

金融資本主義を成り立せた銀行の投資業を兼ねる自由化は、ソ連社
会主義の失敗と同様な失敗であったと結論できる。言い換えると、
英米金融資本主義の失敗である。日本は欧米の失敗から金融の自由
化を止めることである。金融業を国の柱にしないことである。あく
までも実体経済の補助機能として金融業を位置づけることである。

昔は、銀行はリスクを少なくして、薄く広く金利差を利用した金貸
し業やリスクの少ない為替交換業であり、投資会社はリスクを取り
積極的な投資で儲けを出すという違う役割であった。また、証券会
社は株の売買を行い、株の上下で儲ける業種であるが、これらの業
種の垣根を無くす自由化をしたことで、メイハリを無くしたのであ
る。しかし、金融資本主義の失敗で、今後規制強化が起こり、再度
リスクの許容度で業界を分けざるを得ないことになる。

なぜ、英国は金融自由化をしたかというと、英国の製造業が衰えて
、銀行の貸出先が無くなった。このため、英国では銀行が存続でき
なくなり、銀行に門戸を開き、かつ投資を行うなどの自由化をせざ
るを得なかったのである。

しかし、英国の金融自由化が短期的に成功したことで、米国は米国
の工業製品が日本などのアジアに負けていたために、積極的に工業
を捨てて金融業を米国経済の柱にしたのである。この改革の柱が金
融の自由化であった。しかし、金融業は大きな規制をしないと、人
間の飽くことがない金銭欲でモラルを逸脱する危険があるのだ。

特に米国のこの自由化時期の金融業トップの報酬が高い。このため
、米国国民からも非難を浴びているが、債権の証券化で儲けた時期
のトップの報酬を取り上げないと国民への示しが付かないように感
じる。トップのモラルが崩壊して、将来の破綻が見えているのにロ
ーンを実施したことで利得を得たことに対する罰則が必要だ。

潰れてはいけない銀行へは、リスクの高い投資業、証券業への参入
を禁止することが考えられる。特に、レバレッジを効かした投資に
は強い規制が掛かることになる。証券業が潰れても影響がないよう
にデリバティブ取引のGETをどう扱うかが問題で、この取引を制
限することになると見ている。保険として生まれた先物取引が博打
化してしまった現状を修正することが必要なのである。

そして、資金繰りが厳しい銀行は、ヘッジファンドに60%増の担保を
要求しているようだ。このため、ヘッジファンドも資金不足になって
いる。債権の証券化などの方法が無くなり、レバレッジを効かすこ
とが出来なくなっているためだ。

このようにレバレッジを効かせることができないためにドル不足が
起こっている。このため、FRBとEU中央銀行はドル供給枠を2
倍に増やす必要になっている。それと平行して、金融業の規制強化
も視野にFRBは動いている。欧米の金融当局は規制強化の方向で
動いている。その検討の場に日本はいないため、金融自由化に日本
は舵を切ったままになっているが、その見直しを視野に入れておく
必要がある。

さあ、どうなりますか??
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米FRB、クレジットカード規制強化へ・年内に最終案
(nikkei)
 【ワシントン=藤井一明】米連邦準備理事会(FRB)は2日、ク
レジットカードに関する規制を強化する方針を発表した。利息設定
などを巡る「不公正で悪質な慣行」を封じるのが狙い。貸し手の事
情を優先した金利操作を禁じたり、無理のない返済期間を設定した
りすることなどを盛り込んだ。年内に最終案をまとめる。

 バーナンキ議長は「クレジットカードを公正に運用するための新
たな基準を提案した」と説明。消費者が利用に伴うコストを正確に
つかむために規制の見直しが必要との見方を示した。規制強化が実
現すれば、FRBによる監督や検査などの権限が増す。(19:27) 
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FRBが欧へドル供給枠2倍に サブプライム救済策
2008年05月03日01時02分(ASAHI)

 【ワシントン=西崎香】米連邦準備制度理事会(FRB)は2日
、新たなサブプライム危機対策を発表した。FRBが緊急時に欧州
中央銀行(ECB)、スイス国立銀行と交換するドルの枠を2倍近
くに広げる。欧州でのドルの供給を増やし、金融機関の資金繰りを
助ける狙いだ。 

 ECBとの交換枠(スワップ)を従来の300億ドルから500
億ドル(約5兆円)に、スイス銀と同60億ドルから120億ドル
(約1兆2千億円)に増やす。サブプライム対応で昨年12月に始
めた緊急協調の強化は、3月に次ぎ2回目。 

 また、FRBは金融市場への資金供給増を支える「入札貸出制度
(TAF)」を拡充し、2週間ごとの供給枠を500億ドルから
750億ドル(約7兆8千億円)に増やす。住宅ローン担保証券の
関連債券などを財務証券と交換する「証券貸出制度(TSLF)」
も、引受証券の対象を広げて強化する。 
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米雇用、4月は2万人減・4カ月連続マイナス
(nikkei)
 【ワシントン=米山雄介】米労働省が2日発表した4月の雇用統計
(季節調整済み)によると、非農業部門の雇用者数は前月に比べ2万
人減少し、4カ月連続のマイナスとなった。減少幅は前月より縮小し
たが、今年1月から4カ月間での雇用減は26万人にのぼる。米雇用は
引き続き悪化しており、景気後退懸念はぬぐい去れない情勢だ。

 4月の雇用者数の市場予測の平均は7万5000人減で、減少幅は予想
よりも小さかった。ただ2、3月はこれまでの7万6000人減、8万人減
から8万3000人減、8万1000人減へとそれぞれ下方修正。サブプライ
ムローン問題をきっかけとした金融不安の影響が実体経済にも及ん
でいる状況を映した。(02日 23:11) 
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米、0.25%追加利下げ・FRB声明「経済活動は引き続き弱い」
(nikkei) 
 【ワシントン=米山雄介】米連邦準備理事会(FRB)は30日の
米連邦公開市場委員会(FOMC)で、最重要の政策金利であるフ
ェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.25%引き下げ、年2%
とすることを賛成多数で決定、即日実施した。世界的な食料価格の
高騰などインフレ懸念が台頭しているが、深刻な景気後退の回避に
向け、一段の金融緩和に踏み切った。
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ロイター・コラム〕流動性危機は第2ラウンド突入も
2008年 05月 1日 17:22 JST

 [ロンドン 1日 ロイター] 銀行にとって流動性のひっ迫は
和らいだかもしれないが、貸し出しは依然として著しく圧迫されて
おり、消費者や企業、ひいては経済全般に打撃を与えている。クレ
ジット市場をめぐる厳しい環境は銀行の資産を傷つけ、流動性危機
の第2ラウンドが始まる恐れもある。

 もっとも、投資家の間でこのところ楽観ムードが広がっているこ
とにも、それなりの理由はある。

 当局は銀行システムに大量の流動性を供給するなど、少なくとも
積極的かつ創造的な行動をとってきた。その結果、銀行はコストは
非常に高くつくものの、債券を売却して新たな資本を調達できるよ
うになった。

 レバレッジドローン市場にも明るさが見え始め、銀行はローン価
格の回復を受け、市場が機能不全に陥った昨年から塩漬けになって
いた数十億ドルに上る資産の処理が可能となった。とはいっても、
まだ起き上がって仕事に戻れるほど症状が回復していない患者のよ
うな状態であることに変わりはない。

 監督当局は銀行に対して資本再編やレバレッジの縮小を求めてお
り、銀行は予測可能な将来に貸し出しを積極的に拡大できる環境に
はない。

 仮に監督当局の圧力がなかったとしても、資本が毀損(きそん)
された銀行は資本増強を必要としている。経済がリセッション(景
気後退)に陥ろうとしている中、企業や消費者向けのローンが焦げ
付き始め、償却が必要となれば、銀行は一段と苦境に追い込まれか
ねない。


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