2905.供給保障は国の役目(石炭)1



BRICSの発展が世界的な資源・食料の需給バランスを劇的に変
えている。この問題を検討しよう。    Fより

このところ、タイ米の高騰、大豆・小麦の高騰、豪州の石炭価格が
2倍になり、国内炭の方が安くなった。原油の高騰で1バレル110
ドルの水準まで来たなど、資源や食料の高騰が益々激しくなってい
る。

世界の食の資源、マグロや大豆などは日本食ブームで世界的な取合
いになり、日本は買い負けている。これが広範囲に渡る可能性を感
じる。エネルギー資源も同様である。

この現状を考えると、日本の国家政策も変更する必要がある。食料
やエネルギーの国内供給を増やすことで、食料・エネルギー安全保
障を真剣に考えることが重要に成ってきた。国内の政治が機能しな
い間に世界が大きく激変して、日本国民の安全を脅かす可能性が増
しているのだ。

道路などより重要な食とエネルギー確保に真剣な政治家の議論が、
必要である。日本の過去の戦略とは違う新しい戦略の議論が必要な
のである。食やエネルギーの確保は、地方の復権となり道路より
地方活性化にも効果的である。食もエネルギーも輸入依存では恐ろ
しい事態が将来に待っている可能性があり、一刻も早く戦略の変換
が必要になっていると見る。

今回は、そのうち、日本の石炭に焦点を当てる。石炭の埋蔵量は
190年以上もあるが、世界的に高騰している。この石炭にはヘッ
ジファンドは入っていないので、豪州の豪雨など供給面での問題と
中国やインドの実需の急増で高騰していることになる。この消費量
が飛躍的に増えている。今後も増える可能性が高い。

供給面は限界があり、世界的に日本の商社や鉱山会社が開発するこ
とも重要であるが、自国の需要が伸びると、輸出禁止にできるのが
、エネルギーと食料資源である。

このため、世界で開発しても被開発国政府が輸出禁止令を出された
ら、商社や鉱山会社はどうすることもできない事態になる。このた
め、日本国内での石炭開発がどうしても必要になるのだ。

また、石炭需要増加の理由であるが、石炭火力はCO2排出量が多
く、徐々に石油火力や原子力に移行すると思われてきたが、日本が
中心に排出したCO2を地下に閉じ込める技術ができ、石炭の埋蔵
量が多く安定的に供給できるために、米国、中国やインドなどは、
今度も石炭火力を使い続けることができるようになったためである。

もう1つ、埋蔵量41年しかない石油に変わり、石炭液化の技術も
徐々に実用的に成ってきて、石油代換燃料としても注目を浴びてい
る。この面からも石炭の需要は伸びることになると見る。

石油の枯渇も含めて考えると、日本でも調達できる石炭を開発する
ことは、今後の中進国家の需要増を睨んでもやるべき政策であると
見る。日本にはエネルギー資源としては、原子力発電技術やメタン
ハイドレードがあるが、原子力発電でウラン燃料を無限大化する高
速増殖炉ができないと無理で、「もんじゅ」を停止したために、後
10年以上は実用化に時間が掛かるし、メタンハイドレードも10
年以上の歳月が技術開発に必要である。

このため、世界的な需給逼迫になったときには、現状の原子力発電
でMOX燃料を燃やすことや国内石炭で食い繋ぐしかない。

さあ、どうなりますか??
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黒いダイヤ”再び輝き 海外高騰で国産石炭回帰 
FujiSankei Business i. 2008/4/12 

国内炭を燃料に発電する北海道電力の砂川発電所=北海道砂川市 
 ■三菱マテ セメント生産に使用  
 ■北海道電 火力発電で100万トン超 

 国内産の石炭を見直す動きが産業界に広がりつつある。原油高や
海外炭価格の急騰を背景に価格競争力が増したためだ。三菱マテリ
アルはセメント生産用に18年ぶりに国内炭の使用を再開したほか
、北海道電力も火力発電用に100万トン超の利用を進める。 

 供給面でも、新規投資のほとんどなかった炭鉱開発投資に北海道
の炭鉱会社が相次ぎ乗り出した。世界的な資源価格の高騰を背景に
、国内産“黒いダイヤ”に久しぶりに熱い姿勢が注がれている。 

 ≪新たな鉱区開発≫ 

 三菱マテリアルは今年2月から、セメント生産を行う青森工場(
青森県東通村)で年2万トンの国内炭の使用を開始した。セメント
生産過程の熱源として国内炭を使う。石炭は同社子会社の北菱産業
埠頭(札幌市)が運営する炭鉱から調達し、青森工場の石炭使用量
の3分の1を海外炭から国内炭に切り替える。北電はこれまでも年
70万トン程度の国内炭を購入してきたが、2007年度は前年度
比60%増の116万トンに引き上げた。北電の発電量に占める
石炭火力の比率は41%で、燃料の9割以上が海外炭だったが、海
外炭高騰でコストがほぼ横並びとなったため、国内炭への切り替え
を進めたという。 

 北電では、08年度も前年度並みの高水準の購入を続ける。また
、国内電力会社で、北電とともに国内炭を使うJパワー(電源開発
)も年数十万トン規模を購入する方針としている。 

 発電などに使われる石炭(一般炭)スポット価格はこの1年間で
2倍程度に跳ね上がり、足下も1トン当たり125ドル程度が続く
。原油高を背景に、代替燃料として中国やインドで需要が急増した
ほか、豪州の水害影響などで生産が減少したため。海外炭の急騰で
、国内炭と海外炭の価格差は縮小。しかも、原油高に伴う燃料費上
昇で、海外から石炭を運ぶ船賃も上がり「価格はほぼ同水準になっ
た」(三井鉱山)という。 

 ≪供給力は限定的≫ 

 価格競争力が増したことで、国内炭への関心は高まりつつあるが
、国内炭の供給力には限界がある。国内の炭鉱は北海道に8カ所を
残すのみ。供給力は年140万トンで、国内需要の1%を満たすこ
ともできない。 

 こうした中、新たな炭鉱開発も動き始めた。北海道美唄市で年5
万トンの石炭を採炭する三井鉱山グループの北海道三鉱石油は同市
内で新鉱区の開発に着手。今後1〜2年で既存炭鉱の石炭が底をつ
くため、安定供給に向け10年度にも年5万トンを採炭する計画。
空知炭砿(歌志内市)も09年度をめどに新鉱区を開発し、歌志内
で約3万トンの採掘を検討している。 

 しかし、それぞれの生産規模は小さく、需要が急増しても増産要
請にも応じきれないのが実情。石炭は輸送費用がかさみ、遠距離へ
の供給は割高となるため、突然の国内炭人気にも「購入は考えてい
ない」(中国電力の神出亨副社長)との声がもっぱらだ。 

 第一生命経済研究所の永浜利広・主席エコノミストは「国内炭は
為替の影響を受けない強みがあるが、供給力が限定的。ただ、市況
が高止まり利益体質が定着すれば大規模な開発投資が進む可能性も
ある」と指摘している。
(今井裕治) 
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(4/8)次世代燃料のメタンハイドレート、連続産出実験に成功
 独立行政法人の石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC
)は次世代エネルギーと期待されるメタンハイドレートを地中から
連続して産出する実験に世界で初めて成功した。急激な原油高や将
来のエネルギー不足を見据え、中国など世界各国がメタンハイドレ
ートの早期の商業生産を競っている。日本は最大の課題である採掘
技術の開発で先行、2018年ごろの商業化を目指す。「資源小国」で
ある日本にとってエネルギー自給率の向上につながる可能性が出て
きた。

 メタンハイドレートは永久凍土の下や海底下の砂層にシャーベッ
ト状で埋蔵する。経済産業省は昨年、東海沖から熊野灘の海底に日
本の天然ガス年間使用量の14年分に相当する1.1兆立方メートルのメ
タンハイドレート埋蔵量を確認。日本近海全体では天然ガス約100年
分にあたる推定7.4兆立方メートルと世界最大規模の埋蔵量があると
される。
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資源エネルギー庁> 施策情報 > 石炭政策について > 
我が国の石炭鉱業の現状、我が国の石炭鉱業の現状 

1)国内石炭鉱業の推移 
昭和36年度初 平成12年度末 
炭鉱数 622炭鉱 大手坑内堀 2炭鉱 
露天堀り 11炭鉱 
従業者 約30万人 2,672人 
生産量 5,540万t 297万t 

※)平成12年度の石炭生産量 
太平洋炭鉱 154万t 
池島炭鉱 82万t 
露天堀り 61万t 

2)国内炭の我が国エネルギー供給における位置づけ 
○ 我が国一次エネルギー総供給に占める石炭(国内炭+海外炭)の比率 
  -----------------------------------約17.9% 

【我が国の一次エネルギー供給推移】 
(単位:PJ)   平成4年度 平成7年度 平成10年度 平成12年 
総供給      20,963   22,768   22,810   23,385 
うち石炭(%)   16.1    16.5     16.4    17.9 
○ 国内石炭総需要に占める国内炭の比率 
  -----------------------------------約1.9% 

【我が国の石炭需要】>   平成4年度 平成7年度 平成10年度 平成12年度 
総需要(万t)         11,618   13,043   13,013   15,229 
国内炭(万t)          785     638    368     296 
国内炭比率(%)        6.8     4.9     2.8    1.9 

○ 我が国一次エネルギー総供給に占める国内炭の比率 
  -----------------------------------約0.3% 


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