2903.環境問題の日本的な解決



環境問題で、日本的な解決手法が見えてきた。  Fより

ホスト京都議定書の話題が、世界的に盛んになってきたが、ここで
日本は日本的な解決方法を見つけ出している。それをテレビ東京「
ワールドビジネスサテライト」で紹介していた。

日本は石油ショックと同様な手法でCO2排出権取引に立ち向かっ
ていくようである。危機意識が出ると日本は強い。EUに後れを取
っているという意識が強くなってきた。そして、これを跳ね返す研
究が続々と出ている。

一番、期待されているのが、膜を利用して大量の排出ガスから二酸
化炭素(CO2)を分離・回収する技術である。 

この分野の研究は日本が進んでおり、地球環境産業技術研究機構
(RITE)が「カルド型ポリイミド高分子膜」を活用したCO2
分離装置を開発。2000年度に高分子膜で世界最高水準の分離性能を
記録した。2007年1月からは新日本製鉄・君津製鉄所(千葉県)に設
置したCO2分離装置を活用し、分離性能を確かめる実ガス試験を
進めている。 

内径0.数ミリ規模の微細な中空糸膜が数万本入った分離装置内に排
出ガスを高圧で送り込むと、磁石に引き寄せられるようにCO2が
膜表面に入り込む。入り込んだCO2は圧力の低い方向に進み、分
離層をすり抜ける。その後、回収タンクで捕集する仕組みだ。 

分離膜技術を適用することで、分離・回収に要するエネルギーコス
トを化学吸収法に比べて約3割削減することができると試算してい
る。 

そして、この分離膜技術を日本の多数の研究機関が研究をしている
。1つの目標が設定されると、日本は一方向に進む特徴がある。
石炭火力発電所のCO2排出量が多いが、この分離膜技術でCO2
を地中の岩盤下に固定しようとしている。

この他にも、日経新聞2007年9/12の記事で、東大など産学のチーム
がCO2から作られたプラスチックを発表した。このプラスチックは
原料の半分にCO2を使い、エポキシドという化合物と混ぜて作られ
る。製法技術は1968(昭和43)年に東大が開発したが、完成品は熱に
弱いなどの欠点があり、普及しなかった。今回、東京理科大のグル
ープが新しいキラル触媒などを開発したことで、耐熱性が改善し、
産業化のめどがついた。今後、国家プロジェクトとして5年後をめど
に実用化を目指す。

エポキシドを原料にする場合、従来の方法では、組成は同じでも分
子構造の異なる「光学異性体(キラル分子)」が半分づつできてし
まった。これは、右手と左手のように、鏡に映すと形がピッタリ重
なるのに、ある分子がそれぞれ左右に結合しているために、極端に
言えば“薬”と“毒”くらいに特性が異なってくる一対の物質がで
きてしまい、熱に弱いなどの欠点がなったのだ。最近になって、東
京理科大が結合するエポキシド分子の向きを制御する特殊なキラル
触媒を開発して、一方のポリマーだけを効率よく合成できるように
なったので、この欠点を克服したのだ。

また、反応が進み、原料が少なくなり溶液の濃度が低下すると、溶
液中のエポキシドを使い切る前に合成が止まってしまうという課題
もあったが、これを回避する触媒を金沢大学が開発した。この触媒
によって反応が完全に終了した溶液に別種のエポキシドを加えれば
、2種類のポリマーをつなげて、これまでにないプラスチックをつく
ることも可能になった。原料をムダなく使い、さまざまな高分子を
効率良くつくりわける技術が、今まさに実用化に向けて動き出した。

東京大学大学院工学系研究科 野崎京子 教授
燃焼の最終生成物である二酸化炭素は、「極めて化学反応しにくい
物質」という誤解があります。何らかのエネルギーは必要ですが、
光合成によって二酸化炭素を反応させ、物性の異なるポリマーを巧
妙につくりわけている植物を見れば、そうではないことが容易にわ
かりますね。二酸化炭素をどう有効利用していくのか…。その一つ
の方向性が社会に必要とされるプラスチックをつくり、固定化する
ことだと考えています。
資源をムダなく利用して、必要とされるものをつくる。そうした
モノづくりを支える触媒の研究を、エネルギーや環境、コスト的に
も負荷をかけないよう、広い視野に立って、これからも進めていき
たいですね。と。

この化学的な対応とは違い、植物の機能を使うCO2吸収も研究されて
いる。その1つが、サカタのタネが見つけたサンパチェンスという
植物で、生育が旺盛で、1年で1mにもなる。CO2の吸収も高くて普
通の花の3〜4倍もある。それに加えてホルムアルデヒドやNO2の吸
収も3〜4倍以上もあるのだ。期待が持てる。

最後には、ユーグレナである。これは藻で最も良く知られた鞭毛虫
で、運動性のある藻類として有名なミドリムシを含む単細胞真核藻
類のグループだ。大部分のユーグレナ藻は葉緑体を持っており、光
合成を行って独立栄養生活を営む。光合成を行うユーグレナ藻は、
40%の高濃度二酸化炭素の下でも生育でき、火力発電所などから排出
された一日で4300トンの二酸化炭素を直接吸収し、3000トンのユー
グレナが生産される。このユーグレナはいろいろな用途になるので
期待が寄せられている。

ユーグレナに含まれるパラミロンは、粒の揃った細かい粒子である
という物性から、化粧品用粉体材料として有望であるし、生分解性
フィルムへの応用も研究されており、将来的に素材としての利用の
可能性がある。直近では栄養素が多く食用に供されている。

というように日本の底力で世界が注目する研究が目白押しである。
ということで、ポスト京都議定書を話し合う洞爺湖サミットが楽し
みである。
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CO2からプラスチック、東大・帝人など12年度にも実用化
(nikkei)
 東京大学、帝人、住友化学などの産学チームは11日、二酸化炭素
(CO2)からプラスチック(樹脂)を作ることに成功し、量産技術
の開発を始めると発表した。包装材やフィルムなど幅広い用途での
利用が期待できる夢の技術で地球温暖化防止に役立つ。2012年度に
も実用化する。

 チームには東京理科大学、慶応義塾大学、金沢大学、三菱商事、
住友精化も参加。原料の5割はCO2でエポキシドと呼ぶ化合物と混
ぜて作る。約40年前に東大が考案した製法だが、耐熱性の高い樹脂
ができない欠点などがあった。

 野崎京子東大教授らは新しい触媒で耐熱性を改善し実用化のめど
をつけた。包装材やフィルムなどに使われ世界の合成樹脂市場の6割
強を占めるというポリプロピレンとポリエチレンの代替素材になる。



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