2900.隠れた公的資金の投入



やっと、米国の金融不安が収まった。なぜ収まったか?その検討。
                 Fより

ブッシュ政権は金融危機に対して、国民から評判が悪い金融機関を
救済する公的資金の投入をしないと公言している。EUは反対に公
的資金の大幅な投入で金融不安を起こさない取り組みをしている。
スイスのUSBも190億ドル(約1兆9000億円)の追加損失を計上し
たが、150億スイスフラン(約1兆5000億円)の増資を実施するとい
う。

そして、米国でもブッシュ政権の変わりにFRBが中心となって、
金融機関の救済に乗り出している。証券会社とは直接の管理監督関
係にないFRBが、ベアー・スターンズが持つ住宅関連の債権化証
券を担保に資金を提供するなどと、値下がりが続く証券で金を貸す
ことになった。

ベアー・スターンズが関わるデリバティブのGET部分が総額
1000兆円にもなり、もし潰れると世界的な金融混乱になり大き
な影響を与えるとFRBは見て、金融の危機的な状況であると見な
して、異例な救済劇になったようだ。寸での所でデリバティブ市場
の崩壊を救ったのである。

しかし、FRBが証券大手ベアー・スターンズを救済するために決
めた特別融資を巡り、これが焦げ付いた場合には、損失を国が肩代
わりする形で保証するとポールソン財務長官が約束していたことが
明らかになったのだ。

これは一種の公的資金の投入と同じことである。FRBを迂回した
公的資金の投入により、最後の貸し手に政府がなると見た金融市場
関係者の不安が除去された結果、金融不安が収まったのだ。

しかし、米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長は米上院銀
行委員会の公聴会で「重要な証券化市場の一部はなお機能不全」と
述べて、金融市場の安定には程遠いことも示唆している。そして、
米国で景気後退の現実味が増してきた。雇用者数は1―3月の合計で
23万人以上減り、3月の失業率は2年半ぶりの高い水準となる5.1%に
はね上がっている。

4月中旬に発表されるシティバンクやメリルリンチの決算を見ない
と分からないが、3月末に向けた評価損やSIVを連結に組み入れた
損失の拡大などを起こると予測できる。また、その損失に対応した
増資に対して、中東諸国やアジアの政府系投資ファンドが応じたか
どうかも焦点になるようだ。UBSは前回の増資ではシンガポール
政府系ファンドからの増資であったが、今回の増資は欧米銀行から
であり、一層の増資に新興国政府系ファンドからの増資に一抹の不
安もある。

なぜなら、シティなどの増資に応じたが、現時点で40%も株価が
下落して含み損が拡大しているために、政府系ファンドも慎重にな
っているからである。

最後の貸し手である米政府が動かないために、FRBが迂回融資を
することになるが、増資にはFRBは応じられない。このため、次
の危機回避策がFRBに問われることになる。奇策を繰り出しても
金融市場崩壊を止められるのは、FRBバーナンキ議長しかいない
のが現状のようである。

さあ、どうなりますか??
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FRB議長「証券化市場の一部、なお機能不全」・議会証言
(NIKKEI) 
 【ワシントン=米山雄介】米連邦準備理事会(FRB)のバーナ
ンキ議長は3日、米上院銀行委員会の公聴会で最近の金融市場の動向
について証言し、「重要な証券化市場の一部はなお機能不全」と述
べた。「金融市場の機能改善に引き続き取り組む」とも強調。金融
市場の安定に全力を挙げる考えを表明した。

 公聴会ではニューヨーク連邦準備銀行のガイトナー総裁も証言し
た。同総裁は金融市場の現状について「流動性がなお損なわれてい
る」と説明。信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン
)の焦げ付きをきっかけとした市場の信用収縮がまだ続いていると
の認識を示した。 (00:27) 
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米景気後退に現実味、雇用悪化長期化も
(NIKKEI)
 【ワシントン=藤井一明】米国で景気後退の現実味が増してきた
。雇用者数は1―3月の合計で23万人以上減り、3月の失業率は2年半
ぶりの高い水準となる5.1%にはね上がった。製造、小売り、建設な
ど旧来型の産業は総崩れで、比較的堅調だったハイテクやサービス
も低迷。雇用減少の長期化が国内総生産(GDP)の柱である個人
消費を冷え込ませる可能性もある。

 2日の議会証言で、米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長
は「経済活動の停滞や雇用関連の弱い指標を総合すると、失業率は
今後数カ月、いくぶん上がる」と予測した。3月の数字はこの見通し
を裏付けた。(07:02) 
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FRB融資、損失出れば国が保証・ベアー支援で米財務長官が確約 
(nikkei)
 米連邦準備理事会(FRB)が3月に証券大手ベアー・スターン
ズを支援するために決めた特別融資を巡り、これが焦げ付いた場合
には、損失を国が肩代わりする形で保証するとポールソン財務長官
が約束していたことが明らかになった。FRBの損失の埋め合わせ
を通じ、国民負担が生じることを認めた形だ。ベアーの救済の是非
を巡る論議が改めて高まりそうだ。

 米上院の関係者が、ポールソン長官からニューヨーク連邦準備銀
行のガイトナー総裁にあてた3月17日付の書簡を公表した。上院はベ
アー問題の経緯を明らかにするよう求めていた。 (16:03)
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FRBの権限拡大、米財務長官が金融行政の包括的改革案
(nikkei)
 【ワシントン=藤井一明】ポールソン米財務長官は31日、金融行
政の包括的な改革案を公表した。証券会社への直接融資に踏み切っ
た米連邦準備理事会(FRB)の機能拡大に合わせて監督の機能を
証券会社などにも広げる方針を明記。金融危機や市場の変化に機敏
に対応するため、大統領直属の作業部会の機能強化も盛り込んだ。
立法権を持つ議会との調整を経て実現すれば、1930年代の大恐慌以
来の大規模な改革となる。

 「規制体系の強化に向けた青写真」と名付けた改革案は短期、中
期、長期の提言で構成した。ポールソン長官は改革が最終的に完成
するには長い時間がかかるとの認識を示した。

 FRBや作業部会の拡充は信用力の低い個人向け住宅融資(サブ
プライムローン)の焦げ付きや証券大手ベアー・スターンズの経営
危機などの最新の事情を踏まえ、短期の対策に盛り込んだ。金融関
連政策の調整に当たる作業部会については、金融危機への対応、投
資家の保護、金融市場の変革などに重点的に取り組む方針を示した。
(02:00) 
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米政府、住宅ローンの借り手救済に公的資金投入検討・米紙報道
(nikkei) 
 【ワシントン=藤井一明】29日付の米紙ワシントン・ポストは、
ブッシュ政権が信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムロー
ン)の焦げ付きを踏まえ、借り手の救済策に公的な支援策を検討し
ていると報じた。 

 同紙によると、住宅の差し押さえの恐れがある数千の住宅保有者
に対して借り換えを促す内容で、調整は最終段階にある。同様の救
済策を求める声は議会でも強まっていた。 

 ブッシュ大統領が決断すれば、サブプライム問題で政府が初めて
決める公的資金の活用策になる見通しだ。米政府は米連邦住宅局(
FHA)を使った借り手の支援策を検討してきた。公的資金を裏付
けに低利で借り換えに応じることができれば、住宅保有者が住宅を
手放さなくても済むと期待している。 (01:39)
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UBS、1兆9000億円追加損失・1―3月期、サブプライム問題
(nikkei) 
 【フランクフルト=石井一乗】スイスの金融大手UBSは1日、
米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)関連
で、1―3月期決算に190億ドル(約1兆9000億円)の追加損失を計上
すると発表した。昨年来の損失合計は374億ドル(約3兆7400億円)
に達する。独最大手のドイツ銀行も同日、25億ユーロ(約4000億円
)の損失計上を公表した。世界の金融機関のサブプライム関連の公
表損失額は3月時点で2000億ドル超とされるが、金融システム不安の
高まりで損失額が一段と広がる公算が大きい。

 UBSの1―3月期の最終損益は120億スイスフラン(約1兆2000億
円)の赤字になったもよう。今回の損失計上を受け、新たにJPモ
ルガン・チェース、モルガン・スタンレーなどを引受先に、150億ス
イスフラン(約1兆5000億円)の増資を実施する。 (19:43) 



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