2885.都市鉱山からの資源回収について



都市鉱山から鉱物資源回収を検討しよう。    Fより

昨日のNHKサイエンスゼロは生物利用をした資源回収を特集して
いた。都市鉱山、特に携帯電話1トンから金が300gも取れるが
、レアメタルなどは、携帯電話に微量しか含まれていないために、
取り出すことが難しい。このため、微生物を利用して濃縮しようと
いう考え方が出ているという。

このことを専門家は「微生物の生体機能を利用する金属の回収ーミ
ネラルバイオプロセッシングやバクテリアリーチング」と言うよう
だ。微生物を利用した環境浄化は、バイオレメディエーションと呼
ばれている。同じことであるが利用方法で言い方が違う。

今までは、鉱山などでバクテリアを利用し、効率よく金属を溶出さ
せ排水される溶液から有用金属を回収することが研究テーマであっ
た。実際に、低品位鉱石から銅やウランなどの資源が回収して例と
して、岩手県の土畑鉱山では年間10トン程度の沈殿銅を回収してい
る。

環境浄化としては,鉱山坑廃水処理への利用があった。現在,岡山
県の柵原鉱山では、鉄酸化細菌を利用して鉄を酸化し,pHを調整し
て水酸化第二鉄として沈殿させ,無機凝集剤として利用していたり
、岩手県の松尾鉱山では,坑廃水の中和処理を効率的に行うため,
鉄酸化細菌を利用しているようだ。 

そして、北海道の足寄町「湯の滝」のマンガン酸化菌がクローズア
ップされている。湯の滝は、世界で唯一の「生きているマンガン鉱
床」であることが分かってきた。「生きている」とは、微生物の作
用によって、現在も鉱床の形成が進行しているということだ。 

 この湯の滝で明らかになった鉄やマンガンの形成過程は、太古の
大鉱床形成の秘密を探る糸口として世界的に貴重な存在であること
が知られるようになった。湯の滝でのマンガン生成は、マンガン酸
化細菌と糸状藻類からなる微生物共同体が、温泉水中のMn2+をMnO2
(二酸化マンガン)の粒子に変えており、鉱床の生成速度は2〜3cm/
年と推定されている。鉱床のコアをX線照射してみると縞(しま)状
に見え、その縞状組織は季節による微生物活動の差を反映している
ようだ。 

深海にもマンガン酸化物団塊に、他の金属が付着していることが知
られているようにマンガン酸化菌が生成するマンガンには他の金属
が付着しやすいのであろう。

このマンガン酸化菌は排水処理として、重金属の除去にも重要な役
割を果たすことが知られている。マンガン酸化菌以外にも金属イオ
ン還元細菌からレアメタルの回収も試みもされている。

この微生物利用の金属回収分野では、帰納法的な手法になるために
地道な調査が必要であり、かつ多様な環境での微生物資源が多い日
本が一番進んでいるようである。

さあ、どうなりますか??
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(1/12)日本に巨大な「都市鉱山」――製品含有の蓄積量を試算

 家電製品などに含まれている金、銀やインジウムなどの希少金属
は、リサイクル可能なため「都市鉱山」と呼ばれるが、日本国内の
蓄積量は世界有数の資源国といえる規模だとする試算結果を、物質
・材料研究機構(茨城県つくば市)が12日までにまとめた。

 金は約6800トン、銀は約6万トンで、それぞれ世界の埋蔵量の
約16%、約22%に相当。液晶などに使われるインジウムは世界の埋
蔵量の約61%に上った。

 同機構は「こうした資源を含む製品は、使用済みになると廃棄物
として海外に出ていくものが多い。国内に眠る資源を活用する研究
を進めたい」としている。

 同機構は、希少金属など20種類について、貿易統計などを基に、
素材のほか部品や製品に含まれる輸入量から輸出量を差し引いて算
出した。製造中や使用中、廃棄物の製品の量を含んでいる。

 天然資源として産出する国と比べると、金、銀、鉛、インジウム
は世界最大の資源国より多かった。

 世界の年間消費量と比べると、リチウムは7倍以上、燃料電池の
電極に不可欠とされる白金は約6倍の“埋蔵量”があった。〔共同〕
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独立行政法人物質・材料研究機構が発表したレポートでは、資源小
国であるはずのわが国に、世界有数の金属資源が眠っているという。

都市鉱山で“国内埋蔵量”の多いのは以下のような資源。

 インジウム:1,700トン(世界の現有埋蔵量の61%)
 金:約6,800トン(同16%)
 銀:60,000トン(同22%)
 アンチモン:340,000トン(同19%)
 スズ:660,000トン(同11%)
 タンタル:4,400トン(同10%)

 これ以外にプラチナは“埋蔵量”2,500トンで現有埋蔵量の3.6%
だが、世界の年間消費量の5.4倍にもなる。リチウムは同じく7.4倍
、インジウムは3.8倍だ。
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http://oriharu.net/jenv.htm

日刊工業新聞、2007.04.13(金)第01面にありましたが、京都大学
大学院の植田充美教授、黒田浩一助教授らが、「酵母菌という安全
の確認されている菌」の表面に吸着用途の特殊なタンパク質ができ
るように酵母菌の遺伝子を組み替え、モリブデン酸イオン(レアメ
タルのモリブデンは廃液など水中ではモリブデン酸イオン)と高い
結合能力を持つタンパク質(ModE)を細胞内に生成させ、次に、
ModEを「細胞表面に移動する性質を持ったタンパク質」と結合させ
て表面に浮き上がらせることでモリブデン酸イオン吸着能を実現し
た。モリブデン以外のレアメタルも他のタンパク質を生成させるこ
とで実現できるそうです。レアメタルは半導体産業には不可欠であ
るため、高価であり、排水などからの安価な回収が望まれている。
(200706152217)

日刊工業新聞、2007.06.12(火)第13面にありましたが、高分子ゲ
ルを使う有害な重金属除去技術を、近畿大学産業理工学部の西田哲
明准教授と九州大学大学院の原一広教授が確立したそうです。
工場廃液や土壌中の重金属イオンをゲルによって吸着した後、ゲル
の水分を蒸発させることで重金属を回収できるので、再利用するこ
とが出来る。ゲルだけを使って処理できる為、高額な廃液処分費が
浮くので環境に優しい。同ゲルは化学糊などの市販の試薬にカルボ
キシル基やスルホン酸基などを含む特殊な試薬を固定化したものだ
そうです。それを使い、ニッケルやカドミウムなどの有害重金属を
繰り返し吸脱着することができる。具体的には、工場などの廃液に
同ゲルを混入するだけ。ゲルは廃液中で重金属を回収し、沈殿して
水と分離する。沈殿したゲルを回収してそれを乾燥させれば、重金
属を「ほぼ100%取り出せる」(原一広教授の言)そうです。ゲルに
調合する試薬の割合を変えることで回収する金属イオンや油脂(油
脂も吸着できる)の種類をコントロールできる。
 これを使って中国などの河川・湖沼(現状)に沈殿する重金属イ
オン(+と-の両方に対応)を回収できる(他にも沢山あります)。
日本でも、メッキ工場などの有害重金属汚泥は脱水処理をしてから
多くは埋め立て処分場へ搬送して埋め立てられているが、同ゲルは
これらのコストをほとんどゼロにする。
ゲルは北九州TLO(北九州産業学術推進機構)から特許出願済みだそ
うです。(200706122349) 

日刊工業新聞、2006.09.28(木)第33面にありましたが、下水処理
場の排水汚泥を有用石油系物質に転換することに成功したそうです。
今までは、下記にあるように、HD-1という細菌が石油を作り出すこ
とは知っていましたが、排水汚泥からアセトンを作り出すというの
は、一石二鳥のやり方ですね。北海道大学の増田隆夫教授らが、酸
化ジルコニウムを担持した酸化鉄触媒で、ある条件下で連続的にア
セトンが生成できることを実験的に確かめました。(200910012045)



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