2878.もののあはれと現代芸術



もののあはれと現代芸術
From: 得丸公明


もののあはれと現代芸術 − 三鷹天命反転住宅で山本陽子の詩を朗読する 

プログラム
日時:平成20年3月2日(日) 午後2時ー4時(開場 1時半)
場所:三鷹市大沢2丁目2−8三鷹天命反転住宅 202号室 倉富方
読む人:得丸公明
読む詩:山本陽子「神の孔は深淵の穴」(1966)
    山本陽子「遥るかする、するするながら■」(1970)

ひとこと   地球環境危機から、はだかとことばの起原をへて、山本陽子へ
 本日はご多用のところおいでいただきありがとうございます。
 2002年に南アフリカで環境サミットが開かれたとき、私は水俣病に関する文献
を読んで「水俣病はチッソが悪いのではない。文明の原罪の結果生まれたのだ」
という言葉に出会いました。それが、文明とはなんだろう、人類とはなんだろう
という問いに直面したきっかけです。
 南アフリカの環境サミットには、市民団体の一員として関与し、下見と本番で
二度南アフリカの地を訪れました。そのとき文明や人類についての啓示はなにも
受けませんでしたが、帰国した私を書店で待っていたのが西原克成先生の「内臓
が生みだす心」です。この本をきっかけに、生命の進化の中での人類の位置づけ
を考えるようになり、島泰三先生の「はだかの起原」に出会って、人類ははだか
であり、ことばを使うようになったから、地球環境危機を引き起こしたのではな
いかとおもいいたりました。
 その後、環境サミットの行われた南アフリカに「人類のゆりかご」というユネ
スコ世界遺産の洞窟があることをしり、南アフリカで人類が発祥したのなら行っ
てみようと、昨年4月に南アフリカを再訪し、世界遺産の洞窟とは別ですが、最
古の人類遺跡クラシーズ河口洞窟を訪れることができました。
 ここは13万年前から6万年前の居住が確認されている、現生人類の最古の居住
跡です。インド洋に面した砂岩層の海岸段丘の中腹にあり、広く温かいロビーを
もっています。昨年8月から9月にかけて、この三鷹天命反転住宅で、文明から距
離をおいた洞窟生活をして、ことばも洞窟の中で生まれることにきづき、同時に
山本陽子をおもいだし、はじめて「神の孔は深淵の穴」をきちんと読んでみました。

 権力をにぎると人間はわがままになり、道をあやまる。大審問官の誘惑こそが
諸悪の根源だ。
 ひとりひとりがおのれの魂の深淵に、人間本来の神を発見し、その神ととも
に、神のごとくふるまうことが人間を生きること。詩人はそのように生きてきた。
 人類の時代は終わりに近づいている。それは逃れられない運命だ。だが人類の
滅亡を憂える必要はない。奈落におちていく一瞬一瞬をたいせつに生きていくな
らば、かぎりない上昇をすることができるのだから。
 これが「神の孔は深淵の穴」にこめられたメッセージであり、「遥るかする、
するするながら■」は一瞬のかぎりない上昇を描いているのだとおもいます。



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