2875.米経済・負の循環



米国経済は、負の循環に陥っている。この脱出にはパラダイムシフ
トが重要になる。     Fより

米証券保証会社「モノライン」の救済が成立して、株式市場は上昇
に転じているが、米国の実体経済はだんだん悪くなっている。バー
ナンキFRB議長、グリーンスパン前FRB議長ともに、多くの金
融アナリストの楽観論を戒めている。

前現FRB議長は、実体的な金融状況が非常に悪いということを素
直に証言している。この証言を受けて、29日の米NY市場は大幅
下落と103円/ドルという円高ドル安になった。世界のほとんど
の通貨に対してドルの全面安であった。

銀行はサブプライムの損失で自己資本比率が低下して、自己資本比
率を上げるために、貸出しを押さえている。貸渋りである。このた
め、企業もフェンドも新しい資金の提供がないないために、新しい
投資が出来ない。資金繰りも悪化して、雇用調整が必要になる。ま
た、自動車ローンも絞られるために、自動車の売れ行きも落ちるな
ど実体経済を冷やし始めている。

また、金融機関は住宅のローンなど事業を縮小して雇用を削減した
が、徐々に建設業を初め、消費が落ちた小売業も雇用を削減するな
ど、だんだん、雇用情勢も悪くなり、益々米国民が消費をしないと
いうように景気の状況は縮小方向になっている。石油などの資源や
穀物などの高騰で一部の人たちが好景気になっているが、米国全体
での雇用が減方向になっている。

このようにサブプライム問題から金融不安へ、そして、企業の投資
減速、そして消費減退になり、新しい不良債権の発生になり、再度
金融不安が起こり、益々企業は萎縮して雇用減を加速する。そうす
ると消費が益々減退して、またまた不良債権を生むという負のサイ
クルに陥る。この負の循環で、日本は1990年代にダウンしたの
である。この負のサイクルに陥り始めているのが今の米国の現状だ。
その原因は米政府が、公的資金の投入を躊躇っているためだ。

米国のポールソン財務長官は「投資家や貸し手、投機を行った者を
救うつもりはない」と公的資金による救済を否定する考えを表明し
た。しかし、それは言葉だけであり、実際には政府系金融機関は、
民間から住宅ローン債権を買い取ることで、貸し倒れリスクを軽減
してローン市場を支えている。今回、買い取る債権額の上限を3月
から撤廃し、住宅ローンの貸し出し増を実質的に促進するなどの支
援を行うようである。しかし、これでは対策が弱い。公的資金を投
入した方が、対策は強くなる。それだけ米経済を毀損しないで済む。
しかし、まだその時期ではないというのが、ポールソン財務長官の
考えだ。

しかし、金利引き下げや景気後退によるドルの減価が続くと、ドル
とのペッグ制をしている中国や中東諸国はインフレになり、自国通
貨の切上げかペッグ制の廃止をするしかなくなる。中東のクウェー
トのように自国通貨の大幅に切上げをする諸国も出てきている。し
かし、米国国債で持つドル資産の価値が減額して、外貨準備金の損
が確定する。

このため、中国や中東諸国は政府系投資会社を作り、米国国債で運
用していたドルをアジアなどの新興国や日本、EUなどと投資先の
変更を加速している。国を挙げてのドル離れである。この傾向があ
るために、益々ドルは弱くなっている。このようにドルに対する信
用の低下が起こっている。

今まで米国は世界最大の債務国であり、その債務を可能にしていた
のが、ドルの基軸通貨制度であったが、それが無くなる方向に向か
っている。そうすると、ドルでの赤字が出来なくなり、また、今ま
で積み上がっている米国国債の償還もできなくなるので、ドルを暴
落させて、ドル価値を下げた時点での償却しかできない事態になる。

世界にばら撒かれたドル札と米企業の債権、米国国債などが全部一
気に下がることになる。このため世界的な大混乱になるように感じ
る。日本の外貨準備金も米国国債から全面的にシフトする必要があ
ると思う。

米国経済の混乱は確実に今後起きる。それに対する準備をしておく
ことと、米国資産が今後、大幅に暴落するので、買い場を見ていく
ことでしょうね。10年程度の長期に渡り、米国経済は混乱が予想
できる。

しかし、世界的な景気後退にはならないようである。中国やロシア
などBSICSの経済発展が加速している。そして、隣国中国は一
時的な減速は来るが、中国経済はその後、持ち直して、日本も中国
への依存度を増していくことが予想できる。世界的な経済システム
の大転換が起きる。世界のパラダイムシフトが待ち構えている。

この転換をどう利用するのか、経営者の実力が試されている。この
転換をうまく利用できた企業が次のリーダー企業となることは間違
えない。

さあ、どうなりますか??
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FRB議長「米中小銀、破綻も予想」・不動産へ過剰投資懸念
(nikkei) 
 【ワシントン=藤井一明】米連邦準備理事会(FRB)のバーナ
ンキ議長は28日、上院銀行住宅都市委員会で、金融機関の破綻の可
能性を聞かれ「不動産に過剰投資している中小銀行があり、その不
動産が値下がりしている。多少の破綻を予想する」と述べ、中小の
破綻が増える恐れがあることを認めた。大手銀行については「深刻
な問題を予想していない」としながらも、資本増強の必要を改めて
訴えた。

 米連邦預金保険公社(FDIC)によると、2005―06年の金融機
関の破綻件数は景気拡大を追い風にゼロだったが、07年には3件発生
した。住宅の値下がり傾向が強まっており、不動産を主な担保に貸
し出す金融機関の経営は一段と厳しくなる見通しだ。議長も「切迫
した状況に置かれる」と予測した。

 一方、増資の必要性については「経済の血液である新規の貸し出
しや信用の供給」を維持するためだと説明した。金融機関にリスク
管理の強化を促すため、FDICや米通貨監督庁(OCC)などと
緊密に連携する考えも明らかにした。 (12:21) 
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米経済はゼロ成長、長期化するほどマイナス成長の可能性高まる
2008年2月25日(nikkeibp)

[ジッダ 25日 ロイター] グリーンスパン前米連邦準備理事
会(FRB)議長は25日、米国の経済成長は失速しており、ゼロ
成長の時期が長期化するほどマイナス成長に陥る可能性が高まる、
との認識を示した。

 サウジアラビアで開かれた投資コンファレンスで述べた。

 グリーンスパン前議長は「現在のところ、米国の成長率はゼロだ
。成長が止まっている」と述べた。さらに、原油価格高は「いつま
でも続くだろう」との見通しを示した。
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米財務長官、公的資金で救済を否定・サブプライム問題 
(nikkei)
 【ワシントン支局】米国のポールソン財務長官は28日、シカゴで
講演し、信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問
題に関して「投資家や貸し手、投機を行った者を救うつもりはない
」と公的資金による救済を否定する考えを表明した。米議会では民
主党の有力議員らが政府による救済案を提示していた。

 長官はローンの焦げ付きによって住宅が差し押さえられる比率は
低いと述べたうえで「議会で出ている提案の多くは効果より害が大
きい」と指摘。政府としては「持ち家を維持することが困難な住宅
保有者」を対象とした支援策を推進する考えを示した。 (13:02) 
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米政府、住宅ローン市場を支援 サブプライム問題解消策(ASAHI)
2008年02月28日12時24分

 米政府は27日、サブプライム問題の新たな解消策として、政府
系金融機関による住宅ローン市場の活性化策を発表した。政府系金
融機関は民間から住宅ローン債権を買い取ることで、貸し倒れリス
クを軽減してローン市場を支えてきた。今回、買い取る債権額の上
限を3月から撤廃し、住宅ローンの貸し出し増を実質的に促進する。 

 撤廃するのは、連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)と連邦住宅貸
付抵当公社(フレディーマック)の買い取り上限。 

 政府系金融機関は政府保証の色彩が強い債券を発行して財源をま
かなっている。住宅ローンの不良債権化が最終的に政府財政を悪化
させるとの懸念は根強い。しかし、上限撤廃は民主党を中心とした
議会の要望が強く、住宅不況の長期化による景気後退を防ぐため、
ブッシュ政権も全般的な監督強化を条件に規制緩和に踏み切った。
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米銀、不良債権処理最高に・07年10―12月
(nikkei) 
 【ワシントン支局】米連邦預金保険公社(FDIC)は国内の貯
蓄金融機関と商業銀行の2007年10―12月期の純利益が58億1600万ド
ル(約6200億円)となり、前年同期から84%の減益となったと発表
した。16年ぶりの低水準。信用力の低い個人向け住宅融資(サブプ
ライムローン)などに関連した不良債権処理が過去最高の312億5300
万ドル(約3兆3000億円)に上り、収益を圧迫した。

 同時に発表した07年通年の純利益は1054億7000万ドルで、過去最
高だった06年から27%減った。減益は7年ぶり。不良債権処理額も2.3
倍膨らみ、681億6400万ドルとなった。

 FDICのベア総裁はサブプライム問題が広がった07年の下期に
大手金融機関が巨額の損失処理をしており、「減益は驚くことでは
ない」と述べた。大部分の金融機関は自己資本、収益力ともに十分
だが「延滞債権は増えており、今後も不良債権処理の負担が増える
」と収益環境が引き続き厳しいとの見方を示した。 (12:34) 
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米AIG、サブプライム損失1.5兆円・証券保証で多額計上
(nikkei) 
 【ニューヨーク=財満大介】米保険最大手、アメリカン・インタ
ーナショナル・グループ(AIG)は28日、信用力の低い個人向け
住宅融資(サブプライムローン)に絡む損失が、昨年10―12月期に
約144億ドル(1兆5000億円)に上ったと発表した。有価証券の保証
業務で多額の評価損を計上したため。10―12月期の最終損益は前年
同期の34億4000万ドルの黒字から、52億9000万ドルの赤字に転落し
た。

 損失の主因はグループ会社で手がけた金融保証業務。サブプライ
ムローンに投資する有価証券が債務不履行に陥った場合に、投資家
への支払いを肩代わりする保険を請け負っていた。

 だが、昨年末以降、サブプライムローン関連の資産価格が急落。
保険契約で発生する損失が当初予想を大幅に上回る恐れが強まった
ため、111億ドル超をあらかじめ損失として計上した。 (13:24) 
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米消費者心理指数、2月は12ポイント低下・03年以来の低水準
(nikkei) 
 【ニューヨーク=米州総局】米民間調査機関のコンファレンス・
ボードが26日発表した2月の米消費者信頼感指数(1985年=100)は
75.0で、前月の87.3に比べ12.3ポイント低下した。2003年2月のイラ
ク戦争時の64.8以来の低水準で、景気減速などを背景に消費者心理
は大幅に悪化している。

 調査は5000世帯が対象。同指数の構成要素では、景気の現状を示
す指数が前月の114.3から100.6に悪化した。 (01:50) 
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1月の米雇用者、1万7000人減──失業率は4.9%
(nikkei)
【ワシントン=小竹洋之】米労働省が1日発表した1月の雇用統計
(季節調整済み)によると、非農業部門の雇用者数は前月に比べて
1万7000人減った。前月の改定値である8万2000人増から急減速し、
2003年8月以来、4年5カ月ぶりの減少に転じた。信用力の低い個人向
け住宅融資(サブプライムローン)問題を発端とする金融不安が響
き、雇用の悪化が鮮明になった。米国が01年以来の景気後退局面に
突入するとの懸念が強まりそうだ。 

 1月の失業率は4.9%で、前月より0.1ポイント低下した。平均時給
は17.75ドル(約1890円)。前月比で0.2%上昇、前年同月比では3.7
%上昇となった。 

 1月の雇用者数は7万人増とみていた市場の平均予測を大幅に下回
った。昨年11月の増加幅は11万5000人から6万人に下方修正、昨年
12月の増加幅は1万8000人から8万2000人に上方修正された。 
[2月2日/日本経済新聞 朝刊]


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