2871.米国FRBの政策でスタグフレーション入り



投資家ジム・ロジャースは、米国の長期リセション入りを予言して
いる。           Fより

ロジャースは、米国ドルでの投資を引き上げて、中国人民元や日本
円、ユーロ、スイスフランでの投資に切り替えているし、今後10
年間は米国は景気停滞局面から抜け出せないという。このようこと
で金融投資の専門家たちはドルから他の通貨にシフトしている。日
銀などの世界の中央銀行も外貨準備高をユーロなどに分散し始めて
いる。

中東諸国の政府系ファンドも米国への投資からアジアなどの投資に
シフトするというし、サウジ・サイヤリ通貨庁総裁は、通貨政策は
柔軟性を欠いてはならないとドル全面信頼からシフトしている。
もう1つ、懸念事項は米ヘッジファンドまでが傷つき始めているこ
とである。もし、ヘッジファンドに火がつくと手の付けられない事
態になる。いい面は、モノラインの救済がほぼ確定したことで、新
たに大きな損失が回避された可能性があることである。

どちらにしても、米国ドルからの離脱が広がっている。米国のバー
ナンキFRB議長は今後もFF金利を下げる方向であるので、ドル安局面
が続き、かつドル建てのインフレが勢づいて、経済上一番悪いスタ
グフレーション入りになるのではないかと心配され始めている。
しかし、そのリスクがあってもバーナンキは敢て行うのには、訳が
ある。

民間銀行に米政府は公的資金を投入しないと頑なに宣言している。
このため、公的資金より貸し出し条件が悪い中東、アジア政府系フ
ァンドが入ったが、彼らは年率10%以上のリターンを要求してい
る。このリターンに見合う利益と銀行の新しく発生する証券の損失
を埋め合わせる利益を創出させる必要が米国FRBにはある。

FF短期金利を下げることで、企業に貸し出している金利との差が大
きくなり、銀行は大儲けできるチャンスを得る。日本の銀行が大き
なリスク(債権化証券などへの投資)を犯さなくても儲けが膨らん
でいるのは、日本の公定歩合が低金利であり、企業貸し出し金利と
の差が大きいためである。これを米国FRBも行おうとしているのだ。

もう1つが、日本の銀行も持ち株の評価損が出て、90年代に一時
株の持合をしなくなった時期があったが、持ち株の評価損は大きい
とバランスシート上大きな損失と見えて、自己資本率というBISの基
準をクリアーできなくなる。特に米国金融機関の株保有率は大きい
ために、この株価下落の防止を行う必要があるとFRBのバーナンキ議
長とポールソン財務長官は見ているようである。特にポールソン財
務長官は銀行出身者であり、その仕組みをよく知っている。

しかし、このような微防策が結局の所、日本の失われた10年を構
成したのであり、米国FRBもやはり、銀行倒産を避けるためにあまり
よくない微防策を打っていると感じる。ロジャース氏は損失の大き
な銀行を倒産させて、出直した方がこの困難な局面を早く抜けれる
という。

私Fもロジャース氏の意見に賛成である。または、米政府が銀行に
公的資金を大量に投入して、一時国有化もする覚悟をしないと、負
の側面が蓄積されて、長期に傷を負うことになると心配する。

しかし、米国が衰退すると世界の権力構造は変化して、米国&EU
連合とロシア、中国の3者が権力を争奪する構造になる。このとき
中国とロシアが日本を味方に付けようとして出てくる。投資家も発
展するアジアと日本に来るはず。ロジャース氏も日本はいい位置に
あると言っている。

さあ、どうなりますか??
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米モノライン大手救済で合意近い=CNBC報道
2月23日7時1分配信 時事通信

 【ニューヨーク22日時事】米CNBCテレビは22日、経営難に陥って
いる米金融保証専門保険会社(モノライン)大手アンバック・フィ
ナンシャル・グループの救済策について、銀行団とニューヨーク州
保険局などが行っている交渉が「大幅に前進」し、早ければ週明け
の25日か26日にも合意が発表される可能性があると伝えた。シティ
グループなどで構成する銀行団と監督官庁のニューヨーク州保険局
の交渉に詳しい複数の筋の話として報道した。
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中東政府系ファンド、投資先の多様化競う 
(nikkei)
 【ドバイ=加賀谷和樹】中東産油国が政府系ファンドの投資戦略
で独自性を打ち出し始めた。政府系ファンドが増え、優良な投資先
をめぐる競争が激化してきたためだ。クウェート、カタールが米欧
の金融機関への出資や不動産に関心を示す一方、アラブ首長国連邦
(UAE)のドバイはアジアなど新興国で投資先を開拓する。
UAEのアブダビの投資会社は航空宇宙などハイテク分野への参入
を狙っている。

 ロイター通信などによると、クウェート投資庁(KIA)のバデ
ル・サアド社長は米欧の金融機関や不動産への投資に「関心がある
」と表明。理由として、米の信用力の低い個人向け住宅融資(サブ
プライムローン)問題で価格が下落しているためとの認識を示した。
ブローカーの不正取引で巨額損失を出した仏大手銀行ソシエテ・ジ
ェネラルへの投資を検討しているという。 (07:03) 
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通貨政策は柔軟性を欠いてはならない=サウジ通貨庁総裁
2008年 02月 21日 22:14 JST 

[リヤド 21日 ロイター] サウジアラビアのサイヤリ通貨庁
(中央銀行に相当)総裁は、通貨政策は柔軟性を欠いてはならない
との認識を示した。

 サウジは自国通貨リヤルのドル・ペッグ制をとっている。

 総裁は17日、国王に対する国政助言機関である諮問評議会で「
安易な解決策は長期的に悲惨な結果をもたらす可能性がある。通貨
政策は柔軟性を欠いてはならない」と述べた。国営テレビが21日
、伝えた。

 総裁は「多くの専門家がドル・ペッグ制をやめればインフレ問題
は解決すると言い、単純な問題であるかのように語っている。実際
には問題は格段に複雑だ。為替レートが物価にもたらす影響は限ら
れている」と語った。
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米シティグループ、傘下ヘッジファンドの解約を凍結
2008年 02月 16日 08:29 JST

 [ニューヨーク 15日 ロイター] 米金融大手シティグルー
プ(C.N: 株価, 企業情報, レポート)は15日、傘下のクレジット・
ヘッジファンド「CSOパートナーズ」について、安定化を目的に
投資家による解約を凍結することを明らかにした。

 同社の広報担当者によると、ロンドンが本拠の同ファンドは約5
億ドル規模。2007年11月の損失が10%に膨らんで以降、投
資家による解約が相次いでおり、ファンドマネジャーも辞職に追い
込まれたという。ファンドの成績は07年12月31日時点で、
04年8月の設立から27%のリターンとしている。

 広報担当者は声明で「ファンドの安定と今後の履行に向けた資金
調達に対応するため、CSOのすべての償還を一時的に停止した」
と述べた。過去数週間でファンドに1億ドルの資金を注入し、さら
に他の資金源を摸索していることも明らかにした。
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【90年代日本と似る米信用危機】(08/2/22:日経ヴェリタス)
 ABNアムロ欧州担当主席エコノミスト:ロバート・リンド

 米国の景気は2007年末に急減速し、今年はリセッション(景気後
退)に陥るかもしれないとの懸念が高まっている。市場関係者の中
には、米国の景気低迷は長期間に及ぶ可能性があると指摘する向き
もある。米国が現在抱えている問題と1990年代に日本が陥った債務
デフレには驚くほど似通った点がある。

 筆者はそうした類似点を認めると同時に、重要な相違点のあるこ
とも述べたい。最も重要な違いは、米国の政策当局は1920〜30年代
に世界大恐慌を引き起こした政策の失敗を学んでいることである。

 彼らは当時の状況の再現を避けようと決心している。

 筆者は90年代に日本がデフレに突入した3つのきっかけを指摘し
たい。
 第1は、株式および不動産市場で起きた資産バブルの崩壊だった。
 01年までに、株価と土地の価格はバブルが膨らむ以前の85年の水
準まで反落した。資産価格の暴落は総需要の低迷につながった。

 第2は、後知恵になるが、マクロ経済政策が厳しすぎたように思
える。公式予測では、90年代半ばには景気が回復し、インフレが進
むとみていた。しかし、こうした予測は楽観的すぎることが判明し
、結局、予期せざる引き締め政策につながった。

 第3に、景気が低迷しているときに、2つの外部ショックが経済
を襲った。1つはいわゆるアジア危機で、日本の輸出品に対する需
要は大きく落ち込んだ。いま1つは米ヘッジファンド、ロングター
ム・キャピタル・マネジメント(LTCM)の破綻である。LTC
Mショックがきっかけとなり、劇的な円高が起きた。

 ひとたび日本がデフレに突入すると、消費を喚起するための政策
は非常に効果が表れにくくなった。決定的だったのは、長期的な収
入の伸びに対する民間セクターの期待が悪化し始めたことだ。家計
および企業は物価の下落が持続すると考えたので、実質金利は消費
回復を促進するには高すぎた。

 円が大幅下落すれば、1つの解決策になったかもしれない。円安
が輸入物価とインフレ期待を押し上げたかもしれないからだ。しか
し90年代には円高が持続し、問題を複雑にした。さらに、デフレが
厳しさを増すとともに、日本の銀行システムはとどまることのない
損失と不良債権の増大にのたうった。

 90年代に日本が経験したことと、現在米国が抱えている問題には
2つの明確な類似点がある。
 第1に、米国では住宅価格が急速に下落している。
 2年前、筆者は米国の住宅価格は賃借料よりも15%高いと推定し
ていた。こうした過大評価を正すには価格の下落が不可欠だが、今
後1年間に名目価格は10%しか下がらず、深刻な価格暴落はないと
みている。

 第2に、米国の銀行システムも、信用力の低い個人向け住宅融資
(サブプライムローン)の焦げ付きによる巨額の損失により、深刻
な破綻の危機に直面している。こうした事実上の信用危機により、
家計および企業の財務状況は厳しいものとなっている。

 こうした問題を正しくとらえることが重要だ。筆者は資産価格の
暴落が続くとは考えていない。さらに、米国の銀行システムはさら
なる損失を認めて評価損を計上するが、資本増強にも手をつけ始め
るとみている。結局、このプロセスは比較的速やかに進み、銀行は
通常の貸出業務に復帰することができると考えている。

 こうした見通しの基礎には重要な要因がある。米政策当局はでき
るかぎり速やかに景気を回復させる決意でいると筆者は信じている。
この数カ月の間に、政府は景気刺激策を発表しているが、これが景
気回復に寄与するだろう。さらに重要なのは、米連邦準備理事会(
FRB)が政策金利の大胆な引き下げを実施したことだ。FRBが
先制的な金融緩和を実施したのには十分な理由がある。90年代には
、ほとんどの中央銀行はテーラールールにのっとって金融政策を実
施した。つまり、政策当局は景気が減速したとき、あるいはインフ
レ率が低下したときに金利を引き下げた。

 最近、FRB高官はこのように主張する。すなわち、政策当局は
、もし資産価格の下落が経済に悪影響を与えると思われるときには
、果敢に予防的措置を講じなければならない、と。

 FRB議長のベン・バーナンキ氏は、資産価格と実経済の間で悪
循環が起きる可能性があると警告した。資産価格が景気減速を予期
して下落すれば、総需要が減退し、それが資産価格のさらなる下落
を招く。特に、FRBは08年初頭の株価急落を目の当たりにして、
住宅および銀行問題が経済全体に波及する恐れがあると考えたので
あろう。

 結論ははっきりしている。
 FRBは、金融市場にストレスの兆候が表れていないか目を凝ら
しており、経済指標や統計にはあまり注意を払っていない。FRB
には、政策の効果を測るものとして、2つの具体的な目標があると
みる。
 第1には、イールドカーブ(利回り曲線)の傾斜が増すことを望
んでいるのだ。1月下旬に実施した大胆な利下げがイールドカーブ
の傾斜を高めるのに寄与した。これが銀行の自己資金増強を可能に
し、景気回復期待を高めるのにも寄与するだろう。

 第2に、FRBは株価の下落を止めたいと考えている。
 もし株価が大きく下落すれば、民間部門のバランスシートはさら
に傷つき、景気低迷が長引く恐れが高まるからだ。


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