栃木県小山市
 
外形標準課税    (98/6/10 朝日新聞朝刊記事より)


政府税調小委が法人事業税の外形標準課税方式を検討 ― 事業規模に応じ税額決定

 政府税制調査会は9日、地方法人課税小委員会(座長=石弘光・一橋大教授)を開き、法人事業税について外形標準課税方式を導入する方向で、具体的な検討に入った。結論を得るまでまだ時間がかかりそうだが、この日の会合の中では、現行の事業税のうち半分だけを外形標準課税にするとの案も示され、今後有力な選択肢のひとつになるとみられる。
 外形標準課税は、所得を基準に課税する現行の方式と違い、事業規模を表す何らかの基準によって税額を決める課税方式。法人事業税についてこれまで検討されているのは、法人としての所得に支払い給与、支払い利子、賃貸料を加えた金額を課税のベースにするもの。所得の多少、黒字か赤字かにかかわらず、行政サービスへの対価を税金として払うべきだとの考え方に基づいている。

 これに対し、この日議論された案では、

(1)法人事業税をすべて外形標準にする方法
(2)現行の課税方式の所得標準と、外形標準とを半分ずつ併用する方法

の二つが提示された。

(2)の場合は、事業税の税率(所得が少ない場合の軽減措置を除き原則11%)を半分に抑え、外形標準分の税率も(1)の半分にするというもの。
赤字企業にとっては税負担が(1)案に比べ軽くなり、より導入しやすくするためには現実的な選択肢となりうる。

 ただ、外形標準課税のベースに何を採用するかという根本の議論がまだ収れんしていない。例えば従来案では、人件費の比率が高いサービス業で税負担が重くなるなど、業種間の不均衡が発生しうる、といった問題が指摘されている。

 また、結果的に赤字企業にも税負担を求めることは、導入にあたり問題になる。国税庁の統計によると、赤字企業数の割合はバブル期でも5割近くに達し、1996年の調査では64.7%に上っている。

 大蔵省は、この数字は赤字を装う企業が多いことを示しているとみて、課税の「適正化」が必要としているが、日本商工会議所など中小企業側には反対論が根強い。赤字企業や小規模企業に配慮した形で、どう課税ベースを設定できるかが今後の焦点だ。

 法人事業税は都道府県税収の約3分の1を占め、96年度は計5兆840億円の納税があった。ただ、所得を基準にした課税のため景気の影響を受けやすく、自治省などは外形標準課税の導入で地方税収の安定を図ろうとしている。

 外形標準課税は戦後のシャウプ勧告以後、繰り返し検討されてきた。例えば78年に全国知事会がまとめた報告では、資本金5億円以上の製造業を課税対象とする案が出されている。政府税調は、これら過去の報告、答申をもう一度見直し、議論を深めることにしている。

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