ラリオのつぶやき

気の向いたときだけ書いている雑記です。
いろいろ思ったことや、身のまわりで起こった出来事などについて書いてます。

水鳥さんごめんなさい

釣友のAは、いわゆる万年バス釣り初心者だ。バス釣りを始めたのは数年前だが、釣りに行く機会に恵まれず、年にニ、三回とか、ひどいときは一年間全くといった具合。釣行回数が少ないので全く上達しないし、馴れるとか飽きるとかいったことがないのか、いつまでも始めたばかりの頃の気持ちでいられる幸せな釣り人なのだ。
彼と私とは小学生の頃からの付き合いで、その昔は毎日のように、というより本当に毎日一緒にフナ釣りをしていた仲だ。釣りの腕前もなかなかのもので、家の近くの川で一日何十匹とフナを上げていた。
しかしバス釣りではキャスティングもルアーの扱いもヘタクソで、はっきり言ってハタ目にあまり釣れそうな感じがしない。それでも、魚運というやつが強いのか、彼には不思議とバスがよく釣れる。
ビギナーズラックといって、直訳すれば初心者の幸運、始めたばかりの釣り人にはなぜかよく釣れるのだという言い習わしがある。まさしくその通り、Aはその典型ともいえるのだが、万年初心者だからさらにそれがずっと続くようなのだ。なんとも不思議な奴だ。
そんな、腕や経験より運で魚を釣ってしまう彼だが、釣り人としてひとつ気を付けてもらいたいことがある。それはエチケットというかマナー。
まず気を付けて欲しいのはキャスティングの際、周囲に気を配ること。すぐ近くに人がいても、かまわず思い切りバックスイングするので非常に危険なのである。それももう完璧なかつぎ投げで、後ろを全く見ず振りかぶり人並みより優れた腕力で力いっぱいスイングする。だから近くで釣りをしていると彼のルアーが体に当たることが何度もあるし、後ろにある木などにルアーを引っかけてしまうところなどは何度も目撃している。
幸い私は運がいいようでフッキングにはいたらずに済んでいるが、彼の筋力が体操選手並みであることを思うとオチオチ一緒に釣りなどしていられない。実際、背後の障害物にルアーを引っかけたりした時は、どんな太いラインであっても一発でプチンといってしまう。
しかし、いつか此奴は人を釣るだろう。それでも本人はそんなこと全く気にしてないのだ。
いや、そういえば一度、その昔に一緒に釣りをしていたときに彼の釣り鈎が私に掛かったことがある。それも、唇にちゃんとハリ掛かりしてだ。
それからほかに、彼はくしゃくしゃに絡まった釣り糸や使用後のワームを釣り場にわざと残していくことがある。そういった行いについて注意したりといったことを私は敢えてしないでいるが、「水鳥さんごめんなさい……」などと呟きながら釣り糸のカタマリを捨てる此奴の言動は、さすがに理解に苦しむものだ。