循環器疾患と気象

ひとくちに”循環器疾患”と申しましても、そのなかには大変多様な病態が含まれてきます。
ここでは虚血性心疾患、高血圧、不整脈、脳卒中、と気象変化との関わりについて述べます。


虚血性心疾患とは心筋への酸素供給が不十分な病態のことを申します。

その中で、心筋虚血が一過性、可逆性のものが狭心症であり、
心筋虚血が高度で心筋に壊死が生じてしまうものが心筋梗塞です。



狭心症の分類

A,発生状況に基づいて
 1、労作狭心症
  労作またはその他の心筋酸素需要の増加がある状態で発症
 2、安静狭心症
  先行する心筋酸素需要の増加なしに発症

B,病期により
 1、不安定狭心症
 2、安定狭心症
  これは不安定狭心症のほうが病期が一層すすんでしまったもの、という理解でよろしいかと思います。


狭心症は冬期に多い!。


1、寒風に向かっての歩行はことさら発作を誘発しやすい。

2、低温環境では安静時の血圧も、作業時の血圧も上がりやすくなる。
  血圧上昇は心筋酸素需要増加の原因となります。
  局所だけ(例えば手だけ)の寒冷刺激も狭心症の誘発要因になりえます。
  雪かき作業も狭心症を誘発する場合が考えられます。

  

3,高温高湿環境でも、しばしば狭心症が誘発される
  これは心拍数の増加が原因と考えられています。

4、発作時間帯が定まっているタイプの狭心症がある。
  異型狭心症(冠れん縮性狭心症)では、夜半から明け方にかけて発作が 集中します。これは自律神経系による冠動脈の血流調節がうまく機能しないためと考えられています。




心筋梗塞には好発時間帯がある。


1、午前中(7時から12時)に大きな山がある。
2、午後にも小さな山がある。
心筋酸素需要と冠動脈血流量の間に”ミスマッチ”が生じると心筋梗塞の発症に結びつきます。朝方に心筋梗塞が多いのは、朝は起床して活動を始める時間帯にあたり、心筋酸素需要は増加しますが、一方朝は自律神経系のはたらきが不安定になりやすく、心筋への十分な酸素供給が行われ難い状況が起こりやすいためと考えられています。

3、気温の急変、特に急な気温の降下と心筋梗塞の発症との間には関連があるらしい。
  また、気温の急変があると人体は体温調節のため循環調節を行います。従って心臓に対して過度の負担が生じる場合があります。
  以上のような観点から早朝、午前中の気象状況には十分な注意が向けられるべきと思います。

4、心筋梗塞の比較的に多発する季節は冬と夏
  季節との関連では夏の暑さがきびしいところでは比較的に夏に心筋梗塞の発症が多く、冬の寒さがはなはだしいような地域では冬に多い傾向があるようです。


高血圧

血圧はどのようにして決定されるのだろう?。

Pageのモザイク理論(1960)によれば、血圧に影響する因子として、心拍出量、循環血液量、自律神経系、血液の粘性、化学的昇圧物質、血管の弾性、血管の内径、血管の反応性などがあげられています。要するに血圧に影響を及ぼしうる要素はたいへん多岐にわたるのです。

ところで、一般的には、急な気温の降下は交感神経緊張をもたらし、反射的に皮膚血管が収縮し、血圧が上昇することがあるといわれます。

また、寒い季節(冬季)には体温保持のため皮膚血管は収縮し皮膚血流は低下しています。ゆえに一般的には末梢血管抵抗の増大により血圧は上昇しやすいとも言えます。これとは逆に暑い季節(夏季)には皮膚血管は拡張し、熱放散が行われます。末梢血管抵抗の減少により、血圧は下がる傾向にあるだろうと考えられます。

しかし、健常な人体においては、季節の移り変わりと血圧の間には何らの関係も認めなかった、という報告もあります。同一人で、夏の血圧と冬の血圧に差があるようであれば、その人はすでに血圧維持機構に破綻をきたしつつある、すなわち高血圧症の範疇に足を踏み入れていることになるのだという主張もあります。

これとは別に血圧には日内変動がある、という観点もあります。一般に日中の血圧は高く、夜間は低いというものです。高血圧患者ではこうした関係が崩れて、日中でも夜間でも血圧に差を認めないという報告もありますが、「血圧の日内変動」の問題は、現に専門家間でホットな議論のあるところです。

以上述べましたように血圧に影響を及ぼす因子ははなはだ多く、かつそれらの因子間の相互作用もあり、血圧と気象因子との間の関係をクリアカットに述べるのはなかなか困難のように思えます。ただ、高血圧患者では寒い季節、寒い環境において一層血圧が上昇しやすくなるであろう、というくらいに記載するのが穏当なところでしょうか。



不整脈


不整脈とは心臓における刺激生成、伝導の異常のため、心臓のポンプ機能が障害され、臨床上問題となるものを言います。

一般に人体は低温環境にさらされると、交感神経緊張、心拍数増加、血圧上昇、心仕事量増加をおこし、これらの結果不整脈誘発的になると考えられます。
局所のみへの寒冷刺激でも不整脈が誘発されることがあります。

これに対して高温環境では、一般に不整脈が誘発されることは少ない。しかし、体内からの放熱が不十分で、体温が42℃をこえるような状況では、循環中枢が失調状態となる危険があり、致命的な不整脈が出現する場合もあります。



脳卒中

脳卒中には、脳出血、脳梗塞、クモ膜下出血の3つの病型を含みます。

このうち、クモ膜下出血の発症には明らかな季節性はないようです。

脳出血は高血圧との関連性が深く、気温の低下する冬季に発病のピークがあります。高血圧患者では冬季には一層血圧が上昇しがちなものです。

脳梗塞ではこれとは逆に高温多湿な夏季に発病が多いようです。これに関しては高温多湿な気象条件と血液凝固能の亢進を関連付けて論じる向きもあるようです。

また、脳卒中の好発時刻は午前6時から12時の間であったとする報告もあります。



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