御法度


プロデューサー:
監督・脚本:大島渚
原作:司馬遼太郎
出演:ビートたけし/崔洋一/松田龍平/浅野忠信/竹田真治/田口トモロヲ/坂上二郎/トミーズ雅/桂ざこば/神田うの/


規律を重んじる新選組に一人の美少年が入隊した事によって、彼を巡って男達の間に 波紋が生じる。


<辛口注意報>
女性サービス・デーだったこともあり、場内は若い女性(それも高校生くらい の子中心)で占められていました。 たまに年配の男性の姿も見受けられましたが、こちらは純粋に新選組の シンパでしょう。
大島渚の13年ぶりの新作、それも司馬遼太郎「新選組血風録」に収められて いる「前髪の惣三郎」の映画化だということで嫌が追うでも期待が高まる一方で、 たけしの土方に一抹の不安を胸に抱きつつ見に行ったわけだが、蓋を開ければどっひゃ〜、 の大惨事。新選組映画史上希に見る怪作に仕上がっていて、見ている間、笑いをこらえる のに必死だった。
私は新選組の映画はこうあるべきだといったような確固たる理想を抱いている わけではないが、あれはもうキャストだけでもアウトである。 たけしが土方だと聞いた時から嫌〜な予感がしていたわけだが、映画における キャスティングが映画においていかに重要かという事をこれほど思い 知らされた映画も珍しい。
一番危惧していたたけしは思った通り素人演技丸出しで、「戦メリ」の頃 からほとんど進歩が見られない。大島が怒鳴らないことを条件に出演した そうだが、それにあぐらをかいて、ここまで演技に対して怠慢だった姿勢 を私は他に知らない。 自分も映画監督なら映画における演技の大切さを知っているはず。少しは努力の 後でも垣間見られたらまだ救いがあるのだが、そのカケラも感じられないのだ。 殺陣のシーンがまあまあだったのが救いだが、これは心理的な演技が要求される 映画なので、いくら殺陣のシーンがうまくてもそれだけでは他のダメな部分 を補うことはできない。体型もズングリで姿勢も悪いのが気になった。 監督も相手が素人だから最初から期待などしてないのはもうミエミエで、これはもう映画祭 で名の売れているたけしを起用してカンヌで目を引こうという魂胆としか 思えない。崔洋一も何だかしまりのない近藤勇だなと思ったが、セリフが少ない のでそれほど重要視してなかったのだろうか。彼は「愛のコリーダ」の助監督 だったそうだが、このように回りを自分の身内と好みだけで固めて、公私混同も 甚だしい。たとえ私情を交えても、「ジャンヌ・ダルク」のミラ・ジョヴォビッチ、 ウディ・アレン作品のダイアン・キートン、ミア・ファーローみたいにうまけりゃ いいけどね。
他にも山崎役のトミーズ雅や桂ざこばなど、ここはお笑い道場かと思って しまった。山崎(雅)が惣次郎に手を握られるシーンなんて場内大爆笑。 大島渚は、「女性が喜ぶような映画を念頭に置いて作った」とか言いながら 私達が求めているものが何であるかが全然わかっていない。 とにかく、美少年と男同士の濡れ場を出しときゃいいだろうという態度が滲み出ていて、 すごく嫌な気分にさせられたは私だけだろうか。 私たちがこんなもので喜ぶと思われたとしたら、随分見くびられたものである。 某プレミアには「大島渚の13年ぶりの新作だというだけで一見の価値あり」 などと書かれているが、巨匠の新作だからってありがたがって見る必要なんて 全然ないと思う。 私に言わせると、何年も映画を撮ってないような監督は駄目だということである。 T・マリックなども「シン・レッド・ライン」を20年ぶりに撮った時、何故 あんなに騒がれたのか不思議で仕方がなかったし、そういう作品をアカデミー賞 にノミネートするアカデミー賞協会の感覚も理解できなかった。 何年も歌わない歌手、何年も演奏しないヴァイオリニスト、なんて考えられ ないのと同様、映画作りも常に現場にいないと勘が鈍るのではないだろうか。 70を過ぎてなお、映画作りへの情熱を失わないシドニー・ルメットや、 破産や凡作を繰り返し、皆に笑われながらも映画を作り続けるコッポラの映画人 としての愛情とプロ根性の方を私は支持します。
ちなみに友人は「耽美がお笑いでどうするねん」と言ってました。大島は履き 違えてるぞ。

キャスティングで良かったのは、浅野忠信と沖田役の武田真治くらいで しょうか。松田龍平にいたってはもう素人演技丸出し。 田口トモロヲと龍平との濡れ場も龍平君がデカ過ぎて大木にセミといった 感じでこれまた笑えるのだ。 大島さんも女子高生狙いだと言い張るなら、その辺ももっと考えて欲しかった。 大体、ビョルン・アンドレセンみたいに誰が見ても美少年というのならともかく、 大の男を狂わせるだけの色香が彼からはほとんど感じられないのだ。 いい所もある。ラスト、河原で沖田が「雨月物語」の中の「菊花の約」 という話を土方に語って聞かせるシーンはとても幻想的で思わず引き込まれて しまった。 それだけに、たけしの存在が、その場の雰囲気を台無しにしているのが なんとも残念(ここまで言うか)。素人俳優を配していても、デヴィッド・ ボウイの存在がそれら全てを補って余りある「戦場のメリークリスマス」に 比べるとどうしても見劣りするのは否めません。 でも、ギャグとして観たら楽しめるかも。(フォローになってない(^^;)) 後、新選組の本物の衣装とはかけ離れていますが、ワダエミさんの衣装も 良かったですね。


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