かたあしだちょうのエルフ/ロングセラー絵本

おすすめの1冊看板

かたあしだちょうのエルフ/おのきがく


■第96回/かたあしだちょうのエルフ

かたあしだちょうのエルフ 奥付を見ると、初版が昭和45年9月とあります。西暦で1970年ですから、もう40年近く前に刊行された絵本です。読んでいない方でも絵本のタイトルはきっと耳にしたことがあるでしょう。この「独断でおすすめの1冊」コーナーでは今までも何冊か、何を今さら…というようなロングセラー、名作を取り上げつつ、その度に「じつはお恥ずかしいことに筆者はこの本は初めて読みました」と懺悔している本があります。その都度の言い訳として、あまりにも有名すぎて、逆に読む機会を逸してしまい、今さら読むのもちと恥ずかしい…などと記してきました。

 そもそも、この「独断でおすすめの1冊」は特に明確なポリシーや紹介する基準なるものがあってのものではなく、まったく筆者の気まぐれで本を取り上げて紹介しているコーナーではあります。ただ、できるなら素晴らしい作品にも関わらず、埋もれてしまっている絵本や、あまり知られていない絵本等を取り上げて、自慢げに紹介したい…などという本音もあります。ゆえに、あまりにも有名でロングセラーを紹介したところで、みんな知ってるし、読んでるから…などと理屈をつけて回避していた傾向も無きにしも非ずでした。

 今回、ご紹介する「かたあしだちょうのエルフ」…この絵本も名作中の名作です。しかし、またしても筆者は恥をしのんで、初めて読みました…なのである。そして、今後は何を今さら…という妙な理屈は抜きにして、ロングラン作品には間違いなく、それなりに「理由」があるゆえ、それを自身で納得しつつ、ド素人なりの観点で堂々と紹介していこうと思っています。

 さて、この「かたあしだちょうのエルフ」ですが、前述の通り、読んでいなくてもタイトルは耳にしたことがある人がほとんどかと思います。実際、筆者もその部類です。こうしたロングセラー、名作の場合、ほぼ100%の確率で、遅ればせながら読んでみて、「やはり名作と言われる所以が納得できる」と思うのですが、今回もまさにその通りでした。

 絵は版画を用いて表現されています。その意味では、絵本の中でも少々特殊な部類になるのかもしれませんが、そうした「技術的表現」に依存した作品などでは決してありません。だからこそロングランの名作として40年近く愛読されているのでしょうが。

 主人公のエルフはいろいろな仲間の動物たちと暮らしていますが、若く、強く、大きなオスのだちょうで、エルフと呼ばれる所以は、一息で千メートル走ったことがあり、アフリカの言葉で千のことをエルフと言うので、そこからそういう名前がついたそうです。エルフは子ども好きで、背中に子どもを乗せて散歩をしたり、長い首を利用して木の実を取ってくれたり、恐ろしいジャッカルがやってきても、追っ払ってくれたりとみんなからたよりにされ、とても人気者です。

 そんなある日のこと、百獣の王ライオンが現れました。勇敢なエルフは、みんなを助けるためにライオンと闘いました。そして、見事にライオンを退散させたのですが、その時に大切な足の1本を食いちぎられたしまったのです。平原は平和な日々が続きましたが、片足をなくしたエルフには苦しみの日々が続きました。最初のうちは、片足になってしまったエルフのために、食料を取ってきてはエルフに分けてくれていた動物たちも、それぞれの家族が大切ですから、次第にエルフの世話まですることはできなくなり、やがれエルフはみんなから忘れ去られていきました。動けないエルフは、やがて体はカサカサにひからびていきます。食べ物を探すことすら出来ないのです。

 ある日、平和だった平原に黒豹が現れました。みんなは一斉に逃げましたが、逃げ遅れた子どもたちが黒豹に狙われました。エルフは自分の体がどういう状態かなどということはすっかり忘れ、「みんな、ぼくのせなかにのれ」と、子どもたちを助けようとしました。一本足のエルフは懸命に黒豹と闘います。そして、ついに黒豹は逃げていきました。エルフの背中から降りた子どもたちが「エルフ、ありがとう」と言ってエルフを見てみると、そこには片足のエルフと同じ格好の大きな木が空に向かってはえていました。エルフの顔の真下のあたりにはきれいな池もできていました。木になったエルフは、1年中涼しい木陰を作り、そのおかげで動物たちはみんな楽しく暮らしたのでした。

 …仲間を助けるために勇敢にライオンと闘って、その結果片足を失ってしまったエルフの行動をどう思うでしょうか?そして片足になってしまったエルフに対する仲間の姿勢はどうでしょうか?片足になり、食べることも出来ず、カサカサになってしまいながらも子どもたちを助けたエルフをどう思うでしょうか?最後は木になったエルフをどう思うでしょうか?

 名誉の負傷…それゆえに最初は仲間もエルフの面倒を見ますが、やがれ日々の自分たちの生活に追われて離れていきます。やむを得ないことです。誰だって、最後は自分が可愛いのですから。エルフの心境は一切描写されていません。ありのままのエルフの状態を描き、最後も木になったエルフは、それでも仲間のために役立つ状態を継続します。

 読む人がそれぞれに感想を持つことでしょう。エルフの姿を尊いと感動する人もいれば、もしかしたら自分を大切にして、もっと賢く生きればよかったのに…と思う人もいるかもしれません。見放した仲間たちに対して、何て冷たいんだ!と憤る人もいるかもしれません。

 作者は、この作品を通して何を訴えたかったのか、あとがきでも特に触れていません。すべては読む人がどう感じるか、このお話から何を思うか…任されています。もしかしたら、そうした表現もロングラン名作絵本のひとつの特徴なのかもしれませんね。まだ、読んでいない方は是非、ご一読を。きっと何かを感じるはずです。。


◆かたあしだちょうのエルフ
●文・絵/おのきがく●ポプラ社刊●1,050円(税込)
かたあしだちょうのエルフ
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