こんや、妖怪がやってくる/君島久子、小野かおる/岩波書店

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こんや、妖怪がやってくる/君島久子、小野かおる/岩波書店


■第280回/こんや、妖怪がやってくる

こんや、妖怪がやってくる 中国の昔話絵本である。昔話というと、どちらかというと教訓的要素を含んでいることが多く、筆者としては結構好きなジャンルであり、日本以外の昔話というのもその国の伝統なり風習なりが明確に現れている場合が多いから、他国のことを知る上でも非常に興味深いものがある。

 さて、お話だが、ある村にざんばら髪に青黒い顔、鋭い牙で馬でも牛でも食べてしまう恐ろしい妖怪がいたという設定である。村はずれに一人で暮らすおばあさんがいたが、ある晩大切に飼っていた子牛を恐ろしい妖怪に食べられてしまった。そして、妖怪は「明日はおまえを食いに来る」と、恐ろしい予告をして帰っていった。

 震えながら夜が明けるのを待ったおばあさんは、外に出て「どなたか、わたしをたすけておくれ」と泣き歩いていると、たまごに出会った。おばあさんの話を聞いたたまごは「だいじょうぶ、きっとたすけてあげるから」と励ます。

 次におばあさんは、ぞうきんに出会い、同じように励まされる。そして次にはかえる、こん棒、火ばさみ、牛のふん、重たい石のローラーと出会い、同じように励まされる。そして、それらはみんなで集まり、おばあさんをたすけるための作戦を練る。やがて、日が暮れた頃、みんなでおばあさんの家にやって来た。そして、そえぞれが自分の持ち場に隠れて、妖怪がやってくるのを待った。

 夜中になって、果たして妖怪がやって来た。同時にまずたまごがはじけて妖怪の目に張りついた。間髪を入れず、ぞうきんが妖怪にびんたを食らわし、水がめの中からかえるが飛び出し、妖怪の鼻を塞ぐ。逃げようとする妖怪の尻尾を火ばさみがはさみ、外に出ようとするとこん棒につまづいて、こん棒は妖怪をぽかぽかと殴る。やっとの思いで、外に出た妖怪は牛のふんにすべってころんで、そこに重たい石のローラーがごろごろところがってきて、妖怪をぺしゃんこにしてしまった。こうして恐ろしい妖怪は退治され、村人たちは安心して暮らせるようになったのだった。

 …何とも奇想天外というか、ユニークというか、そもそも登場してくるキャラクターがたまごだったり、ぞうきんだったり、火ばさみだったり、牛のふんだったり、おおよそ想像しないようなものばかりであることに驚かされる。妖怪退治等の悪者を成敗するお話はたくさんあるが、その立役者が生活の中での身近な道具だったりすることがユニークである。それぞれは単独ではあまり力のないものかもしれないが、それぞれが力を合わせ、それぞれが自分の特徴を十分に活かし、大きなものに立ち向かう…これは確かに痛快である。その意味では教訓的でもある。

 それにしても昔話というものは、一体誰がどのような発想から創作し、伝承されてきたのだろうか?とつくづく思う。大体において、何か創作する場合、自らの体験をベースにすることが多いのではないかと思うが、多くの昔話はどうなのだろうか?と思う。それにしても中国に限らず、遠く離れたまったく異なる文化や風習を持つ異国でも、どこかしら共通する昔話が存在するというのは何とも面白いものである。


◆こんや、妖怪がやってくる
●文/君島久子●絵/小野かおる●1,620円(税込)●岩波書店刊
こんや、妖怪がやってくる
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