犬を殺すのは誰か/太田匡彦/朝日新聞出版 |
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犬を殺すのは誰か/太田匡彦/朝日新聞出版 |
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■第156回/犬を殺すのは誰か ペット流通の闇
今回紹介する本もじつは「本命」ではなかった。以前このコーナーで紹介した「星守る犬」を購入する際にレコメンド商品として表示された本だった。やはり同様に以前「犬たちをおくる日」を読んで、ペットの殺処分について大いに憤りを持っているだけに、この「犬を殺すのは誰か ペット流通の闇」というタイトルだけでも大いに興味を引かれた。 内容は以前、紹介した「犬たちをおくる日」同様に衝撃的である。「犬たちをおくる日」は愛媛県動物愛護センターでの取材を元にしたショッキングな内容だったが、今回の本はまずはいかにペットが簡単に捨てられてしまうか、という視点から始まり、いわゆる流通の裏側についての内容がメインである。 これを読んだから、全てのペットショップに対して偏見や先入観を持つわけにはいかないが、これも何度か記してきたが、筆者が子どもの頃からペットショップで売れ残ったペットは最終的には殺処分されてしまう…という話は耳にしていた。 そして何十年経過した今でも、相変わらずそうした現実が存在することをより多くの人にも死ってもらいたい気持ちもあり、ここ数冊犬にまつわる本の紹介が連続する結果となっている。子どもの頃は、そうした話は耳にしても、実際に筆者の家で犬を飼っていたわけでもなかったから、正直なところそれほど身近に感じることではなかったのだが、パピヨンを2頭飼い、今またイタリアングレーハウンドを飼っている環境となり、このペットの殺処分問題は、まさに身近なものとなり、今更ながら大きな憤りを感じている。 まず、この本で驚いたのが地域によって「定時定点収集」というとんでもないことが行われていた…という事実である。何と決まった日時にペットの廃棄収集を行っているというのである。まるでゴミの収集のようにである。考えられないことである。しかもそれが住民サービスの一環なのだという。今ではほぼそうした定時定点収集が行われている地域もないようだが、2009年までは行われていた事実があるとのこと。考えがたい事実である。 そしてペット流通のしくみとしてのオークションなら移動ペット販売など、まさに犬を「命あるもの」ではなく、単なる「商品」として扱っている実態は、犬を飼う者にとってはあまりにもショックである。今のペットショップで販売されている犬は、ほぼその出生地などもわからず、どのようなルートで販売されているのかさえわからないのだ。 確かに、我が家で今飼っているイタリアン・グレーハウンドをペットショップで購入した際に、予防接種の記録としての控えのような書類はついていたものの、それ以外には何も渡されなかった。以前、パピヨンを購入した際には、「血統書」がちゃんと渡されたゆえ、ちょっと妙だな…とは思ったものの、別に飼う犬の血統書が必要で飼うわけでもないゆえ、特に気にもせずにいたのだが、この本を読んで、今の犬はそうしたことすらさっぱりわからない状態で販売されているのか、と合点がいった。 ペットショップの実態での衝撃的な記述としては、あるペットショップに勤務した人が、ある時店長が幼犬をポリ袋に投げ込んで、近くにある冷蔵庫に入れて、死んだら翌日のゴミとして捨てるように指示された…という記述である。以前に紹介した「犬たちをおくる日」でも同様だったが、あまりのひどさに読んでいて怒りがこみ上げてくる。 またこの「犬を殺すのは誰か」には、かなり詳細なデータも添付されているのが特徴である。巻末には」「犬にやさしい街は?」という106自治体アンケートも載っている。また中ほどには図解で全国自治体の犬に対する「やさしさ」を5段階評価で説明している。こうしたデータは現状のペットに対する問題点を、数字に裏づけされたものとして、より信憑性を高くしている。日本に比べて外国での犬に対する対応の違いにも驚かされる。ドイツの常識、日本の非常識の項目など、同じ人間なのになぜこうも考え方が違うのか?と愕然とする。 犬を飼っている人ならそのあまりに純粋な犬の姿は理解できるだろう。人間などより遥かにピュアである。この世界に生息する命あるものの中で、もっとも残酷で醜いのは人間である。この本にまかれた帯に記された文章に「殺処分される犬は年間8万匹超。あなたがその命を救ってください」…とある。表紙の何の疑いもなく見上げる犬の眼差しをどう捉えるのか?もういい加減に我々は「人間」として気づき、やらなくてはならないことをすべきである。 |
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