100万回生きたねこ

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100万回生きたねこ


■第15回/100万回生きたねこ

100万回生きたねこ表紙 この佐野洋子さんの絵本もまたかなり有名であり、誰でもタイトルを耳にしたことはあるかと思う。筆者も当然、佐野洋子さんという絵本作家の名前と「100万回生きたねこ」というタイトルは知っていたが、お恥ずかしいことに実際に読んだのは今回が初めてであった。

 きっかけは当サイトでもアソシエイト契約を結び、バナーを掲載している本のネット通販ではあまりにも有名なアマゾン・ドット・コムでいろいろと本の検索をしている際に出会った。このアマゾン・ドット・コムではその作品の書評や実際に読んだ方のおすすめ文が掲載されており、非常に参考になるし、筆者もたびたび利用しているのだが、そこに掲載されている週刊朝日の書評と、日本経済新聞「こどもの本」の書評を読み、いったいどんな内容の絵本なのだろうか?と、非常に興味を持った。

 その書評では、この「100万回生きたねこ」が大人のための絵本かもしれないこと、そしてそうであれば必然的に子どもも楽しむことができる絵本の本質をとらえた絵本であること、そして、何やら不思議な構成になっていることが記されていた。

 そもそも「100万回生きたねこ」というタイトルからして、考えてみれば奇妙である。出だしも「100万年も しなない ねこが いました。 100万回も しんで、 100万回も 生きたのです。 りっぱな とらねこでした。」…と書かれ、右ページには佐野洋子さん独特のタッチで、お世辞にも決して可愛いとは言えないとらねこが描かれている。いもとようこさんが描く、メルヘンチックで可愛いねことはまったく異なるねこである。

 お話は、ページをめくるたびに、そのねこが誰に飼われていてどんな風にして死んでしまったかが、書かれているのだが、共通することは、主人公のねこがその飼い主を嫌いであることだ。最初は王さまが飼い主だった。そして船乗り、サーカスの手品つかい、どろぼう、おばあさん、小さな女の子…いろいろな飼い主に飼われるのだが、とにかく「大嫌い」なのである。描かれているねこの表情も、その文章に呼応して何やら冷め切ったというか、完全に自分の世界を築いている達観したかのごとくクールな表情だ。

 そんな斜に構えた主人公のねこが、ある時、誰のねこでもなくなる。初めて自分のねこになったのである。と、ねこは途端に自分が大好きになるのである。わがまま、というのか、マイペースというのか、そんなねこなのである。いたってクールで、他のメスねこが言い寄っても「おれは、100万回もしんだんだぜ。いまさら おっかしくって!」…と、まったく相手にしない。

 そんな冷静沈着な主人公のねこが、たった1匹、まったく自分に見向きもしない白いねこに惹かれてしまう。何とか自分を気に入ってもらおうと、今までのクールさとはうってかわって白いねこにいろいろとアプローチする。そして「そばに いても いいかい。」とプロポーズ(?)するのである。

 やがて白いねこはたくさんの子ねこを生み、主人公の1匹狼ならぬ1匹猫は、自分よりも白いねことたくさんの子ねこを好きになる。やがて、子ねこが成長してどこかへ行ってしまうと、主人公ねこと白いねこは2人(2匹)だけで暮らす。…ところが、ある日、白いねこが死んでしまった。100万回生きたと自慢し、決して泣いたことのなかったねこは、初めて泣きます。100万回も泣いたのである。そしてとうとうねこは、白いねこのそばで死んでしまう。もう、決して生きかえることはなかったのである。

 お話はこれでおしまいだ。…確かに奇妙である。何とも不思議なお話である。普通、ネコなり犬なりはペットとして飼い主とのつながりが結構重視されることが多いのだが、このとらねこは前述の通り、完全に飼い主を無視している。はっきりと「大嫌い」と言い切っているのである。

 そんなねこも、好きになった白いねこに対しては、まったく「普通」のねこの姿を見せる。子ねこが生まれ、親となってからは、まったく今までとは違って家族的なねこに変貌するのである。そして、100万回生きたと豪語してきたねこも最愛の白いねこの死とともに衰え、やがてそばで死んでしまう。永遠の死を迎えるのである。

 書評にも記されていたが、この主人公のとらねこは、何とも自由奔放というのか、バイタリティー溢れる生きざまを見せる。読み終えたあと、はて?作者の佐野洋子さんは、いったい何が言いたかったのだろうか?何を表現したかったのだろうか?と思った。いろいろと考えてみても、適切な答えは浮かんでこない。何かを風刺しているのか、自分勝手な生きざまをしていても、愛する対象ができて「家族」というものを持つと、180度転換するその様子を描きたかったのか、まったくわからない。そんな表面的なものではないのかもしれないし、逆にそんなに深く分析すべきことではないのかもしれない。書評通り、おもしろいと感じればいいのかもしれない。

 たぶん、読む人によっていろいろと感想が異なるのではないかと思う。筆者にように果たして何を表現したかったのだろうか?とない頭をひねって分析しようと試みる人もいるだろうし、100万回生きた強者ねこのふてぶてしさに何かを見出す人もいるだろう。白いねこという愛する対象ができてからの豹変ぶりに何かを感じる人もいるだろう。大人は、何かと理由をつけたがるものだが、シンプルでストレートに受けとめる純粋さを持っている子どもなら、澄んだ眼で何かを見つけるかもしれない。さて、あなたはどう感じるだろうか?ぜひ1度、お読みになってみてどう思われたか、聞かせてほしい。


100万回生きたねこ
●作・絵/佐野洋子●定価1,400円(税別)●講談社刊●250×270mm●31ページ●全国学校図書館協議会選定図書、中央児童福祉審議会推薦図書
表紙
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