心穏やかに/エッセイ

ある犬のこと

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 ■第88話/ある犬のこと

 時々だが、いわゆるホームセンターというかディスカウント・ショップというか大型の安価に商品を購入できるセンターに買い物に行く。そこは車で10分程度の場所で、我が家の愛犬Qちゃんと出会い、購入したペットショップが入っているところでもあり、愛犬が通う動物病院も併設されている。

 病院にQちゃんとポコちゃんを連れて行く時にはさすがに1人ではまったく余裕がないゆえ、用事だけを済ませて帰宅するのだが、1人で買い物に行く時には必ずペットショップは覗くことにしている。今の家計状態では、もちろんさらにもう1頭…などという余裕はないから、あくまでも見るだけなのだが、やはり我が家にいるQちゃんやポコちゃんと同種か近い犬種がいると興味を引かれる。もう2ヶ月以上前になると思うが、珍しくイタリアングレーハウンドが2頭、店頭に出ていた。ペットショップでは当然ながら売れ筋の犬種を置くから、だいたいいつもショップにいる犬種は決まっていて、イタリアングレーハウンドなどがいることはほとんどない。

 Qちゃんと出会った時だって、やはりそうしたことから珍しい犬種として目に止まったのだった。だから2頭もイタリアングレーハウンドが販売されているのは非常に珍しいことなのである。まだ暑い時期でサマーセールとか銘打って、イタリアングレーハウンドとしては10万円以下という格安の値段設定がされていた。値札を見ると生後3〜4ヶ月で、両方ともオスだった。

 Qちゃんに比べると足もやや太く、しっかりした様子で、Qちゃんのように尻尾が折れ曲がっているという欠陥的なものはなさそうである。やはりイタリアングレーハウンドを見れば、際限もなく飼えたらいいなぁ…などと思ってしまうのだが、そんなことはできるはずもない。「大切にしてくれる人に買ってもらえるといいね」などと心の中で思って帰宅する。

 それからまた1ヶ月ほどたってセンターに買い物にいった時には2頭のうち、1頭はいなくなっていた。そして残っていたイタリアングレーハウンドは価格が6万円台に「値下げ」されていた。イタリアングレーハウンドでこの値段はもう破格値である。相場の半額以下である。売れ残ってしまったためにショップとしては値下げをしたのだろうが、多分底値だろう。

 やはり一般的な犬種ではないから買い手がつかないのだろうか?チワワのような人気がないから厳しいのだろうか?確かに顔を見ると、ちょうど顔を半分に割るような細い白い筋が入っている。それも微妙な太さでもしかするとそのあたりが売れ残る理由なのだろうか?などとも考えた。ウィンドウの前で見ると、当然ながらQちゃんと同じように見える面も多い。同じ犬種なのだから当然なのだが、やはり愛着を感じる。

 破格値といっても、我が家のQちゃんは何と5万円だった。理由は恐らく、生後5ヶ月という年齢、尻尾の先端部分が折れ曲がっている欠陥、ポピュラーではない犬種…いくつかのマイナス要素が積み重なって売れずにそこまで値を落としたのだろうと思ったが、今目の前にいるイタリアングレーハウンドも同じような状態である。

 目が合うとしっかりとこちらを見ている。小声で「売れるといいね」と話しかける。お金に余裕があればすぐにでも連れて帰ってあげたいが、到底そんなことはできない。心苦しい限りである。何もしてあげられないのだ。ごめんね…心の中でそうつぶやきながらその場を離れる。遠く離れた場所で、もう一度そのペットショップの方に目をやると、何とそのイタリアングレーハウンドはちゃんとお座りをして、こっちを見ていた。な、何ということ!ますますごめんねという気持ちが強くなる。

 ふと考えた。我が家のQちゃんは、最初に見かけた時、ほとんどうずくまっていた。それは季節が寒い時期だったこともあるが、ショップの店員にちょっと抱かせてほしいと頼んで、抱いた時でも、何か愛想もなく、こちらの顔を見ることもなく、うずくまり状態だった。

 ショップに来るお客は、自分の気になる犬がいると店員に言って、ウィンドウから出してもらって、抱っこすることがよくある。これは犬にとっては、実際のところはわからないが、もしかしたら連れて帰ってくれるのでは?と期待することかもしれない。しかし、また元のウィンドウの中に戻されると、がっかりするのかもしれない。

 その回数が多ければ、学習能力の高い犬である。徐々に期待することもなくなり、ふてくされたように顔をあげることもしなくなるのかもしれない。Qちゃんはまさしくそんな状態だったように今さらながら思えるのだ。しかし、ちゃんとお座りをしてこちらを見ていたあのイタリアングレーハウンドは、まだそこまで期待を裏切られることもなく、自分を一所懸命にアピールしていたのかもしれない。

 …それから更に1ヶ月が経過した頃、センターに買い物に行ったら、もうあのイタリアングレーハウンドの姿はなかった。誰かに買ってもらえたのだろうか?そうであってほしい。売れなかったから別のチェーン店に移動させられたのだろうか?それならそれで、まだマシである。最悪は未だに行われている殺処分である。そんなことにだけはなっていないと思いたいが、実際のところはわかるわけもない。

 何もしてあげられない自分自身が情けない気持ちでいっぱいになった。今はもう1頭飼うなどというのはまったく不可能である。何もしてあげられないのだ。きっと、どこかのお金持ちの心優しい人が買ってくれたのだと思いたい。犬は人間の金儲けの道具としての存在などではない。売れなければ殺処分すればいいなどということは絶対にあってはならないことなのである。生きる権利はまったく平等なのだから…。


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