下手でもいいじゃん★エッセイ

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 ■第21話/下手でもいいじゃん■

 もう2年ほど前からだが、それまでやっていた業務とはまったく異なる業務をやることになった。いわゆる配置転換によってである。世間でもよく聞くことだが、この配置転換というのは、その当人にとってはかなり影響を与えるものである。まったく適さない業務についたために精神的ストレスを引き起こし、病気になってしまう場合さえある。本来、会社という組織は、その発展のためにその当人に最も適した業務を見極め、いわゆる「適材適所」に人員を配置することが、企業として、その当人としてもベストなのだが、必ずしもそうはならないものである。また、この適材適所というものも、果たして当人が思っている通りかとなると、何とも言えない面もある。

 さて、冒頭に記した通り、筆者はかつてほとんど制作業務一筋にやってきたのだが、配置転換によって、いわゆる顧客サービス業務的なことをやることになった。今だから言えるが、これはまさに筆者自身としては完全な「不適材不適所」であると思ったし、大きな苦痛ともなった。そもそも、筆者は電話が不得手である。まして相手は「お客様」で、言葉の使い方もそれまでとはまったく異なる。そもそも、相手が取引先であれば、例え個人的に親しくしていても、最低限の「マナー」「礼儀」というものが絶対に存在すると思っているが、対顧客ではその性質がまったく異なる。間違っても失礼な言葉遣いは厳禁だし、取引先の人に対する言葉遣いとも質が異なる。

 当初は、この大きなギャップが苦痛で、電話が鳴るたびにビクビクしていた。失礼な言葉遣いをしてはいけない、と緊張すればするほど、口が回らなくなる。うまく言おうとすればするほど、失敗してしまう。失敗すればますます自信をなくしていく。自信がなくなると、ますます電話に出るのが怖くなる。その堂々巡りの毎日だった。回りにいるその業務のベテランの女性の電話対応を聞いていると、なぜ自分にはああしてうまくできないのだろうか?彼女はなぜ、あんなにうまく対応できるのだろうか?どうしたら、あのようにうまくできるのだろうか?

 自分自身の苦手なことを告白するというのは、結構勇気がいるものである。が、ここは同じように悩んでいる人のため、苦しんでいる人のため、あえて告白すれば、筆者は焦ってしゃべろうとしたり、慌てて話そうとすると、時々口が回らなくなったり、どもったりしてしまうことがある。みっともないことであるが、何とかこれを克服するために往復の車通勤の中で、何度も電話対応の練習をした。「はい、◯◯◯◯です」…誰もいない車の中だからこそできることではあるが、深呼吸をして、心を落ち着けて、ゆっくりと話すように何度も練習をした。その甲斐があって、何とか電話に出る恐怖はなくなったが、顧客相手の対応は、どんな内容になるか想像がつかないことも多々ある。シナリオを用意したって、その通りに会話が進展することなどほとんどない。

 そんなある時、ふと気づいた。「うまくやろうと意識しすぎていたのではないだろうか?」…そうだったのである。その道の超ベテランのごとく、パーフェクトにやらなくてはいけない、とガチガチになっていたのである。「下手でいいじゃん!」そう思った。「下手でも頑張ればいいじゃん」「自分のできる範囲で、最大限に頑張って、その結果下手なら、それはそれでいいじゃん」…そう思った。周囲の人がその電話対応を聞いて、せせら笑っていようが、関係ないじゃん…と思うことにした。

 今では、2年前に比べれば、少しは「上手」になったかもしれない。当初は、スムーズに出なかったお詫びの言葉も今ではかなり自然に言えるようになった。対顧客だから、お詫びの言葉も「すみません」ではなく、「申し訳ございません」でなくてはならない。そもそも誰だって、謝ることは苦手なものである。悪いと思っていたって、なかなか素直に「ごめんなさい」「すみませんでした」と言えないものである。それが、対顧客となれば、例え自分自身に非がなくても「申し訳ございません」なのである。

 「下手でもいいじゃん!」…これは、ある意味では開き直りでもあるかもしれないが、それよりは「肩の力を抜く」「リラックスする」「精神を解放する」ということだと思う。うまくやろうとすればするほど、力んでしまい、肩に力が入り、ガチガチになってしまう。人から笑われたって気にすることはない。大切なことは自分自身が精一杯やるかどうかということであり、その結果は関係ないのである。自分自身で精一杯やっているという自覚があれば、例え「自己満足」であろうが、相変わらず「下手」であろうが、それで充分なのである。少なくとも苦手なことに背を向けて逃げ出すよりはどんなにか勇気があることだろうか。苦手なことがある人も、今後は自分自身が「苦手」であることを自ら認め、「下手でもいいから」「失敗してもいいから」取り組んでみてほしい。誰も褒めてくれなくても、何の評価がなかったとしても、少なくとも筆者は心から敬意を表したいと思う。最大限の賛辞を送りたいと思う。


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