いろいろあった30分西部劇
テレビの創成期、主流は30分番組だった。西部劇も同様で、お子様ウエスタンは
もちろんのこと、アダルト・ウエスタン(アダルトといってもポルノ映画ではありません
ぞ)も当初は30分番組が一般的だった。
前述した作品以外では、『テキサス決死隊』『ブロークン・アロー』『胸に輝く銀の星』
『西部のパラディン』『レストレスガン』『スミスという男』『テキサン』『コルト45』『風雲
クロンダイク』といったところが懐かしく想い出される。
毎週水曜日7時30分から放送されていた『テキサス決死隊』は、往年の名作西部
劇と同じ題名だが、テキサス・レンジャーを主人公にしているだけで、映画の内容とは
全く関係なかった。
主人公のジェス・ピアンス(ウィラード・パーカー)が1800年代の話と、現代の物語
に毎回交互に登場して活躍するのだ。駅馬車強盗を追ったかと思うと、次ぎの週は
麻薬密売組織を追うといった具合。
主人公の設定が、祖父と孫(お爺さんの名前を継いでいる)という関係であったとこ
ろがユニークだった。
テキサス・レンジャーに対して、アリゾナを舞台にレンジャーが活躍する『アリゾナ・
レンジャー』というのがあったが、私は観ていない。
それと、『テキサス決死隊』の後番組が『ライフルマン』だったんだよ。
『テキサス決死隊』は単に題名が同じだけだったが、題名も内容も映画と同じだった
のが『ブロークン・アロー』だった。
1870年代のアリゾナを舞台とした、トム・ジェフォーズとアパッチの大酋長コチーズ
との友情物語。映画では、ジェームズ・スチュアートとジェフ・チャンドラーのコンビだっ
たが、テレビではジョン・ラプトンとマイケル・アンサラのコンビ。
白人とインディアンとの確執、それを丸くおさめようとするジェフォードとコチーズの活
躍。滅びゆく民族インディアンの悲哀を謳った異色作と宣伝文句にあったが、毎度類型
的な話ばかりで、最後の方は観ていない。
期待外れといえば『アニーよ銃をとれ』の後番組の『胸に輝く銀の星』もそうだった。
当代随一の保安官役者として評判の高かったヘンリー・フォンダの主演で、保安官役
とくれば期待して当然だ。
私が初めて映画でフォンダを観たのは、リバイバル上映された『荒野の決闘』だが、
この時点ではまだ観ておらず、まだ見ぬ恋人として期待が大きかった。
フォンダの元保安官が、アンソニー・パーキンスの新米保安官を指導して立派な保安
官にする『胸に輝く星』という映画があったので、『胸に輝く銀の星』もフォンダが新米保
安官を助けて毎回活躍するものだと思っていたのだ。
原題を調べれば、前者が“The Tin Star”で、後者が“Deputy”だから、すぐに違う
ものだとわかるのだが、邦題にだまされてしまった。
『胸に輝く銀の星』の舞台は、アリゾナ州にある砂漠と山に囲まれた架空の町シルバー
シティ。フォンダが扮するのは、サイモン・フライというチーフ・マーシャル。
このチーフ・マーシャルという職位がよくわからなかった。タウン・マーシャルが別にいた
ので、副署長的なようでもあり、州の命令で管轄エリア外でも働いているのでUSマーシャ
ル(連邦保安官)のようでもあったからだ。
ドラマのはじめか、終わりごろに顔を出すくらいで、留守中は保安官助手のクレイ・マッ
コード(アラン・ケース)が事件を解決する。早い話が、ヘンリー・フォンダは主演ではない
のだ。
私が「これじゃあ、サギだ」と言ったら、「映画スターとして一流のフォンダがテレビに出
演する時間があると考える方が甘い。わずかな出演でも出るだけマシ。それにタイトル
だってデュピティ(保安官助手)じゃないか」といった親父の言葉が忘れられない。
デュピティという英語を覚えたのは、この番組なんだよね。学校の英語授業には役に
立たなかったけど。
クレイは普段は雑貨商を経営しており、拳銃の腕を見込まれて、パートタイマーの保
安官助手を勤めている。定職を持ち、拳銃はあくまでも身を守るためのものと考える
主人公の人生観は、これまでの西部劇にはないものだった。シナリオもよくできており、
内容的には悪くなかったが、期待が大きかった分だけ不満が残ったんだよ。
テキサス決死隊 |
ブロークン・アロー |
胸に輝く銀の星 |
ホルスターの大写しにタイトルが被り、カメラが後退するや、節くれだった手が拳銃を引き
抜いて、轟然一発、弾丸をブッ放す。『西部のパラディン』の始まりだよ。
パラディンとは、中世フランスで勇名をはせた騎士の名。パラディンの使う拳銃にはトレー
ドマークのチェスのナイトの駒がきざまれている。軍隊がいやになって、西部へ飛び出した
元陸軍士官の中年のプロ・ガンマン。全身黒ずくめの服装に身をかため、1870年代の西
部の町を渡り歩き、他人のトラブルを引受けては、その素早い拳銃さばきで悪を倒す。
理性的で、どんな事態に陥っても決してあわてない。沈着を絵にしたような男。ピンチの時
は、隠し持ったデリンジャーが火をふく。
パラディンに扮したのは、鼻のしたの口ヒゲがダンディーなリチャード・ブーン。リチャード・
ブーンは、西部開拓史上有名なダニエル・ブーンの末裔でもあったんだよ。
『西部のパラディン』は、火曜日9時30分からNHKで放送されていた。しかし、暴力追放
のあおりを受けて、NHKでの放映期間は短く、その後民放に移り、『西部の男パラディン』
の題名で放映された。NHKは字幕だったが、民放では日本語吹替え。印象としては、NHK
の字幕放送が強く残っている。
タイロン・パワー、ロバート・テイラーとならぶ往年の二枚目スター、ジョン・ペインが主演し
たのが『レストレス・ガン』だった。
1960年代の西部を舞台に、カウボーイのヴィント・ボナーが無法を憎み正義を愛し、請わ
れるままに正義の拳銃をふるうという典型的な股旅ウエスタンだったよ。
二枚目特有のモタモタした動きで、西部劇ファンには評判の悪かったジョン・ペインだが、
この作品では結構サマになっていたような気がしたのは私だけかなあ。
ジョン・ペインとは逆に、素早い動きで西部劇ファンに人気のあったオーディ・マーフィが
主演したのが『スミスという男』だった。
1870年代に“ささやきスミス”と呼ばれた、デンバー警察に実在した警部が犯罪捜査す
るミステリー西部劇だったよ。
従来の西部劇と異なり、コロラド州が舞台となっているのは珍しかったが、オーディ・マー
フィのアクションを期待した私としては、いささか拍子抜けだった。
オーディ・マーフィと同じようにB級西部劇のヒーローだったロリー・カルホーンが主演した
のが『テキサン』だった。
1870年代混乱期のテキサスをさすらい歩きながら、弱者の味方として自由と正義のた
めに戦ったカウボーイの物語。主人公のビル・ロンリーは実在の人物と紹介されていたが、
現在にいたるまで文献でお目にかかっていないんだよなあ。
主演のロリー・カルホーンは、役者になる前は、木こり、坑夫、運転手、牧童、森林警備
隊員と職業を転々としたあげく、スリまでやったというけど、本当かね。
多くのB級西部劇スターが、テレビ西部劇の衰退とともに、マカロニ・ウエスタンへ流れて
行ったのに、ロリー・カルホーンだけはマカロニに出演していないんだよ。
テレビ西部劇からマカロニに流れ、大スターになったのがクリント・イーストウッドだが、目
立たなかったのがウェイド・プレストンだった。彼が主演したテレビ西部劇『コルト45』は、
私のお気に入りだったんだけど。
Cの字を大きくした“COLT−45”の文字タイトルは斬新でカッコよかったよ。
『コルト45』は、主人公のクリストファー・コルトがグラント将軍の密命を受け、コルト銃器
会社の宣伝マンとして“コルト45”の名で知られたコルト・シングル・アクション・アーミー(コ
ルト・SAA)を宣伝しながら、行く先々で無法者を倒していく物語だった。
新製品なのに、何故か無法者もSAAを持っていた。コルト・SAAが、“コルト45”と称され
るのは、その口径が百分の45インチだったからで、他にも“ピースメイカー”“フロンティア”
等の通称で呼ばれることが多い。これだけ愛称があるのは、SAAが単にコルト一社の傑作
ということに止まらず、拳銃史上、最大の秀作といってもいい過ぎでないくらい優秀な拳銃だ
からで、西部開拓史には絶対に欠かすことのできない立役者だったからだよ。
ゴールドラッシュのアラスカのクロンダイクの町を舞台にした『風雲クロンダイク』は、主人
公のマイク・ホリディに扮したラルフ・テーガーより、敵役のジェームズ・コバーンの方が魅力
的だった。悪事がバレて、町の連中から生タマゴをぶつけられるシーンは今でも憶えているよ。
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