子どもの時間は人形劇

 民放が開局するまでは、テレビはNHKだけ。子ども番組も健全なものばかりで、その中で見たものといえば、
マリオネットに影絵にギニョールだった。

 マリオネットというのは、日本語でいえば操り人形劇。『テレビてん助漫遊記』が記憶に残っている。
 リュックサックのようにテレビを背負った少年忍者が、諸国を漫遊して、弱き者を助けながら自分も成長して
いくというもの。巻物がひとりでにほどけて広がっていくタイトルが印象的だった。

 影絵は『ピーターと狼』とか『せむしの子馬』といった名作童話を単発で放送していた。
 最近は影絵を見る機会が殆どないので、今の子どもたちにはわからないだろう。

 ギニョールというのは指人形劇。人形劇といえば『ちろりん村とくるみの木』だ。
 この番組は、1956年4月から64年4月まで放送していた人気番組だから、憶えている人も多いだろう。
 クルミのクル子、ピーナッツのピー子、タマネギのトン平が主人公で、野菜・果物・動物が住んでいる村で起
こる騒動を、この3人が力をあわせて解決するのだ。
 3人の声は、里見京子、黒柳徹子、横山道代。子ども向けラジオドラマ『ヤン坊・ニン坊・トン坊』でこの3人が
声の出演をしていたので、その延長で起用されたのだろう。

 クルミのクル子は、ガンコ祖父さん(ガンコというのはアダ名で
なく、ちゃんとした名前だった)とママ、ピーナッツのピー子は、カ
ボチャの叔父さん、タマネギのトン平は、父親と暮らしている。
 3人とも両親が揃っている家庭ではないのだ。今から考えると、
家庭より社会性を重視しており、高度成長に向けて、家庭より会
社、あるいは社会に役立つ人になることを意図した番組のような
気がする。
 時代背景もマッチして、大人も結構楽しんでいたのではないだ
ろうか。
 それにしてもピーナッツとカボチャが親戚とは……。
 カボチャのことをナンキンともいうから、そこからこじつけたの
かなあ。

 ちろりん村の住人で憶えてるものを羅列すると、パイナップルにレモン。この二人は夫婦だった。商売は散髪
屋さん。アスパラガスにバナナもいたっけ。
 動物は、もぐらのモグモグ、ネズミのタコチュウ、スカンクのガスパ、イタチのプー助なんてえのがいた。
 もっとも印象に残っているのが、こうもりギャングのブラックバット。正義の保安官・人参レッドが、ブラックバッ
トとの拳銃の撃ち合いで死んだ時は泣けたものでした。
 そういえば、スカンクのガスパはブラックバットの子分だったよ。バットが倒れた後、改心して、ちろりん村の住
人になるんだ。ガスパの声を演っていた八波むと志が急死した時、代わりがみつかるまでしばらくの間、病気で
声が出なくなったことにして、ガスパがマスクをしていたのも懐かしい思い出。

 人形劇ではないのだが、黒柳徹子が番組のホステスとなって進行する『魔法のじゅうたん』というのがあった。
 その中で人形のような変な博士が登場するのだが、目や鼻は作り物だが、口だけは本当の人間の口だった。
 当時は、コンピューターによる特殊合成なんて技術はなく、黒柳徹子の指を噛んだ時などは本物の口である
ことが証明され、不思議でしかたがなかった。
 種明かしをすると、顔を逆さにしてアゴの部分に作り物の目と鼻をくっつけ、口だけが本物だったのだ。
 本物の鼻から上は、服を着ているようにして隠していたのさ。
 『魔法のじゅうたん』は、1961年から3年続いた番組。
 摩訶不思議な世界を、初代・引田天功によるマジックや、当時の最新特撮技術(クロマキーというハメ込み技
法が珍しかった)で紹介するヴァラエティだった。とにかくユニークな番組だったよ。

 特撮といえば、『ふしぎな少年』も忘れられない。
 『みんなの歌』(現在も続いている超長寿番組)という5分間のミニ番組の後、夕方6時35分から土・日を除く
毎日放送されていた。原作は手塚治虫で、主人公の少年サブタンは太田博之。
 サブタンがピンチの時に「時間よ、止まれ!」と叫ぶと、時間が止まって、静止画像になるのだ。
 その中をサブタンだけが動き回る。「時間よ、止まれ!」は、学校での流行語になったね。

   


宇宙人ピピ

 61年には、他にもSF作品として、星新一原作による『宇宙船シリカ』というマリ
オネットがあった。
 『テレビてん助漫遊記』が結城孫三郎一座による操演だったのに対して、こち
らは竹田人形座。
 この『宇宙船シリカ』を技術アップして、動画とマリオネットの合成で製作された
のが、手塚治虫原作の『銀河少年隊』だった

 65年に放送開始された『宇宙人ピピ』は、日本で初めてのアニメと実写の合
成テレビ映画。原作は小松左京。
 脚本に平井和正も加わっており、「火星人、ゴーホーム」のテイストを持った
内容の濃いSFコメディだった。子ども向けには、高度すぎたね。

   
 SF人形劇の最高傑作は、昭和30年代も終わりの1964年から始まった
『ひょっこりひょうたん島』である。
 ひょうたんのような形をした岬が、火山の爆発で陸地と切り離されて海洋
を漂流、波をスイスイかきわけて進んで行く。たまたまそこに取り残された
人々は、ひょうたん島を独立国として生活していく。
 ドンガバチョ大統領に、商売人の海賊トラヒゲ、やさしいサンデー先生に、
天才少年のハカセなど、人間の持っている性格の一部分を特化したユニ
ークなキャラクターでいっぱい。
 中山千夏や藤村有弘などが声の出演をしており、“ブハ、ブハ”“ハタハ
ッハ”などの流行語も生み出した。
 ひょうたん島の生活は、現実の人間社会をカリカチュアしており、単純な
愛と勇気の物語にはなっていない。
 これはもう、批判精神あふれる立派なSF作品だ。

 『ちろりん村とくるみの木』を見て育ったのが、TVオタク第一世代。
 『ひょっこりひょうたん島』で育ったのが、TVオタク第二世代ということになるかな。
 

 

   

 

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