拳銃無宿 
WANTED:DEAD OR ALIVE

 私と同年輩の人たちと西部劇の話をしますと、決まって出てくるのがTV西部劇の『拳銃無宿』です。
 ウィンチェスター92の銃身を短く切ったソードオフガン(通称ランダル銃)を持ったスティーブ・マックィーンはカッコよかったですからね。マックィーンは、この作品でアメリカはもとより日本でも大人気となり、1960年代を代表するマネーメーキング・スターとなりました。
 『拳銃無宿』は、1958年秋から61年春まで、米CBSテレビが放映。3シーズン94話(第1シーズン:36話、第2シーズン:32話、第3シーズン:26話)あり、今回“スーパー・チャンネル”で、カラー処理された78話が放映されました。
(放映リストは次頁)
 マックィーンが『拳銃無宿』に主演する経緯については色々な本に書かれていますが、当時CBSテレビが放映していた西部劇『トラックダウン』に出演したことがきっかけでした。
 『トラックダウン』のプロデューサー、ビンセント・フェンリは賞金稼ぎを主人公とした新シリーズを考えており、『トラックダウン』で賞金稼ぎの役をやる男を探していたんです。
 マックィーンは、西部劇は身長が6フィートはある大男がやるものだと思っていたので、あまり気乗りはしなかったのですが、フェンリから、「ジョン・ウェインの二代目みたいな役者は望んでいない」と言われて、経済的にも困窮していたこともあって出演を承諾します。
 そして『トラックダウン』での賞金稼ぎ役は大成功をおさめ、シリーズ化が決定します。マックィーンは、約500人もの候補者の中から再度オーディションをうけ、『拳銃無宿』の主役に抜擢されます。マックィーンを起用した理由を尋ねられて、フェンリは次のように答えています。

 “賞金稼ぎというのは、元来、負け犬のようなものだ。保安官、悪人、町の住人たち、すべての人間が彼の反対側にいる。逃亡犯人を追いつめ、捕まえるか殺すかして賞金を受けとって暮らしていくという生き方を、みんなが白い目で見ているんだ。
 だからもしそれを演じる役者が体格のいい、押し出しのりっぱなフットボール選手タイプだと、視聴者からそっぽを向かれてしまう。
 賞金稼ぎという商売を十分やっていけそうなタフな外観をそなえている一方、そのタフさの背後に少年のような魅力を秘めている“小柄な男”が欲しかった。
 その男は傷つきやすさというか、弱みを持っている必要があった。視聴者が、悪人を敵にまわす彼に肩入れしたくなるようにね。
 マックィーンは、私が心に描いていた通りの役者だった”
(早川書房:刊、ウィリアム・F・ノーラン:著、高橋千尋:訳、『マックイーン』より)

   
 マックィーンは、『トラックダウン』に出演する前に、『拳銃街道』というテレビ西部劇に出演しています。
 『トラックダウン』(NET:1962年)も、『拳銃街道』(フジ:1962年)も、日本で放映されていますが、マックィーンが出演した回の放送はあったのでしょうか。
 マックィーンが西部劇に気乗りしなかった理由に、馬が嫌いだったことがあります。『拳銃街道』では、馬に乗るのを断っているんですよ。しかし、『拳銃無宿』の主役に決まり、マックィーンも馬に乗らざるをえなくなり、乗馬の練習にはげみます。最初の頃は、『ララミー牧場』で売出す前のロバート・フラーなどが乗馬シーンを吹替えていました。
 練習に励んだかいがあって、腕はあがりましたが、それでも愛馬に蹴飛ばされることがありました。
 『拳銃無宿』でのマックィーンの馬はリンゴーといって、彼自身が友人の牧場から見つけてきた気性の荒い馬でした。スタッフが心配して、馬を替えようと言い出した時、
 “奴は、ちょっと狂っているけど、奴のやり方が気に入っているんだ。根性があって、誰に対しても折れようとしないこいつが好きなんだ”
 マックィーンは、こう答えて、リンゴーに乗り続けたといいます。
 『荒野の七人』におけるマックィーンの乗馬は見事なもので、マックィーンの乗馬はリンゴーによって上達したといえるでしょうね。
PS: 吹替えを確認するために、初期の作品をじっくりチェックしたのですが、馬を疾駆させるシーンはロン   グ・ショットや後姿で撮影されていてマックィーンの顔がはっきりわかりません。
    例えば、「罠」(第1シ−ズン4話)では、逃げた馬を追いかけるシーンがあるのですが、後姿を見ると   マックィーンより少しガッシリした体型で、あれは完全に吹替えですね。ロバート・フラーかな。
 
 『拳銃無宿』といえば、何といっても“ランダル銃”が魅力です。
 テレビ西部劇のストーリーは、どれも似たかよったかで、人気を生む要素は、背景と小道具と、アクションとガンプレイにあると云われています。
 そこでプロデューサーが考えたのが、拳銃みたいにベルトに下げて歩けるライフルの威力と正確さを持った特製銃でした。銃を見飽きた視聴者も、このライフルの銃身をチョン切り、『ライフルマン』のライフルのようにリングレバーで早射ちができるユニークな銃には目を留めてビックリしました。
 マックィーンも大いに気に入りますが、この後が大変だったようです。
 前述の『マックイーン』(早川書房)によると、
 “フルパワーで空砲の試射をおこなった。第一回目、私がそいつを発砲したとたん、キャメラマンの帽子は吹っ飛ぶわ、スクリプト・ガールの手から台本がバラバラになってちぎれ飛ぶわ、さんざんだった。昔の西部に“豚の足(ホッグス・レッグ)”と呼ばれた銃があったが、われわれはその銃に“ロバの足(メアズ・レッグ)”という仇名をつけたものさ。豚よりもひどい蹴りだったからね。フルパワーの跳ねっ返りにはこりたので、パワーを四分の一に減らした空砲を用いることにしたがね”
 空砲には、40〜44口径のウィンチェスターの薬莢が使われていますが、ガンベルトには、映画うつりがいいように45〜70口径のスプリングフィールド銃の薬莢が差し込まれていました。
 銃といえばランダル銃だけが評判になりましたが、今回観直して気づいたのですが、「妻のボディガード」(第3シーズン16話)や「仕掛けられた賞金」(第3シーズン17話)などでジョッシュが護身用にポケットにしのばせていたのが、銃口が四つあるシャープス4連デリンジャーでした。
 昔の雑誌を調べていたら、マックィーンがガン・コレクションを披露しながら、次のように語っている記事がありました。
 “オレのコレクションを見た人は、オレのことを変わり者と思うらしい。オレはどうも古いものが好きで、拳銃も古いのを集めているからだ。ついこの間もシャープス・デリンジャーを買った。こいつは銃身が4本もついている古くさいやつだ。すこしもシャープな感じはしないが、西部開拓時代には、それこそ最新型のバリバリだったんだ”
 どうも、あの銃はマックィーン所有の拳銃だったような気がします。
 
ダイアン・キャノン  劇場映画と異なり、低予算で製作されるテレビ西部劇では、一流スターの出演は、まずありません。
 『拳銃無宿』でもゲスト出演しているのは、B級映画スターかテレビ映画スター、新人スターといったところでした。
 後年有名になったスターの若々しい姿を見るのは楽しいものですよ。ジェームズ・コバーン、ウォーレン・オーツ、リー・ヴァン・クリーフ(この頃から頭の毛がうすく、老けていた)、マーティン・ランドー、デフォレスト・ケリーなどのね。女優では、ダイアン・キャノンかな。
 ダイアン・キャノンが出演した「離れわざ」(第2シーズン16話)では、後年マカロニウエスタンの『皆殺し無頼』で名前を覚えたローレンス・ドブキンも出演していました。といっても、ローレンス・ドブキンなんて殆どの人が知らないでしょうが……
 当時のテレビ映画でお馴染みのスターというと、『反逆児』のニック・アダムス、『ボナンザ』のマイケル・ランドン、『ローン・レンジャー』のトント役のジェイ・シルバーヒールズ、『ブロークン・アロー』のジョン・ラプトン、『爆撃命令』のポール・バークといったところでしょうか。
 ビクター・ジョリー、ジョン・デナー、ブラッド・デクスター、クロード・エイキンズ、ノア・ビアリー、ロン・チャニー、テッド・デ・コルシア、ジョン・キャラダイン、スキップ・ホメイヤー、R・G・アームストロングなどは、当時の西部劇の傍役として忘れられない存在ですね。
 ところが女優となると、知らない顔ばかり。私が知っていたのは、モナ・フリーマン、ビバリー・ガーランド、ルアナ・パットンと前述のダイアン・キャノンだけで、寂しい限りでした。
PS:レギュラーは、マックィーンだけでしたが、第2シーズンの21話から30話の10回分だけ、ライト・キング   がジョッシュの相棒・ジェイソン・ニコルズとしてセミ・レギュラー出演しています。
   ただ、21話が未放映なので相棒になった経緯がわからないんですよ。

   演出は、トーマス・カーやドナルド・マクドゥガルなどがあたっていますが、注目すべきは、後年『スーパー   マン』や『リーサルウェポン』などを監督したリチャード・ドナーでしょうね。

   
 主人公のジョッシュ・ランダルは賞金稼ぎなので、『拳銃無宿』ではお尋ね者を捕らえたり、殺したりして賞金を受け取るシーンが色々でてきます。
 警察などの公的捜査能力が低かった西部開拓時代は、被害者が賞金をかけて民間人への協力を呼びかけていました。鉄道会社や銀行などが多かったのですが、ときには州政府や、犯人捜査の依頼を受けたピンカートン探偵社なども賞金を出していました。
 賞金をかける目的のひとつに仲間割れを誘うことがあります。西部で一番多くの賞金がかかったのはジェシー・ジェームズで、犯行のたびに跳ね上がり、最後は2万5千ドルになりました。そして賞金に目がくらんだ仲間のフォード兄弟に殺されたのは有名な話です。
 ところで、賞金稼ぎがお尋ね者を捕らえて最寄の保安官事務所へ連行しても、すぐに賞金はもらえません。賞金提供者の確認が必要なんですね。知らせを受けた賞金提供者は、代理人を現地に派遣したり、郵送したり、銀行へ送金したりして賞金を支払います。保安官が資金提供者のところまで受取りに行くこともあったようです。
 『拳銃無宿』では、「空の牢獄」(第2シーズン6話)等のように、賞金を受取るまでの間に事件が発生するケースがあって楽しめましたね。

 西部劇を観る楽しみのひとつに、実在した人物の登場がありますが、今回放映分の中にはありませんでした。
 資料によると「Eager Man」(第1シーズン26話)にパット・ギャレットが登場しているらしく、放送して欲しかったですね。

 今回、未放映分の中に「サムライ」(第3シ−ズン24話)がありますが、これは徳間から発売されたビデオの中に収録されています。
 行方不明になっているアメリカ人の恋人を捜しに日本からやってきた中村ヨシコに頼まれたジョッシュは、ヨシコに同行して恋人捜しをする。そこへ、ヨシコを追って日本からやってきた許婚者の山本タローが現れ……
 西部開拓時代に日本から来た女性は、いないんだけどなァ。(笑)
 西部劇に日本女性が登場するのは、私の記憶によればこれだけで、実にユニークです。ジョッシュがヨシコから茶道を学ぶんですよ。(笑)
 ドラを鳴らしたり、日本刀を抜き身のまま持ち歩いたり、珍妙なところはあるのですが、当時のテレビドラマとしては、まともな方だと思います。
 ビデオを観て気づいたのですが、第1〜第2シーズンと第3シーズンではタイトル映像が違うんですね。
 今回放送されたものは、歩いてきたジョッシュが手配書をはぎとる第1〜第2シーズンのタイトルを全てに使っていましたが、第3シーズンのタイトルは、暗闇でランダル銃の閃光が光り、銃を構えたジョッシュが現れるという、カッコいいものなんです。カラー化するのが面倒だったのでしょうか……?
 
 ネットオークションに出品されていた、『拳銃無宿』の主題歌(ジミー時田:唄)なるソノシートを手に入れたのですが、この正体がわからない。
 音トビがして曲自体がよくわからない代物ですが、断片的な記憶すらないんですよ。「無敵のライフルマン」と同じように、エンドクレジット用に作られたものかなァ。 番組は岡三證券が提供していたようで、このソノシートは景品に使われたものですね。
 ♪〜流れる 星を見つめて おれは ひとり 荒野を行くよ
    going,going,faraway
    ふるさと 遠くはなれて おれは ひとり 荒野を行くよ
 う〜ん、わからない。 

 

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