極寒の地、新潟から上京して早 十数年。すっかり都会の女と化し、 アーバンライフを満喫する日々と もお別れせねばならぬ時がやって 参りました。思えば東京に出たて の頃の私は何も知らなかった。そ んな私をここまで育ててくれたの は美由紀さん、貴方です。電話で 「『ホッピーでハッピー党』って いうのを結成したの!」と聞いた 時は、ああ、私はホッピーまで貴 方に教わるのか……と密かに嘆息 したものです。その頃の私にとっ てホッピーとは、ほぼ『電気ブラ ン』と同義でした。即ち、アルコ ールであることは知っていても、 どんなものやら皆目見当がつかず、 少なくとも決して婦女子の飲み物 ではないであろう代物、私が飲む ことはあるまい。といったもので |
した。それがこんなことになるな んて。 ホッピーを飲んだ日は見事なま でに記憶喪失になります。朝起き るとスカートにゲロの跡。二日酔 いでズル休み。土曜日に家で飲み ましょう、と誘ったことすら忘れ る始末。あまりの口あたりのよさ、 飲み干した後の爽快感。 「ビールだったらこんなに沢山お いしく飲めないよねー。おかわり っ」そして無我の境地に落ちて行 く私。こんなに飲んでイイかしら。 そんな私もとうとう貴方の元か ら巣立つときがやってきました。 嫁ぎ先は松坂の割烹旅館。ホッピ ーに伊勢海老。ホッピーに松坂牛。 ホッピーに赤福。しかし、「お店 にホッピー置いてないの?」と聞 いたら、「懐石料理にホッピーな |
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んか出せるわけねーだろ、馬鹿」 と怒鳴られてしまいました。悔し い。でも私は挫けません。私の代 になった暁には、ホッピーの飲め る店として全国にその名を轟かせ てみせましょう。そのときは、テ レビ東京さん、お願いします。 ところで私には、まだ知らない ものがあります。それは『黒』と 『生』です。あー飲みたい。飲ん で正体不明になりたい。これはも しやマリッジブルーというもので は……、そうだそうに違いない。 しかしここまで書いて予定は未定 というのが一番恐ろしい。恋に破 れて帰ってきても、どうか優しく 迎えてくださいね、美由紀さん。 |
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