伝道者たちの祝宴                
                  ☆山縣みどり

「いやぁ、山縣さんには、絶対に
飲んでもらわないとね」というホ
ッピーでハッピー党のグル、ささ
めっち。心なしかウキウキしてい
るのは、私の気のせい? ホッピ
ー伝導の闘士グルにとって、ホッ
ピー処女の私は格好のターゲット。
久しぶりの初ものに顔を上気させ
ているグル。頭の中では、
「こんなコトも、あんなコトもや
っちゃおう」と考えているにちが
いない。デークラ初体験のオヤジ
みたい。
 まぁ、そんなこんなで決定した
私のイニシエーション。初めての
ときはムーディでステキな場所で
と、決めていた私だが結局は自宅
でヤることに。なんかビンボー学
生みたい、つってもホッピーだか
らな。ま、いいか。

儀式・供物の準備
 さて、イニシエーション当日。
グルは内妻みゆき嬢とともに登場。
自家製の糠づけ、キムチなど多彩
な食材を持参したグル。ヤツのダ
ンチュー魂がメラメラと燃えてい
る! ウォンチュー! 「さわる
とヤケドするぜ」ってか? 拙宅
のキッチンでいそいそと料理に取
りかかるグルと内妻。でも、俺ん
チにはエプロンも油もないんだも
んね、へっへっへ。なんて威張っ
ていても仕方ない。薄切りブタ肉
の香味揚げのためにおつかいを言
いつかった私。買い物リストに書
き添えられた『焼酎』の二文字に、
いよいよホッピーをヤる日が来た
と実感。それが俺をナーバスにさ
せたのか、おつかいから帰ってみ
ると大事なサラダオイルを忘れて


いることに気づく。再度、ファ
ミリーマートへゴー! ……バカ。

 そんなこんなするうちにイニシ
エーションの宴が始まった。グル
たちがキッチンにいる間にワイン
をあけてクピクピ飲み始めた私と
25歳(当時)の編集者サチコ・オ
ガサワラ嬢は、すっかりリラッ
クス。サチコのお気に入りは紹興
酒。この日も「これじゃなきゃイ
ヤン」というマイ紹興酒を持参し
てきた。俺も結構イケル口かもし
んないけど、飲むよなー、この女
も。顔色ひとつ変えずにグイグイ。
この日の陰の主役、モッチー(こ
いつの誕生パーティも兼ねてたん
だな)なんかビール一杯でほんの
り赤くなってるっていうのにね。

あぁ、ノドの奥深く
 グルと内妻の心つくしの料理に
酒が進み、み〜んなイイ気持ちに
なってきた頃合を見計らってグル
が立ち上がった。私も、いよいよ
ホッピー処女を捨てるときがきた
みたい。持参したホッピージョッ
キに焼酎『純』を注ぐグル。星ひ
とつ目まで注ぐか、ふたつ目にす
るか。「初めてだから、優しくし
てね」と思わずお願いしてしまう
私。瞬間、グルの目に怪しい光が
灯る。「調教しがいのあるメスだ
ぜ」って思ったかどうかは知らな
いけどね。
 星一つ目までの焼酎に勢いよく
注がれるホッピー。う〜ん、見た
感じはビールみたい。そんでね、
ひと口グビッて飲んでみた感じも
ビールみたいなの。私的には『ホ


ッピーはビールに似ている』のが
初体験の感想やね。ライバルは高
島礼子、熟れ熟れの33歳(当時)
な私が体験した初ホッピーは、最
初に私を仕込んだ編集長ローヤマ
を彷彿させた。ローヤマのアコギ
な所業の数々にウブな私は泣いた、
泣いた。今、思い出しても泣けて
くる……、クーッ。そんながんこ
な書籍編集者を連想させるヒナび
た味わい。年を重ね、もうちょっ
と枯れたら、その微妙な味わいの
機微がわかるようになるかも。

 


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