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(2003/02/14 UPDATED)

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bluecorner Coming Soon Jan.5-Jan.31
Title The Players The Plot The Buzz
運命の女
★★1/2

監督:エイドリアン・ライン
出演:リチャード・ギア、ダイアン・レイン、
●配給:20世紀FOX●米'02年/101分●1月11日公開
NYの郊外に住む一家。会社経営の夫エド(リチャード・ギア)と子供ひとりで、不自由のない妻コニー(ダイアン・レイン)。が、ある嵐の日、出先のNYで本を持った青年ポール(オリヴォス・マルティネス)と路上でぶつかりヒザにすり傷を負った。傷治療でポールの部屋を訪れたのがことのはじまり。ポールは古書販売をする青年はフランス人、彼から本を一冊プラゼントされ、その場を後にした。が、コニーは本から落ちた彼の名刺を手にして彼のことが気になり出す。気がつけば彼のもとを訪れ、何度かの訪問の末、ついに激しい情事にはまりこんでいく。が、夫のエドが彼女の行動を怪しみ、探偵を雇い、男との情事の事実をつきとめた。ポールとの関係を清算しようと決意したコニー。そんな時、エドがポールの部屋を訪れる…。 フランスのヌーベルバーグの一派クロード・シャブロル作品を英国人エイドリアン・ライン監督が映画化。人妻の不倫を題材に夫婦関係の揺れ動きを、ライン独特のスタイリッシュなエロチック演出で見せていく。前半はフランス人青年と密会する人妻役レインの葛藤と官能。その情感演技は、欧州女優のように振幅があり、ふくよか。賞レースでレインの演技への評価が急上昇し、批評家賞でも最も「うるさい」NY映画批評家協会賞の主演賞を受賞する快挙を果たした。ゴールデン・グローブ賞の候補にもなり、今年のオスカー主演女優賞候補も最有力。中盤以降は、実直嫉妬亭主ギアが不倫相手の青年に対し、憤怒の復讐殺人へとなだれこむ。米Entertainment weekly誌のグリバーマンは作品を年間ベスト10の8位にランク。
Orphans
オーファンズ

★★★1/2

監督:ピーター・ミュラン
出演:ダグラス・ヘンシャル、ゲーリー・ルイス、スティーブン・コール
●配給:ゼアリズ●英'98年/101分●1月11日公開・新宿武蔵野館レイト
97年4月18日、母親が61歳で逝った。長男トマス(ルイス)はパブで追悼の歌を歌い号泣。次男マイケル(ヘンシャル)はそれを笑った男に飛びかかり腹を刺された。3男ジョン(コール)はその男に復讐をしようと銃を調達。脳性マヒで車椅子の妹シーラは教会でマリアの像を壊し、トマスが修復するハメに。独り帰宅したシーラは途中、見知らぬ一家に厄介になる。翌日は葬儀。現実をうけいるまでの4人の葛藤が、笑いと怒りと哀しみのなかで描かれる。罵倒しながら本音をかたり、相手とのずれた関係から笑いも怒りも生まれるというスコットランド気質が全編大放出された、愛すべきヒューマンコメディ。 惹句は「愛するママが死ぬと子供たちは頭がおかしくなる」。4年前の作品だが、レイトショーで公開するのはもったいない。情緒不安定な彼らの(それは母を失って頭がおかしくなっているのだが)突飛な行為が可笑しくも身を切るような切なさで迫ってくる。舞台は英国のグラスゴーで、コージーな町の佇まいがいい。暴雨風で教会の屋根がとばされるスペクタクル演出もある。劇中、トイレでオナニをしていてるとき出前男に銃で脅された葬儀屋のオヤジが思わず「ピストル」で出前男に顔射するという、『メリーに首ったけ』に並ぶ(?)お下劣ザーメン・ギャグも。『マイネーム・イズ・ジョー』でカンヌ映画祭最優秀男優賞受賞を受賞した演技派ミュランが自分の母に捧げた初監督作で、ベネチア映画祭の金獅子賞を受賞した。
チベットの女
イシの生涯

★★★

監督:シエ・フェイ
出演:テンジン・ドカー、ラチュン、リンチェン・トゥンドゥブ
●配給:ビターズエンド●中国'00年/105分●1月5日公開
50年のチベットの村。可憐で美しい歌声の農奴の娘イシ(ドカー)は、親の借金のため身売りされ領主の若主人に寵愛をうける。が、ならず者の行商人ギャツォが彼女に惚れて略奪、強引に結婚。が、夫は放浪暮らしで、イシは若主人の世話になる身ごもる。もどった夫は自分の子と思い悦び、その子に名を授けたのはイシの初恋の人で僧侶になったサムチュだった。50年間にわたるイシと3人の男の数奇な人生を描く大河人間ドラマ。 『香魂女−湖に生きる』でベルリン映画祭金熊賞を受賞した中国の溝口健二ともいうべき名匠・シエ・フェイ監督がチベットの女優を起用し、ときに神話的にときにスピリチュアルにチベット独特の風土を背景に描く女の一生。色彩美満点の映像はまさに曼陀羅の余韻。中国金鶏賞の主演女優賞・脚本特別賞・最優秀音楽賞受賞。東京都美術館ホールでロードショー。
ウォーク・トゥ
・リメンバー

★★

監督:アダム・シャンクマン
出演:シェーン・ウェスト、マンディ・ムーア
●配給:ギャガ●米'02年/102分●1月11日公開
両親の離婚で心すさみ、将来の希望もなく悪童グループと行動するガキ大将的な高校生ランドン(ウェスト)と、宗教心に篤く学校では地味で浮いた存在の牧師の娘ジェミー(ムーア)。接点のないふたりが演劇部の慈善公演で共演することに。ランドンはジェミーとのふれあいのなか、ガキの自分を卒業しようとする。恋におちたランドンはジェミーが余命わずかの白血病と知る。現代版『ある愛の詩』という感じの涙のラブストーリー。『メッセージ・イン・ア・ボトル』の原作者ニコラス・スパークのベストセラー『奇跡を信じて』の映画化。「この映画を見て、涙を流さない人はいない」(LAタイムズ)という涙モード。「怖いのは死ぬことじゃない。あなたを失うこと」と答えるヒロインの言葉が日本公開での惹句。ヒロインが願う「(生きている間に)実現したい事柄100」を、ランドンが実現する過程が泣かせのポイント。丸っこい顔でサリー・フィールド系のムーアは18歳の人気歌手で劇中のミュージカル場面で歌を聴かせる趣向。片やウェストは目下ティーンに人気の24歳の俳優。
パティニョール
おじさん

★★★

監督・主演・脚本:ジェラール・ジュニョ
出演:ジュール・シトリュック、ジャン=ポール・ルーヴ
●配給:アブバトロス・フィルム●仏'02年/103分●1月11日テアトルタイムズスクエア公開
42年、ナチス占領下のフランス。肉屋のエドモン・パティニョール(ジュニョ)は、隣人のユダヤ人一家が逮捕され、はからずも手を貸してしまった。一家の幼い息子シモンが脱走して逃げてきたとき、おじさんは彼を匿う。やがてスイス国境まで逃がすことになる。おじさん役ジョニョが人間味たっぷりに脱出行を描く戦争ヒューマン・ドラマ。 フランスでは02年3月に『アメリ』を越える459館で公開されヒットとなった。監督・主演のジュニョはルコントの『タンデム』などで知られたフランス映画界の名コメディ俳優。今回の作品は膨大な資料を集め、長年のリサーチを続けて完成した。ユダヤ人の迫害を単なるいいヒトモードでない、葛藤渦巻く市井のフランス人の目から見つめた人間臭い味が魅力です。自然な子役の演技はお涙ちょうだいではなく、屈託ない少年の表情を見せ、心なごむ。
ゴースト・シップ
★★

監督:スティーブ・ベック
出演:ガブリエル・バーン、ジュリアナ・マルグリース
●配給:ワーナー●米'02年/91分●1月11日公開
海難救助用タグボート「アークティッカ・ウォリアー」の船長ショーン・マーフィ(バーン)はジャックという男からある仕事を持ちかけられた。それは彼が飛行中、ベーリング海峡で漂流船を発見したが、その船を回収をしてくれ、と。クルー5人と検討、戦利品は山分けし、ジャックに戦利品の10%を渡し彼も乗船する条件で交渉は成立。一行はその幽霊船に行き着いた。船は62年に消息を絶ったイタリアの遠洋豪華客船アントニー・グランザ号。そこでマーフィのパートナー、エップス(マルグリース)は少女の亡霊と出会った。ほかのクルーも不気味な亡霊たちに翻弄されていく。一見『エイリアン』モードの船内恐怖だが、実は魂救済をテーマにしたホラー作。 『フォレスト・ガンプ/一期一会』のオスカー監督ロバート・ゼメキスと『リーサル・ウェポン』などの製作者ジョエル・シルバーが製作を担当。今年の10月に『ザ・リング』と同時期に公開、ご存じの通り『ザ・リング』の前に破れ去った。冒頭は船内のダンスパーティ、ダンスをしている乗船客たちがワイヤーで胴体切断をされる惨殺シーンが生々しい。少女の登場や過去の惨殺の再現など『シャイニング』ふうの味だが、意外に恐怖度に乏しく、悪魔の手先による魂略奪という妙な理詰めの展開となって底がわれる。脇役だが、豪華船の歌手フランチェスカ役のイタリア女優フランチェスカ・レトンディーニがフェロモン満点。
ハードキャッシュ
★★

監督:ピーター・アントニエヴィッチ
出演:クリスチャン・スレーター、ヴァル・キルマー
●配給:アートポート●米'02年/99分●1月11日公開
マフィアの金の強奪に失敗した知能犯テイラー(スレーター)は1年後、仮出所の身で、馬券場から200万ドルの強奪を企む。が、盗んで金はFBIがおとり捜査用に特殊マークをいれた偽札。金を「洗濯」しようとするテイラーだが、影で陰謀をめぐらせるFBIの悪徳捜査官コーネル(キルマー)が彼の愛娘を誘拐、彼の仕事(カジノの金600万ドルを強奪する)の片棒をかつがされる安手のサスペンス・アクション。 個性派スレーターが知能犯と良き父親と2つの顔を演じわけるが、全体にチープな味。悪役のキルマーとの最後の死闘など2転3転のサスペンスも。テイラーの相棒役でダリル・ハンナ、『オースティン・パワーズ』でミニーを演じた小人俳優ヴァーン・トロイアーが文字通り「犯罪小道具」として活躍する。プレス資料は製作年度が'01年だが、米国の資料では'02年。
カンパニー・マン
★★★

監督:ヴィンチェンゾ・ナタリ
出演:ジェレミー・ノーザム、ルーシー・リュー
●配給:ギャガ、ヒューマックス●米'01年/95分●1月18日公開
モーガン・サリバン(ノーザム)は退屈な毎日と決別するため、ハイテク企業デジコープの産業スパイになった。彼はジャック・サースビーなる偽IDを与えられ、他企業の営業会議に潜り込み盗聴の任務を遂行。彼はいつもは飲まないスコッチを飲み、メガネをはずし、自分なりのサースビー像を作ることに喜びを感じ始める。そんな彼に謎の美女リタ(リュー)が接近、あなたはデジコープ社に洗脳されていると囁かれる。モーガンはリタの指示に従い、デジコーブ社のライバル会社のスパイになり、2重スパイ状態になるが…。 キューブリックとリンチに影響されたという、斬新なカルト作『CUBE』の監督ナタリによるスタイリッシュなスリラー作。『影なき狙撃者』から援用した「洗脳」の60年代スパイ映画趣向と『北北西に進路を取れ』ふうの巻き込まれ型のサスペンスのテイストが入り交じった、これまたカルトな一作。ちょっとハイキーなモノクロと官能的なパートカラーで綾なされていくアートっぽい映像が魅惑的で、「入れ子細工」ふうの人格入れ替えの作劇の妙と巧みに連動していく趣向。見ていて、複雑な迷宮感を味わえるのは、前作『CUBE』に通じる、この監督の特徴だ。
アウトライブ
-飛天舞-

★★

監督:キム・ヨンジュン
出演:シン・ヒョンジュン、キム・ヒソン
●配給:松竹●韓国'00年/117分●1月18日公開
元朝末期の中国、天下統一を目指し蒙古・漢・高麗族が群雄割拠している時代。1343年・河北省。両親と死別し叔父に育てられた少年ジナは少女ソルリを助けて以来心寄せ合う仲。が、彼女は蒙古の将軍と妾の間に出来た娘で、将軍の住む紹興に連れ去られた。「満月の夜、紹興の羽華亭であなたを待っている」と言い残して。ジナ(シン・ヒョンジュン)は叔父のもと剣術を研鑽。が、叔父は秘伝を狙う刺客に襲われた。死ぬ間際にジナは高麗族の師弟であると告げられ先祖代々伝わる秘伝「飛天神記」を託された。旅に出たジナは途中、漢のジュングァン(チョン・ジニョン)に加勢され意気投合し友情を交わす。紹興に着いたジナはソルリ(キム・ヒソン)がそのジュングァンと結婚することを知った。かくして愛と友情と復讐が入り交じった運命の伝説が紐解かれていく。 40億ウォンと韓国映画最高の製作費をかけ、初日2日間で韓国で『シュリ』の動員記録10万人を抜く16万人を記録した。ツイ・ハーク、キン・フーにも通じる奇怪なアクションにも目が奪われる。『グリーン・デスティニー』を思す武侠映画の流れをくむ活劇時代アクションだ。地面に剣を突き刺し一閃すると、地面が津波の如く動きだし、あっと言う間に切断する。暗い面差しの主人公は『銀杏のベッド』のシン・ヒョンジュン、ヒロインには韓国の女性タレント・ナンバー1といわれるキム・ヒソン。劇中、香港のツイ・ハークふうの派手なアクションが売り。ヒロイン役はセクシー系のキム・ヒソンで、本作で一躍ブレイクした。
オールド・
ルーキー

★★★

監督:ジョン・リー・ハンコック
出演:デニス・クエイド、レイチェル・グリフィス
●配給:ブエナビスタ●米'02年/128分●1月18日公開
1度はマイナーで挫折した元野球選手で、いまは高校野球リーグの監督と化学の教師を兼務するジム・モリス(クエイド)は妻(グリフィス)の支えと幼い子供の声援を得て、投手として大リーグのデビルレイズの入団テストに再挑戦、史上最年長のルーキーとしてマウンドを踏むまでを描く、ベースボール実話感動ドラマ。 主演のデニス・クエイドはメグ・ライアンと別れた後は仕事に邁進、順調だ。この熱演でオスカー候補の呼び声も。ちょうど製作元のディズニーはワールド・シリーズを初制覇したエンジェルスの親会社というのも、面白いめぐりあわせ。劇中、レンジャースの本拠地ボールパーク・アット・アーリントンが出てきたり、大リーグ・ファンには愛すべき描写がいっぱい。01年に引退したモリスが近く来日キャンペーンを展開するのも話題です。
猟奇的な彼女
★★★★

監督:クァク・ジェコン
出演:チョン・ジヒョン、チャ・デヒョン
●配給:アミューズ●韓国'01年/122分●1月25日公開
「前半戦」心優しい大学生のキョヌ(テヒョン)は泥酔した失恋女子大生(ジヒョン)をホテルで介抱。誤解され留置所行きの憂き目にあう。以来、彼女は彼に凶暴ぶりを発揮、脅し脅されながらのつきあいがはじまる。キョヌは彼女の誕生日のため夜の遊園地で祝おうとして脱走兵騒動に巻き込まれたり。「後半戦」彼は猟奇的な彼女の申し出に従いながら、次第に心ひかれていく。が、彼女は両親の強制でお見合いをする。キョヌの優しさに心動かされた彼女だが、失恋かれ立ち直れない自分を感じ、2年後に再会することを約束する。そして「延長線」ふたりのその後は…。 ネットで評判を呼んだ恋愛日記をもとに映画化したラブコメディ。原作はふたりの別れで終わるが、映画版は「延長戦」をくわえたのがミソ。ヒロインは韓国のCMモデルで注目され女優に転身した身長172センチの大型美女チョン・ジヒョン。韓国では「猟奇=ヨプキ」という言葉は社会現象化、「ほかとは変わった面白さ」のこと。スピルバーグのドリームワークスが映画化権を買ったことでも話題に。相手役のチャ・テヒョンは本作がデビュー作。劇中、ヒロインは映画の脚本家志望で、キョヌが彼女の脚本を見せられるたび、奇怪な劇中劇が展開する構成。最後でキョヌが彼女との恋愛話を映画化しようと制作会社を訪れる。それがこの映画の製作会社シンシネという趣向も面白い。>>>Review
ボウリング・フォー
コロンバイン

★★★★

監督:マイケル・ムーア
出演:マイケル・ムーア、チャールトン・ヘストン、マリリン・マンソン、ディック・クラーク
●配給:ギャガ●加'02年/120分●1月25日・恵比寿ガーデン公開
99年4月20日、米国は旧ユーゴスラビアのコソボ紛争で最大規模の爆撃を敢行した。その1時間後、コロラド州の小さな町リトルトンで2人の高校生がボウリングに興じた後、母校に銃を持って乱入、生徒12名と教師1名を射殺。1時間後、自らの命を絶った。全米を震撼させた「コロンバイン高校乱射事件」だ。幼いころから銃に関心を持ち、全米ライフル協会の会員であるマイケル・ムーア監督は、犯人の少年たちが容易にスーパーの「Kマート」で銃と銃弾を入手した銃社会の現況に疑問を持ち始め、動く始める。お隣の国カナダでは各世帯が700万挺もの銃を所有しているが、銃による殺人は米国よりはるかに少ない。その違いはどこにあるか。ムーアはカナダへ赴き違いを検証。一方、彼の故郷フリントでも6歳の黒人少年が6歳の白人少女を伯父の銃で撃ち死なせる悲劇が発生した。コロンバイン、フリントンと結ばれた銃社会の悲劇。その現場に事件後、全米ライフル協会会長で「モーゼ役」で知られる俳優チャールトン・ヘストンが講演に訪れ、住民の感情を逆撫でしていた事実に義憤を感じる。ムーアはヘストンにその真意を問おうとハリウッドの自宅に乗り込む。 故郷フリントが大企業GMの撤退で疲弊した姿に憤慨し、監督ムーア自らその会長ロジャーを追った傑作ドキュメンタリー『ロジャー&ミー』のマイケル・ムーア監督による、新作ドキュメンタリー。今回はコロンバイン高校乱射事件を発端に、米国の銃社会の現況に持ち前の突撃精神で肉薄する。米国が各国で展開してきた政治的な「大量殺人」を横目に、なぜ米国では銃による殺人が多いのか、と同じ銃所有国カナダとの対比から、米国の現況を洗い出す。自ら問題の渦中に身を置きながらのニュージャーナリズム的なアプローチ。コロンバインで銃弾を浴びた高校生を連れて、銃と弾を販売した大手スーパー「Kマート」の本部に乗り込み、銃弾は売らないと確約させる姿、全米ライフル協会会長ヘストンに迫る姿など闘うムーア監督の姿が情にあふれ痛快だ。ユーモアと反骨、そしてヒューマンな志。ドラマを遙かに凌駕するパワーを秘めた社会派メッセージ映画。カンヌ映画祭で20分以上のスタンディング・オベーションが起き、作品に惚れ込んだ審査委員長のデビッド・リンチがカンヌ映画祭55周年記念として最初で最後の「特別賞」を授与した。entertainment weekly誌の年間ベスト10で記者のひとりが3位に入れるなど、全米の批評家も絶賛。業界の圧力が予想されるなか、オスカーの長編ドキュメンタリー賞候補になるかが注目される。
ボーン・アイデンティティー
★★★

監督:ダグ・リーマン
出演:マット・デイモン、フランカ・ポテンテ、クリス・クーパー
●配給:UIP映画●米'02年/119分●1月25日公開
地中海沖でイタリアの漁船が嵐のなか、海上を浮遊する男(デイモン)を救出した。男は背中に2発の銃弾をうけ、臀部にはスイスの銀行の口座番号が印されたカプセルが埋め込まれていた。が、男は記憶喪失状態。名前も身元も思い出せない。男はスイスのチューリッヒ相互銀行に出向き、貸金庫を明けると、銃とパスポートそして一生暮らせるだけの大金が入っていた。パスポートは米国籍、名はボーン・ジェイソン。ボーンはほかにも自分の顔写真が付いた変名のパスポートが数種を見つけた。公園で仮眠するボーンに警察が不審尋問をするが、彼は反射的に警官たちを粉砕した。自分は一体、何者か。その頃、ヴァージニア州のCIA本部ではテッド(クーパー)が死んだはずのジェイソンが生きていたことを知り、プロの殺し屋に彼を消すように指令をだしていた。警官への暴行で指名手配中のボーンは米大使館に駆け込むが、そこでビザ申請を断られていた無一文の女性マリー(ポテンテ)に目をつけ、彼女の車でパリまで送ってくれと頼む。訝しがる彼女だが、報酬は即金で1万ドル、着いたら1万ドルと破格。かくして、ボーンはマリーと一緒に自分の失われた記憶をたどりはじめる。 スリラー作家ロバート・ラドラムの原作(「暗殺者」)を、『グッド・ウィル・ハンティング/旅だち』のマット・デイモン主演で映画化したサスペンス作。記憶を修復するため、主人公ボーンがチューリッヒからパリ、マルセイユへと自分の影を追っていく。無意識に体が反応し必殺の格闘技を見せたり、主人公の素性を窺わせるスーパーパワーぶりを、あまりマッチョではないデイモンが演じると妙に迫真力が醸し出される。一匹狼のボーンとCIAの極秘作戦チームとの攻防を、カーチェイス(ミニクーパー車で警官の追撃をかわす市街アクションが見せ場)から銃撃戦、肉体戦などを散りばめスリリングに見せるが、お話も妙味は主人公の自分探しのなかでの葛藤と、それに手を貸すヒロインとの恋模様。ヒロイン役は『ラン・ローラ・ラン』で注目されたドイツ女優ポテンテ。監督はインディ映画の快作『スウィンガーズ』『GO』のダグ・リーマン。『ゴスフォード・パーク』などの英国俳優クライヴ・オーウェンが「教授」とあだ名される一匹狼の殺し屋を演じている。
イナフ
★★

監督:マイケル・アプテッド
出演:ジェニファー・ロペス、ビリー・キャンベル、ジュリエット・ルイス
●配給:日活●米'02年/90分●1月25日公開
 ダイナーのウェイトレスのスリム(ロペス)は嫌な客をあしらってくれた好漢ミッチ(キャンベル)に見初めれ理想的な結婚をした。一人娘のグレイシーが5歳になったころ、夫は浮気に暴力と豹変。娘を連れて逃げるが、行き先々で彼の追ってが迫る。そんななか養育権をめぐる裁判が迫り、スリムは裁判に勝つのは無理と判断し、ある決断をする。ジュリア・ロバーツの『愛がこわれれるとき』路線の暴力亭主サスペンス。ロペスが男を相手に戦うタフな肉体のヒロイン像を演じるのがミソ。 配給もとでは最後のヒロインの「決断」をフックに使った宣伝。プレスが袋とじ状態で、最後に意外な決断が待っているよう印象づけている。ま、意外な決断ではあるが、ちょっと漫画的な展開。思わず笑ってしまう感じ。ロペスを子供として認知していなかった父親役で、フレッド・ウォードが登場。ネットビジネスで成功している金持ちの設定、このキャラが結構可笑しい。原題は暴力亭主に対して、「もう、限界」ってこと。映画内容も同様。
小さな中国の
お針子

★★★★

監督:ダイ・シージエ
出演:ジョウ・シュン、リィユ・イエ、チュン・コン
●配給:アルバトロス●中仏'01年/109分●1月25日・渋谷ル・シネマ公開
 1971年、中国。文化大革命の嵐のなか、17歳のマー(リィユ)と18歳のルオ(チュン)は、反革命分子の子として再教育のため山奥深くの村に送り込まれた。彼らはそこで老仕立て屋の孫娘のお針子(ジョウ・シュン)と出会う。ふたりは文盲の彼女を教育しようと、禁断の外国小説を手にいれ学習を開始する。ルオは積極的にお針子と恋に落ち、そのふたりをマーが見守るが…。 文革時代に村に、時間や芸術を持ちこんだ都会の青年ふたりと、美しいお針子との恋模様を軸に、文革の思想統制下で芸術の力を借り、体制を突破する自由の痛快さとのびやかな詩情をうたいあげる。映像・演出・音楽と洗練された味わい。監督・原案・脚本は『中国わがいたみ』のシージエ。ヒロイン役のジョウ・シュンは『ふたりの人魚』などの注目株。カンヌ国際映画祭コンペ出品作。今年のゴールデン・グローブ賞外国語映画賞にノミネートされている。>>>Review
僕のスウィング
★★★

監督:トニー・ガトルフ
出演:オスカー・コップ、ルー・レッシュ
●配給:日活●米'02年/90分●1月25日公開
夏休みの間、フランス北部ストラスブールの裕福な地区に住むに祖母の家に預かられた少年マックス(コップ)が街の酒場から聞こえるマニューシュ・ギターに心奪われ、ロマ(ジプシー)の少女スウィング(レッシュ)との初めての恋も体験する。ガトリフ監督によるロマ(ジプシー)映画3部作の最終章。 ロマの血を引く監督がロマにこだわって製作した『ガッチョ・ディーロ』『ベンゴ』に続く作品。「消滅しつつあるひとつの文化に対する監督の証言にこめられたヒューマニティ(人間愛)、優しさ、暖かさ、力強さに今回もまた我々は胸を打たれる」(仏ステュディオ誌)。『ルシアンの青春』でも知られるマニューシュ・ギターの伝説の人ジャンゴ・ラインハルト。その後継者といわれるチャボロ・シュミットが少年にギターを教えるマニューシュ・ギターの名手役を演じる。劇中の音楽がききもの。
ウェルカム!
ヘヴン

★★

監督:アグスティン・ディアス・ヤネス
出演:ビクトリア・アブリル、ペネロペ・クルス●配給:クレスト●スペイン'01年/108分●1月25日公開
昇天する魂が激減し危機状態の天国から美しい使者ロラ(アブリル)が地上に派遣された。一方、地獄からそれを阻止するため使者カルメン(クルス)も。地上のボクサーの魂争奪戦を展開するスペイン製コメディ。 『死んでしまったら私のことなんか誰も話さない』でデビューした異才の2作目。天国はフランス語、地獄は英語、地上はスペイン語が公用語という趣向。フランスのファニー・アルダンなど国際的な共演陣も多彩。随所に映画の記憶をはめこんだ映画的遊びも。クルスが意外なオチ。最後にノークレジットで『夜になる前に』のオスカー候補スペイン男優ハヴィエラ・バルデムも登場する。
ロベルト・スッコ
★★★

監督:セドリック・カーン
出演:シテファノ・カセッティ、イジルド・ル・ベスコ
●配給:セテラ●仏スイス'01年/124分●1月25日・渋谷シアター・イメージフォーラム公開
事件の始まりは81年3月9日、ヴェニス。年輩の男女が浴そうで惨殺された。犯人は19歳の息子のロベルト・スッコ(カセッティ)。86年フランスに出現したスッコは無差別の理由なき殺人を開始、88年までに7件の殺人事件を起こし26歳で逮捕された。スッコの冷徹な犯行を恋人レアとの関係を絡めながらドキュメンタルなタッチで描いた、『倦怠』のカーン監督による社会派犯罪実録。 「推理小説の氾濫で誰かが殺されるのを画面でみることがありふれたものになった今日、本作ははかり知れない恐怖を回復する。カーン監督は逃走=追想劇、銃撃戦シーンを超能力的視線のふるいにかけている。つまり、それらのシーンはすべて何をしでかすかわからないスッコの気違いじみたスパイラルに不意に捕らわれ、次々と人質になった人々の視点で撮られている」(テオレマ誌)。スッコ役のカセッティはずぶの素人だが、ギラついた目つきで自己主張する。存在感満点。セザール賞の新人賞候補になった。カポーティの『冷血』を思わす殺人犯実録だ。
ラベンダー
★1/2

監督:イップ・カムハン
出演:金城武、ケリー・チャン
●配給:ツイン●香港'00年/124分●1月25日・池袋シネ・リーブル公開
アロマテラピストのアテナ(チャン)はビルの屋上に墜ちてきたエンジェル(金城武)と同居。次第に心惹かれていく。が、彼はバチカンのクリスマス・ミサに合わせ、天国に帰ろそうとするファンタジー。 金城武の、翼をつけた天使役がどうにもなじめない。気持ち悪い。全体の作劇がメルヘン調で、少女漫画のノリ。映画のクライマックで登場するラベンダー畑は南仏プロヴァンスのグラースで行われた。グラースは昔から香水など香料の生産地として有名。
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