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アシッド ハウス
THE ACID HOUSE 1998年イギリス 監督ポール・マクギガン 出演スティーブン・マッコール/ケビン・マクキッド/ユエン・ブレンナー/ミッシェル・ゴメス●111分 ギャガ配給 |
| 1話目の「ザ・グラントン・スターの悲劇」は恋人にも仕事にも両親にも見放された青年ボブ(マッコール)が「蝿」に変身して演じる復讐を描く。2話目の「カモ」は性悪な女と結婚したジョニー(マクキッド)の腐れ縁を描く。3話目の「アシッド・ハウス」はLSDを飲んだサッカーのフーリガンのリーダー、ココ(ブレンナー)が生まれる寸前の赤ん坊と入れ替わる様を描く。『トレインスポッティング』のアーヴィン・ウェルシュが自ら脚本を担当し、英国の底辺で生きるルーザーたちの浮かばれない生活をシュールな幻想などトンだ感覚で描いた異色ブリテッシュ・ポップ・オムニバス。2話目でお邪魔虫の精力絶倫男を演じたゲーリー・マコーマックは元ロッカー。 | |
| SHIMIZU★★我らが『トレインスポッテング』の作家が脚本を手がけた。そう聞けば、食指が動かないわけはない。でも、お話は「3話」構成のオムニバスで、「プップッ!」と警戒モード。大体、僕の「映画の法則」に従えば、「オムニバス」は「スナック菓子」。趣向以上の「ナニか」があることは稀(『世にも怪奇な物語』のフェリーニ・パートがその稀な1本か)。 さて、1話は23歳のサッカー青年ボブが主人公。彼はサッカーのメンバーから外されるわ、変態セックスを老後の楽しみにしている両親から「そろそろ独立したら」と引導を渡され2週間のうち家を探して出ななくちゃいけないわ、恋人からバイバイされるわ。バッドラック連発。おまけにムシャクシャして「公衆電話」を破壊し警察に御用。そんな彼が「蝿男」になり、元恋人の情事を覗きネコイラズで復讐を開始するシュールな展開。ロックバンド、ザ・カーズが昔やった蝿男のビデオクリップか、クローネンバーグの『ザ・フライ』のお笑い版。3話は主人公が突然赤ちゃんになった男をめぐる『ベイビー・トーク』のダーティ版。 僕が凄く強烈と思ったのは2話。気弱な夫と快楽妻の腐れ縁を描く内容。同じアパートに引っ越してきたパンク野郎ラリーが妻を誘惑し夫を恫喝する。半端じゃない極悪キャラ。演じる俳優は元ロッカー('80年代初頭に活躍したというハードロック・パンクバンドのThe Exploited)のゲイリー・マコーマックで、彼の存在感はこの映画の収穫のひとつです。とりわけ、妻をヒーヒー言わせるアナル責めの絶倫セックスはその道の好き者には必見かも。彼の存在は『召使い』の男性版って感じだね。 ま、強烈な英国ローカルの「濃い世界」を点描している縁取りは『トレインスポッテイング』の作家らしさなのかもしれないけど、全体にシュール系でまとめた作劇はやはり、腹の足しになりにくい。改めて、『トレインスポッテイング』は演出したダニー・ボイルのセンスがあってこそ、と再認識。 あと、音楽の使い方がちょっと面白い。僕の好きなジム・ウェッブ+グレン・キャンベルの楽曲。1話は「恋はフェニックス」、2話は「ラインストーン・カウボーイ」、どうせなら3話で「ウィチター・ラインマン」が入ると3連発でワンセット(?)になるのにと思ったりして。(99/09/27 ギャガ試写室) | |
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ANA+OTTO
LOS AMANTES DEL CIRCULO POLAR 1998年スペイン 監督・脚本フリオ・メデム 出演ナイワ・ニムリ/フェレ・マルティネス/ナンチョ・ノボ ●112分 ポニーキャニオン配給 |
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SHIMIZU★★☆親の結婚で義理の兄妹関係になったANAとOTTO。ひとつの状況をANAとOTTOを分割して、お互いの視点から再構成する。まるで精密な男女の「心の地図」を作成していくような構成です。「紙ヒコウキ」からはじまるお互いの出会い。下から読んでも同じな幸運の鏡文字の名前同士。OTTOの父親にまつわる友愛のエピソード。様々な意匠を凝らし、偶然から「運命」が綾なされる作劇は、ちょっと我が愛するキェシロフスキーのタッチを想起させます。終盤、ふたりの愛がフィンランドを目指して飛翔する顛末まで、どこまでもスタイリッシュ。 僕好みではあるけれど、どうもここもでやられると演出の手管が透けて見える。演出過多という印象。結末の到達点まで予測がつくのが物足りないところ。でも、この医学生出身の新鋭監督はちょっと化けるかも。映像ルック自体は、透明感がありポエッテックだよ。あのキューブリックが2作目の監督作を直々フィルムごと買い取り保存、この10年の重要な作品の1本と評価したとか。ホントなら見てみたいけれどね。(99/11/08 映画美学校試写室) YAZAKI★★☆運命の恋の始まりは、紙飛行機。同じ小学校に通うアナに思いを寄せるオットーは、アナへの恋心を綴った紙切れを飛行機にして、学校のトイレの窓から飛ばす。そして数十年後、彼はそのときの思いを再びかなえようと、長距離貨物の飛行機を操縦して、フィンランドの湖畔で再会を待つアナの元へと飛んで行く。この「思いを届ける飛行機」のほかに、地図やハートの小物、回文になった名前など、ふたりの心の接点を示す小道具が劇中にふんだんにちりばめられているところは、クシシュトフ・キェシロフスキ監督作を思わせるノリ。 父の死を知らされたアナが、初めて出会ったオットーに対して「父が身代わりに送ってきたくれた」という気持を抱くリ・インカネーション的な設定は『ふたりのベロニカ』を喚起させるし、オットーの父アルバロと再婚したアナの母が同じアルバロという名前の男に心変わりするエピソードや、フィンランドのアナがオットーという名の老パイロットと出会う「名前つながり」のエピソードは、『トリコロール/赤の愛』を思わせる。 という話術の巧みさに、ほとんど★★★★を用意しながら見ていたのだけど、最後にきてガックリ。アナとオットーの人生に仕掛けられた魔法が、グーッと高いところに昇華する感じを期待していたんだけど、残念ながら、そういうキェシロフスキ的な浮遊感は感じられず。結局、「暗示」を散りばめるという策に溺れただけの、あざとい映画だなという印象が残った。これは、同じスペイン映画の『オープン・ユア・アイズ』にも感じたことだけどね。 ひとつ思ったのは、この物語の背景に、カソリック的なモラルのシバリがあるんじゃないかということ。親同士の結婚による義理の関係とはいえ、兄妹になったオットーとアナが、現実的に結ばれることはタブーである、と。そういうシバリが、結末を飛翔したものにさせる妨げになっている気がする。という話を宣伝の樂舎の人にしたら、「初めて聞く意見です」と言われてしまいましたが。(99/09/28 映画美学校試写室) |
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ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ
BUENA VISTA SOCIAL CLUB 1999年ドイツ=アメリカ=フランス=キューバ 監督ヴィム・ヴェンダース 出演ライ・クーダー/コンバイ・セグンド/コレアデス・オチョア/ルーベン・ゴンザレス/マヌエル“カチャイート”ロペス●105分 日活配給 |
| SHIMIZU★★★当日は劇場での夜の試写で、キューバ名物のラムにコークーをミックスしたドリンクをサーブされての粋な鑑賞。この映画を薦めてくれたオレゴンに住む友人メアリーに、そうメールをしたら、「Wow, watching a move and drinking "Cuba Libres"...that is what they call rum and coke together. It means "Free Cuba".」というメールがかえってきた。へー、それって「キューバ・リビレス」、自由キューバというんだ! 映画は実にシンプルな構成の音楽ドキュメタリー。ことの発端は、ハワイの音楽とのセッションなど民族音楽に傾倒しているボトルネック奏法のギターの名手ライ・クーダーがキューバで西アフリカのミュージシャンとのレコードを作ろうという企画にのったこと。が、ハバナにミュージシャンは来られず。クーダーはそこで「音楽が眠っている」ことに気付き、キューバの伝説のミュージシャンの音楽を掘り起こし、そのミュージシャンとレコーデングする手はずを整える。そのレコードがタイトルの『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』になった。その後でライ・クーダーは音楽を担当した『エンド・オブ・バイオレス』のヴェム・ベンダース監督に、そのテープを聞かせた。キューバ音楽の見せられた監督が、クーダーに同行し、この映画が製作されたというわけだ。 タイトルは昔ハバナにあったキューバ音楽のメッカともいうべき音楽クラブ。そこに出演していた伝説のミュージシャンが呼びかけに応じて集まる。まずは彼らのプロフィールを随所にはさみながら、レコーディングの模様を描くのが前半。中盤以降は、クーダー率いる「ソシアル・クラブ」の面々がオランダ・アムステルダムの公演から、憧れのカーネギーホールでの公演とつきすすむ。「ソシアル・クラブ」の老ミュージッシャンの演奏姿を見ていると、不滅のゴーストを見ている気分になり、暫しのやすれぎを感じさせてくれる。 演奏シーンはそれだけで、文字にはできない情感の連なり。キューバのナット・キング・コールと称される「黄金のボイス」イビライム・フェレール、キューバ音楽史で3本の指にはいるというピアニストのルーベン・ゴンザレス、キューバを代表する歌姫オマーラ・ポルトゥオンド、そしてライ・クーダーが「すべてがそこから流れ出す源泉」と称したコンパイ・セグンド。理屈なしに酔える。彼らの「ソウル」は不滅である、という実感に酔えること請け合い。そのひとつがオランダ公演で歌姫オマーラ・ポルトゥオンドとイビライム・フェレールが恋のバラードをデュエットするシーン。オマーラは涙をこぼし、イビライムが彼女の涙を拭き取る。情感たっぷりに捉えられたショットだ。 NYを訪れた老ミュージシャンはほとんどお上り状態、その飄々とした姿を捉えたスケッチは、小津映画に心酔しているベンダースならではの視線じゃないかな。でも、よぼよぼした彼らがステージに上がると、霊気が立ちこめる。クライマックスのカーネギーホールでの演奏は熱気に包まれる。シンプルなリフレーンでも、彼らの生き生きした営みを感じさせる歌たち。まずは「自由、キューバ」の亡霊たちに乾杯。ロビー・ミューラーの、ハバナの街を捉える映像も夢のようだ。最後に街の看板も語りかける。「私たちは夢を信じる」、と。(99/10/05 シネマライズ) | |
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LOVE GOD/ラヴ・ゴッド
LOVE GOD 1997年アメリカ=日本 監督フランク・グロウ 出演ウィナ・キーナン/シャノン・バーケット/ユキオ・ヤマモト ●82分 オンリー・ハーツ配給 |
| SHIMIZU★最初は医者や看護婦が絡み怪獣逃走劇が展開。そのノリは『ロッキー・ホラー・ショー』タッチじゃないか、と好意的に見て上げようとしたが、得たいの知れない「ラブ・ゴッド」なるモンスターが登場する展開はほとんどトロマ・プロの怪作シリーズ「毒々モンスター」にも劣るチープさ。しかも自己満足のおたく映像連発で、凄い疲れました。。業界的には、オンリーハーツが初めて米国の新人監督と組み、共同製作した代物。(99/09/29映画美学校試写室) | |
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ロッタちゃん はじめてのおつかい
LOTTA LEAVES HOME 1993年スウェーデン 監督・脚本ヨハンナ・ハルド 出演グレテ・ハヴネショルド/リン・グロッペスタード/マルティン・アンデション ●86分 エデン=ミラクルヴォイス配給 |
| SHIMIZU★★ちょうどヒロインのロッタちゃんと同い年の5歳の男の子を持つ身としては、この映画のような、妙にこまっちゃくれた局面に出会うことしばし。その実感はあるにせよロッタちゃんは、かなり強烈。のっけから、チクチクするセーターが気に入らないとハサミでジョキジョキ切って隣りのおばさんのところへ家出しちゃう。子供のいない人には、この子の自己主張にカチンとくるかも。僕もちょっときた。売り切れて手にはいらなかった「クリスマスツリー」や「イースター用の卵」を、ロッタちゃんが持ち前の「機転」と「無邪気さ」で、次々に手に入れ家族の願望をかなえるあたりがお話のポイント。あくまでも子供の無邪気な視点で描かれた児童映画の趣で、大人は微笑みながらも引いてみてしまうかも。(99/11/15 ヘラルド映画試写室) YAZAKI★★☆3話のオムニバス構成で、3話目のロッタちゃんが、やたらデカくなってる。「ひょっとして?」と思い配給会社に確認したところ、最初の2話がTV作品。3話目が、映画版用に撮影したものなのだそう。 私がいちばん気に入ったのは、ロッタちゃんが自立宣言する一話目のエピソード。その朝、兄と姉にブタのぬいぐるみ(バムセ)をいじめられる夢を見たロッタちゃんは、起き抜けからすこぶる機嫌が悪い。それが原因で、着替えをせかしたり、ココアを飲めと強制する母親の言葉にも、いちいちカチンとくる。だから、セーターに八つ当たりしてハサミでジョキジョキ。そうしながらも、「犬がかじったことにしよう」と、子供なりに言い訳を考えてるところが、最高に笑えます。 いっぽうの母親は、「何でこの子は怒ってるのかしら?」と不思議がるばかり。そりゃそうだ、夢が原因のカンシャクなんて、理解の範疇を超えているもの。そうこうしているうちに、ロッタちゃんは勝手に隣の家にお引越し。「食べるものも着るものもないと」と、隣のおばさんに訴え、物置の二階に居候を決め込む。 そういうロッタちゃんに対するオトナの対応ぶりが、なかなかシャレている。隣のおばさんを筆頭に、誰も「バカやってないで家に帰りな」とは言わず、自立にめざめたロッタちゃんを一人前に扱おうとする。新居祝いの花を持ってきて、「クリスマスには戻ってらっしゃい」と言う母親。「ロッタが家にいないとさみしくて泣いてしまうな。ところで今晩の夕食はミートボールだよ」と、さりげなく帰宅のきっかけを与えようとする父親。子供のワガママを容認するのではなく、アイデンティティの確立を見守ってやろうとするオトナたちのスタンスが、とてもさわやかな印象を与えます。 北欧風の色づかいがかわいいファッションやインテリアなど、ライフスタイルの描写も私には楽しめたポイント。年甲斐もなく、バムセのぬいぐるみが欲しくなりました。(99/09/30 ヘラルド映画試写室) | |